中学受験の理科、特に難関校の入試問題は、単に知識を暗記しただけでは合格点をとることはまずできません。最近の傾向として、実験・観察問題が多く出題されており、それに伴い問題文(リード文)が長いことが挙げられます。長い実験、観察、結果を素早く読みとり、いくつもの条件を正確に把握しなければ解けない問題が増えています。つまり、高い読解力が求められています。
また、単に知識を書かせるのではなく、「なぜこういう結果となったか説明しなさい」などの記述問題を出題する学校も増えています。つまり、正確な知識とともに、それをどのように使い、問題を解決するにはどうすればよいか、そこまで求められています。時事問題も出題されており、中には理科の問題ですが社会の視点を求められるものもあります。
そして、受験生の方が苦手意識を持ちやすい計算問題ですが、これも条件を正確に把握したうえで解かなければ正解できないものや、いくつもの要素が組み合わさっており、一つ一つ分解しながら順序立てて解き進んでいく必要のある、複雑な計算問題も増えています。
難関校の理科を克服するためには、「見たことがない問題でも、知識を総動員して取り組み、解決していく」という姿勢が不可欠です。今回は、そのような難関校の理科の問題に対応するための方法と、オススメ問題集を紹介します。
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難関校の理科は実験結果、資料、図の正確な読み取りが必須
最初にも書きましたが、難関校の理科の入試問題は、実験・観察問題が主流となっています。実験の目的や実験結果、それに伴う資料、図の読み取りといった問題が多く出題されます。たとえば、2017年度の栄光学園中学の理科では、まず、実験を始める前段階の説明として、ダムの貯水率が下がり、水不足というニュースをテーマとしていること、森林が「緑のダム」と呼ばれていることを読み進んだうえで、以下のようなグラフの読み取り問題が出題されました。
森林の土が雨水をたくわえて少しずつ放出する働きをもつということから、スポンジが水をたくわえる様子を実験で確かめる、という実験観察・考察問題です。厚さの違うスポンジを3種類用意して実験し、注水開始からの時間と、それぞれのスポンジの放水量を実験結果の表にまとめ、実験の条件と実験結果の表からわかることを記述される問題(考察させる記述問題)のあとに、以下のようなグラフが示されました。
注水開始からの時間と、スポンジにたくわえられた水の重さの関係を表すグラフです。3種類のスポンジで行った実験結果を考慮して、スポンジの厚さによる水のたくわえ方がどのように変化すると考えられるか、それまでの問いの答えとこのグラフに注目して答えさせる、という問題が記述式で出題されました。
このように、難関校の理科の入試問題は、単なる知識問題ではないことがお分かりいただけるでしょう。実験内容、実験結果、資料、図やグラフを材料に、総合的な考察を求める問題が中心です。そして、前の問いの答えを前提に次の問題を考えさせるなど、1問気を抜くと芋づる式に失点してしまう恐れのある問題もあります。ですから、条件などを見落とさないように正確に読みとる力をつけておくことが必須条件になります。
間違いやすい計算問題も出題される
理科の計算問題は、ほぼどの学校でも出題されますが、中でも難関校では、「割り切れない」「数字のきたない」計算問題も出題されます。さきほども、前の問題の結果をもとに次の問題に答えさせるという傾向について書きましたが、たとえば問1で計算問題が出題され、それを間違えてしまうとそれ以降の計算問題も芋づる式に不正解になってしまうという怖さがあります。
たとえば、2016年度の桜蔭中学では、水に食塩や砂糖を溶かした中に卵を入れ、浮くかどうかを調べる実験の大問の問1で、実験結果から卵の1㎤当たりの重さを求めさせる問題が出題されました。問題文に卵の重さは66.5g、体積は62㎤としっかり条件が書いてありますから、使う数字は桜蔭受験生ならまず間違うことはないはずです。しかし、計算式は66.5÷62で、「四捨五入して小数第3位まで」答えなさい、という設問でした。正確な計算をし、出た数が求められている条件に合っているかどうかを瞬時に判断して答えなければいけない問題です。小数第3位まで、という条件通り、割り切れるようなきれいな数の計算問題ではありません。焦らず、ミスしないように計算過程をしっかり書いておく練習も必要です。
時事問題が出題されることも
最近は理科でも時事問題と関連させて出題する学校が増えてきています。特に難関校ではこの傾向は顕著です。先ほども例に挙げた桜蔭中学の、今度は2017年度の問題ですが、石油や石炭を使った火力発電や、現在は水力発電が多くの割合をしめていること、風力や太陽光等を用いた発電方法などを挙げ、発電方法の問題点を考えさせる問題や、白熱電球とLEDの違いについても出題されました。以前にもすい星の観測や、「緑のカーテン」などの時事に関する問題が出題されています。
LEDに関してはノーベル賞が関係していることもあり、様々な学校で題材とされています。電力に関する身近な問題でもありますし、環境問題にも関係しています。このような、身近なニュースをしっかりチェックしておくことも、難関校の理科に対応するには必要なことです。
難関校に必要な力をつけるオススメ参考書・問題集
難関校向け理科対策の導入編としてオススメの参考書です。「受験理科の裏ワザテクニック」は物理・化学分野、「続~」は天体・生物、「続々~」はエネルギー・気象編となっており、独自の裏ワザ(解法のテクニック)がわかりやすく解説されています。難関校で求められる基本原理の理解や、「どうやって解くんだったかな」と疑問が生じた際にチェックして理解を深めていくのに良いでしょう。メインの分野に押されがちで勉強不足になりやすい「磁力」「光・音」「気象」「地質」などもカバーされているので、弱点を克服する参考書として活用することをおススメします。また、実験・観察問題を解くうえで必須となる実験器具についてもポイントが整理されているので、しっかりマスターしておきましょう。
「裏ワザテクニック」シリーズの準拠問題集です。「裏ワザ」参考書で理解した基本原理をチェックする問題集として、なるべく早めに一巡しておきたいところです。特徴的なのは、同じ内容で目先を変えた問題が用意されているので、「わかったつもり」で終わっていないか、聞かれ方を変えられても本当に「できるように」なっているかチェックできる構成になっているところです。そもそもの原理の理解をさらに深め、定着させるのに使えます。特につまずきを感じている単元対策にも使えます。
難関校対策の問題集として、また参考書として使うのも良いでしょう。「生物と環境(生物分野)」「物質とエネルギー(物理・化学)」「地球と宇宙(地学)」の3部構成で、標準問題→発展問題とステップアップしながら学習できます。作図問題や記述問題、また時事問題対策に使える問題も豊富なので、ぜひしっかり取り組みたい問題集です。また、理解が不十分だと感じている単元については、毎日少しずつでも読んでいくと理解が深まり、力がつく参考書としても使えます。
難関校・超難関校対策、と銘打っているだけあって、難関校・超難関校の入試問題が集められています。難関校向け・超難関校向けに分けられているので、志望校のレベルに合わせて使うのが良いでしょう。解説が詳しく、便利な解き方やテクニックも載っているので、入試の定番問題を解いた後にチャレンジするととくに弱点となっている単元の難問対策として使うことができます。すべて解こうとするとかなりの超難問も入っていますので、問題を取捨選択し、苦手な分野だけ解く、という使い方でも良いと思います。
難関校に合格するための問題集の使い方
最近の難関校の入試問題をいくつかご紹介しましたが、難関校の理科の入試問題は、細かすぎる知識を問うというよりも、実験・観察問題を通し、基本的知識の理解度とそれを応用して使う力、長い実験過程を正確に読みとり条件を整理する力を見ようという傾向にあります。そして、正確で速い計算力も必須です。
問題集を解く際には、「なぜそうなるのか」という原理原則をしっかり確認しながら、知識不足、理解不足のところをしっかり補い、見たことがない問題であっても積極的に取り組む姿勢が必要です。よくよく考えてみると知っている知識で解ける、という問題も多いですから、「わかった」を「できる」ようになるまで繰り返し練習していきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。