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問題構成・解答形式
学習院女子中等科の社会は、試験時間30分に対して大問が3〜5問、総設問数が15〜25問程度となっています。ここ数年で大問数は安定していますが、総設問数は年度によってかなり変化しています。
基本的には地理・歴史・公民・時事の4分野からまんべんなく出題されることが特徴的で、1分野に対して少なくとも1問は出題される傾向があります。
中学受験社会では珍しく、問題用紙と解答用紙が一体となっており、問題用紙内の解答欄にそのまま解答を記入する方式です。
近年の出題内容
2020年度
大問番号 | 分野・単元 |
大問1 | 歴史〜宗教史・文化史〜 |
大問2 | 地理〜日本の地理・伝統文化・農業・地形について〜 |
大問3 | 地理〜日本の地域区分について〜 |
大問4 | 公民〜水道の水を切り口とした、水に関する問題〜 |
2019年度
大問番号 | 分野・単元 |
大問1 | 歴史〜お金に関する問題〜 |
大問2 | 地理〜様々な産業における都道府県別統計についての問題〜 |
大問3 | 地理〜各地域の雨温図についての問題〜 |
大問4 | 地理・公民〜在中外国人と社会問題の関係について〜 |
大問5 | 公民〜民主主義の仕組み、日本の国会制度について〜 |
2018年度
大問番号 | 分野・単元 |
大問1 | 歴史〜日本列島における島の役割について〜 |
大問2 | 地理〜日本の各地域の農業、河川について〜 |
大問3 | 公民〜親子の会話をめぐる諸問題について〜 |
大問4 | 地理〜日本各地域・島の地名について〜 |
出題傾向
概要
学習院女子中等科の社会は、試験時間30分に対して大問が3〜5問、総設問数が15〜25問程度となっています。
基本的には地理・歴史・公民・時事の4分野から少なくとも1問ずつ出題されており、年度によっては同じ分野から2問以上出題される場合もあります。
難関男子校で見られるような、難問・奇問は見られません。高度なひらめきや思考力を必要とするというよりは、単元についての本質的な理解を問うような良問が揃っています。
また当校の社会では、様々な種類の問題が出題されることも特徴的です。一般的な中学受験社会でよく出題されるような記号選択、正誤問題、適語補充、用語記述といった問題のほかにも、記述問題も毎年必ず出題されています。
出題傾向についての詳細
学習院女子中等科の社会では、地理・歴史・公民・時事の4分野からまんべんなく出題されることが特徴的です。
なかでも地理からは「日本地理(諸産業、地形の名前)」が、歴史からは「文化史」が、公民からは「日本の内閣制度・憲法」に関する問題がよく出題されています。
難問・奇問といった、高度なひらめきや思考力を問うような問題は見られません。あくまで受験生の単元についての本質的な理解を問うような問題がほとんどです。
難易度がそこまで高くない分、受験生同士で点差がつきにくいことも特徴的です。ここ最近の合格者平均点は7〜8割程度とかなり完成度の高い解答が求められます。
また、様々な形式の問題が出題されることも特徴的です。一般的な中学受験社会でよく見られるような記号選択、正誤選択、適語補充、用語記述といった問題はもちろんですが、記述問題もよく出題されています。
記述問題は、事象説明をさせるような短い記述を求めるものから、出来事の経緯を考えさせるような、手ごたえのあるものまで様々です。各大問につき必ず1問は出題されており、学習院女子中の社会では頻出の問題形式となっています。
基本的に、記述問題のほとんどは字数制限がなく、解答欄も1行〜3行とかなり分量が多い問題も出題されています。
入試対策方法
分野別対策法〜実際の過去問を解いてみよう〜
学習院女子中等科の社会では、地理・歴史・公民・時事の4分野からまんべんなく出題されることが特徴的です。
今回は、実際に出題された過去問を抜粋しつつ、入試対策法をご紹介します。
実際の出題例1〜地理・歴史・公民の融合問題〜
(2019年度第1回・第1問より抜粋)
〔1〕次の文章を読み、次の問いに答えなさい。
日本では昔から、さまざまなお金が使われてきました。708年、朝廷は武蔵国から銅が収められると、和同開珎という貨へいを発行しました。1998年、奈良県明日香村から(1)という銅銭が大量に見つかりました。これは、和同開珎より前に作られた銅銭とみられています。①平安時代末期以降、中国から銅銭が輸入されるようになりました。平清盛は、摂津国の(2)を整備して日宋貿易に力を入れ、宋銭を輸入しました。足利義満は、明との国交を開いて貿易をすすめ、明銭が輸入されました。貨へいが広く使われるようになると、(3)といった高利貸しがあらわれました。その後、戦国時代になると、金山・②銀山の開発がさかんになり、大名は独自の金貨・銀貨を作りました。③江戸時代には、金・銀・銭の三貨が流通しました。そのため、三貨の交換などを専門におこなう両替商が生まれました。④三井高利もそのひとりです。三井高利は越後屋呉服店を開き、成功をおさめました。明治時代になると、⑤金貨などと引きかえられる兌換(だかん)銀行券が発行されました。紙へいのしょう像画には、日本武尊(やまとたけるのみこと)などの伝説的な人物や、⑥伊東博文のような政治家が多くみられましたが、最近では⑦文化人の採用が増えています。2000年に行われた(4)にあわせて初の2000円札が発行されました。そのため、紙へいの表面には「守礼の門」がデザインされています。
問1 空らん(1)〜(4)にあてはまる語句を答えなさい。
問2 下線部①の時代の説明として、正しくないものを次のア〜エより1つ選び、記号で答えなさい。
ア. 最澄は遣唐使とともに唐にわたり、新しい仏教を学んで帰国した。そして延暦寺を建て天台宗を広めた。
イ. 聖武天皇は、律令政治を立て直すため、平安京に都を移した。
ウ. 紀貫之は、かな文字で『土佐日記』をあらわした。
エ. 1156年の保元の乱、1159年の平治の乱に勝利した平清盛は、武士として初めて太政大臣になった。
問3 下線部②に関連して、2007年、島根県にある石見銀山がユネスコの世界文化遺産に登録されました。世界文化遺産ではないものを次のア〜エより1つ選び、記号で答えなさい。
ア. 国立西洋美術館
イ. 薬師寺
ウ. 鶴岡八幡宮
エ. 端島炭鉱(通称 軍艦島)
問4 下線部③の時代のア〜エのできごとを、古いものから年代順になるように記号を並べかえなさい。
ア. 大塩平八郎の乱
イ. 田沼意次の政治
ウ. 島原・天草一揆
エ. 享保の改革
問5 下線部④は、「現金掛け値(かけね)なし」の商法を始めました。どのようにして成功したのか、説明しなさい。
問6 下線部⑤について、なぜ金貨などと引きかえられるようにしたのか、説明しなさい。
問7 下線部⑥に関連して、議会政治の歴史として正しくないものを次のア〜エより1つ選び、記号で答えなさい。
ア. 1890年に行われた最初の衆議院議員の総選挙では、直接国税15円以上を納めた25歳以上の男子のみ投票が許された。
イ. 大日本帝國憲法で定められた帝国議会は、衆議院と参議院の二院制であった。
ウ. 1940年、政党は解散して大政翼賛会という団体にまとまり、戦争への協力を進めた。
エ. 第二次世界大戦後の1945年12月、女性に普通選挙権が認められた。
問8 下線部⑦について、紙へいに採用されている人物で、黄熱病の研究に取り組んだ細菌(さいきん)学者を答えなさい。
【答え】
- 問1 1 富本銭 2 大輪田泊 3 土倉(酒屋) 4 九州・沖縄サミット
- 問2 イ
- 問3 ウ
- 問4 ウ→エ→イ→ア
- 問5 掛け売りをせずに、通常の札通りに現金取引で商品を売っていたから。
- 問6 金貨によって紙へいの信用度を保証した。
- 問7 イ
- 問8 野口英世
〔解説〕
- 問1 リード文の適語補充問題。基本的な知識ばかりなので満点を目指したい。歴史・公民どちらの内容も含まれる。
- 問4
- ア. 大塩平八郎の乱→1837年
- イ. 田沼意次の政治→1767年〜1786年
- ウ. 島原・天草一揆→1637年〜1638年
- エ. 享保の改革→1716年〜1745年
- 問7
- イ. 大日本帝國憲法で定められた帝国議会は、衆議院と参議院の二院制であった。
- ×衆議院と参議院→○上院と下院
〔ポイント〕
- 学習院女子中等科では、地理・歴史・公民・時事の4分野からまんべんなく出題されます。一つの分野に対して一つの大問が出題される場合もありますが、
- 今回の問題のように、複数の分野を組み合わせたような融合問題も出題されています。長めのリード文をもとに適語補充の問題が出題されることが多いため、下線部の内容に注目しつつ、漢字のミスなどには注意して、正確に記入しましょう。
実際の出題例2〜地理〜
(2018年度第1回・第4問より抜粋)
〔4〕右の(本サイトでは下の)図1と図2を見て、以下の問いに答えなさい。
問1 図1のA島は、瀬戸内海で2番目に面積が大きな島である。この島が属する県名を答えなさい。また、この島で発達している産業について説明しなさい。
問2 図2は、北海道の海岸線の一部を示したものである。
⑴図2のB海とC島の地名を、それぞれ答えなさい。
⑵図2の地域を代表する港名を答えなさい。また、この地域でとれる代表的な海産物のうち、魚以外のものを2つ答えなさい。
【答え】
- 問1 香川、産業:古くからしょうゆやそうめんの生産がさかん、温暖な気候を利用したオリーブの栽培もさかんである。
- 問2
- ⑴B オホーツク C 国後
- ⑵根室、海産物:ホタテ貝、うに、こんぶなど
〔解説〕
- 問1 瀬戸内海で2番目に大きい島と聞いて、小豆島を連想したい。小豆島は香川県に属する島であり、そうめんやしょうゆ、オリーブなどが特産品として知られる。
- 問2 C島の形から国後島と判別し、そこからBがオホーツク海であることを特定したい。根室の位置がわかっていれば、そこから地域を特定できる。各地域の特産品もおさえておきたい。
〔ポイント〕
- 学習院女子中等科の社会では、リード文が用意されている問題と、用意されていない問題と2種類あります。
- 今回のようにリード文がない場合、その多くは問題数が少なく、基本的な知識問題が中心となっている場合が多いです。
- このような問題では、受験生の知識量や演習量が得点に直結します。知識問題では満点を目指しましょう。
高得点を目指す上での「カギ」とは?
知識問題では満点を目指す
学習院女子中等科の社会では、単元についての本質的な理解が必要となります。
問題によって難易度に少しばらつきがあることが特徴的なので、易しい問題では確実に点が取れるようにしておきましょう。知識問題は「早く」「確実に」満点を狙うことが求められます。
過去問演習は入念に
学習院女子中等科の社会では、記述問題は各大問につき必ず1問は出題されています。解答欄は字数制限のないものほとんどで、解答欄も1行〜3行と問題によって様々です。
また当校の社会は、問題用紙と解答用紙が統一されており、問題用紙にそのまま解答を記入する珍しい解答方式となっています。
入試本番で独特の形式に戸惑うことがないよう、過去問演習をしっかりと行っておきましょう。
時間配分は慎重に
学習院女子中等科の社会は、試験時間30分に対して大問が3〜5問、総設問数が15〜25問となっています。1問あたりにかけることができる時間は約1分程度なので、あまり時間に余裕がありません。
絶対にわからないと思ったらとばして次の問題にいくことも大切となります。
まとめ
今回は、学習院女子中等科の学校情報や、社会の出題傾向、入試対策方法についてご紹介しました。
当校の社会は、試験時間30分に対して大問が3〜5問、総設問数が15〜25問程度となっており、試験時間に対する問題量が多いことが特徴的です。
高度なひらめきや思考力を問うというよりは、単元についての本質的な理解を問うような問題がほとんどで、受験生の知識の定着度や演習量がそのまま得点に直結するような良問が揃っています。
また「記述問題の分量が多い」、「問題用紙と解答用紙が同一である」といった点も特徴的です。過去問研究は抜かりなく行い、入試本番で動揺しないようにしましょう。
入試本番まで時間は限られていますが、他教科とのバランスを考えつつ、できる限りの対策を行いましょう。
おすすめ記事
参考
- 学習院女子高等科-インターエデュ
- 学習院女子中|入試対策ページ
- 学習院女子中等科 算数対策
- 一橋セイシン会
- 入試結果|学習院中等科
- 学校説明会日程|学習院女子中・高等科ー学校法人 学習院
- 卒業後の進路|学習院女子中・高等科ー学校法人 学習院
- 学習院女子中等科入試速報|学習院女子中・高等科ー学校法人 学習院これで解決!学習院女子中等科理科の特徴と対策法を徹底検証!
こんにちは!ライターの福久はなです。 都内の中高一貫校出身で、大学受験を経て東京大学に入学しました。 塾講師や家庭教師のアルバイト経験があり、算数・数学・英語を中心に教えていました。 これらの科目に限らず、中学受験の経験を活かして理科・社会といった科目の対策方法や、学校別の受験対策、学校情報についてなど、幅広く記事を執筆しています。 皆さんの役に立つ、面白くてわかりやすい記事をお届けできるように頑張ります!