「湿度」ということばそのものは、毎日ニュースなどで耳にすることが多いのではないでしょうか?今日のお天気のニュースの中で、気温、天気と並んで紹介されることも多いので、聞いたことがないという方はいないでしょう。
そのように身近な存在の湿度なのに、受験勉強をする段階になると、湿度ってそもそも何なのか?ということ自体が分からなくなってしまい、気象分野の中で受験生が混乱してしまうところの代表格の単元です。
なぜそんなに身近にある湿度が難しく感じてしまうのでしょう?特に、湿度に関する計算問題を苦手とする受験生は非常に多いです。なぜなのでしょうか。本当は、基本的な知識の理解がしっかりできていれば、一見難しそうなグラフが出ていたとしても、一つひとつ条件を分解して行けば解けるのです。
今回は、受験生が苦手としがちな、湿度に関する問題、特に計算問題に対する苦手意識をどう克服するかについて解説していきます。理解が足りないな、どうしよう、と思う方はぜひ参考にしてください。
湿度のところが苦手になるのはなぜ?
実は根本的なところに、湿度の問題が苦手になる原因があるのです。それは、「湿度の意味がわかっていない」ということです。そんなのあたりまえじゃない!と思われるかもしれませんが、湿度とはそもそも何なのか、これが理解できていなければ、勘違いしたまま問題を解こうとしてしまいますし、計算問題にいたっては、どの数字を使ったらいいのかもわからなくなってしまいます。
湿度の問題を解くのに、湿度が何なのかがわかっていなければ、問題文で少しひねった表現をされたらさらに意味が分からなくなり、問題文そのものを前に何も手を出すことができなくなってしまいます。
また、湿度の問題は、算数の割合の問題ととても密接に関連しています。割合のところが苦手なら、湿度の問題も引きずられて苦手になってしまいます。
(割合)=(比べる量)÷(もとになる量)
とても基本的な算数の式ですね。湿度の問題では、この式と結びつける必要があるのです。ですから、湿度の問題に取り組む前に、割合の基本を忘れていないか、口に出して説明できるか確認してみましょう。
ダメな勉強法
さきほど書いたように、割合の意味や求め方を理解しないまま、湿度の計算問題に取り組むと、まずわけが分からなくなるでしょう。以下の授業では、湿度は割合に結びつけて説明されます。割合に対する理解を深めるには、イメージを持てるかどうかにかかっていますが、湿度のところも同様です。
湿度を求める式はもちろんありますが、式だけを丸覚えしようとしても、暗記をしなければいけない負担が増えるだけで、問題文が少し変えられると応用が利きません。これは湿度以外の分野でもいえることです。聞き方を変えられても答えられるところまでいってこそ、理解をし、「できるようになった」といえるのです。
どのように勉強すればいいのか
まず絶対に理解しなければいけないのは、ズバリ、「湿度の意味」です。
湿度(%)=(空気1㎥中の水蒸気量)÷(その気温の飽和水蒸気量)×100
湿度を求める式はこれですが、割合を求める式のところの、(比べる量)が(空気1㎥中に含まれている水蒸気量)、(もとになる量)が(その温度における飽和水蒸気量)に相当します。まずは、この式の仕組みと、湿度を求めるためにはどの数字が必要になるのかを理解しましょう。
割合や、湿度の式を見てみてください。実は、授業の率や、野球の打率と同じ考え方です。算数の水溶液の濃度の問題と同じです。湿度はパーセント(%)で表しますから、当然同じ考えかたになりますよね。そう考えると、湿度といっても、それほど難しく考える必要はない、と思えてきませんか?
例題で考えてみる
これは、巣鴨中学校の2016年度入試で出題された問題です。
グラフもありますし、問題文も長すぎはしないですが、その分数多くのヒントが凝縮されて含まれています。参考書にある例題のお手本のような問題です。湿度に関する計算問題の、受験の定番問題として、一度知識の整理の意味を込めて解いてみていただきたいと思います。
(1)(答え)83%ひつ
s量)×100
この式をそのまま活用すれば解ける問題です。気温3℃の飽和水蒸気量は、グラフを見ると6グラムであることがわかります。
5÷6×100=83.333・・・
となり、計算の答えは小数点以下第一位を四捨五入するということになっているので、83%になります。このように、計算を処理するときの条件も見落とさないように気をつけましょう。
(2)(答え)ア
飽和水蒸気量のグラフと、湿度を求める式や割合を求める式の意味を理解できていれば、難しくない問題です。
ア これが正解です。湿度の式のなかの、(その気温の飽和水蒸気量)、つまり割合でいう(もとになる量)は割り算の分母です。これが増えれば、割合の値は減るという関係がわかります。
イ 今の水蒸気量が変化しないことが前提だということがヒントになります。
ウ 酸素は関係ありません。理解が不安定だと、関係ない気体なども必要なのではないかと勘違いしてしまいます。気をつけましょう。
エ 暖房器具の運転で、水蒸気は利用しません。日常の経験でもわかりますよね。
(3)(答え)ウ
この問題も、湿度を求める式の意味を理解していれば、決して難しくありません。
ア 電気の使用、不使用は関係ありません。
イ 室内の空気を温めても、室内の水蒸気量に影響はありません。
ウ これが正解です。石油は、燃焼すると二酸化炭素と水(水蒸気)が発生します。室内の気温が上がるので、(その気温の飽和水蒸気量)が増えますが、(1㎥中の水蒸気量)も増えますので、湿度が下がりにくくなります。
エ 二酸化炭素と湿度は関係ありません。
基本となる湿度を求める式をしっかり理解し、何が当てはまるのか、それを一つひとつ見ていけば正解できます。
(4)(答え)エ
結露の説明は問題文の中にあります。その説明通りのことが発生する気温を求めれば正解できます。
気温28℃で、湿度85のときの水蒸気量を求めます。湿度を求める式を変形して考えてみましょう。
(空気1㎥中の水蒸気量)=(その気温の飽和水蒸気量)×(湿度)
となるので、気温28℃のときの飽和水蒸気量はグラフから、27グラム、85%=0.85と考えて、27×0.85=22.95となります。
グラフをもう一度見て、22.95グラムの水蒸気量が飽和水蒸気量になる気温は25℃です。
(5)(答え)エ
これは少しひねってある問題ですが、基本は変わりません。雲ができるということや、上昇した時の空気の塊の温度の変化については問題文に説明されているので、落ち着いて問題文を読んで、条件を整理してメモしながら内容を把握して取り組めば正解できる問題です。
まず、気温27℃で湿度39%の空気の中にある水蒸気量を求めます。
(空気1㎥中の水蒸気量)=(その気温の飽和水蒸気量)×(湿度)という式を使い、グラフから、気温27℃の飽和水蒸気量は26グラムなので、26×0.29=10.14
グラフより、10.14グラムの水蒸気量が飽和水蒸気量となる気温は11℃ですから、このときに結露することがわかります。現在の気温が27℃でしたから、
27-11=16
つまり、16℃下がったときに雲が生じます。空気のかたまりは100メートル上昇するごとに1℃下がるので、1600メートル上昇すると16℃下がることになります。
まとめ
問題を実際に解いてみると、問題文とグラフなどから条件やヒントをきちんと見つけ、湿度を求める一つの式を使い、ときにはそれを変形させていけば、計算自体は複雑なものでは決してありません。
湿度の問題だから、しかも計算問題だから、と敬遠して白紙答案にするのは、実はとてももったいない分野なのです。
必要なのは、湿度がそもそもどういうものなのかという理科的知識の理解と、算数の割合の関係の理解がすべてといってもいいかもしれません。この2つが理解できていれば、少々ひねった計算問題でも正解することは十分できます。
求め方を暗記するのではなく、意味を理解することがいかに大切なのかということが、湿度の問題ではよくわかります。意味も分からず式を暗記するのではなく、割合と関連させて考えること、同じ考え方であること、そういった根本的なところが理解できれば、決してこわいところではありません。
ぜひ、湿度の計算問題に苦手意識をもっているのなら、湿度と割合の基本的な理解をもう一度おさらいして、実際に問題を解いて、苦手意識を克服しましょう。まだ十分時間はありますから、あきらめずに力をアップしましょう。
ここが克服できれば、算数の割合のところも実力を上げることができます。理科と算数、特に計算問題は表裏一体です。考え方をしっかり理解したうえで、同時に実力をしっかりつけて問題に取り組んでいきましょう。相互に良い効果を生むことができますよ。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。