理科の過去問はいつからどう進める?ポイントと注意点

2学期に入り、過去問演習を本格的にスタートさせたという受験生のご家庭も多いことでしょう。単元ごとの学習を一通り終え、志望別対策がはじまる2学期から入試直前期にかけて、さらに本格的に過去問演習に取り組むことになっていきます。

皆さんは、過去問演習をおこなうときにただやみくもに解いて答え合わせをしておしまいにしていませんか?それでは大事な志望校の入試問題を無駄にしてしまっていることになってしまいます。入試過去問は、志望校が受験生に向けて発表しているメッセージです。入試問題には中学校が「こういう生徒に入学してきてほしい」という思いが込められているということを忘れてはいけません。それをまったく考えずにいくら過去問を解いてもなかなか合格点は取れないでしょう。なぜなら中学校ごとに攻略するべきポイントは異なるからです。

算数、国語の過去問については優先しているというご家庭も多いのではないでしょうか。ただし、実際の入試の配点なども総合考慮しながら、理科や社会の過去問もバランスよく演習していかなければ時間切れになったり、演習不足である文や・単元の問題に苦手意識を持ったまま入試に向かわなければいけなくなったりしてしまいます。志望校を受けるならば、万全の準備をしておきたいものですよね。

今回は、4教科ある過去問演習のなかでも、理科の過去問演習の進め方と注意点について解説します。理科は問題文を読み解く国語力、計算に持ち込んで正解する計算力、そして時事問題に関連する知識を正確に覚えておく力など、実は非常に総合的な力が必要となる教科です。そのため、理科には理科の特徴に合わせた過去問演習の進め方があるのです。その点を意識しながら過去問演習を進めていく一助にしていただきたいと思います。

過去問演習には2種類ある!

過去問演習には、学校別と単元別の2種類があります。学校別の過去問演習とは、まさに志望校・受験校の過去問を、声の教育社などが出版しているものや塾で配布される過去問題集を使用して年度ごとに解いていきます。入試本番を意識しながら、受験する予定の中学校の入試問題を時間を測って解くイメージなので、過去問演習というとまずこれを思い浮かべるでしょう。サピックスにお通いの受験生の方は夏休み前からいわゆる「電話帳」と呼ばれる過去問題集を渡されて解き始めていらっしゃるケースも多いです。

一方で、単元別の過去問演習というものがあります。これは、志望校・受験校にとどまらず、さまざまな中学校の入試問題を単元別に集めたテキストやプリント、問題集を解いていく、というものです。塾の授業でも2学期以降はいずれかの中学校の過去問を教材にして、時間を測って解かせ、解説をするという形で単元別の過去問演習をおこなっていることが多いです。

この場合、特に受験生の間で差が広がりがちな物理分野の電気、力学や、化学分野の水溶液、地学分野の気象問題や生物分野の植物、人体、動物などを重点的におこなうほか、1回の演習で4分野まんべんなく取り上げるケースもあります。ただし、目的は学校別の過去問演習とは異なり、そこで何点取れるかによって、受験定番問題になれさせて穴を埋めていくことにあります。

つまり、理科の過去問演習には2種類あり、それぞれをうまく使い分けて演習をおこなっていく必要があるのです。

学校別の過去問演習はこれからが本番

受験生、また保護者の方々から、志望校・受験校の過去問演習はいつからはじめるのが良いのかというご質問を受けることが多いです。まずは過去問演習をして意味がある状態になっていることが何よりも大切です。つまり、必要な基礎知識や原理原則を理解できており、過去問を解くための道具をしっかり身につけられているかどうかが過去問を始めるめやすになるでしょう。

おおむね10月ごろから本格的に取り組むことになることが多いです。9月は単元ごとの学習と志望校別の学習の端境期であり、なかなか時間をとって過去問演習をする時間がとれないということもあり、また、弱点補強がまだ十分でない受験生の方が多いので、むやみに早く過去問演習を始めてもあまり効果が無いばかりか、一度解いてしまうと二度と初見の入試問題として使えないので、使い方を誤らないためにも10月中頃からはじめるのがちょうどよいと言えるでしょう。

これまで理科の単元学習をしてきて実感していらっしゃると思いますが、理科は分野が4つに分かれており、近年では時事的要素のある問題も出題されます。しかも各分野には多くの単元が含まれるので、どのような受験生のレベルであっても穴がないということはまずありません。苦手な単元の学校別過去問を解くとまず解けないため、自信をなくしてしまい、志望校へのモチベーションも下がってしまいかねません。

そのため、苦手な単元があるという自覚がある場合には、まずそこを洗い出し、これまでの学習内容を振り返って、単元ごとの基礎基本問題をすらすら解けるようになるまで練習することがとても大切です。そんな時間はない!と思われるかもしれませんが、基礎基本が定着していなければ入試の現場で解く問題で同様の単元から出題された場合、まず解くことはできませんし、過去問演習をする際にも弱点単元で必ず止まってしまい、大問1つまるまる落としてしまうことにもなりかねません。焦る気持ちはよくわかるのですが、まずは弱点単元の克服を優先した方が良いでしょう。

その際には、これまで学習してきた塾のテキストや資料集を使ったり、塾でおこなった単元別の過去問演習のなかから問題をピックアップし、再度解いてできるかどうか確認することが大切です。解ければよいですが、もし同じ問題で間違えた場合には再度基礎基本の知識に戻ることが必要です。

この「戻って確認する」作業が過去問演習のための土台を作るためには最も重要な段階だと言っても過言ではありません。難しい問題は必ずどこかで見た問題を組み合わせ、少しひねって聞き方を変えている問題であることがほとんどです。そういった経験値を積むことが過去問で得点ができるための前提なので、弱点単元がある場合には面倒くさがらずに基礎基本に戻りましょう。

学校別過去問演習は何年分やるべき?

また、この時期よくあるご相談として、学校別の過去問は何年分解けばよいのか、というものがあります。理科については中学校ごとの個性が非常に強く出るので、一部の学校を除いてはやみくもに多く解く必要はありません。ここでいう一部の学校とは、ほかの中学校とは異なる独特の出題形式を守っている学校のことです。そういった問題はなるべくたくさん解いて「慣れる」ことが克服のために必要なワンステップになります。

たとえば、武蔵中学校で有名な理科の問題に「おみやげ問題」というものがあります。毎年出題されますが、ほかの問題と解答用紙に加えて「封筒」が配布されます。その封筒の中には何かしら「モノ」が入っています。たとえばネジ、磁石、椅子のローラー、発光ダイオードなど、毎年良く見つけてくるなあと思わされるようなさまざまな「モノ」が配られるのです。そして、「封筒の中身を観察してどういう使い方ができるか、どういう原理で動くのか、あるいは光るのか、それをどのように応用できるか」という、理科的な思考力を測る問題が出題されます。

ここで注意が必要なのは、単に現場で思いついたことをただ羅列して書いても正解できないということです。必ず問題文があり、「このモノの仕組みを問われているのか」「何に使えるかが問われているのか」など、問題文で聞かれていることに即して解答する必要があるのです。例年見ていると、封筒の中のモノに目をとられてしまって問題文を無視してしまい、思いつくまま書き連ねる、という生徒さんがいます。これでは問題に答えていることにならないのでいくらたくさん書いても0点ということになりかねないので注意が必要です。

こうした「おみやげ問題」は、ほかの学校ではまず出題されません。そのため、武蔵中学校を志望しているお子さんであれば必ず対策していく必要がある問題となるわけです。こういった特徴的な問題が出題される志望校を受験しようと考えていらっしゃる場合は、できるだけ遡って学校別過去問演習をする必要があるでしょう。

そのほかにも、特徴的な問題を出題する中学校はいくつもあります。麻布中学校では非常に長いリード文を読ませて各分野、各単元から様々な質問を投げかけ、最後には200字程度の記述問題が出題されて、問題文に即しながらも自分の考えをしっかり述べるように求められる問題が頻出です。数年前、どらえもんについての出題があったのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、聞かれていることは問題文に書かれている前提条件をしっかり踏まえなければ書けないような問題です。同様の長文を読んで思考を試す問題を出題する中学校としては、渋谷教育学園幕張中学校や渋谷教育学園渋谷中学校などがあります。

また、神奈川県の栄光学園中学校は、グラフや表などのデータの読み解き問題が大好きです。しかも、単にデータを読み取るだけでなく、自分でそのデータを基にして設問にしたがってグラフ化するなどとにかく「手を動かして答えを出す」問題が良く出題されるのでここもまた非常に特徴的な出題をしている学校だと言えるでしょう。

女子校で言えば、雙葉中学校では見たこともない器具を出題し、そのはたらきや、その器具を使った実験について聞く問題が良く出題されます。どこかで見たことがある器具と共通しているので、共通点を見つけることができれば各単元に落とし込んで解くことができるのですが、それに気付けるようになるためには訓練が必要になります。

ほかにも特徴的な理科の出題をする中学校はたくさんありますが、このように特徴的な、ほかの中学校ではあまり見ないような問題を出題する中学校を志望している場合には、問題の出題傾向や形式にはしっかり慣れておくことが必要です。初見で見てもまず解けない問題だからです。ただし、こういった学校はそれほど多くはないので、志望校の出題傾向については塾の先生に相談するなどして、その学校ならではの対策をするようにしていきましょう。

目安としては、第一志望校は最新のものを5年分、第二志望校なら3年分、第三志望校は2年分を目安として、時間に余裕があったり、特徴のある問題については数年分さらにさかのぼるという形が良いでしょう。ただし、偏差値の高い中学校の過去問演習をしているからほかの受験校の過去問を1問も解かないで入試に向かうということは絶対にやめましょう。第一志望校の受験前にほかの学校の受験を考えている場合は特にしっかりとその受験校の対策もしておくことが大切です。

単元ごとの過去問演習は幅広く

志望校に合わせた学校別過去問演習は、出題傾向によってさまざまなので、計画立てて何年分、という形で解いていく必要があります。一方で、単元ごとの過去問演習はもちろん入試問題を解くので慣れるため、という目的もありますが、受験定番問題を幅広く解いて入試当日に実際に解くであろう問題のレベル感を測ることと、弱点となっている単元の克服のためにおこなうというのが大きな目的だと言えるでしょう。

理科は分野、単元が多いので、同じ学校の過去問ばかり解いていても、その学校の「型」は身につけられるかもしれませんが、入試で同じ問題が出るわけではありません。また、単元についても学校によって好きな単元、そうでもない単元という学校側の好みはありますが、やはり中学校からすると入学後の理科の授業についてこられるかという観点から入試問題を作っているので、連続してある特定の分野・単元から出題していたけれどときどき全く異なる単元から出題するということも十分あり得ます。

また、これも注意が必要なのですが、いわゆる難関校の入試問題は難問ばかりがそろっていて得点源となる問題が出ないとか、反対に偏差値がそれほど高くない学校でも理科は難しいということはよくあります。つまり、学校の偏差値だけで理科の入試問題の難易度を測るのは難しいと言えます。

難関校の場合、たしかに大問で選択式から記述までさまざまな問題が出題されるケース、1問あたりが横綱級に時間がかかる問題を出題することは多いですが、そういった問題ばかり解いていると、ほかの中学校の受験を考えるときに対処できなくなってしまうことには注意が必要です。

難問・思考力型の問題を少数解くという訓練ばかりしていると、平均レベルの問題が数多く並んでいる中堅校の問題で点数が取れなくて、このままではまずい、という焦りが生じてしまうことがあります。そういった難易度の違い、出題形式の違いもふまえたうえで、学校別の過去問対策と並行して、弱点補強のための単元別過去問演習をおこなうことが必要です。

中学入試の理科の問題は、ひとつの単元に対してさまざまな角度から設問が出題されます。社会にも共通して言えることなのですが、理科の場合数値が多く出ることや条件がたくさん付くという特徴があるので、特に意識しておく必要があるでしょう。

たとえば、電気の問題と一口に言っても、豆電球の明るさについて、乾電池と豆電球をつないだときの配線図だけを見て考える問題や、配線記号を使った回路図から磁力の強さ、発生する熱量を答えるという問題などバリエーションはさまざまです。また、LEDや手回し発電機、コンデンサーをつなぐなど、さまざまな回路からの電流の流れ方、向き、大きさを考えさせるなど、作ろうと思えばいくらでも問題を作ることができる、それが理科の問題の怖さです。また、力学でもばねとはかりだけでなくてこがつながっていて挙句の果てに水に浮かんで浮力の問題まで順に答えさせていくという力学の複合問題も珍しくありません。

こういった問題は、単元別の過去問演習を通して、問題のパターンをある程度認識しておく必要があります。対策としては、志望校・受験校であるかにかかわらず、例年あまり出題傾向が変わらず、同じような水準の問題を出題する中学校の問題を集めて解いてみることが有効です。

たとえば、海城中学校、豊島岡中学校、巣鴨中学校、本郷中学校、頌栄女学院、市川中学校などは良い例です。ひとつの単元についてさまざまな角度から、基礎基本プラスアルファの問題が出題されているので、志望校の傾向と合わせて弱点補強のために受験定番問題を克服することができます。

そのことによって入試で求められる基礎力を高めることができます。入試で言う基礎力にはもちろん基礎基本の知識が前提ですが、問題の形式に対応できるかどうかも含まれます。塾で行われる単元別の過去問演習もしっかり活用して、さまざまな学校の問題を幅広く解くことも大切なので、計画立てておこないましょう。

解きっ放しはNG!解いた後のフォローこそものを言う

学校別の過去問演習をするときには、初見の問題なので、1問あたり10分程度考えても解く際のとっかかりがつかめない場合は、時間をかけすぎずに個別指導で一緒に解くか、解説を読んで解答プロセスを確認しましょう。理科は中学校によって50分100点満点のところもありますが、30分で50~60点満点という学校も少なくありません。効率よく過去問対策をするためにも、時間の使い方は非常に大切です。解説を読んでもう一度解く際には、答えが合っていればよいという考えではなく、解くプロセスこそが大切であること、特に途中式を書かせる問題の場合はなぜその式になるのか、ということまで押さえておくことが大切です。

また、過去問は入試問題なので、いわば4~5か月後に正解できれば良い問題です。そのため、今の段階ではなかなか解けない問題があるという事態に直面するでしょう。しかし、入試までの期間こそ受験生の力は非常に伸びるので、点数がなかなか解けなかったとしても失望する必要はありません。入試までに克服する問題ができた、と前向きにとらえ、入試本番で合格点が取れるように復習して、場合によっては基礎基本のテキストに戻って知識の整理や解法を確認しましょう。つまり、「解きっ放しはダメ、解いた後のフォローこそが大切」ということが肝心です。

過去問演習をするときには、完全に解けた問題、正解したけれどプロセスに不安がある問題、まぐれで正解したと思われる問題、全く歯が立たなかった問題に分けて印をつけておきましょう。〇△×といった形で分類しておくと、これから本番までに何を克服したらよいのかがパッと見て分かります。

また、完全に解けたと思った問題でも答え合わせをすると間違っていたという場合もあります。その場合に多いミスとしては計算間違いや数字の読み違いが挙げられるので、そういったミスをしないように気をつけながら次の問題を解いていくようにしましょう。もし考え方が根本的に違っていたら、それはミスではなく×です。

△の問題は、受験生の合否を分ける問題と言っても過言ではありません。そのレベルの問題をどれだけたくさん得点できるかどうかが合否を分けるのです。ですから、自分の知識のどの部分があやふやなのか、解いている途中で考え方を迷ったのか、というプロセスを書き出してみて、時間を少しおいてもう一度解いてみましょう。〇になれば良いですし、同じところで間違えたならもう一度同じプロセスを踏みます。

×の問題は、正答率が非常に低いことが多く、誰もが解けない問題である可能性が高いので、まずは△の問題を優先して解くことをおすすめします。これが克服できると学校別過去問演習の点数は伸びますし、プラスして単元別過去問演習の効果と相まって、志望校合格への距離が縮まります。

このような△、×の問題については、自分が解けなければいけない問題なのかどうかの見極めも非常に大切です。これは保護者の方でも見分けがつきにくいので、正答率をまずは押さえたうえで、解くべき問題なのか時間を掛けなくて良い問題なのかを塾の理科の先生や個別指導の先生に指導を仰ぎましょう。

また、記述問題も近年は非常に増えているのですが、過去問題集の記述の解答は必ずしも正しいとは限らない点に注意が必要ですし、模範解答通りに解けることはまずありません。異なる解法で解いてそれで正しいのかどうか、部分点としてはどこが取れてどこが取れていないのかは一見してはなかなかわかりません。やはり理科の先生に添削をお願いし、正解するためのポイントについて指摘を受けることが克服への近道です。

過去問演習には学校別と単元別がありますが、志望校の過去問演習を中心にして、単元別の過去問をうまく組み合わせて弱点補強も図り、入試の基礎をしっかり固めていきましょう。

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