【中学受験】思考力って特別なものなの?中学受験で求められる力とは その3

前回の記事では、中学受験でも求められる「思考力」について、どのようなステップを踏んでいくとみについてくるものなのか分析し、4ステップのなかのステップ1、2についてご紹介しました。文章を正確に読み取り、内容を把握する力、文章中にある条件やデータを正確に読み取る、といった力は、いわば入試問題を解くうえで基礎基本ともいえる力です。

「思考力」というと、何か特別な力で、養成するのにすごく時間がかかるのではないか、と思われるかもしれませんが、4つのステップを着実に踏んでいけば、何か特別なことをしなくても身についていくものです。もちろん、受験生一人ひとりの取り組み方によって、どのレベルまで到達できるのか、ということには違いがあることは仕方ないことですが、思考力とはいわば1問1問を着実に解いていく基本姿勢といっても過言ではありません。

ですから、特別な力と考えるよりも、コツコツと積み上げていって初めて身につくものであり、中学入試までに完全に出来上がっていなければいけないというものではないということを意識してください。中学受験で必要とされる思考力とは、今後のお子さんの将来に向けて必要となる力のほんの一部分です。ただし、そのステップを繰り返していくことで思考力が成長していき、そのときどきに合わせて高い能力になっていくと考えるのが良いでしょう。

中学入試では、たしかに思考力や発想力が重視される傾向にあります。ですが、ピントのずれた学習法でがむしゃらに問題を大量に解いていたとしても、そういった力を身につけることはできません。ステップを踏みながらていねいに身につけていくことが何よりも重要です。

今回は、中学入試で重視される思考力を身につけるためのステップ3、4について解説します。思考力の中心ともいえる点で、塾でも重要視されますが、ステップ1,2の基本があってこそ身につくものなので、その点を意識して参考にしてくださいね。

思考力養成には基礎基本をまずマスター

前回、思考力のステップ1、2として、文章を読んでその内容をしっかり把握すること、そのために正確な読解力を身につけることの重要性、そして問題文に含まれるデータや条件をしっかり読み解き、一つひとつ対処できるようにすることが大切だということをお伝えしました。

これらのステップ1、2はいわば思考力養成のための基礎基本であり、これができていないと土台ができていないため、いくら試行錯誤しようとしても手段がなく、問題を解くことはできません。当たり前のことに思われるかもしれませんが、これができていないと思考力を身につけるどころではありません。今後の問題演習をスムーズにおこなうためにも、基礎基本をまずマスターすることを意識してください。

思考力ステップ3:問題に合った的確な手段で解いていく

ステップ1、2では、問題文を正確に読んで内容を把握し、条件やデータをすばやく読み取ることができるようになったら、次のステップ3は、それぞれの問題に合った的確な手段で実際に解いていく、という段階です。これは解答に直結する、という意味で「問題解決能力」と言い換えても良いでしょう。

ステップ1,2のところで基礎知識の重要性についてお伝えしましたが、それらの基礎知識、手順を前提として、目の前に置かれた問題を試行錯誤しながら解いていく、というのがこのステップ3です。中学受験における「思考力」の中心とも言えるでしょう。特に算数や理科など、条件を1問ごとに付け加えられていくような問題では、その場でその条件を使いながら解き進む必要があるので、イメージしやすいかもしれません。

塾では試行錯誤の時間がとれない

ただし、塾での受験勉強では、カリキュラム消化のため、解法パターンの暗記に走りすぎるところがあるため、時間をかけて試行錯誤するという機会が減っているのが現状です。それに伴い、現場で試行錯誤するよりも解法パターンを暗記し、力技で問題を解こうとする受験生が増えてしまっているのが実情です。

しかし、それは近年の中学入試問題とはかけ離れた学習法です。中学入試の問題では、一見みたことのない問題について、その場で試行錯誤して考えさせる、というものが主流です。もちろん、基礎知識は必要ですし、解法パターンが理解できていないと、解答のとっかかりさえわからないのですが、それに頼りすぎてみたことのない問題だと判断すると、解くのをやめてしまう受験生は少なくありません。それでは思考力は身につきません。

塾での学習はカリキュラムに沿って進められており、それを基本にして受験勉強を進めていくことは大切ですが、試行錯誤する時間をとることはとても大切です。自分の身についている基礎基本をどう使いこなせるか、それを確認するためにも試行錯誤する時間を大切にして、問題に飛びついてすぐわからない、と投げ出すようなことはしないようにしましょう。また、解法が悪いわけではありません。ただ丸暗記するのではなく、なぜそうなるのか、それをどのように使えばいいのか、という意識を持って試行錯誤することが大切です。

初見の問題を「見たことがある問題」に近づけてくれる力

見たことのないような問題であっても、基礎知識や解法を総動員すると、「どこかで見たことがある問題」につながる瞬間が必ずあります。そのつながりを見つける力こそ中学入試で求められる「思考力」だと言っても過言ではありません。いくら知識を詰め込んでも、いくら問題演習をひたすらおこなっても、まずは問題を俯瞰してみて、的確な方法で解いていくというステップを踏まなくては思考力は身につきませんし、近年の入試問題には太刀打ちできません。ぜひ、そのところを理解したうえでステップ1、2の次にステップ3を身につけるよう、時間をかけて試行錯誤することを必ずおこないましょう。

思考力ステップ4:新しい解法も考えてみる

これは、余裕があったら、で構いません。特に算数では、「より速く、楽に解くにはどうしたらよいか」という視点が欠かせません。ステップ3までマスターできれば難関校受験にも対応できますが、最難関校を目指す受験生の皆さんには、ぜひこのステップ4にチャレンジしていただきたいところです。

算数では「こういう問題はこういう解法で解く」という学習をしますよね。塾でも、解法の解説に時間が割かれますし、実際にその解法で問題を解くことを繰り返すでしょう。ですが、本当にその解法は解きやすいものなのでしょうか?

もちろん、広く用いられている解法ですから、ある種の問題について、その解法をまずはしっかり身につけることは大切ですし、必要です。ですが、その解法では解きにくいな、と思ったとき、それはステップ4に進むためのチャンスです。

解法は1つだけとは限りません。もしある解法を見直してみて、納得がいかないときは、自分が持っている基礎基本を使ってみて、「こういう方法で解いたらどうなるかな」「この問題なら線分図より面積図のほうがいいかも」などと、試行錯誤してほかの解法を考えてみることも思考力の養成に非常に役立ちます

ただし、これは時間に余裕がないとできないことですし、また、非常に根気のいるステップです。習った解法で解きやすいのであれば無理に新しい解法にチャレンジする必要はありません。ただし、塾の先生によっては、基本の解法を理解していることを前提に、「ここにこういう補助線を引くとどうなるか」といった応用的な考え方を示唆してくれることがあります。そういったときは、ぜひ積極的に違う考え方はできないか、ということを試行錯誤してみましょう。

これができるためには、基礎基本の読解力、データや条件の読み取り、基本の解法のマスター、試行錯誤する姿勢といったステップ1、2、3を踏んでいることが前提なので、その点はぜひ意識してくださいね。

まとめ~「思考力」は特別なものではない~

学習指導要領の変更や、大学入試改革において非常に重要だとされている「思考力」ですが、これは何も特別なものではありません。しかし、「思考力」がどういうものかがわからないままただことばに振り回されてしまうと、まず身につけるべき土台となる基礎基本をおろそかにし、ひたすら問題演習を大量におこなって「思考力」を身につけたい、と考えがちです。ですが、それは間違いです。

一足飛びに思考力だけを身につける方法は正直言ってありません。前回、今回の記事でご紹介したように、思考力はいくつもの力が含まれた総合力ともいえる力です。それを4つのステップに分けてご紹介してきましたが、基礎→試行錯誤→発見、という手順を踏んでいかないと身につかない力なのです。

なかでももっとも時間をかけるべきは、「基礎」、つまりステップ1、2です。問題文を正確に読み取ることができなければ、文章に何が書いてあるのか把握できず、結局設問の意図もわかりません。また、問題文の中にあるデータや条件を正確に読み取ることができない、あるいは読み落としをしてしまうようでは、重大なポイントを見落として問題に向かうため、解けないですし、無理やり解いたとしても正解することはまずできません。

基礎基本を自由に使いこなせることができるようになってはじめて試行錯誤という段階に入ることができるので、まずは基礎知識や解法を徹底的に見につけ、自分のことばで説明できるようにしましょう。そのステップをおろそかにしてしまうと、せっかく時間をかけても解答の姿は見えてきません。

つまり、思考力とは、基礎基本をしっかり身につけたうえで、それを自由自在に使いこなし、はじめて見た問題であっても試行錯誤して自分の見たことのある問題に引き付け、論理的に段階を踏んで解答していく力、とまとめることができるでしょう。これは一朝一夕に身につけられる力ではありません。

思考力は特別な力ではないことを意識し、まずは基礎基本の徹底こそが大切だということを忘れないようにして学習を進めてください。問題1問をとくごとに、「これで良かったかな」「この知識は正しかったかな」と振り返りながら学習を進めていくと、試行錯誤することにもつながるので、思考力を身につけることができます。時間はある程度かかりますが、ぜひやってみてください。中学受験を攻略するカギになりますよ。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。