【中学受験】2月は新学年のスタート!学年はじめにやっておきたいこととメンタル面サポート

4月になれば、小学校の学年がひとつ上がりますね。しかし、中学受験の世界は少し違います。中学受験を目指すお子さんの多くは、小学校3年生の2月から塾に通い始めます。そこからも分かるように、中学受験における「新学年」は、毎年2月に始まるのです。中学入試が1月、2月に行われることからもわかりますね。

たとえば、3年生の2月から塾に入ったものの、どのように勉強をすすめていったらよいのか、まだペースがつかめない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、5年生は、中学受験で一番大変な、学習する内容も多く深く、ぐんと難しくなるので、備えるために前の学年の学習内容をしっかり理解しておく復習も重要になります。

6年生なら、受験学年になりますので、これまでに学習した内容をふまえて総合問題の演習が学習の中心になります。そこで必要なのは、5年生までに学んだ知識や解法です。ですから、それらがしっかり身についているかどうか確認することが必要になるでしょう。

中学受験では、学年が上がるごとに学習内容が難しくなり、また学習する量もぐっと増えます。つまり、学習の質・量ともに学年ごとにどんどん上がっていくので、カリキュラムをこなすことに必死にならざるを得ないところはたしかにあります。しかし、立ち止まって理解できていないところを洗い出し、しっかり理解するという手間を惜しんでは、土台がないのにお城を建てるのと同じで、応用問題を解くことは難しくなってしまいます。

積み残しや苦手分野があるな、と自覚できていればいいですが、学習量が多すぎてどこができていてどこができていないのかわからない、ということも少なくありません。積み残しや苦手分野を効率的に解消していくことがとくに学年はじめには求められるのです。

今回は、スムーズに新学年をスタートするために、必要となってくる学習について、教科ごとの注意点も含めて解説します。ぜひ参考にしてください。

基本中の基本は計算練習と語彙力強化

2021年度のNHK大河ドラマは、新しい1万円札の顔になる「渋沢栄一」(しぶさわえいいち)を主人公としています。渋沢栄一は、現在の埼玉県深谷市の藍(あい:青い染料)農家に生まれ、原料となる藍の買い付けのためにそろばんを持って近隣県を回っていました。渋沢栄一は、その後明治維新の波にのり、実に500もの会社の設立に携わり、一橋大学の第3代総長として教育分野でも活躍した「経済の巨人」です。その原点こそが「読み書きそろばん」、というわけです。

中学受験でも読み書きそろばん、つまり「語彙力」と「計算力」は学習の基礎中の基礎です。塾でも毎週漢字の読み書き、ことばの勉強、計算練習を行いますよね。基本中の基本なら簡単にできてもよさそうなものですが、実はどちらもあまり得意でないというお子さんが少なくないのです。勉強をこなしてはいるものの、小テストなどで確認してみると間違いだらけ、ということはよく見られます。

塾の授業では、最初の15分程度でそうした漢字テストや計算テストを行いますが、基本的には範囲を前の週に指定されて、その部分を自分で学習し、塾のテストで確認する、という流れですよね。したがって、自宅での語彙力、計算力養成のための基礎練習が十分にできていないと、当然結果もついてこないのです。

今からでも遅くはないので、新学年になるにあたって、少なくとも前の学年で学習した漢字やことば、計算についてはできないものをつぶしておくことが非常に大切です。それができていれば、次の学年の学習が非常にスムーズになりますし、理解度も非常に深まります。

計算や漢字、ことばについては、あとで教科ごとの注意点として詳しく解説しますが、ここではざっと気を付けておきたいところをチェックしておきましょう。

計算の学習においては、ある程度得意だというお子さんの場合は、塾の計算・一行問題などのテキストがあるでしょうから、そうしたテキストの間違えた問題をピックアップして練習を積みましょう。もし十分できているようなら、次の学年の計算問題集で先取りして練習を積むのもおすすめです。逆に、計算が苦手、というお子さんなら、これまでに習った範囲の中から、特に基本的な、易しめの計算問題を、繰り返し練習することがポイントです。

語彙力、つまり漢字やことばについては、テキストの文章をどれだけ素早く、正確に読めるかどうかをチェックしておくと、スピード、語彙力を両方把握できるのでおすすめです。学年が下の場合、テキストの文章を読むスピードが遅いお子さんが少なくありません。しかし、「読むスピード」は、設問を正確に解いていく際にも非常に重要です。そこで、塾のテキストで学習した文章を「音読」することをおすすめします。

読むスピードを上げることができると、国語の授業を受けるときも余裕を持つことができます。ある程度まとまった字数の文章を音読することによって、目と耳から漢字やことばの知識を確認でき、文脈の感覚を自然につかむことができるようになります。

読むスピードも上げていきたいところですが、もしあまり音読がうまくいかないようでしたら、段落ごとに区切って読んでみましょう。お子さんはあまりに字数が多いとそれだけで読みたくないという感覚に陥ってしまいます。しかし、段落ごとなら一回に読む量は減りますから、スムーズに取り組むことができます。最初はゆっくりでも構いません。徐々にスピードを上げられるようにしていきましょう。

もし、読めない漢字、意味の分からないことばがでてきたら、その場で辞書などで調べて理解しておき、印をつけておく、あるいはノートに書き出しておいてあとでチェックできるようにするのもおすすめです。

どちらもコツコツ続けることが大切なので、一気にやろうとせず、1日の中で時間を決めて継続していくようにしましょう。

今後の学習内容を簡単に把握しておく

次の学年の塾のテキストがお手元に来たら、どのようなことを学習するのか、項目と内容を簡単に親子で確認するのもおすすめです。完全な「予習」までしている余裕はありませんから、あくまで確認で構いません。どのようなカリキュラムになっているのか、どのあたりが重たそうか、ということを肌感覚でつかんでおくことが大切です。

実際に内容をしっかり学習するのは、塾の授業で行うことになりますから、「こういうことを勉強するんだよ」「このあたりは難しくなりそうだから時間をかけて勉強しよう」といったように、次の学年の学習を「予告」してあげるのがポイントです。これは、お子さんが自分自身でするには少々骨が折れるので、保護者の方がかいつまんで説明してあげて、次の学年の学習が楽しみ、とお子さんがモチベーションを上げて学習に取り組めるようにすることが目標だと思ってください。せっかく先取りするのだからあれもこれも覚えてしまいなさい、と言いたくなるかもしれませんが、詰め込み過ぎはパンクするので避けるようにしましょう。

塾によっては「復習主義」を学習の中心としており、その日にならないとテキストをもらえないケースもあります。サピックスはその代表ですね。ついていけているようなら良いですが、新しい知識、解法がなだれ込んでくるので、それまで学習したことが飛んでしまうことも少なくないのが現状です。

このように、前もって何を学習するのか、テキストを見て確認できない場合は、ホームページなどで学習単元を確認し、市販の易しめの薄い問題集や参考書を1冊手元に置き、1~2か月先に何を学習するのか、また次の学年での学習の中心となる単元はどこで、いつ頃学習するのかを簡単に親子で確認しておくと良いでしょう。

たとえ軽くであっても、事前に学習する単元について予備知識があれば、スムーズに学習を進める助けになるものです。あくまで予告、と考えて、やり過ぎないようにしましょう。次の学年の学習の土台をつくる一環だということがポイントです。

5年生は中学受験の核。できていることとできないことをしっかり把握しよう

中学受験の勉強で一番大変なのはやはり受験学年の6年生、と思われる方も多いでしょうが、実は受験対策を行う中で一番大変なのはずばり「5年生の学習」です。4年生は準備期間、5年生で本格化、6年生は総合問題、それが中学受験の王道スタイルです。つまり、5年生で学習する内容が中学受験勉強の「核」になるのです。

5年生になると、非常に多くの単元を一気に進めることになります。4年生で学習した単元も一部出てきますが、その内容は4年生とは比べ物にならないほど深く難しくなっています。よく塾では「らせん状に繰り返し学習するから大丈夫ですよ」と言われることがあるのですが、これは、決して同じことをもう一度復習してくれる、という意味ではありません。単元は出てきますが、格段に内容は難しくなっているので、あくまで土台をしっかり身につけてくださいね、ということなのです。「繰り返し勉強するんだったらなんとなくわかっていればいい」という気持ちで学習してしまうと、5年生になったときに必ずつまずいてしまうので注意しましょう。

そのためには、休日などを使って、前の学年で苦手意識のある単元を再度例題などからおさらいすることが有効です。できればゴールデンウィークまでに前の学年の苦手分野、穴になっている分野のチェックができるといいですね。

5年生の学習は、スピードも速く、出てくる知識や解法もけた違いに多いです。だからこそ中学受験で一番大変な、苦しい時期だと言えるでしょう。毎週違うことを学習するカリキュラムの中では、どうしても積み残しや苦手分野が出てきてしまいますし、それがたまって山のようになってしまい、どうクリア―したらいいのか途方に暮れることも必ず出てきます。それを解決していかないと、6年生の実戦学習、過去問演習に入ることができないので、焦る気持ちも出てきてしまうものです。

うまく回るお子さんのほうが少ないくらいなので、難しい内容を学習するのは当たり前、親子で悩むのも当然、できなくて苦しいなら、何度も繰り返して学習すれば必ず克服できる、と親子で腹をくくっておくことが大切です。

5年生のはじめの時期に一番注意しなければならないことは、お子さんが「できない、もうだめだ」とモチベーションを下げてしまったり、苦手意識のあるところに対する学習に後ろ向きになってやろうとしなくなってしまったりすることです。保護者の方が焦ってしまい、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、これはやったの、どうなの、と詰問してしまうと、お子さんのやる気は一機に下がってしまいます。

どうしても大人の目から見ると「できていないところ」が目に付いてしまい、そこをどうにかしたい、そのためにプレッシャーをかけてしまいがちになります。その気持ちは当然出てくるものですが、できないことはできないこととして「これから克服すればいい場所」とチェックしておき、むしろ「できているところ」に着目して、「ここできているね、すごいね」「よく頑張っているね」というように前向きにお子さんを励まして、「じゃあ、ここももう少し頑張ってみるといいんじゃない?」と、苦手分野にうまく誘導する、というように冷静になって対処することが大切になります。

実際に勉強をするのはお子さんですから、お子さんが苦手分野を冷静に見極めつつ、できるところを伸ばし、できないところに取り組む精神的余裕を持たせてあげることが、少し時間はかかりますが結果として定着率が上がるものです。

【教科別】新学年のチェックポイント

中学受験の勉強は、学年が上がるごとに内容が深く、難しくなることはご紹介した通りです。また、量も非常に増えてくるので、毎週のカリキュラムを着実にマスターしていくことがだんだん重荷になってくることもあります。現在成績が伸び悩んでいる場合、そうした学年が上がったことによって難度が上がってしまうとますます学習が困難に感じてしまうことになってしまうでしょう。

そうならないためにも、新学年がはじまって早いうちに学習のやり方を見直し、苦手分野を克服していくことが大切です。苦手意識をなくし、穴をふさいでいくことこそ成績アップのポイントです。では、教科ごとの学習でチェックしておきたい点を見ていきましょう。

算数:基本的な計算で間違えていないかチェック

中学受験で重要視される教科と言えば、やはり「算数」ですよね。中学受験の算数は受験算数とも呼ばれ、小学校では学習しないような特殊算や、複雑な図形問題などが多く出題されるという特徴があり、また、入試本番でも算数で得点差がついてしまうことも少なくないという点で、身構えてしまうという方も多いです。入試の結果を見てみると、合格者平均点と受験者平均点で大きな差がついていることも少なくないので、算数の苦手意識は払しょくしたいところです。そこで、学年はじめに確認しておきたいのは、4年生で出てきた苦手分野、単元の克服です。

算数は基本的に積み上げ方式の学習スタイルです。前に学習した内容を理解していることを前提に、次の単元の学習をするので、各単元の学習部分をしっかり理解するためには、前に習った内容の理解度が大きく影響してくるのです。土台ができていないことが原因で、次の単元が理解できない、というお子さんも少なくありません。

たとえば、「比」の基本がわかっていないと、「図形の相似」は理解できませんよね。ほかの教科も積み上げ方式の部分はありますが、単元ごとであることが多いです。一方で算数は、それまでに学習してきたことすべてが、次の学習の土台になる点が特徴であり、また克服が難しい教科だと言えます。そのため、学年と学年の移行時期でもある新学年のはじめに、前の学年の内容をしっかり復習し、苦手単元を潰しておくことはとても大切です。

すべての単元に共通して重要になってくるのが、「計算力」です。算数は、途中式を書きながら問題を解いていきますが、最終的には計算に持ち込んで、正確な計算力で正解を導き出す教科です。いくら考え方が合っていても、解答が間違っていれば、0点になってしまうことも少なくありません。ですから、計算でつまずいてしまうと、いくら単元ごとの解法の理解ができていたとしても、正解に結びつかず、勉強しているのに成績が思うように上がらない、という事態に陥ってしまうのです。

海城中学校の入試問題の算数は、途中式を書かず、解答だけを答案用紙に書いていく形です。入試広報の先生によると、解法が理解できているのは当然のこととして、計算に持ち込んで解ききる力を見たいから、そうした形式にしているということです。つまり、中学校が求めているのも高度な計算力だと言えるでしょう。

途中式を書く形式の中学校であっても、途中式が合っていれば部分点はもらえますが、計算で失敗して解答が違えば、大きなマイナスになってしまいます。どこの中学校を志望校にするにしても、計算力は土台中の土台だと考える必要があります。

算数では、流れ、つまり解法の正確な理解と、スピードがものを言います。解きはじめから解き終わりまで、途中でつまずくことなく最後まで一気に流れていけるかどうか、が非常に重要だと言えるでしょう。計算力が十分でないと、途中式の段階で間違えてしまい、解法は合っているはずなのに合わない、というように流れが止まってしまうことになってしまいます。そうすると、それ以降手が止まってしまい、解けなくなってくることも多いのです。だからこそ、正確で速い計算力は算数を攻略するための「キモ」になるわけです。

新5年生の場合は、できるだけ早いうちに、小数のわり算、2ケタ以上のかけ算・わり算、分母が違う分数の計算について良く復習し、自由自在にできるようにマスターしておくことが重要です。これができると、今後の算数の学習が非常胃にスムーズになります。

計算力は一朝一夕で身につけられるものではありません。継続的な訓練が必要です。上位生であっても、必ず計算練習は行っています。日々の基本練習失くして計算力はつかないということを意識することが大切です。1日の学習スケジュールの中に、その回のテキストの計算問題を練習する時間を必ず入れ、毎日欠かすことなく計算問題を解き、計算に対する苦手意識をなくしていきましょう。

お子さんは、できるようになることが増えるとがぜんやる気になります。計算問題を解いて間違えてしまうこともあるでしょうが、どこで間違ったのか、どう工夫すれば正解できるのか、ということをしっかり自分の頭で考えて解き進めることが非常に大切です。できない問題をあげつらうのではなく、できた問題を褒め、できなかった問題は次の日にもう一度解いてみるなど、モチベーションを上げて続けていきましょう。

国語:1週間のスケジュール配分が肝心

国語は中学入試でも配点が高い教科です。また、日本語を自由自在に操る教科でもあります。日本語ですからそれほど苦手意識を感じないのでは、と思われがちですが、実は国語の勉強方法がよく分からないという受験生は非常に多いです。また、「国語だから何とかなる」と後回しにしてしまい、気がついたら成績がどうしようもないところまで下がってしまっていたということもよくあるのです。

国語は、4教科すべてに必要な、中学受験の土台です。そのことに気がつかないでいると、国語だけでなく、ほかの3教科の成績も下がっていってしまいます。なぜなら、どの教科でも問題文を読みますが、そこに書かれていることを正確に理解できていないと、どれだけ知識を持っていても、解法を覚えていても、求められている解答を出すことができないからです。問題文の正確な読みこそが受験勉強の基礎ですが、そこで重要になるのが高い「国語力」です。

国語力とはどういう力でしょうか。国語力とは、読み書きの力、つまり「読解力」と「記述力」そしてその土台になる「語彙力」を総合した力です。中学入試の国語の中心は文章読解問題ですが、長い文章を読み、設問を読み、それぞれに的確に答えていかなければなりません。そこでは、国語力が総合的に問われているのです。正確に読むこと、正確に聞かれていることを把握すること、ことばの意味を知っていること、まとめて書くこと、そういったことが国語の読解問題には含まれているのです。

語彙力については、新学年に上がった今こそつけるべき力です。読解力と記述力を伸ばすためには、ことばの知識がなければできません。語彙力をつけるためには、ただ漢字を書くだけでなくどのような文脈でその漢字を使うのかを理解すること、ことばの意味が分からなければ調べておくと言った地道な努力が必要です。漢字だけを書くのではなく、用例も含めて書き、その文の意味を理解できるようにしておきましょう。

文章読解問題では、読解力を駆使して読み進むことが必要です。正確に、速く文章を読み解くことができないと、制限時間の中で設問に答えきることは非常に難しくなります。読解が苦手、という方は、音読をしてみましょう。音読してみると、自分が文章をどこで切って読んでいるのかがわかります。文の途中で切ってしまっている場合、文脈を理解せずに読んでいる可能性があるので注意が必要です。

読解力をつけるためにはたくさん本を読まなければ、と思われるでしょう。もちろん、時間があれば読書はぜひしていただきたいですが、子ども向けのファンタジーものをいくら読んでも、中学受験の国語の読解力は尽きません。それよりも、1冊の本をじっくり読む、あるいはテキストの文章を丁寧に読むことの方が有効です。

もし全文読むと文章に何が書いてあったのかわからなくなってしまう、という場合は、段落ごとに音読していきましょう。そして、その段落の中で重要な文はどれか、何が書いてあったかを確認します。それを繰り返して最後まで読んでいくのです。これを繰り返していくと、文章全体の構造が分かり、どこに何が書いてあるのかをつかむことができるので、だんだん読む量を増やしていけば、文章全体を正確に速く読むことができるようになってきます。

記述力についても、一朝一夕に身につくものではありません。記述に苦手意識があるなら、まずは漢字の用例を書き下すことからはじめましょう。また、いきなり書こうとしても書けるものではありません。まずは記述の設問で聴かれていることは何かをしっかりつかむことが大切です。答えるべきことが分かったら、そのことについて描いている部分を本文中に戻って見つけます。ここで大切なのは、設問に合わせてどの順番で何を書くのかという「構成」の時間をとることです。

構成がないと、意味の分からない文章が出来上がってしまうので、何を、どの順番で書くかを箇条書きで書き出してみましょう。それに該当する部分をつなげてみて、内容が通っているか、設問に対応しているかを確認していきます。最後の文末処理も大切です。理由を聞かれているのか、どのようなことなのかを聞かれているのかによって、「~から。」「~こと。」など、文末は変わってきます。記述問題では書くべき要素が決まっているのですが、文末処理も減点対象のひとつです。注意してくださいね。

記述力が完成するのは6年生になってから、というお子さんは非常に多いですから、焦らないことが大切です。まずは語彙の問題で落とさないこと、選択肢の問題の正答率を上げることが成績アップの秘訣です。その先に自分で表現するという記述問題がある、と思ってください。選択肢問題の正答率が良くないのに記述問題の成績がいい、というお子さんはまずいません。

国語の学習自体は、難易度の違いはありますが、学年ごとに大きく内容が異なるということはありません。大切なのは、継続して国語力をつけるための訓練を繰り返すことです。国語も語学のひとつですから、英語の勉強を思い出すと分かるかもしれません。段階を経て、少しずつ解ける問題が増えていきますよね。そのためにはコツコツ毎日国語の文章に触れることが大切です。間違っても、その週の宿題を直前にやる、というだけの勉強法はとらないでください。毎日少しずつ文章に触れる時間を取り、設問をまじめに解く、それが国語の攻略法です。

どうしても算数、そして知識が膨大になりがちな理科、社会をやらなければならないので国語は後回し、下手をしたら宿題だけやる、というご家庭も少なくありませんが、地道に国語の勉強を継続しなければ、いずれほかの教科の成績に影響が出てきます。そのため、1週間の学習スケジュールの中に、国語の時間を毎日どこかに取り入れることをおすすめします。

漢字やことばなどの語彙力アップの時間、文章を読む時間、記述の時間、といったように細切れにしても良いですね。毎日、着実に国語に触れ続けることができてはじめて成績も上がります。日本語だから何とかなる、という気持ちは禁物です。日本語だからこそ中学受験で要求されることは高度で深いのです。

社会:新しく学ぶことの先取りも重要

社会は、どちらかというと積み上げ型の学習が必要になる教科です。4年生から5年生の前半は地理を学習し、5年生の後半は歴史、6年生の前半で公民、というのがオーソドックスな学習カリキュラムです。塾によっては6年生になる前に公民を終わらせるところもありますが、知識を定着させるためにも上記のカリキュラムであることが多いです。

そして、地理、歴史、公民、それぞれの単元を毎週のカリキュラムで学習していきます。入試問題では分野横断型の融合問題も出てきますが、基本的には地理は地理、歴史は歴史といったように、身につけるべき知識は単元ごとと言ってよいでしょう。だからこそ積み上げが意味を持つのです。

地理と一口に言っても、4年生では日本全体の地理的特徴や各地方の特徴、地形、農作物などの地理の基本に触れ、本格的に学ぶのは5年生になってからです。5年生になると、農産物の産地や栽培方法の違い、それと地方の特徴を組み合わせた内容などを学んでいきます。工業などについてもグラフやデータの読み取りなど、より詳しい内容を学んでいきます。地理分野の各単元の知識を整理していき、新しい知識を積み上げていきます。

5年生の2学期からは歴史を、6年生の1学期は公民を学びますが、学習する時間に比べて習う内容は膨大です。そこで詰め込み式に丸暗記に走ってしまう受験生が多いのですが、各時代の歴史の特徴を政治、経済、文化といった視点から学び、覚え、理解し、公民なら政治、経済、国際関係、社会保障といった少し抽象的な内容を学習していくことになります。

そのため、5年生から6年生の1学期までの社会の学習は、学ぶこと、覚えることが非常に多く、毎回違うことを学習するので、宿題をしたらその週に学習したことを振り返ることに時間をかけることができなくなりがちです。春休み、夏休みなど、時間があるときに、苦手となっているところはしっかり押さえるようにし、毎週の学習に集中することが大切です。

また、新しく学ぶことを前の週にざっと見ておくこともおすすめです。いわゆる先取りをするというよりも、授業で習う知識がまったくちんぷんかんぷんにならないように、ざっとテキストを読んでおき、その内容を授業で深め、宿題で仕上げる、それを毎週続けていくことと理解が深まり、記憶が定着しやすくなります。

先取りなんてしておく余裕はない、と思われるかもしれませんが、テキストを一読して、イメージを持っておくだけで十分です。授業ではじめて聞くより、前知識があったほうが理解しやすいからです。完璧にする必要はまったくないので、次の週の理解を深めるために、ちょっと見ておく、その時間が大切です。

6年生からは公民の学習がはじまりますが、公民は非常に苦手とする受験生の多い分野です。憲法、政治の仕組み、国会、選挙、内閣、裁判所、税金、保険制度、高齢社会、社会保障、国際機関、国際紛争、といったように出てくる内容も多岐にわたるだけでなく、内容がかなり抽象的です。そして、時事的な内容も多いですが、ほかの教科との兼ね合いもあり学習時間がとれないということが多いです。

公民は抽象的な内容が多いので、大人が解説してあげると理解が深まります。例えば、消費税についてなら、一緒に買い物に行って消費税というのはどういうときに支払っているのか、その仕組みが間接税であることなどを親子で確認するのも良いですね。今年は衆議院選挙がありますが、お子さんはまだ選挙権がありませんが、一緒に投票所に行ってみる、政党名や国会議員がなにをするのか、衆議院と参議院の違いなどについて一緒に整理してみると、理解が進みます。

時事問題については、その年、あるいは前の年に起こったことが出題されることが多いですが、毎日のニュースをテレビや新聞で一緒に読み、世の中でどのようなことが起こっているのか、その原因はどこにあるのか、課題を解決するためにはどうしたらいいと思うか、ということを話し合うのがおすすめです。

お子さんだけではなかなか理解できないことも多い「大人の世界」でもあるので、親子で知りたいという気持ちを持ち、好奇心を持って考えてみる時間を取ってみましょう。時事問題は6年生からではなく、4年生から十分理解していくことができますから、ぜひ早いうちから世の中の動きに敏感になり、知りたいというお子さんの知的好奇心を刺激してあげましょう。

理科:前の学年でできた苦手単元を克服するのがポイント

理科は、各単元ごとに内容が大きく異なる、単元型学習の典型的な教科です。単元の中では積み上げ型の部分もあるので、そういう側面もあることは知っておきましょう。たとえば、生物では植物のつくりとはたらき、物理ではてこと力のつり合い、化学ではものの溶け方、地学では天体の動き、といったように、4分野の中の各単元で学習する内容は変わってきます。

力のつり合いを勉強する際には、植物のつくりとはたらきを知らなくても学習できますよね。もし週によって塾を休んでしまうことがあったとしても、次の週の授業にあまり影響しないことも少なくありません。もちろん休んだ分の単元の勉強は補強しておかなければいけませんが、単元ごとに学習していくので、ある意味学習しやすい教科であるのが理科の大きな特徴です。算数や社会とはだいぶ違いますね。

一方、理科は単元によって得意・不得意がはっきり分かれる教科でもあります。全体を見るとあそこもここも抜けている、と思われがちですが、実は苦手意識がある単元、知識が十分でない単元は意外と決まっているものです。焦らずに、どこが苦手なのかを書き出してチェックしてみましょう。そのうえで、そこにフォーカスして学習していけば、穴をふさいでいきやすいのが理科です。

理科は知識と同時に計算問題も出てくるので、算数的要素が関わってきます化学の中和反応の計算などは典型例ですね。この中和反応の計算は苦手とする受験生が多いところですが、解法と知識をしっかり押さえておき、問題演習を繰り返していけば克服できます。前の学年のテキストにある単元の基礎が取り上げられているケースも多いので、理科の学習をする際には前の学年のテキストも臨機応変に確認するようにしましょう。

また、資料集を参考にしながら学習を進めることも大切です。苦手なところがはっきりしている教科なので、苦手克服を優先していくことをおすすめします。

模試やテストの見直しは重要!効率よく苦手単元をつぶしていこう

学年が進むにつれて、また日々の学習を続ける中では、どうしても積み残しや苦手単元ができてくるものです。これは受験生全員が直面することなので、嘆くよりも積極的につぶしていくことを考える方が建設的です。では、効率よく積み残しや苦手単元をつぶすにはどのようにすればよいのでしょうか。

模試やテストの見直しで差をつける

一番効率がいいのは、模試やテストの見直しをしっかり行うことです。塾に通っていると、定期的に小テストや組み分けテスト、模試が行われますよね。模試やテストは、実力以上の結果は出ないものです。そこで、いまの実力が如実に表れた模試やテストの結果をうまく使って、積み残しや苦手単元を克服していくのです。

模試やテストでは、正答率のデータが出されるので、それを活用すると効率的に積み残しや苦手単元をつぶすことが可能です。その際には、「正答率〇%までの問題が解けているかどうか」を基準にすると良いでしょう。たとえば、正答率670%の問題は、受験生であれば必ず解けていなくてはいけない問題ですから、間違えた場合は、その理由がケアレスミスなのか、知識が足りなかったのかといった失敗原因も合わせてチェックすることが重要です。

まずは正答率50%に絞ってみよう

おおむね平均点、つまり正答率50%の問題は確実にとることは、今後の伸びを左右するので、そうした問題で間違えている場合は、同様に原因と一緒にチェックし、次に出てきたときに間違えないように意識して見直し、復習することが大切です。できない問題を一つひとつつぶしていくことが、結果として成績向上につながります。

正答率50%以上の問題にまずは絞ってみると、目的も明確になり、達成感も得られます。なにより、平均点が取れるようになるというのは大きな自信になります。「しっかり理解できた」「もう間違えない」という達成感は、「これからも頑張ればしっかり成績を上げられる」というモチベーションの向上にもつながるので、親子でしっかり取り組むと良いでしょう。できるべき問題、いまは解けなくてもいい問題の仕分けは、お子さんには荷が重いので、できれば保護者の方がやってあげてください。

先送りせずに周囲に差をつけよう!

模試やテストの見直しは、先送りすると大変になります。長期休暇のときにでもまとめて、と思っていると、なぜその問題を間違えたのか、その原因を忘れてしまうので、時間もかかり、効率的ではなくなってしまうからです。できるだけ、結果が戻ってきたらすぐに見直しておくことをおすすめします。もし時間がなくてすぐにできない、という時には、正答率〇%の問題、と決めて、間違えたけれども今できていなければならない問題に印を付け、時間ができたときにすぐ見直しができるようにファイリングするか、その問題をコピーしてノートに貼っておき、見直しノートを作っておくことをおすすめします。これは時間の節約のためにも保護者の方が行ってください。あとで見直し、復習がやりやすいように準備しておくのがポイントです。

実は、模試やテストを受けっぱなしにしている受験生の方は少なくありません。差をつけるなら、模試やテストをしっかり見直しておくことは重要です。間違えたことを叱るのではなく、模試やテストで間違えた問題は、実力アップのための「宝物」だととらえて、苦手単元をつぶしていきましょう。そうすると周りのお子さんから頭一つ抜けていくことができます。成績も少しずつ確実に上がっていくので、お子さんのモチベーションも上がること間違いなしです。ぜひ親子で取り組んでくださいね。

親子それぞれのメンタルケアも大切!

お子さんは、保護者の方の影響を大きく受けるものです。受験勉強が本格的にはじまると、毎週の出来不出来、成績に一喜一憂してため息をついてしまうこともあるでしょう。しかし、それをお子さんの前で見せてしまうと、かえって緊張してしまい、勉強に集中して取り組めなくなってしまうのです。

受験勉強をするのはお子さん自身ですから、保護者の方がお子さんのモチベーションを下げてしまうのは避けたいですよね。お仕事をしておられる保護者の方は時間に追われてしまい、気持ちに余裕が持てなくなることも少なくありません。しかし、それで自分を責めてしまい、暗い気持ちになると、お子さんに影響しますから、気持ちを抜いてもいいんだ、と自分の気持ちに余裕を持つことも大切です。

お子さんが頑張っているから親もそれ以上に頑張らなければ、というご家庭も多いのですが、そうすると不要なプレッシャーをお子さんに与えてしまいますし、保護者の方のメンタル面としてもあまりよくありません。肩に力を入れ過ぎず、長丁場の受験期間をお子さんの良い伴走者になれるように意識すると、結果的にお子さんのメンタルサポートにつながります

まとめ

中学受験は親子で初体験、というご家庭も少なくありません。特に新学年を迎えたいま、今後の勉強をどう進めていったら成績が上がるんだろう、とわからないことが多いというケースも少なくないのです。しかし、それはどこのご家庭も同じです。ですから、「できないことができるようになった」ことを一番に考えて、少しずつあわてずに積み残しや苦手単元をつぶしていきましょう

模試やテストも、入試本番ではないのですから、間違えていいんです。むしろ、間違えたところこそ宝物、それを克服できれば合格に近づける、と前向きにとらえましょう。

今回は、各教科の新学年のはじめに意識したいことについてもご紹介しました。ぜひ参考にしていただき、スタートダッシュを切っていきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。