いまさら聞けない!「アクティブ・ラーニング」って何?その基本的な考え方を解説します

アクティブ・ラーニング」---この言葉は、中学受験生の親御さんなら耳にされたことがあるでしょう。学校説明会でも、「わが校はアクティブ・ラーニングを授業に取り入れています」というアピールがよくされています。

ですが、そもそも「アクティブ・ラーニング」とは何なのでしょうか。これまでの学びとは全く違うのでしょうか。そして、学校が行うアクティブ・ラーニングとはどのようなものなのでしょうか。実は、あまり統一的ではありません。

従来型の講義形式の授業と対比して、双方向授業、とまとめてしまうにはあまりに内容が漠然としていると感じたことはありませんか?

今回は、アクティブ・ラーニングについての、今さら聞けないと思われがちな基本的な考え方について書いていきます。

アクティブ・ラーニングが必要だと言われている理由

そもそもアクティブ・ラーニングとはどのような意味なのでしょうか。「アクティブ」と「ラーニング」ですから、活動的に学ぶこと?と思われがちですが、本来の意味は「能動的学習」です

。従来型の授業は、集団授業中心で、生徒は先生の授業を聞いて勉強するという「受動的学習」が中心と言われてきました。それを、生徒が授業に能動的に参加する、つまり、書いたり自分の意見を積極的に発表したり、グループで議論したり、ディベートをしたり、ということが必要だと言われるようになってきたのです。そのような「能動的」な授業を行っていますよ、ということを、アクティブ・ラーニングへの取り組みという言葉で各学校がアピールしているのです。

アクティブ・ラーニングの目的とは

2020年には大学入試改革の目的は、今後学力の要素として、「思考力・判断力・表現力」と、「主体性・多様性・協働性」を育てるために、そういう力を見る新しい大学入試を行おうというところにあります。

こうした学力の要素を育てるためには、従来型の、知識を一方通行で教えてもらう「受動的学習」ではなく、自ら考え、発表し、授業に参加することが求められます。それゆえアクティブ・ラーニングが教育として最適だと考えられているわけです。

具体的にはどんなことをしているのか

アクティブ・ラーニングの手法は数多くありますが、いくつか例を挙げてみましょう。

先生の説明は10分から15分程度に短くまとめ、問題演習を中心の授業をします。先生からの働きかけは、説明や要点を簡潔に説明したもので、板書も少なめです。その方が生徒たちが自主的に調べようという気持ちを持つことができるからです。生徒たちが自分から質問をしたり、自分で調査したりするように促したりすることで、最終的な問題解決方法に達するように導いていきます。

説明が短くなった分、問題演習の時間が多くなります。演習方法も様々なスタイルがあり、従来の、一人で黙々と問題を解く、というスタイルではありません。

グループワーク

たとえば、子どもたちが数人でグループを作って問題に取り組む、グループワークというスタイルがあります。生徒が主体的に、協働して学ぶわけです。このようなグループワークは以前からありましたが、答えが示されていてできる子がリードして、どのグループが速く正解にたどり着いたか、というようなものがほとんどでした。

小テストを生徒同士で採点

おさらいの小テストをするときには、生徒同士にお互い採点をさせ、わからなかったり、間違えたりした箇所はお互いに教え合うようにします。人に教える、説明するということは、自分の理解を飛躍的に高め、深めることができるからです。

答えは生徒達自身で見つける

立ち歩きや友達と相談することを積極的に勧めたり、質問を多用したり、答えは生徒たち自身で見つけるように先生の側は促します。従来であれば、授業中立ち歩くなどというと、授業が成り立たないからとんでもないとと思われてきたでしょうが、あくまで授業を能動的なものとするために、そのような手法も取り入れるようになってきています。

アクティブ・ラーニングの手法にはほかにもいろいろあります。形式や道具にこだわらないのがアクティブ・ラーニングともいえるのです。いずれにしても、生徒たちを「能動的に」「主体的に」学習に参加させること、これがアクティブ・ラーニングの目指すところといえるでしょう。

アクティブ・ラーニングでどのような力が育つの?

では、アクティブ・ラーニング方の授業で、どのような力が身につくのでしょうか。目的は先ほども書いた「思考力・判断力・表現力」と「主体性・多様性・協働性」です。

たとえば、「夏休みに海水浴に来た人に海岸のごみを持ち帰ってもらうにはどうしたらいいのか」というテーマを与え、それを調べたり、役所の担当者に聞いてみたりして、その解決策をグループに分かれて考え、発表するというようなことが例として挙げられるでしょう。

「答えは一つではない」「人から言われたことをそのまま聞くのではなく、自分はこう思うという意見をもつ」「それを発表する」といったことで、主体的に課題に取り組み、解決方法を探り出す、というわけです。こういう取り組みを繰り返すことによって、「主体性・多様性・協働性」が鍛えられる、というわけです。

この例でいえば、夏休みにある海岸にはどのくらいの人数が来て、どれくらいのごみを落としていっているのか、という統計をとったり、具体的な行政の取り組みを考えたり、知恵を絞って解決法を見つけていくことなども具体的に考えていかなければなりませんから、単なる漠然とした意見を持っているだけではできません。やはり、基本的なものの考え方や、知識がなくては、ただの意見の言い合いで、まとまるものもまとまらなくなります。

ですから、アクティブ・ラーニングを行う上では、最低限身につけていなければいけない基礎的な力というものを無視することはできない、ということは意識して行わないといけないと考えられます。

今まで全くなかった考え方なのか

たしかに、このような課題を与えられ、自分なりに調べ、発表する、ということは学習上非常に大切なことですが、これらは今まで全く教育現場では無視されてきたのでしょうか?そうではありません。質問を活発にする授業があったり、先生の発問に対して考えて答えたり、という形で双方向、あるいは能動的な授業はこれまでにも行われてきています。

単なる詰め込み教育によって自由な発想ができなくなることへの危機感からアクティブ・ラーニングという言葉がクローズアップされてきているわけです。ですから、2020年からの大学入試では、単なる知識を吐き出すだけの試験ではなく、それを様々な方向から検証し、まとめ、解決していくような力を見るための入試が行われるというのが基本的な考え方でしょう。

今後の社会の変化の中で、知識を覚えているかどうかではなく、それを使って何ができるのか、何をしようと志すのか、そういうマインドを養う授業がアクティブ・ラーニングという一言にまとめられていますが、一言ではまとめきれない様々な取り組み方があり得ます。ですから、中学校側も大学入試改革に合わせて、自校ではこのような取り組みをしている、とアピールするわけです。そこにも「正解」はまだない、というのが現状です。

まとめ

アクティブ・ラーニングという言葉が独り歩きしている感じが否めない現状ですが、基本的な知識はしっかり身につけつつ、それをどう使おうとするのか試行錯誤する姿勢が求められていることははっきりしています。今後、主体的に行動する人材が求められるのは間違いありません。

基本的な知識を身につけながら問題解決方法を考えていく、その中で「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」を養いながら試行錯誤し、コミュニケーション能力を身につけ、さらに問題解決能力を身につけていくための教育、それが現状ではアクティブ・ラーニングと考えるのが妥当でしょう。そして、それは大学入試のためではなく、一生を通して求められる能力を育むためのものです。中学入試でも、初めて見る問題に対して、知識を総動員して取り組む姿勢を見る傾向が強まっています。中学に入ってから、ではなく、中学受験の段階ですでにそのような能力は問われているのです。

中学受験で養われた試行錯誤する力、身につけた知識はアクティブ・ラーニングが中心になっていく中学以降の学習においても必ず役に立つはずです。でも、このような能力はこれまでも必要とされてきたことです。

アクティブ・ラーニングという言葉に振り回されるのではなく、人間として根本的に必要とされている能力を養うきっかけとなる授業、それがアクティブ・ラーニングだととらえていればよいのではないかと思います。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、一橋セイシン会にて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。