つまずきやすい「仕事算」の解き方

今回は中学入試で問われる数々の公式のうちの一つ,「仕事算」についてご紹介いたします。つるかめ算などより聞き馴染みのないものかもしれませんが,受験においては必要とされる知識です。

本記事は「そもそも仕事算って何なの?」という雑学を交えた基礎的な部分と,実際に仕事算を使った簡単なトレーニングの部分の2つに分かれています。来年の春受験の人は復習として,これから受験を考えている人は予習として参考にしていただけると幸いです。

仕事算とは何か?

本節では仕事算とはそもそもどのようなものを指すのか,についてお話いたします。そもそも「仕事算」とは,仕事の効率を求める問題のことを指します。一人でやる仕事も二人なら,二人でやる仕事も三人なら,より早く仕事を終わらせられることを私たちは知っています。例えば小学校の給食当番や掃除の様子を思い浮かべてもらうと,なんとなくそのイメージが湧くのではないでしょうか。

ただ私たちは人間であるので,どうしても得意な仕事と苦手な仕事が出てきます。これは,算数は得意だけど国語は苦手,とか,野球は得意だけどサッカーは苦手,といったようなことと同じです。この個々人の能力の差を踏まえ,みんなで協力して仕事を終わらせるときのことを考えるのが仕事算になります。

問題に挑戦【基礎編】

ある仕事を終わらせるのに,Aさんだけですると20日かかり,Bさんだけですると15日かかります。このとき次の問に答えなさい。ただし少数点以下は切り上げること。

(1)AさんとBさんが一日にする仕事量の比を求めなさい。

(2)この仕事を二人で一緒にすると,何日で終わりますか。

上の問題を解きながら,仕事算の基本について確認していきます。まず(1)についてですが,仕事算ではこのような設問が出されることがあります。直接聞かれることはないとしても,(2)のような「二人ですると」といった問題を解く上で,考える必要があります。

確認すると,Aさんは仕事を20日・Bさんを15日かかりました。仕事算において明示されることは少ないですが,これを一日当たりに変換するときは平均値を使います。

つまり20日間・15日間かけてコツコツ仕事を進めることが前提とされています。初日で終わらせたり,最後の日にまとめてやったりするのではなく,毎日同じ量をこなしたときのことを考えていくのです。

このことから,ある仕事の全体の量は次のように表すことが出来ます。

仕事の全体の量=Aさんの一日にする仕事量×20

仕事の全体の量=Bさんの一日にする仕事量×10

ここで仕事の全体量を1とします。このときAさんの一日にする仕事量は,全体の仕事量を20等分したときの数になるので,その値は1÷20=0.05となります。同様にBさんの一日にする仕事量の値は,全体を10等分した量になるので,1÷10=0.1となります。

したがってAさんとBさんの一日の仕事量の比は,0.05:0.1です。これを簡単な比に直すと,1:2となります。要するに,一日でBさんはAさんの2倍仕事を進められるのです。このように仕事にかかる日数から一日当たりの仕事量を求めることが仕事算ではまず大事になります。

ちなみにここで注目してほしいことが,かかる日数の比と一日当たりの仕事量の比の関係です。Aさんは20日,Bさんは10日かかるため,仕事を終えるまでの日数の比で考えると2:1になります。しかし仕事量の比は1:2でした。

ここから分かるように,一日当たりの仕事量の比は日数の比の逆になります。そのため,今回は平均値の考えを使って解きましたが,日数の比を考え,その逆として一日の仕事量の比を考える方法もあります。様々な問題に挑戦して好みの解き方を探してみてください。

次に(2)について考えていきます。二人で一緒にするときにかかる日数を考えるためには,AさんとBさんが一緒に仕事をするときの一日終わらせられる仕事量を求める必要があります。

ここでもAさんとBさんの一日当たりの仕事量は平均値を取ります。そしてAさんとBさんが一緒にいることの効果は考えません。これは例えば,二人はすごく息が合い,普段よりもたくさん仕事ができる!といったことや,二人は仲が悪く,普段よりも仕事が進まない…といったことは考慮しないという意味です。あくまでAさんもBさんも一人で作業したときと同じペースで,「僕はこっち,君はあっちと」言った具合で分担して仕事をします。

いま(1)で確認したように,Aさんの一日にする仕事量は0.05,Bさんの一日にする仕事量は0.1でした。よって二人で作業をすると一日で0.05+0.1=0.15の仕事を終わらせられることになります。

では一日で0.15の仕事を終わらせられるとき,何日かかれば仕事を終わらせられるでしょうか。(1)で仕事の全体の量を1とし,一日の仕事量とかかる日数の積が1になるように立式しました。このことを応用すると次の関係が成り立ちます。

1【仕事の全体の量】=0.15【二人が一日にする仕事量】×日数

このことから日数は仕事の全体の量を一日にする仕事量で割ったときの商の値になることが分かります。したがってこれを計算すると,1÷0.15=6.666……となります。ここで問題文より小数点以下は切り上げでした。このことから割り算の答えは7,つまりAさんとBさんが一緒に仕事をすれ7日で終わらせられる,と計算できました

これらをまとめると上の問題の答えは次のようになります。

答え:(1)1:2,(2)7日

問題に挑戦【応用編】

では今度は少しレベルアップした問題に挑戦してみましょう。問題の条件は上のものと同じです。

ある仕事を終わらせるのに,Aさんだけですると20日かかり,Bさんだけですると15日かかります。このとき次の問に答えなさい。ただし小数点以下は切り上げること。

(3)この仕事をするのに,はじめの5日間だけはAさんだけが働き,残りをBさんだけですると,Bさんは何日働くことになりますか。

先ほどの問題と同じAさんとBさんが登場しました。そのため改めて確認しておくと,Aさんが一日にする仕事量は0.05,Bさんが一日にする仕事量は0.1でしたね。このことを利用して(3)の問題も解き進めていきます。

まず,この問題でははじめの5日間だけAさんが働き,6日目にBさんとバトンタッチして,Bさんだけでの残りの仕事を終わらせます。ここで重要なのが,Bさんが働き始めたときに残っている仕事量です。ここでどれだけ仕事が残っているかが分かれば,(2)と同じようにしてBさんに必要な日数が求まります。

ではBさんが働き始めたときに残っている仕事の量はどれほどなのでしょうか。それは,交代までAさんがどれだけ仕事をしてくれたか,に因ります。Aさんが真面目だったら残りは少ないでしょうし,Aさんがサボっていたら残りは多いでしょう。

しかしここでのAさんは一日に仕事の0.05を終わらせる,という条件が付いています。したがってBさんに回ってくる仕事の量は,仕事の全体の量から5日間の仕事の量を引けば求められます。この関係をまとめると下のようになります。

Bさんの仕事量=(全体の仕事量)-(Aさんの一日の仕事量×5)

この関係に基づいてBさんがこなすべき仕事の量を計算すると,1-0.05×5=0.75となります。よってBさんが働き始めるときに残っている仕事の量は,全体の0.75の量になるわけです。

この0,75の仕事を,Bさんは一日0.1ペースで終わらせていきます。ここまで分かれば,あとは(2)の問題と同じようにしてかかる日数を求めるだけです。0.75÷0.1=7.5となりますが,ここで小数点以下は切り上げるため,答えは8日となります。

答え:(3)8日

まとめ

以上が仕事算の解き方やテクニックのご紹介になります。考え方に若干苦戦することがあったかもしれませんが,計算内容自体は思ったよりも簡単だったのではないでしょうか。

算数は問題のイメージが漠然としていることから苦手意識を持ちやすい科目ですが,上のように日数の平均を取って全体を1と考えて,…といった手順が分かると答えにたどりつく道筋が見えやすくなるでしょう。

ただ繰り返しになりますが,ここでご紹介したのはあくまで初めて仕事算に触れる人や,改めて仕事算をおさらいしたい人向けの内容です。中学受験ではこれ以上に難しい仕事算が出されます。また他にも仕事算は「ニュートン算」「旅人算」とも関連が深く,その知識を絡めた問題が出されることもあります。

そのためまずは基礎を完璧に仕上げ,その後本記事の(3)のような応用に取り組むことを推奨いたします。本記事が学力アップの参考となればありがたく存じます。

(ライター:大舘)

参考:中学受験ナビ. “仕事算ってどんなもの?仕事算をわかりやすく解説” .最終アクセス:2020/10/22

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