【中学受験】桜蔭中学校の入試の傾向と対策 国語編

志望校別の傾向と対策についてご紹介していますが、前回は桜蔭中学校の算数について、入試の傾向と対策についてお伝えしました。今回は、桜蔭中学校の国語です。

桜蔭中学校の国語の入試問題で出題される文章は、説明的文章と物語文が1問ずつであることがほとんどです。そしてその文章は、大学入試と見まごうばかりの難解なものが出題されることも少なくありません

もともと女子校、特に女子御三家の国語の入試問題においては、非常にレベルの高い、難解な文章が出題され、その中で高く総合的な読解力や語彙力が試されるという特徴があります。そのなかでも、桜蔭中学校の要求レベルは頭一つ分抜けていると言えるでしょう。

なぜ桜蔭中学校の要求レベルが非常に高いかというと、まず、設問のほとんどが記述問題であることが挙げられます。たとえば、塾の模試や組み分けテストなどでは、大問1問分がまるまる漢字や語句などの知識問題が出題されることが多く、そこで点数を稼げば、記述が多少苦手であっても知識問題と選択肢問題を確実に得点してなんとか帳尻を合わせる、という逃げきりの一手を打つ受験生も少なくないのではないでしょうか。

しかし、桜蔭中学校に関しては選択肢問題すらほぼなく、ほとんどが字数制限のない記述問題で構成されているため、かなり高度なレベルの文章作成能力、その土台となるすばやく正確な読解力が求められることになります。

今回は、四4科目全てにおいて女子御三家最高難度を誇る桜蔭中学校の中でも、最大の壁と言える国語について、出題傾向と対策法をご紹介します。

桜蔭中学校の国語の出題傾向

基本的な出題構成としては、説明的文章が1問、物語文など文学的文章が1問の、大問2問構成となっています。漢字については書き取りの問題が出題されるほか、語句の知識も合わせて、読解問題の問題文中の空欄を埋める形で知識を糖問題も出題されます。

大問の数、また設問数自体はそれほど多くはないですが、設問のほとんどが記述問題であること、漢字や語句はもちろん、文章読解に必要な語彙力のレベルが非常に高いことが特徴的です。1問1問の設問が非常に重たく、設問数がそれほど多くないにもかかわらず、制限時間内にすべて解き切るだけでも困難と言えるでしょう。なにより、問題文のボリューム自体、かなり大きいものです。

また、桜蔭中学校の記述問題は、多くの設問において「字数制限」がありません。そのため、たとえば中堅校レベルまでの記述問題において使えるような、制限字数から書くべきポイントを推察して、問題となる文章中のことばをうまく抜き出してつなげる、という手法は使えないのです。

特に文学的文章の問題に関しては、文章中に現れるキーワードだけではなく、文章中にははっきりと書かれていない「行間の部分」を読み取らなければなりません。文学的文章の場合、心情の表現ひとつにとっても単純に心情語を書いてあるとは限りませんが、特に桜蔭中学校の場合、ヒントとなる表現を見つけること自体が大変です。そしてそこにストレートに答えが書いているわけではなく、何を表現しているのかを読み取ることも難しいと言えます。

そういったレベル感を理解した上で、自分自身のことばで文章中の表現を説明し、さらには補って解答を作り、設問にあますことなく表現して答えるという手順が必要です。これをやりきるにはには非常に高レベルの読解力に加えて高い構成力、文章作成能力も求められます。

また、説明的文章の場合、文章中に答えが書いてあるということがほとんどですが、桜蔭中学校の説明的文章は、一見して何が書かれているのか読み取るのに苦労する文章が出題されることが少なくありません。また、比喩的な表現も多く、文章中からうまく適当なところを抜き出せれば答えられる、というレベルではありません。比喩的なところは自分自身の言葉でかみ砕いて説明しながら記述問題を解いていく必要があります。

また、説明的文章の場合は設問自体が何を聞いているのかよくわからない、といった問題も出題されます。そのため、設問の読解も合わせて必要になるので、時間配分が難しいのも特徴です。

桜蔭中学校の特徴的な出題傾向

桜蔭問題の長文読解問題は、説明的文章、文学的文章の両方がそれぞれ異なる難しさを持ったものが出題されます。問題文自体も長く単純なものではないほか、かなり突っ込んで考えさせる設問が多いので、1つの設問で止まってしまうと最後まで解ききることは難しくなる、難易度の高い出題だと言えるでしょう。

説明的文章の問題の場合、基本的には通常の説明的文章と同様に、文章自体のの読解さえ正確にできていれば、記述問題においても書かなければならないポイントは明確に見えてくるものです。ただし、桜蔭中学校の場合、文章の読み始めの段階で難解な語句がどんどん出てきたり、文章の構成も一筋縄ではいかず、最初からきちんきちんと読んでいけば解答できるという単純なものではないので、通常の説明的文章の読解法を土台として、さらに高度な読解力が要求されます。

そのため、日頃の速読と読解力養成のためのトレーニングをどこまで突き詰めておこなっているかどうかによって、非常に差が付きやすい出題になっていると言えるでしょう。出題される文章は大学入試レベルのものであることも少なくないので、短い文章から長い文章まで、かなり高度な文章読解の訓練をしておく必要があります。

一方で文学的文章問題の読解においては、すばやく正確な読解力だけでなく、レベルの高い記述問題に答えるための文章作成能力がより求められる傾向にあります。桜蔭中学校で出題される文学的文章の問題に答えるためには、文章中で明記されていない行間の部分、つまり登場人物の心情や、行動の動機を読み取り、自分自身の言葉で表現しなければならないのです。

このような問題構成となっているため、まずは特に差がつきやすい説明的文章の問題で、いかに点を落とさないかが合否を分けるカギとなってきます。ただし、ほとんどが記述問題なので、その対策が非常に重要です。

桜蔭中学校攻略のためのトレーニング法

桜蔭中学校の国語を攻略するためのカギは、当然ですが設問のほとんどを占める記述問題対策にあります。では、その対策に不可欠な3つのポイントを見ていきましょう。

速読読解力

まずはなんといっても、問題文の内容を正確に、かつ素早く読み解かなければなりません。桜蔭中学校の問題文は特に非常に長い傾向にあるので、文章中のどこに、どのような内容が書いてあるのか?という読解のカギになるポイントを正確に見つけ出すことが不可欠です。この際に求められる能力としては、「構文把握力」と「要約力」が挙げられます。

構文把握力とは、簡単に言うと、「この文は何について説明しているのか?」ということを瞬時に把握できる能力です。たとえば、指示語や接続語を正確に判別し、文の主語をきちんと理解していなければ、ほかの文とのつながりや文脈を意識することは非常に難しいです。一つひとつの文章の理解が、意味段落の内容の理解、つまり要約力につながるので非常に大切な能力だと言えるでしょう。

また、要約力は、段落ごとに何が書かれているのかをつかむ力です。それは筆者の意見なのかそれとも具体例なのか、登場人物の心情か場面の説明か、といった段落ごとに読み進みながら、中心文を外さずによみとり、「つまりこの段落では何が書かれているのか」「文章全体で筆者が伝えたいことは何か」ということを自分のことばでまとめることが要求されます。

これらの能力をトレーニングするためには、まず塾のテキストに載っている文章や中堅校の入試問題など、比較的単純で短めの文章を数多く読み解くことが土台作りのために重要です。いきなり桜蔭レベルの難解な長文の読解に着手しようとしても、自分で自分のハードルを上げてしまうだけで、なかなか読むことも解くこともできず自信喪失してしまうので注意しましょう。

どんなに長い文章であっても、読解の手法自体は短い文章と変わりません。まずは単純な短めの文章の意味段落分けから始めてみましょう。それぞれの意味段落は文章全体におけるどの部分を担っているパーツなのか、たとえばまとめの部分なのか、場面の切り替わりの部分なのか、などといったことを理解する練習が何より大切です。

また、指示語がでてきたら必ず何を指しているのか、その内容を考えることも大切です。指示語がさしている内容を正確に読み取ることは文章読解においてとても大切です。指示語ばかりたくさん出てくる文章もあるので、それを克服するためにはしつこく指示語の内容を考えるようにして、手を抜かないことです。

また、接続語が出てきたら、いったん立ち止まって前後の文章のつながりをよく考えるようにしましょう。これも基本ですが、逆説の接続語があるから前の段落の批判がくるな、場面の展開があるな、登場人物が変わるな、といったように展開を把握するためには接続語を読み落とさないことは非常に重要です。

このような、1文ごとの役割を考えるという手順を繰り返していくと、やがて無意識のうちに読解のポイントを押さえられるようになります。そうすると、スピーディーで正確な読解ができるようになっていきます。日頃塾のテキストで扱われているような文章を読解する際にも、たとえ設問になかったとしてもその文章を自分自身で要約してみることも構文把握力、要約力の養成に非常に有効です。

文章作成能力

文章の読解をしたら、次のステップはその内容を設問文に合わせて説明したり、自身で内容を補足したりして文章にまとめる力、すなわち文章作成能力が重要になってきます。特に桜蔭中学校の記述問題には字数制限がないものがほとんどで、字数制限があったとしても200文字と長い記述問題が出題されます。そのため、いかに無駄を省いて、重要なポイントを過不足なく全て入れ込んだ答案を作れるかどうか、というのがカギになってきます。

文章作成のトレーニングは、塾でも記述問題を扱ったり模試でも記述問題を解いたりするので、これまでも行ってこられているでしょうが、実情は「単に書いて終わり」になっていないでしょうか。ただ書くことと、設問で求められている内容を書くということは似ているようでまったく違います。設問で求められている内容をしっかり記述するためには、ただ数をこなしただけで解決することはまずできません。自分が書いた一つひとつの文章を読み返し、設問の意図とずれていないかどうか点検し、問題点を意識することからはじめましょう。

まず、書いた文章はスムーズに読める文章になっているでしょうか?主語や述語が明確か、文章と文章との間におかしな内容の飛躍はないか、そもそも何について説明している文章なのかが明確になっているか、というポイントを意識して読み返してみましょう。

この際に、自分の文章に妙な引っ掛かりを覚える受験生は少なくないと思います。自分では設問と正答を理解して表現しているつもりであっても、採点者にその意図が伝わらなければ意味がありません。点数を重ねるためには採点者に自分が書いた文章の内容と意図を理解してもらう必要があります。それを伝えるためには、採点者のことを「一から十まで説明しなければ理解できない赤ちゃん」と同じだとでも思って、そういう人でもわかるような、読みやすい文章を作るために丁寧な答案作成を心掛けることが重要です。

いきなり答案に必要な全てのポイントを過不足なく拾い、しかも読みやすい整ったな文章にまとめるというのは至難の技なので、まずは書きたいポイントを箇条書きにして整理してみましょう。これは読解自体が正確にできていればそれほど難しいことではありません。それができたら、あとは整理した内容を組み立てて文章にしていくだけです。

文章をまとめる際には、基礎的なことも忘れず最新の注意を払うようにしましょう。たとえば、設問に適した語尾になっているかなどです。理由を聞かれているのなら「○○だから」にするなどの文末処理は、設問に答えていることを証明するために非常に重要です。また、文の主語と述語を意識して書くことも大切です。主語述語が抜けている文章は読みにくいですし、内容を理解することもできません。単純なことに見えるかもしれませんが、文章作成においては非常に重要なので普段から意識するようにしましょう。

また、記述の答案でやってしまいがちなのが、「一文で書き切ろうとしてしまう」ことです。記述問題に医は一文で答えなければらなければならないというルールはありません。逆にあまりにも文が冗長になってしまうと非常に分かりにくくなってしまうこともよくあります。採点者が読みやすいよう、二文あるいは三文に分けて、一文にはワンテーマ、といったように起承転結を意識して解答する訓練をするのも有効です。

語彙力

桜蔭中学校を目指しているのだからそんなことは言われなくても分かっている、という方もいるかとは思いますが、桜蔭中学校だからこそ高レベルな語彙力は必要不可欠となってきます。桜蔭中学校では問題文中に出現する語彙が大学受験レベルの難解さであるだけではなく、文章作成をする場合においても、豊富な語彙がなければ、いくら書きたいことが見つかっても、自分の書きたい内容を的確に表現することはできません。

日頃の語彙力トレーニングをおろそかにせず確実にこなすことがまずは必要です。そして、語彙力はただ覚えればいいというわけではなく、実際に使いこなせなければ意味がありません。そのためには、意味と使うシーンはどういう場合なのかを意識して学習することが大切です。たとえば、過去問に出てきた言葉の中で意味が理解できなかったものは、面倒くさがらずに一つひとつ辞書を引いて意味を確認し、できれば自分専用の単語帳を作って書き留めておくなどするのが良いでしょう。

桜蔭中学校が求めている力とは

ここまで、桜蔭中学校の国語の難解さについて説明し、どういう力が必要なのか挙げてきました。ほかの科目においても共通して言えることですが、桜蔭中学校の入試問題では、「素早く多くの情報を処理・整理できる能力」と、「処理した情報を自身で分析して思考・表現できる能力」の2つが求められます。この2つをバランスよく磨いていくことはたしかにそう簡単なことではありません。しかし、一度身につけることができれば、中学受験のみならず、大学受験、ひいてはその後の学習や業務においても大きな効果を発揮します。

多くの能力を求められるからといって、焦ってそれらを一度に習得しようとするのは逆効果です。それぞれが中途半端に終わってしまう可能性があります。まずは自分が苦手なところの基礎と向き合い、基礎固めが終わったらひたすら過去問対策で問題に慣れる、という地道なルーティーンを繰り返していくことがとても大切です。ぜひ、桜蔭中学校の国語で求められている力を、設問に触れながら磨いていってくださいね。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。