物体の温度について,熱がどういうものなのか,熱のやり取りと温度の関係について理解することが大事であるとともに,物体に入ってきた熱が,その物体をどのように伝わっていくのかを知ることも大事です。
熱の動きは,物体の動きを知ることにもつながります。地球上における空気の流れと天気の関係,そして海の中の水の流れを理解するためのきそとなります。
ここでは金属,水,空気の3つに注目して,それぞれを熱したときの,熱の伝わり方,温度の上がり方について学習していきましょう。
Contents
物のあたたまり方
金属のあたたまり方
まずは金属を熱したときのあたたまり方について学習していきましょう。
みなさんは,コンロの火がついているときのフライパンを持ったことがありますか?ものにもよりますが,持ち手の部分まで金属がきているとき,熱いなぁと感じたことがある人もいるのではないでしょうか。
火によってフライパンに熱が加わり,それが,火が直接ふれてない持ち手の部分まで伝わってきているのです。
このように,身近なところでも「熱が伝わる」という現象を感じることができるはずです。
そこで,金属は熱すると,どのように熱を伝えていくのかを調べるために,次のような実験を考えてみましょう。
それぞれのパターンで,どの順番でろうがとけるのかを,まずは予想してみてください。予想ができたら,次に進んで答え合わせをしてみましょう。
上の実験結果から,金属については,「熱した部分を中心にして,だんだんはなれた部分へと熱が伝わっていく」ことが分かります。
金属ぼうと金属板の熱の伝わり方を,改めて図でかくと,下のようになります。
このようにして,熱した部分から順に熱が伝わっていくことを,熱の「伝導」といいます。
水のあたたまり方
次に,水のあたたまり方について学習していきましょう。
皆さんはお風呂に入るときに,上の方のお湯は温かいのに,下の方はぬるかった,という経験はありませんか。これは今から学習する水のあたたまり方に関係するものです。
水や空気の場合,あたためるときに金属とはまた違ったことが起こります。金属との違いに注目しながら,水のあたたまり方について学びましょう。
金属のときと同じように,水のあたたまり方を調べるために,次のような実験を考えます。
テープの色はどのように変わっていくのか,つまり水はどのようにあたたまっていくのかを,まずは予想してみましょう。予想できたら,実験結果を見てみましょう。
なんと,金属とは逆に,熱したところとは離れたところからあたたまっていきます。
それでは「熱したところからはなれた所から順にあたたまっていく。」というのは本当に正しいのでしょうか。それを確かめるために,さらに次のような実験を考えてみましょう。
A,B,Cのそれぞれの温度計において,どの順番で温度が上がっていくかを予想してみてください。
予想ができましたか?それでは結果を見てみましょう。
どうでしたか?予想は当たりましたか?
意外だという人も,わけが分からないといった感じになっている人もいるのではないでしょうか。
水があたたまるとき,何が起こっているのか,考えていきましょう。
まず,金属のように,熱したところからあたたまっていくのをイメージした人もいるのではないでしょうか。
実はそれは完全に間違っているわけではありません。
熱してすぐは,ビーカーの熱している部分にある水があたたまっているのです。
それではなぜ上からあたたまっていくのでしょうか。
熱してすぐは,あたたかい水が下にあるのに,あたたまるのは上からなのです。
これは,「あたためられた水が上に移動している」からなのです。水の場合,温度が変化することによって,物体そのものの移動が起こります。
しかしただ上に行くだけではありません。上に行くだけであれば,実験2の結果はB→A→Cとなるでしょう。
実験2で温度が上がった順番を考えると,あたためられた水は下の図のように移動していることが分かります。
上の図のように,あたためられた水は上に移動し,そこを補うかのように,横からまた冷たい水が流れ込んできます。
さらに上へ移動した水は,空気などで冷やされると,熱している場所からはなれたところでまた沈んで戻ってきます。
これをくりかえすことで,水が上からどんどんあたためられていくのです。
それでは,なぜ水はあたためられると上へ移動するのでしょうか。その問題は,空気のあたたまり方を学習した後に説明することにしましょう。
空気のあたたまり方
次に,空気のあたたまり方について学習していきましょう。
皆さんは気球を見たことがあるでしょうか。ふうせんのようにふくらんで空を飛んでいますよね。
それでは,気球はどのようにして飛んでいるかを知っているでしょうか。それもまた,「空気のあたたまり方」に関係しているものです。
さて,皆さんの多く,はすでにあたためられた空気がどうなるのかを実際に目で見たことがあるのではないでしょうか。
皆さんは炎から出る煙を見たことがありますよね?あれがそのまま,あたためられた空気のする動きになります。
空気の場合も,水と同じように,あたためられると上へ移動する性質があるのです。
あたためられた水や空気が移動する原因とは
さて,次にあたためられた水や空気が,どうして上へ移動するのかについて紹介しましょう。
大体の物体は,温度が変化すると,同時に体積も変化します。物体の温度が高くなるとふくらみ,逆に温度が低くなると縮みます。物体が同じ量のまま,つまり同じ重さのまま体積だけが変化すると,密度が変化することになります。
つまり,あたためられた部分の水や空気は,同じ重さのままふくらみ,体積が大きくなって,密度が小さくなるのです。
密度とは,物体の重さ(g)を,その体積(cm3)で割った数です。つまり,その物体を1 cm3集めたときに,何gあるかという数となっています。
物体の密度は,基本的には,温度が高いほど小さくなり,逆に温度が低いほど大きくなります。
詳しく知りたい人は,この記事を参考にしてください。
https://chugaku-juken.com/density/
あたためられた水や空気は,まわりよりも密度が小さくなります。上の記事にあるように,密度が小さいものは「浮く」のです。水の中に,まわりの水よりも密度の小さいものがあるとそれは浮きます。つまり一部だけ温度が上がって,密度が小さくなった水が上に移動するのです。
これは空気も同じです。まわりよりも密度が小さくなった空気が,上へ移動するのです。気球は,炎であたためられた空気がふくらみ,密度が小さくなることで上へ移動しようとする力を利用することで空に浮くことができるのです。
ところで,温度が上がると体積が大きくなり,密度が小さくなるのは,もちろん金属も同じです。しかし,金属は固まっており,中のつぶがお互いに引っ張り合っているため,水や空気のように移動することができません。だから金属は素直にあたためられたところから熱が伝わっていくのです。
このように,水や空気は,あたためられたところが上に移動し,冷たいところが下に移動することで全体に流れがうまれて,やがて全体があたたまっていきます。このようなあたたまり方を,熱の「対流」と言います。
熱の放射
最後に,金属における熱の伝導とも,水や空気における熱の対流とも違う熱の伝わり方を紹介しましょう。
太陽の光やたき火が,もう1つの熱の伝え方をします。
たき火やストーブに手を近づけると,あたたかいですよね。さらに,太陽は地球からとても離れているのに,日中に太陽の光にさらされているものは,すぐにあたたかくなったりしますよね。
このとき,熱い物体から,目には見えない光出ています。それが他の物体に当たることであたためられるのです。
このようなあたたまり方を,熱の「放射」と言います。
放射では,空気を通り抜けて,その光が当たる物体が直接あたためられます。
これは日中の気温にも大きく関係しています。太陽からの光が1番とどくのは,正午の時間です。しかし,その日の気温が1番高くなるのは,午後2時くらいとなります。この時間の差はどうして生まれるのでしょうか。
実は,太陽は空気を直接あたためているわけではありません。太陽の光は,まず放射によって「地面」をあたためているのです。そして十分に長い時間あためられた地面が,次に空気をあたためていきます。一度,熱が地面を経由してから空気があたたまるため,太陽が1番高い時間と,気温が1番高くなる時間に差が生まれるのです。
さらに,放射の光をどれだけ吸収するか,つまりその物体が放射によってどれだけあたためられやすいかは,色によっても違います。白い物体は光を反射しやすい物体なので,放射の光を反射してしまい,あたたまりにくいです。逆に,黒い物体は,光を吸収しやすいため,放射の光を吸収して,あたたまりやすいです。だから,夏は白い服を着るのがいいかもしれませんね。
皆さんの中には日がさをさす人もいるでしょう。上の説明だけ見ると,白いかさの方が一見よさそうに見えますよね。しかし,白いかさだと,地面からかさの内側へ向かってきた光が,かさの中でさらに反射して体に当たってしまったりします。なので白がいいとは限らないのです。黒いかさも黒いのですぐに熱くなってしまうので難しいですね。
どの色のかさがいいのか,ぜひ地面の色なども見ながら考えてみてくださいね。
入試問題演習
ここまでに学習したことを活かして,実際の入試問題にチャレンジしてみましょう。
問題
解答
- (1) 熱した部分から,はしに向かって温度が上がっていっている。
- (2) オ
- (3) ア
- (4) a
- (5)ア
解説
(1)
問題の図1にある金属ぼうには,同じ長さごとに線が入っているのが見えます。ここで,点A,B,C,Dがそれぞれ加熱部分の線から数えて何番目の線の位置にあるのかを確認してみましょう。
点Cは加熱部分から数えて1番目の線の地点,点Bは加熱部分から数えて2番目の線の地点,点Aと点Dはどちらも,加熱部分から数えて5番目の線の地点にあることが分かります。このことを考えたうえで,[実験1]の結果を見てみましょう。
ろうがとけた順は,始めにC,次にB,最後にAとDが同時という結果になっています。このことから,C→B→A, Dの順にろうがとけるだけの温度まで上がっていることが分かります。
上で確認したように,熱した部分から,同じ順番ではなれていることを考えると,金属ぼうの温度は,熱した部分から,どんどんはしに向かって温度が上がっていっていると考えることができます。
(2)
(1)で確認したように,金属を熱したときは,熱した部分から周りに広がっていくようにして温度が上がっていきます。これは,ぼうから板になっても同じです。
板を熱したときも,熱した部分から周りに広がっていくように温度が上がっていきます。このとき,熱した部分から円が広がっていくのをイメージするのがよいでしょう。
同じ円周上にある点どうし,つまり熱した部分から見たきょりが同じになる点のろうは,熱の伝わり方が同じになり,同時にろうがとけます。
つまり,熱した部分,図2の×の地点から,◎までの長さが同じになる点のろうが,◎と同時にろうがとけることになります。
それぞれの点までの長さを調べるか,×を中心にして◎までの長さを半径とした円を書いてみると,点オが上の条件を満たすことが分かります。
よって,◎と点オのろうが同時にとけます。
(3)
水は,あたためられた部分が上に動くことで,全体があたたまっていく「対流」という現象が起こります。
今,図3において,ビーカーの底の中心部分を熱しています。つまり,すぐに温度が上がるのは,熱している部分である,ビーカーの底の中心部分です。
ここであたためられた水が上に動きます。そして足りなくなった分が,その周りから流れこんでくるように動きます。このことを表しているのは,「ア」の図になります。
(4)
ものを冷やしたときの冷え方,特に水や空気の冷え方については,(3)で見たような対流が起こるしくみをよく理解している必要があります。
水があたためられたときに上へ動くのは,あたためられて温度が高くなることで,その部分の水の体積が大きくなり,密度が小さくなるからです。
周りよりも密度が小さい部分は,上へと上がっていきます。これは空気でも水でも同じです。
ここで発想を逆転させましょう。逆に温度を冷やせば,冷やした部分の温度は低くなります。温度が低くなった水の体積は小さくなります。つまり,密度が大きくなることになります。密度が大きくなった水は逆に下へしずんでいきます。そして下の方にあった,もともとの温度の水が上へ追い出されます。
このことを考えて,水の冷え方を考えなければいけません。
図4のbやcの部分で冷やすと,冷やした水が下にしずんでしまい,そこから上の水がなかなか冷えません。だから,1番水面に近いaのところを冷やすのが1番良いということになります。
(5)
基本的な考え方は,(4)と同じです。まず始めに冷えるのは,外の冷たい水にふれている周りの部分が冷やされます。冷やされた周りの水は,密度が上がることによって下にしずんでいきます。時間がたつと,温度が低い水がどんどん下から上へたまっていき,やがて全体が冷えます。これを表しているのは,「ア」の文章となります。
まとめ
今回は3つの物体のあたためられ方,さらに3つの熱の伝わりかたを学習しました。
金属では,熱の伝導によって,熱せられたところからまわりへ広がっていくようにあたためられていきます。
水や空気は,あたためられたところが上へ移動し,温度の低いところが下へ移動することで全体が流れるようにして全体がだんだんあたたまっていきます。これを対流と言います。
あたためられた水や空気が上へ移動するのは,密度が小さくなるからです。
そして太陽の光やたき火は,空気を通り抜ける,目に見えない光によって熱を伝えます。これを放射といいます。
これらの物体ごとの熱の伝わり方や,物体がどう移動するかという点をしっかり押さえておきましょう。
そして身の回りで熱の移動を感じる場面があったら,どのようにして熱が移動していくかを考えてみるのも面白いかもしれません。