温度計 ~温度計の中にある赤い液体や、温度変化によって液面が上下する原理について理解しよう~

 「温度を測れる」というのはとても大事なことです。

 「気温を見て今日の服装を決めよう」といったように,普段の生活の快適さの目安にもなりますし,料理中に「何度で加熱するか」もできあがりに響きます。

 世界にある様々な物体の性質を知るためにも「温度」は重要です。温度によって性質が変わる物体はたくさんあります。温度によって,水が水蒸気や氷に姿を変えるのも,その一種と言えるでしょう。温度によって電気が流れやすくなったり,流れにくくなったりなんてことも起こります。

 このように,「温度を知る」ということは日常だけに限らず,理科の世界でも非常に大事なことなのです。

 温度を知ることができるものとして,日常的に温度計を使う方も多いでしょう。今どきはほとんどデジタル温度計でしょうか。

 中には,理科の実験などで使うような,中の赤い液体が上下する温度計を実際に見たことがある方もいると思います。

 ここでは,赤い液体が上下するタイプの温度計の仕組みについて紹介していきます。

アルコール温度計

 下の図のような温度計は,「アルコール温度計」と呼ばれます。

 アルコール温度計は下の部分に赤い液体がたまっており,温度に対応した目盛りがふってあるのが特徴です。

 赤い液体は温度計の中をのぼっていき,液面のところにある目盛りの数字を読むことでその場の温度が分かるようになっています。

 さて,これはどういう仕組みで温度が分かるようになっているのでしょうか。

 ポイントは「液体の温度と体積の関係」です。

 物体は,一般的に温度が上がると体積が増加し,温度が下がると体積が減少します。アルコール温度計に入っている赤い液体も同じです。

 下部分の液がたまっているところの温度が上がれば,体積が増えることで液が温度計の上方向に広がっていきます。逆に,液がたまっているところの温度を下げると,赤い液体の体積が減少することで,温度計の下に向かって縮んでいきます。

 あらかじめ温度が分かっているところに赤い液体を置いて,どのくらいの体積になるかを調べれば,それに対応させて目盛りをふることができます。一旦目盛りを書いてしまえば,あとは赤い液体の液面の高さから逆に別の場所の温度を測ることができるようになるのです。

アルコール温度計の中身は…?

 さて,ここまで紹介してきた「アルコール温度計」ですが,その中身は何でしょうか。

 アルコールだと思いますよね。実は違うんです。

 アルコール温度計の中には,実は灯油が入ってます。アルコール温度計では一般的に灯油を赤く着色したものが使用されているのです。

 ではどうして「アルコール温度計」とわざわざまぎらわしい名前なのでしょうか。

 昔は,同じような仕組みの液体温度計では実際にアルコールが使用されていたのです。しかしアルコールは沸点が低く,蒸発してしまってあまり高い温度の測定ができないなどの理由で,今は測定できる温度の範囲が広い灯油が用いられています。

デジタル温度計はどういう仕組みか

 ここまでアルコール温度計の仕組みを紹介してきました。

それでは実際の生活で慣れ親しんでいるデジタルの温度計はどういう仕組みなのでしょうか。種類はいろいろあると思いますが,ここでは代表的なものを1つ紹介します。

 デジタル温度計の中には,温度によって大きさが変わりやすい抵抗が入っています。

 温度によって抵抗の大きさが変わることで,その抵抗を含む回路を流れる電気の量も変化します。逆に言えば,流れている電気の量が分かれば,それに対応する温度が分かります。デジタル温度計はこの原理を利用したものなのです。

入試問題演習

 ここまでで学習した内容を活かして,実際の入試問題に挑戦してみましょう。

問題

(春日部共栄中 2021)

解答

  • 問1 3 cm3
  • 問2 5℃
  • 問3 ウ
  • 問4 温度による体積の変化が一定である液体を使う。

解説

問1

 問題文より,【手順2】のときの温度は20℃であることが分かります。

 まずは,水の温度が40℃のときの液面の高さが,20℃のときと比べてどれだけ増えたのかを計算しましょう。

 問題の表1を見ると,40℃のときの水面の高さが24.9 cmであり,20℃のときの水面の高さが10 cmであるので,この差を計算すると,24.9-10=14.9 より,20℃から40℃までの温度の上昇ともなって,水面が14.9 cm上がったことが分かります。

 つまり,ガラス管の高さ14.9 cm分に対応する体積の分だけ増えたということが分かります。

 ここで,ガラス管の中身のような円柱の「体積」は,「底面積×高さ」で求めることができることが問題文に書かれています。

 上の計算により,高さが分かったので,あとは底面積が分かればいいということになります。

 底面積は,問題文の【手順1】のところに,「0.2 cm2」と書かれています。

 これらの値から,増えた体積がいくらかを計算すると,0.2×14.9=2.98≒3 となり,水の体積は約3 cm3増えたということが分かります。

 

問2

 水の体積の大きさは,水面の高さに対応しています。

 つまり,「水の体積が最も小さくなるとき」とは,「水面の高さが最も低くなるとき」です。

 よって,表1から,およそ5℃のときに水の体積が最も小さくなることが分かります。

 

問3

 問題文から,水の温度は20℃→80℃(まで行ったかどうかは分からないが,少なくとも20℃よりは高い温度)→20℃と変化していることが読み取れます。

 また,表1より,少なくとも20℃以上については,温度が高くなればなるほど,水面の高さが上昇していることが分かります。

 つまり,温度が高くなればなるほど,水の体積も増加することが分かります。

 この問題における水の温度は,上がったあと下がっていると考えられるので,この変化に対応して,水面はまず上昇して,その後下がったと考えられます。

 水が蒸発したり周りの圧力が変化したりしない限りは,同じ温度における水面の高さは同じなので,「ウ」が正しいことが分かります。

 

問4

 水を使うと温度計の目盛りの幅がこのようにバラバラになってしまうのは,温度によって,温度を上げたときにそれだけ体積が増えるかが変化してしまうからです。

 これを防ぐためには,どこの温度で変化させても,体積の変化が一定である液体を使うのが好ましいのです。

まとめ

 理科で使われている温度計,アルコール温度計は,温度の変化によって中の液体の体積が変化することを利用したものでした。

理科の実験では,物体の温度を管理することが重要であることが多いです。それは身の安全にも関わります。

 温度が変化することによって,物体のどんな性質が変化するのかにも注目しながら,温度についての知識を幅広く学んでいきましょう。

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参考

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