小説問題読解〜岩城けい『ジャパン・トリップ』〜[中学受験国語過去問解説シリーズ]

今回は平成30年度の富士見中学校の国語の過去問を一部修正して小説の問題の解き方を説明していきたいと思います。本文は岩城けい『ジャパン・トリップ』( KADOKAWA )、もしくは以下のPDFを参照してください。 

問題

問1

−−①「順番におれたちの頭を叩いた」とありますが、「オトーチャン」のどういう思いが読み取れますか。次の中から最も適切と思われるものを選び、記号で答えなさい 

ア、しつけをきちんとしているところをショーンにも示しておこう。
イ、ふざけて笑いをとって、ショーンにはやく慣れてもらおう。
ウ、ショーンを子どもたちと同じにあつかって、特別にはしないでおこう。
エ、自分のうちの子どもから始めて最後をショーンにするのが自然な順番だろう。

  • 【解答】ウ
    順番におれたちの頭を叩いた」の前に「オカーチャンが来て、双子たちをすごい剣幕で叱りつけていた」とあります。その後にやってきたオトーチャンの行動が−−①になります。双子とショーンに対し、叱る気持ちもありつつも、叩かれたショーンが「紙だから全然痛くない」と言っている通り本気で怒っているわけではありません
    • ア、しつけをきちんとしているところをショーンにも示しておこう。
      ⇨本気で怒っているわけではないので、「しつけを示す意図はないと考えられます。
    • イ、ふざけて笑いをとって、ショーンにはやく慣れてもらおう。
      ⇨本気で怒っているわけではありませんが、「ふざけて笑いをとるつもりではなく、あくまで怒っているふりはしていると考えられます。
    • ウ、ショーンを子どもたちと同じにあつかって、特別にはしないでおこう。
      エ、自分のうちの子どもから始めて最後をショーンにするのが自然な順番だろう。
      ⇨この2つの選択肢で悩むかもしれませんが、ショーンがホームステイ先にやってきたばかりということを考えると、ショーンが馴染みやすいためにも双子と同じように扱おうとしたと考える方が妥当でしょう。 

問2

−−②「『ポカツ!』『パコツ!』『ポコン!』とありますが、この部分の表現について述べたものとしてあてはまらないものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい 

ア、乾いた軽い感じの音を続けている。
イ、おもしろい感じの音を続けている。
ウ、それぞれの音に叩く勢いが感じられる。
エ、叩く力が増していったのが感じられる。

  • 【解答】エ
    順番に軽快でコミカルに叩いていった様子が伺えるので、「エ、叩く力が増していったのが感じられる。」は当てはまらないと考えられます。 

問3

−−③「おれはなんでもないフリしてた」とありますが、その理由を述べた次の文の空欄( I )、( Ⅱ )に入る語句を、本文中から指定の字数でぬき出しなさい 

ショーンは( I(6字))性格で、( Ⅱ(18字))と思っているから。 

  • 【解答】
    Ⅰクールすぎる
    Ⅱハズカシイやつに見えるのは絶対イヤだ

この問題はショーンが「なんでもないフリをした理由を聞かれています。−−③の前に「タタミ・マットの上にすごいしりもちをついてしま」い大爆笑されたとあります。笑われてもなんでもないフリした理由が問題の答えになります。

更に解答欄の「ショーンは( I(6字))性格で、( Ⅱ(18字))と思っているから。」がヒントになります、「ショーンは( I(6字))性格」という箇所からショーンの性格について問われていることがわかります。

ショーンの性格について描いている場面を探すと、問題文の−−③の7行前に 

クラスのみんなからも、おれは「パーティーぶち壊しなヤツ」って呼ばれている。ショーンはクールすぎる、ノリが悪い、ボルテージ低すぎ、って文句を言われることもある。〜中略〜おれはハズカシイやつに見えるのは絶対イヤだ。 

とあります。 

この箇所からショーンはクールな性格である上に「ハズカシイやつ」と思われたくないので「なんでもないフリ」と考えることができます。 

問4

空欄( A )に入る語句として最も適切なものを次の中から選び、記号で答えなさい。 

ア、カリカリ
イ、バリバリ
ウ、ねちねち
エ、こりこり

  • 【解答】ア
    トーストは( A )していて」とあり、トーストに合う擬音語として相応しいのは「ア、カリカリ」であると考えられます。 「イ、バリバリ」はノリや煎餅など硬いものを噛んだ様子、「ウ、ねちねち」はしつこい様子、「エ、こりこり」はクラゲやサザエなどの歯応えのあるものを噛んだ様子を表します。

問5

空欄( B )に入る適切な語を考えて、カタカナで答えなさい。 

【解答】タマネギ 

該当の箇所を見てみましょう。 

これって( B )の皮みたいだ。料理を手伝っていて、( B )を剥いてってナンに頼まれると、どこまで皮を剥いていいのか、おれはいつもわからなくなる。 

どこまで皮を剥いていいのか」という部分から「タマネギ」であると考えられます。 

問6

−−④「大きな木の箱みたいなの」・⑤「リーン! チーン! リン! チン! リンリーン!」・⑥「壁の写真がおれを見下ろしている」に関係のあるものを次の中からそれぞれ選び、記号で答えなさい。ただし、同じ記号を二度使ってはいけません。 

ア、省略法
イ、擬音語
ウ、比喩
エ、倒置法
オ、擬人法
カ、対句

  • 【解答】
    ④ウ
    ⑤イ
    ⑥オ
    まず、それぞれの選択肢について説明していきます。
    • ア、省略法⇨主語や述語、修飾語を省略して書く表現方法。
    • イ、擬音語⇨動物の鳴き声などを表す表現方法。また、その様子を表したの表現方法を擬態語と言います。
    • ウ、比喩⇨ある物事を類似、または関係する他の物事でたとえていう表現方法。直喩と隠喩があり、直喩は「まるで〜」「〜のようだ」と表現し、隠喩は「まるで〜「〜のようだ」を使わずにたとえる表現方法です。
    • エ、倒置法⇨語や文節を普通の順序とは逆にして強調する表現方法です。
    • オ、擬人法⇨人間以外のものを人間のように表現する表現方法です。
    • カ、対句⇨対応する語句を対比させる表現方法です。

以上を踏まえて問題の箇所をみてみましょう。 

  • ④「大きな木の箱みたいなの
    ⇨「みたいなの」という表現が使われているところから「ウ、比喩」であると考えられます。
  • ⑤「リーン! チーン! リン! チン! リンリーン!
    金色のボウルに叩きつける音を表現していることから、「イ、擬音語」であると考えられます。
  • ⑥「壁の写真がおれを見下ろしている
    ⇨「壁の写真」が「見下ろしている」とあり、人間ではないものが見下ろしているということから「オ、擬人法」であると考えられます。

問8

(1)−−⑦「まさかとは思うけど、これって、もしかして、【 】!?」とありますが、「ショーン」は「これ」を何だと思ったのですか。【 】に入る漢字一字を考えて書きなさい 

(2)−−⑧「マイ・ゴー」とありますが、「カズとユウ」は実際は日本語で何と言っていたのでしょうか。三字以内で答えなさい 

  • 【解答】
    (1)墓
    (2)迷子
    • (1)飾ってある写真をみて亡くなった人の写真であると知り、更に手を合わせたオカーチャンと双子をみて、亡くなった人がいる場所⇨と考えたと推測できます。 
    • (2)そのまま発音で漢字に変化して考えて見ると「迷子」だと推測できるでしょう。 

問9

−−⑨「ユウがでっかい目をして」とありますが、「ユウ」のどのような気持ちを表していますか。「……気持ち。」という形で、三十字以内で説明しなさい。

  • 【解答】
    ショーンが日本語を話せるなんてすごいと驚き、うれしい気持ち。
    −−⑨「ユウがでっかい目をして」の後に双子が大騒ぎしている様子や、ショーンが日本語を話したように双子も英語で話し始める様子から「驚き」と「うれしさ」を感じていると考えることができます。 

まとめ

問3や問9のように文章中からぬき出す問題や、説明する問題は難しいと思います。しかし、何が問われていて、その内容がどこに書いてあるのか見つけることが大事です。また小説においては登場人物の感情の変化をさまざまな表現で書いてあります。その内容をきちんとおさえていくようにしましょう。 

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