夏休みが終わり、総合模試や学校別判定テストなど、様々なテストに加え、過去問の演習を本格的に始める時期がやってきました。
この時期、模試などを受けてみると、「理科と社会の点数が積みあがっていない」という現実に直面することはありませんか?
中学受験、特に4科目学習の場合は、算数と国語を盤石にし、そこで身につけた学力を使いながら、理科や社会でどれだけ差がつけられるか、それが高得点を生み、入試本番でも勝敗を分けるといっても過言ではありません。
この時期になると、各塾でも理科や社会の知識を整理するテキストが配られ、通常授業とは別に自学自習をすることを勧められると思います。ですが、ただ頭から覚えようとしただけでは、いくら追い込みの時期である程度の知識が積みあがっているとはいっても勘違いしたり、実際の入試問題では太刀打ちできない・・・そう思うことはありませんか?
特に理科は、知識に加え、計算力や読解力が要求される科目です。覚えることは必須ですが、実際に問題に触れて、自分の持っている知識の引き出しをうまく使うことが必要です。
今回は、理科について確認しておきたい学習方法のポイントを見直し、これから追い込みをかける上で戻るべき視点について解説していきます。
Contents
まずやるべきは基本知識が正確に身についているかどうかのチェック
中学受験生の皆さんには、理科を苦手とする方が非常に多いのが現状です。理科は生活と密着することが非常に多い科目ですが、これまで、塾では机上の知識として説明をしてもらって終わり、という状態ではありませんでしたか?どんなに丁寧に教えてもらったとしても、一つの単元にかける時間ははっきり言って非常に短く、しかもどんどん先の単元に進んでいくので、理解を深める時間もなく、知識が定着していないおそれがあるのではないでしょうか。
それがきっと模試で点数をとれない、過去問を解いてみても合格最低点に届かない、そういった結果につながっていると思います。 まずは、受けた模試や解いた過去問で間違えたところをしっかり分析することです。一度は習った知識の中から出題されているはずです。ですから、そういった問題を材料として、どれだけ基本知識が身についているのか、それは聞かれ方を変えられても答えられるまで定着しているのか、を確認しましょう。
知識を知っているとしても、それをどのような聞かれ方をされても答えられるようになっていること、それが論理的に理解しているということです。これができていれば、理科という科目はそれほど怖がる必要はありません。
見直しの第一歩は知識と論理
理科については、この「知識の習得」と「論理的理解」ができていれば、今はまだ解けない問題があったとしても、それほど身構えるものではありません。ですが、これを習得することはなかなか時間もかかり、簡単なことではないのです。塾によっても教え方は違いますので、分けて考えてみましょう。
まずは知識の総チェックを
知識が十分でなかったために点数がとれない、これは受験生のほとんどが経験していることだと思います。理科では、知識の部分を重点的に暗記すればたしかに一時的に成績は上がっていきます。しかし、ただ頭から丸暗記、というのは、受験生にとっては相当な苦痛です。
どうしても覚えなければ点数のとりようがない、知識がなければ正解できないという部分については、それは避けては通れないことなのですから、いろいろ工夫して覚えていく必要があります。いくつかのグループに分けて覚えるとか、共通部分を覚えるとか、はみ出している特徴を覚えるとか、いろいろな覚え方があります。
この、知識を重視しなければいけないカテゴリーについては、「覚えなくてもいい」ということはできません。水溶液の色の変化や天体の暗記部分など、覚えなければ話にならないところもありますから、一定の時間を暗記に割くことはやむを得ないことです。
同時に必要なのは実は読解力!理科に必要な論理性
最近の中学受験の理科は、問題文が非常に長い傾向にあります。それも、ただ文章が書いているだけではなく、実験結果やグラフなど、文章以外にも読み解かなければならないことが多いです。つまり、問題文を正確に、そして書かれている実験結果やデータを正確に読みとることが必要です。
もちろん前提として基礎知識が必要です。ですが、このようなタイプの、長文化された問題の場合、聞かれている知識そのものは難しいものではなく、むしろしっかりリード文を読んで、実験結果が何を指すのかを理解できれば、その場でしっかり考えて正解できるものも少なくないのです。つまり、読解力があればしっかり点数がとれるのです。
この時期でも、国語の読解をおろそかにしてはいませんか?入試で必要なのは、「聞かれていることに答えること」です。このような長文のリード文に様々な実験やその結果、データが含まれている出題の場合、まず正確に読みとることと、多くの問題演習を通して様々な形の出題に慣れていくことが必要ですし、対処するためにはその訓練を積むしか方法がない部分もあります。ですが、塾によって触れる問題量にかなりの差がありますし、家庭学習でも負担に感じることが多いかもしれません。
知識と論理を結びつけるために家庭でできること
知識の習得とと論理性の習得、どちらも欠かすことができない理科の勉強ですが、苦手意識を持っているお子さんには、ぜひ問題と解答を口頭で「プレゼンテーション」することによって、理解を深めるという方法を試していただきたいと思います。
つまり、頭の中に入っている知識を口に出して確認し、それがどのような問題の場合に使えるか、ということを行動で自分のものにしていくのです。塾ではなかなかこのようなことをやっている時間は取れないと思いますので、ご家庭でやっていただくのが良いと思います。
たとえば、親子2人でペアを組み、一人が問題を読み上げ、何に関する問題なのか、解法の手順はどうすべきか、その際に必要な知識は何なのか、それらから導き出される解答を相手に解説します。相手にいかにわかりやすく、興味を持てるように解説できるか意識するといいでしょう。
これをすると、まず問題の意味をよく考えなければいけませんし、解法の中に出てくる必要な知識を口に出して説明することで理解することができ、さらにわかりやすく伝えるために、知識と論理を組み合わせなければならないので、知識と論理の部分を結びつけるのに非常に有効な方法です・
これは全ての問題についてやる必要はありません。苦手としている単元や、模試などで間違えた問題を題材にして行うとよいと思います。机上で多くの問題を黙々ととく、そういう時間ももちろん必要ですが、このような「口に出して説明できるまで理解する」方式でなるべく多くの問題に触れることで、だんだん苦手意識が薄れていきます。きちんと説明できるということは、理解しているということです。ぜひ、やってみてください。
次の段階は、時間との闘い
知識、論理性が身についてきたら、ここからはその能力を使って時間が許す限り実践してみることが大切です。これが入試本番までにどのくらいできるかが、成績を飛躍的に上げることができるかどうかの分かれ目になります。
基本が知識、論理性であることは変わりませんが、それを応用していくための指標として「時間に対する意識」が必要になってきます。ただそれは、ただ短い時間でたくさんの似たような問題をやるということではありません。
いってみれば、これからの時間との闘いとは、「問題の出題者が答えてほしいと思っている内容を理解するのに必要な時間」との闘いという意味です。これは、知識や論理性の定着度ともかかわってきます。問題文を読んで、出題者が問いたいことがどの分野のどの部分のことなのかを瞬時に読みとり、必要な知識を自分の記憶の引き出しから取り出して、論理的に組み立てて解答を導き出していく、ということです。
よくある例題
実際に、どのような問題であればどう判断すべきか、例を挙げてみましょう。
【実験】右図のように、ふ入りの葉の一部にアルミニウムはくをかぶせたものを用意し、
- 一昼夜、暗室に置いておく。翌日の明け方に光のよくあたる場所に置き換え、昼過ぎに、木の葉を熱湯につけたあと、
- あたためたアルコールにつける。その後、歯を水洗いしてから、
- ヨウ素液に浸し、色の変化を観察する。
というように実験の内容が書かれ、図やグラフなどが一緒に出題されるのが最近の入試問題の傾向です。そして、以下の問題に答えなさい、という形で様々な面から実験に関する知識、読み取り能力、計算力などを試していく、というものが増えています。
この問題に答えるときには何をイメージするでしょうか?この問題に答えるときには、この実験自体がどういった目的で行われているのかという情報とリンクさせる必要があります。
ここでは、光合成について聞かれているのだな、とまず瞬時に理解しなければいけません。それがわかると、問題を解く時間も短縮されますし、1問ごとにかけられる時間も増やすことができます。
このように、問題の実験内容から何の分野の問題なのか、単元はどこか、何が問われているのか、必要な知識は何か、と言ったことを瞬時にリンクさせることができるようになると、成績は上がっていきます。
ただし、基礎の部分を「理解」しようとせず、ただ頭から「暗記する」だけにしていると、この方法で実践的な学習をしようと思っても、知識と問題が結びつかず、時間がかかってしまいます。最初に述べましたが、まず必要なのは「知識」と「論理性」です。これを意識して、まだ身についていない知識についてはとことん理解しておきましょう。
今まで暗記重視で学習してきた方への学習のコツ
知識を暗記という方法で身につけてきた場合は、応用が利かない、少し違う聞かれ方をされると答えられないという弊害が出てきます。でも、これからでもその知識を、聞かれていることにリンクさせて理解につなげていく方法もあります・
それは、実験に出てくるイラストと知識をリンクさせるという方法です。文字を暗記するのではなく、覚えるのなら図や写真を覚えるように意識すると、問題も整理しやすく、成績も上がってきます。文字で説明を一度に理解しようとしてもそうそうできるものではありません。それであれば、最近出題率の上がっている実験観察問題を意識して、図や写真、実験の図を覚えて、その知識を問題とリンクさせるようにすればよいのです。
基本的に、理科という教科の学習は、「知識」と「論理性」を身につけると、あとはいかに聞かれていることに瞬時に反応できるか、という時間との闘いになってきます。聞かれていることに瞬時に反応できるかどうかは、やはり正確な知識、理解が前提になるので、そこは徹底してやるようにしましょう。この基礎の部分が崩れると、問題を見てもさっぱり理解できないということになるので、単元リストのようなものを作成して、できたところ、できなかったところをチェックしていくなどして、基礎の学習を続けるモチベーションとなる方法を工夫するのも、理科の成績向上のために必要なことです。ご家庭でもできることなので、ぜひやってみてください。
まとめ
中学受験の理科の学習において必要なポイントをまとめておきますので参考にしてください。
- まず必要な基本は「知識」と「論理性」
- 次の段階は問題文を読んで瞬時に出題者の意図を見抜けるようになるための時間管理とモチベーション管理
基本となる知識と論理性を身につければ、ある程度の成績までは向上させることができます。ですが、その部分はあまり発想力を問われる学習とは言えない、どちらかというと単調なものになりがちなので、問題を読み解き、見抜く時間管理(タイムマネジメント)と、問題を解く際に必要なモチベーション管理が必要になってきます。
どのような形でもよいので、表を作るなどして、学習したところを埋めていくような「見える化」をしていくこともこれからの限られた時間では必要になってくるでしょう。
知識が入っていない、いつも同じところで間違えている・・・というように、むしろ焦って、とにかく頭から覚えればいいや、という暗記偏重の勉強や、知識がなくても解法がわかっていればいいのでしょうという知識を軽視してただたくさんの問題を解くことだけ考える、そのような偏った勉強を続けていてはますます理科に対する興味を持つことができず、苦手意識が残ったまま入試本番に突入することになっています。
今からでもできることはたくさんあります。まず、苦手としているところを洗い出し、そこがなぜ苦手なのか、知識が足りないのか、それともその単元でよく出題されるような形式に慣れていないのか、問題文が読めていないのか、グラフや図をよく読んでいないのか、様々なパターンがあると思います。どうか焦らずに、まず洗い出しを行いましょう。
そして、知識と論理のバランスを取りながら、人に説明できるように繰り返し理解することを意識して勉強し、少しずつ苦手意識をなくしていって、問題文を見たらどういう知識が必要なのか、どういう解法で解いていけばいいのか、ということを意識して学習を進めていくようにしていきましょう。細かすぎる知識よりも、正確な基礎知識、これが理科に求められる知識です。そして、読解力と計算力を味方につけて問題を解いていく、これを繰り返していけば成績は上がっていきます。
知識は知識、問題は問題、と分けて考えるのではなく、すべてが総合された問題が出題されるということを忘れずに、一つ一つの穴を着実に潰していきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。