首都圏には、実に300近くの中高一貫校があります。中学受験をお考えのご家庭では、志望校・受験校を選ぶのに迷ってしまい、どのように受験スケジュールを組んだらよいのかわからないということも多く、よくご質問を受けます。
中学入試をおこなうのはほとんどが私立中学校ですが、私立中学校の場合教育理念をはじめ、特色は中学校によって実にさまざまです。ですから、受験校選びにあたっては、学校の教育姿勢がわが子に合っているか、中高6年間でいかにわが子の力を引き出し、伸ばしてくれるかという点をしっかり考えておく必要があります。
ですが、多数の中学校の中からお子さんにピッタリの学校をピックアップするのはそう簡単ではありません。教育理念が似ているけれど個性の異なる中学校はたくさんあり、どこが一番わが子のために良い環境であるかしっかり考えないと選ぶのは難しいです。
そこで今回は、非常にたくさんある中高一貫校の中から、どこを受験校に選べば良いのか、受験校選びの際に押さえておきたいポイントについて解説します。中学受験はお子さんの力を伸ばすスタートです。入ってみて違った・・・ということのないように、譲れないポイントをピックアップして、来るべき受験に備えましょう。
Contents
受験校選びのチェックポイント
中学受験をお考えの場合、どの中学校を受験するか、そして入学するかということは、お子さんの成長著しい中高6年間に非常に大きな影響を与えることは自覚していらっしゃることと思います。ただネームバリューだけで選び、必死に受験勉強をして入学しても校風が合わずに転校するお子さんも実は少なくありません。
ですから、受験校を選ぶ際にはやはりお子さんに合った、またご家庭の教育方針と合致していることを考慮する必要があるでしょう。そのためには、単に偏差値だけで受験校を選ぶのではなく、その学校の教育理念や教育内容、校風、進学実績など将来に向けた進路指導がおこなわれているか、そして何よりお子さんとの相性など、さまざまなポイントに目を向けて受験校を選択していく必要があります。
では、どのような点に注意して受験校選びをしていくのが良いのか、チェックしておきたいポイントについて解説します。
伝統校か新興校か
現在受験をお考えのご家庭の場合、ご両親が中学受験を経験したという方も少なくないのではないでしょうか。自分の中学受験のときのことを思い出すと、現在より学校の数は少なく、また中学受験を目指す生徒さんの数もひとつの小学校から数人という時代もあったはずです。しかし、現在では首都圏の小学校では多くの方が中学受験を目指して勉強し、中学入試をおこなう中高一貫校の数も確実に増えています。ですから、たとえば10年前とは受験事情が大きく変わっているということも念頭に置いておいた方が良いでしょう。
以前から中学入試をおこなっている学校はいわゆる伝統校と言われることが多いですね。昔ながらの伝統的な教育方針を貫く傾向が強い学校であったりミッションスクールであったりすることが多いです。もちろん、開校当時は非常に先進的な教育理念を持ち、将来日本で活躍する学生をひとりでも多く輩出することを目指し、現在もその姿勢を強く持っている学校も少なくありません。男女御三家と言われる学校などはその代表例です。しかし一方で、伝統にあぐらをかいてしまったばかりに10年かけて偏差値を非常に落としてしまっている、つまり評判を落としてしまっている中学校も少なくありません。伝統校にはメリットとデメリットの両方があるということを知っておきましょう。
また、中学校によっては、2020年の大学入試改革や新学習指導要領を踏まえて、先進的なグローバル教育やICT教育、アクティブラーニングなど、十全では考えられなかった新しい教育カリキュラムをどんどん取り入れ、独自の方針を打ち出しているところもあります。伝統校でもこういった取り組みをしている学校はありますが、どちらかというとこのように柔軟に教育カリキュラムを変えていき、その時代に合った動きをしているのは新興校、つまり歴史の有無にかかわらず現在人気を非常に伸ばしている学校だと言えるでしょう。たとえばかえつ有明中学校は、大学入試改革にいち早く目をつけ、アクティブラーニングをはじめとした先進的な独自のカリキュラムを作り、入試もそれに合わせたものに改革している代表的な学校です。
このように伝統校や新興校にはいろいろな特徴があり、また両方の特徴を兼ね備えている中学校も少なくありません。ですから、伝統校と新興校、どちらを選ぶのが良いのか、と迷われ、ご相談にいらっしゃる保護者の方も多いのです。
これはご家庭の教育方針がどのようなものであるのかに根本的にかかわる重大なチェックポイントです。新しい教育カリキュラム、変わりゆく大学入試に向けた対策をしっかりしてくれるなら新興校を選ぼうかな・・・そのように考えるご家庭ももちろんありますが、逆に長い歴史の中で培われた確固たる信念をもって、新しいことも取り入れつつ守るところは守る、という伝統校の魅力にも目を向けると良いでしょう。
伝統校は保守的、そのようにお考えになる保護者の方は非常に多いのですが、必ずしもそうとは限りません。いわゆるお嬢様学校と言われる中学校は歴史があり、しっかりした女性として社会に進出している卒業生も少なくありませんが、やはり学校の考え方とご家庭の考え方が合わないとお子さんの居心地が悪いということにもなりかねません。一方で、ご家庭でもしっかりしつけをされている方が集まっている環境で、高度な教育だけでなく行儀作法や情操教育など、学校でしかできない指導をしてくれるという安心感もあります。
新興校の場合、さまざまなご家庭から受験生が集まってくるので、学校の先生がしっかり手綱を締めていないと学級崩壊となってしまうこともあり得ます。先生と生徒の関係や、新しいことを追い求めているだけでそれが授業に落とし込まれ、生徒の実力を伸ばしているかどうかについてまでしっかりリサーチしておく必要があるでしょう。
伝統校、新興校ともにさまざまな個性を持った魅力ある中学校はたくさんあります。ですから、保守的、人気がない、偏差値が下がっている、あるいは伝統がない、歴史がないなら進学実績も期待できない、などという思い込みだけで受験校の候補から外すことはありません。最も大切なのはお子さんとの相性と、ご家庭の教育方針との相互関係です。その点には重点を置いて候補となる学校をピックアップし、できるだけ早いうちから学校に足を運んだりオンライン説明会を聞くなどして選択していきましょう。
グローバル教育、英語教育の充実度
新しい大学入試でも、学習指導要領でも外国語、特に英語については「使える英語」を身につけるということを標榜しています。そこで、英語教育やグローバル教育に力を入れている学校を受験校の中に入れたいというご家庭も増えています。英語入試が一般入試に導入される学校があるなど、中学校側も英語教育に力を入れていることをアピールしていますよね。
英語教育が充実していることを重視するならば、実際の授業内容や使用している教材、海外研修などの制度をチェックしてみましょう。たとえば海外研修は最近さまざまな学校がおこなっていますが、多くの場合、夏休みなどの長期休暇を含めて2週間から1か月程度実施するケースが見られます。希望者は非常に多いということで、全員行ける学校もあれば抽選や面接などで海外研修に行く生徒を選抜する学校もあります。
また、これからの英語教育や「読む」「書く」「聞く」「話す」の英語の4要素が重視されることになるので、普段の英語の授業がどのように進められているのかについて詳しく学校に聞いてみるのもひとつの方法です。パンフレットなどでは授業時間数や海外研修のようすを載せていても、実際の授業内容については入ってみないと分からない、というのでは長い時間を学校で過ごすのにもったいないですよね。
ですから、学年に応じてどのような特色ある英語教育をおこなっているのか、そのカリキュラムは無理・無駄がないものか、また、使っている教材はどのようなものか、といったことについてしっかりリサーチしましょう。特に使用教材についてはしっかり調べておくことが必要です。最近は中高一貫校向けの教科書を使用する学校が多く、その内容はいわゆる検定教科書とは比べ物にならないほど難しい内容となっています。もちろんその内容についていければ大学受験にも十分対応できる実力をつけることができますが、問題はついていけなくなったときです。
難しい教材を使用していることは、高度な教育をおこなっていることのアピールのひとつにはなりますが、生徒さんがそれについていけないカリキュラムで、さらにセーフティネットとして補習の機会などを設けていなければ、あっという間についていけなくなり、英語が嫌いになってしまうでしょう。小学校でも5年生・6年生は英語が必修科目となりますが、小学校で習う内容と中学校以降で習う内容は全く違います。そして、学年が上がっていくごとに大学受験を意識した内容になってくるので、途中でついていけなくなったときどうするかも含めてよく検討しておくことが必要です。
また、英語教育に加えて、世界的に注目されている教育プログラムと言えば「国際バカロレア」(IB)です。玉川学園などが国際バカロレア教育をいち早く取り入れて人気復活していますが、国際バカロレアとは、世界で通用する思考力や表現力、そしてコミュニケーション能力を身につけるための教育プログラムです。そして、国際バカロレアが課している試験に合格するとディプロマ(認定証のようなもの)が与えられ、それは世界中で通用します。そのため、大学受験を考えたときに、難関大学で国際バカロレアが加点要素になる可能性があることや、海外の大学に進学する際にも国際バカロレアの認定を得ていることはとても有利に働くので、非常に注目を集めています。
国際バカロレアの場合も高度な英語力が要求されるので、やはり英語教育は外せません。さまざまな学校の英語教育の実態をよく調べておくことが重要です。学校説明会の個別相談会で聞いてみたり、実際にどのような教育をしているのか学校見学をしたり、学校に実際に問い合わせてみるのも良いでしょう。現在は新型コロナウィルス感染拡大の影響で直接学校に行くのは難しいかもしれませんが、オンライン個別相談や電話で問い合わせるなどしてみてはいかがでしょうか。問い合わせをしても入試で不利になることはありませんので安心してくださいね。
医学部進学実績もチェックしよう
近年、大学入試で非常に人気を集めているのが医学部受験です。医学部受験は倍率も非常に高く、大学によって独特の特徴ある入試がおこなわれるほか、面接やグループ討論が取り入れられるなど人格面も総合的にテストされる大変厳しい受験です。
一生働ける職業であることや高収入が得られること、また保護者の方がお医者さんというご家庭など、医学部を目指す理由はさまざまですが、医学部を設置している学校は限られており、国立大学でも医学部がないところはありますし、私立大学でもたった31校しかありません。そのため非常に狭き門になっています。大学の中では1次の学科試験の実質倍率が100倍というところもあり、以下に医学部受験が人気を集め、ヒートアップしているかが分かります。
このような状況から、将来的にはわが子を大学の医学部に進学させたいという目標を見据えて中学受験の段階から考える、というご家庭も少なくありません。もし医学部受験を視野に入れるのならば、受験校が医学部受験に強い学校か、毎年の進学実績も含めてしっかりチェックすることが大切です。難関国立大学も含めた医学部進学者が多い学校の例としては、たとえば男子校では開成中学校、筑波大学附属駒場中学校、駒場東邦中学校、早稲田中学校、暁星中学校などが挙げられます。最近は海城中学校や城北中学校、本郷中学校なども高校卒業時に医学部進学実績をあげています。
女子校なら、何といっても東大合格で女子校ナンバーワンの桜蔭中学校が挙げられます。医学部進学実績は非常に高く、国公立大学医学部であれば東京大学の理科三類、東京医科歯科大学医学部、千葉大学医学部、横浜市立大学医学部など、首都圏の医学部進学に非常に強みを持っています。次いで医学部進学希望者が多く、実績を出しているのは豊島岡女子中学校です。いずれも理系教育に定評のある女子校で、校長先生も理科や数学の先生であることが多いです。特に数学や理科の進度が速く、ついていくのにも一苦労ですが、塾を併用しながら確実にこなしている生徒さんが着実に医学部に進学しています。
共学校で医学部進学実績を出しているのは渋谷教育学園幕張中学校、渋谷教育学園渋谷中学校でしょう。非常に恵まれた環境の中でグローバル教育をしていることで有名ですが、理系教育にも力を入れています。何より充実しているのは進路指導です。非常に熱心に進路指導をしており、授業時間以外に生徒が先生を捕まえて熱心に質問をしていることも珍しくありません。こうした面倒見の良さも医学部進学を後押ししていると言えるでしょう。
中学入試の偏差値が高くても、たとえば大学附属校で、その大学に医学部がない場合は中学受験のときによく考えておく必要があります。たとえば早稲田実業中学校や青山学院中等部、学習院中等科・学習院女子中等科は共学でもトップを誇る大学ですが、早稲田大学、青山学院大学、学習院大学にはいずれも医学部がありません。一方で慶應義塾普通部や中等部の場合、慶應大学に医学部はありますが内部進学で医学部に行くのは非常に狭き門です。これらの学校を受験しながら医学部受験をお考えの場合は、お子さんの意欲も増して将来医学部に進めたいと考えたときに、学校の勉強と受験勉強の両立という難問が前に立ちはだかります。
ただし、附属校や系属校であっても、たとえば早稲田中学校は早稲田大学に進学できますが、毎年多くの医学部合格者を出しています。教育カリキュラムも、早稲田大学への進学枠がありながらも選択肢の幅を広げるような内容となっており、特に理数系の科目の指導には定評があります。また、学習院中等科や学習院女子中等科も近年医学進学実績を伸ばしています。医師のお子さんが多いことも理由のひとつのようですが、このような学校であれば、大学が併設されていても医学部進学をサポートしてくれるでしょう。
いずれにしても、将来の進路の可能性を幅広くしてあげるという視点が非常に大切になってきます。お子さんが将来医学部に進学したいと思った場合、あるいはご家庭が医学部に進学させたいというご希望をお持ちの場合は、中学受験する学校をどこにするか受験校選びの段階でよく考えておく必要があります。あらかじめ医学部受験という将来の目標が決まっているのなら、医学部進学実績がある学校や、医学部進学のためのサポート体制が充実している学校を選ぶことが重要です。サポート体制や教育カリキュラムについても個別にしっかり聞いてリサーチしておきましょう。
講習や補習が充実しているか
私立の中高一貫校の中には、補習や講習が充実している学校もあります。学校で講習を受けられる場合は費用が安く、なかには実費だけで受けられるという学校もあります。豊島岡女子中学校は、夏休みなどに講習をおこなっており、受講する生徒も多いです。値段も安く、学校で普段と変わらない環境で受講できルので評判が非常に高く、受験の理由に講習の充実度を挙げるご家庭も少なくありません。
また、渋谷教育学園渋谷中学校では、英語授業の充実のほかに、第二外国語講座を開講しています。たとえばフランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、韓国語を学ぶことができます。大学入試ではこういった第二外国語で受験するとハードルが下がることがあるので、英語が苦手な場合はねらい目かもしれません。ただし、大学入試で外国語は英語指定というところも多いので、よく調べておきましょう。
補習は、成績が一定水準に満たない生徒さんに対して強制的におこなう場合と、長期休暇のときにたとえばTOEICや記述対策など、豊富なラインナップで自主参加を促すものの2種類があります。特に中堅校は補習制度が充実しています。やはり勉強面で遅れが出ては、学校生活を充実したものにできませんよね。早いうちに学校側から声がけしてくれて補習を受けられる体制が整っていればリカバーも十分可能なのでぜひ利用したいところです。
こうした講習や補習の制度が充実しているかどうかも、プラスアルファの受験っ校選びのポイントであり、魅力発見だと言えるでしょう。
面倒見が良いか
生徒と先生の距離感、また保護者の方と先生の距離感というものは、学校によってさまざまです。非常に積極的にコミュニケーションを取り、授業についていけないときのフォローや進路指導についてきめ細かく対応してくれる学校や、保護者も知らない生徒さんのようすをつかんでくれる学校もあります。たとえば光塩女学校などは、「面倒見の良い先生の集団」が目玉になるほどで、授業中、課外活動中に何かいつもと違うことがあったらご家庭に連絡をしてくれるほど面倒見が良い学校です。
一方で、生徒と一定の距離を保ち、勉強についても生徒たちのポテンシャルにある程度任せて粛々と授業をおこなう、という学校もあります。男女御三家などはその代表だと言えるでしょう。そのような距離感であっても自分から勉強し、進学実績を上げているような学校は生徒のポテンシャルを信じ、相談があったときに応じる、という学校が多いようです。ですから、自ら学習についてもクラブ活動についても自分からやろうという積極性のある生徒さん、いわば精神年齢の高いお子さんについてはこのような学校の方がより自主性を養うことができて向いているかもしれません。
ただし、そのような生徒さんばかりではないので、消極的だったけれども先生の熱心さにつられて力を伸ばす、ということもあり得るので、お子さんの性格をよく判断することも受験校選びには欠かせないポイントです。
校内の人間関係に対する学校の態度
昨今は小学校でもいじめ問題があったり、いじめが原因で自殺してしまうお子さんがいるなど痛ましい事件を耳にすることも良くあります。せっかく受験勉強をして入学するのなら、入学した後うまく人間関係を築けるかどうかは非常に重要なポイントですよね。もし自分のお子さんがいじめ問題に巻き込まれてしまい不登校になったりしたらせっかくの受験が嫌な思い出にもなってしまいかねません。
そこで、いじめなど校内の人間関係や、学校の先生の毅然とした態度についても事前にリサーチしておくことが重要です。もちろん学年によっていじめがある学年、ない学年があるので一概には言えないですが、もし発生した場合に隠さずに毅然とした態度で対応してくれる先生が集まっているか、学校側の姿勢についても聞いておきましょう。学校説明会や個別相談などでそういったことを聞いても入試でマイナスになることはありません。これもお子さんの性格にも関係しますが、ぜひ受験前に聞いておきたいポイントです。
不快なところがないかどうか
以前、担当した生徒さんのお母さまは、学校説明会に行くときに必ずトイレと鏡をチェックするとおっしゃっていました。教室やトイレの掃除が行き届いているかといった、保護者の目から見て不潔に思わないかどうかという直感は意外に侮れないものです。
学校によってそういった清潔感、衛生面を重視するかどうかはさまざまです。偏差値や教育内容はもちろん受験校選びの際に大切ですが、入ってから6年間を過ごすのですから、清掃面や、実際に通っている生徒さんの外部の人にあったときの挨拶や態度などがだらしなくないか、不快に感じるところがないかよく見極めておきましょう。いくら名声が轟いている学校でも、入ってみたら名前倒れだった、うちの子に合わない、というのではもったいないですよね。こういった学校との相性も受験校選びには重要なポイントです。お子さんを預けて良いかよく考え、合わないと思った場合は思い切って外すのもひとつの方法です。
受験校の情報は親子で共有を
受験校を選ぶ際には、いくつかのチェックポイントがあります。そこに共通するのは、わが子を6年間通わせても良いと思えるかどうか、という点です。今回ご紹介したポイント以外にも、お子さんの意見を聞いてみるのも良いでしょう。お子さんにとっての受験勉強における大きなモチベーションとなるのが志望校の存在だからです。
しかし、保護者の冷静な目を忘れてはいけません。お子さんがこういっているから、という子どもらしい意見に振り回されるのではなく、意見を聞いたうえでよく話し合うことも必要です。たとえば、お子さんが小学校で友達と話したときに中学受験の話になり、「○○中学校は偏差値が低いから受かってもいかない」と言われたので志望校を迷っている、というご相談を受けたことがあります。しかし、現在のお子さんの実力と性格を考慮して、6年間通わせて実力を伸ばしてくれる学校だという確信があるなら、そういった子どもの意見に振り回されるのは避けたほうが良いでしょう。
また、仲の良くない子が受けるって言っている、制服が可愛いからあの学校に行きたい、といったことも考慮要素にはなるでしょうが(特に女のお子さんは制服が可愛いかどうかは重要だと考える傾向にあります)、それらもまた決定打にはならないでしょう。なぜなら、小学校と中学校は環境が異なり、人間関係も変化するものですし、制服にしても跡見学園中学校のようにドラスティックに変更したところもあります。そのような変化があったとしても通いたい、通わせたい学校を選ぶべきです。
お子さんが得てくる中学受験情報はやはり子どもならではの視点に限られてしまいますし、友達と話をして振り回されることもあるでしょう。もちろん受験をするのはお子さん自身ですが、客観的な情報を取捨選択することはお子さんにはまず無理です。ですから、保護者の方がイニシアチブをとって、冷静な客観的なおとなの目で判断する必要があるのです。
ただし、それはお子さんの意見を無視するということではありません。親子で受験校の候補についてしっかり話をすることはとても大切です。保護者の方が学校説明会などでどのような学校がお子さんに合っているのか、その学校に入るとどのような先生がいるのか、勉強内容やクラブ活動はどうなっているのか、将来の大学進学のためにその学校に通うとどのような良いことがあるのか、ということを丁寧にお子さんが納得するまで説明してあげてください。
そして、良い点ばかりを話して誘導しようとするのではなく、通学時間が少し長いことや、好きなスポーツの部活がないことなど、お子さんが少しがっかりしてしまう情報であっても正確な情報をしっかり説明して、それでもこの学校が合っているんじゃないかな、と話し合うことが大切です。
筆者もこれまで多くの受験生とご家庭の相談にのってきましたが、最終的に「中学受験してよかった!」とおっしゃるご家庭は、親子で受験校のことをよく共有されていますし、お子さんになぜその学校を志望校にしたの?と聞いたときにも自分なりのことばで理由を答えてくれます。そういうご家庭は親子のコミュニケーションが取れており、お子さんは勉強に集中し、保護者の方は正確な情報収集というように役割分担をして、冷静な目で中学受験をとらえています。
ぜひ納得のいく受験校選びをして、中学受験を「良い経験だった」と言えるようにしたいですね。チェックポイントを参考にして、冷静に情報を集め、受験校をKめるようにしていきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。