中学受験をするのは特別なことなの?知っておきたい中学受験の常識①

中学受験をお考えのご家庭のなかには、中学受験に対して特別なこと、と感じていることも多いかもしれません。ですが、周囲を見渡してみましょう。同じ小学校に通うお友達のなかにも、中学受験をする、という方も多いのではないでしょうか。

たしかに、ひと昔前は、中学受験をするお子さんの数は小学校全体を見てもあまり多くなかったという状況はありました。しかし、それはベビーブームなどの影響で母集団となる小学生の数が多く、それに比して中学受験をするお子さんの割合が少なかっただけのことです。

また、中学受験の勉強方法も、昔は週例テストを受けるなどしてあとは自分で勉強、ということも少なくありませんでしたが、現在は塾に通って中学受験のカリキュラムにのって勉強して全範囲を網羅するという方法を取りますよね。集団塾、個別指導塾といろいろ塾がありますが、自分に合った塾を選び、そこでの授業と宿題をしっかりこなしていって受験に臨む、という方がほとんどです。

ですから、現在では「中学受験」と言っても、わが子の選択肢を広げるひとつの方法、と受け取られることが多く、けっして特別なものではなくなってきているのです。「うちの子にできるだろうか」と心配になることもあるでしょうが、「あの学校に行きたい」というお子さんの気持ち、「あの学校で力を伸ばしてほしい」という保護者の方の気持ちが一致したなら、中学受験を選択してみてはいかがでしょうか。

今回は、中学受験について、なんとなく勉強ははじめたけれど、どうしたらいいのかわからない、あるいはまだ迷っているけれど勉強をはじめたほうがいいのか、など、中学受験の漠然とした姿を明確にすべく、中学受験の実態をお伝えしていきたいと思います。

中学受験はもはや普通のこと

中学受験人口が多い現在、もはや中学受験自体珍しいものではなくなってきています。ですが、小学校の勉強などを見ていても、あまりできていないみたい・・・そんな我が子が中学受験をしていいのかしら、と思う方も多いかもしれません。中学受験の体制を整える前に、ずばり知っておきたい中学受験に向かうために考える要素をご紹介します。

勉強が苦手でも中学受験をしていいの?

中学受験をするのは成績優秀な子供だけ--そのように思っていませんか?たしかに、受験勉強をしていくと、成績優秀なお子さんの存在が気になり、自分と比べてしまいがちです。

ですが、むしろ勉強が苦手、というお子さんほど、中学受験をすべきだとも言えるのです。もちろん、興味があれば、ではありますが。もし少しでもお子さんの可能性を伸ばしたい、またお子さんも成績はいまひとつであっても意欲があって、受験勉強に前向きに取り組めそうであれば、ぜひチャレンジしてみるべきでしょう。

お子さんは、モチベーションが高まれば勉強を嫌がることはありません。もちろん、中学受験の勉強をしているとつまずくことも多く、へこたれそうになることっもあるでしょうが、一度決めたことをしっかりやりぬこう、と親子で約束していれば、できるところまで頑張るものです。ですから、前向きに取り組もうという姿勢がみられるかどうか、は中学受験をするかどうかのひとつのバロメーターと言えるでしょう。

わざわざ中学受験をしなくても、勉強は中学生になってから頑張ればいいのではないか、高校受験もあることだし・・・と思われるかもしれません。もちろん、公立の中学校に進学し、高校受験に焦点を絞るなら、それもひとつの方法です。高校受験は中学受験と異なり、義務教育の先の教育を受けるために誰もが経験することです。それに引き換え、中学受験は義務教育の中であえてその学校に進学する、という道を選ぶことになるので、本質的に受験の性質が異なります。

また、中学校で勉強する内容の基礎は、実は小学生で習う範囲であることも多いです。勉強は基礎こそが土台になるので大切ですが、そのベースは小学生であらかた身につけていなければいけないことでもあるのです。何も入っていないのにいきなり中学生になってから勉強をしようと思っても、基礎がないので多くのお子さんは成績が伸び悩み、一部のいわゆる賢いお子さんだけが中学校3年間の間で勉強すべき内容を理解することができるのが現実です。

ですから、普通の子であればあるほど、中学受験をして、中高6年間じっくり時間をかけて大学入試にチャレンジする、そのほうがゆとりがあってかえってじっくり勉強できるのです。

共働きで子どもの勉強が見られないけれど中学受験できる?

実際に、中学勉強は塾で、そして家庭で、両方でしていくものです。ですから、勉強の習慣づけについては保護者はアドバイスできますが、実際に勉強に臨むのはお子さん、そしてその内容を教えてくれるのは塾の先生です。ですから、保護者の方がイチから張り付いて勉強を見なければいけない、という訳ではありません。

たとえば、お休みの日に暗記ものに付き合う、また、親子で話し合う時間を取って受験勉強のスケジュールを考えていく、というサポートは共働きのご家庭でも十分できることです。ですから、べったり張り付かなければいけない、と考える必要はありません。

中学受験は、お子さんがどのように幸せに将来を送れるか、ということに根本的にかかわります。親でもわからないお子さんの特質を伸ばしてくれる中学校との出会いは、お子さんの世界を広げ、将来への展望を見つける手助けになってくれるでしょう。つまり、中学受験はお子さんの幸せのためにすることなのです。

それでも家での勉強が見られないのは心配・・・という場合は、個別指導塾や家庭教師につきっきりで見てもらう、という方法もあります。保護者の方が無理しすぎる必要はありません。そうした場合も含めて、共働きであれば経済的に余裕が出ます。ですから、役割分担という視点を持つことができれば、共働きでも十分中学受験はできますよ。

最後までリタイアせずに走り切ることこそ大切

ときどき見られるのですが、中学受験勉強をはじめてみたものの、思うように成績が上がらないので、やはり無理そう、止めようかな、高校受験という方法もあるし、とお考えになるご家庭は少なくありません。その場合は、お子さんの意欲がどれだけ高いかによって結論を出すようにしましょう。せっかくお子さんがモチベーションを持って勉強しているのに、保護者の判断だけで中学受験からリタイア、というのはお子さんにとっても決して良い影響を与えません。勝手にあきらめさせられた、と中学校に入っても勉強に背を向けてしまうことさえあるのです。

中学受験をしようと決めたら、リタイアせずに最後まで走り切ることが何よりも大切です。もともと中学受験をするという決断をする際には、ある意味お子さんの人生を幸せな方向に変えていくという意識をもっているはずです。勉強している中でつらいこと、大変なことはもちろんたくさんあります。ですがそれは、成績の上位下位にかかわらずあることです。そのトンネルを抜けた先に、合格の二文字が待っているのです。

また、リタイアせずに走り切ることには、中学受験をしたことによる価値観の変化も生み出します。全国一律に決められた学習指導要領にしたがったお仕着せの勉強ではなく、学校ごとの考え抜かれたカリキュラムで思考の幅を広げていけるのが中学受験をするもうひとつのメリットです。

もし中学受験をせずに、公立中学校に入る場合と、私立中学校を受験してそこで6年間どのように過ごせるかということをてんびんにかけ、どちらがお子さんにとって豊かな学生生活になるか、ということを考え抜くことも大切です。人生の楽しみを見つける時期でもありますから、慎重に話し合ってくださいね。

難関中を目指すべき?偏差値が気になる

中学受験を目指すなら、やはり難関校を受験するための勉強をしなければいけないのでは、それは大変なのでは、と考える保護者の方は少なくありません。もちろん、目標は高く持つに越したことはありません。ですが、現在では数多くの私立中学校があり、校風や教育方針は実にバラエティーに富んでいます。ですから、難関校ということばにまどわせられることなく、お子さんに合っているかどうか、という視点で学校を選ぶことが大切です。

「いい学校に入って・・・」ということばがよく聞かれるのが中学受験の特徴のひとつ、と言っても過言ではありません。ですが、「いい学校」とは何でしょうか。難関校だけでしょうか。そうではありません。いい学校とは、お子さんが安心して学生生活を送ることができる環境が整っている学校だと言えるでしょう。もちろん難関校がそうではないと言っているわけではありません。お子さんの自主性と学校側の引き締め、そのバランスがしっかりとれている学校が「いい学校」と言えるのではないでしょうか。

たとえば、いじめは多くのお子さんが集まっているとどうしても出てくる問題です。会社でもあるのですから、社会の縮図ともいえる学校の中でもいつ起こるかわかりません。そんなとき、放置する学校はいい学校とは言えないでしょう。いじめにアンテナを張り、素早く対応してくれる学校がいい学校だと言えます。よく、いじめの事実を隠して大問題になるケースがニュースでも見られますよね。そういった学校はいくら偏差値が高くてもいい学校とは言えないでしょう。

また、それぞれ異なるいろんな才能を持ったお子さんたちがたくさん集まってくる学校も、お子さんにいい刺激を与えてくれるという点でいい学校と言えるでしょう。それは、実際に通っている生徒さんのようすを見たり、実際に学校を見に行ったりする中で選ぶことができます。

大切なのは、「あの学校に行きたい」と思ったときに、その学校を受験校の選択肢に入れることができるだけの実力をつけることです。偏差値はたしかにその学校の人気のバロメーターですが、そこには表れない適性というものもあります。お子さんに合っていると思う学校をなるべく早くピックアップして、その中で最も偏差値が高い、つまり人気の高い学校を選ぶ、といった姿勢も大切です。

教科別・中学受験勉強の特徴

ここからは、中学受験に必要な4教科それぞれ、実際のところどんな特徴があるのかご紹介します。

算数は実は見かけほど難しいわけではない

中学受験の算数は受験算数とも言われ、小学校で習う内容より難しいことは事実です。そこで、算数を何が何でも克服しなければ、解けない問題が多いけれど解けるようになるのかと不安になる保護者の方も少なくありません。

たしかに、中学受験の算数をやってみたところ歯が立たず、やる気がなくなってしまうというお子さん、保護者の方は多いです。特に学年が進んで複雑な問題になってくれば来るほど解ける気がしない、という声もあるくらいです。6年生になれば入試レベルの難問を解くことになるので、とてもじゃないけれど解けない、と弱気になってしまう気持ちはよく分かります。

しかし、実は6年生になって解くような入試レベルの難問よりも、受験算数を勉強しはじめる第一歩となる「基礎」を克服する方がよほど大変なのです。つまり、問題を解くための道具を身につける段階こそが先々の算数の実力を左右すると言ってもいいでしょう。

基本的に、標準的な問題をしっかり解くことができていて、それをキープできていれば、難関校を目指すことも現実味を帯びてきます。こんな問題解けない、と思われる問題が出てきても、それは実は受験の定番問題でそれほど複雑ではないということも良くあります。算数は、とにかくたくさん問題を解いてパターンを覚えればいい、という教科ではありません。むしろじっくり時間をかけて伸ばしていく教科だと言えるでしょう。

また、特殊算など小学校では習わない文章題が出てきたり、数列のように中学校以降で学ぶような内容が入っていることもあるので、そういった受験算数の特殊性に苦労されるというご家庭も少なくありません。

たしかに、そういった受験算数ならではの単元、問題は一見難しく思えます。しかし、よく見てみると実はそれほど難しくなかった、という問題も多いのです。複雑に見える数列も九九が分かっていれば十分取り組むことができたり、特殊算でも硬貨を使って勉強してみるとピンとくることも多いので、大切なのは「難しそう」ではなく、「こう考えたらいい」と前向きに取り組む姿勢です。

たとえば、等差数列を考えてみましょう。「4.7.10.13,・・・の〇番目の数字を答えなさい」という問題があったとしますね。その場合、差が「3」ですから、近い「3,6,9,12・・・」に思い至ることができれば、1ずれているだけだ、と気づくことができます。要するに九九という基礎ができていて、それを使いこなすことができるかがポイントなのです。

どうしても「答えが正解であること」だけを気にしてしまい、〇つけをするときも正解かどうかだけに目が向きがちですが、こうした基礎の使いこなしができているかどうか、つまり解法や解く手順が分かっているかどうかのほうがずっと大事だということを忘れないようにしてください。

国語は読解力だけでなく作業力も必要

受験算数は中学受験ならではの教科なので、早め早めにやらなければ、という意識が働きます。では、もうひとつ配点の高い教科である「国語」については皆さんどのような意識で勉強しているでしょうか?やみくもに出てきた問題文を読み散らかしても成績は上がりません。大切なのは国語において重要なのはどのような力か、そしてそれを身につけるためにはどうすればいいか、ということです。

国語と言えば読解力、それは真実です。中学入試の国語でも、普段の受験勉強でも、読解問題がほとんどを占めます。ですが、ここでいう「読解力」とは、問題文に書かれている内容をすべて理解する、ということではありません。どこに何が書いてあって、筆者は何が言いたいのか、ということを文章の中から抽出する作業力と言ってもいいでしょう。

入試問題に出てくる文章は、当然大人が書いています。そして、テーマも小学生では理解できない内容であることがほとんどです。特に論説文、説明文、エッセイなどではその傾向が顕著です。物語文も、最近は大人の視点が求められる文章が多く、小学生にとっては荷が重いと思われるかもしれません。

しかし、難しいと思うのは、書かれている内容を完璧に理解しなければいけない、と思うからです。どこに理由が書いてあってどこに結論がある、具体例はどこに書かれているか、主人公の気持ちが表れているのはどの部分か、どこで心情が変化しているか、といったことをつかめれば、内容を理解できなくても解ける、それが国語です。もちろん理解できればそれに越したことはありませんが、まずそういうお子さんは一握りでしょう。ですから、作業力がものをいう教科、それが国語だと言っても過言ではありません。

記述問題も、文の構造や関係性を理解しながら自分で組み立てていくことが必要なので、求められるのはやはり作業力だと言えるでしょう。「Aが原因でBになった」という因果関係がつかめれば、たとえAやBの内容を理解できなかったとしても組み立てることができますよね。そうすれば、記述問題も完答することができるのです。選択肢問題でも同じです。

長文を最後まで読み切ること自体が大変、と感じる方も少なくありません。難しいことばが並んでいる文章を見るとひるんでしまうかもしれませんが、途中でわからないことばが出てきたとしても、まず最後まで読み切って問題を解いていくことが必要です。読む段階でどこに何が書いてあるかを書き入れながら、まずは最後まで読み切りましょう。設問を解いていく中で理解が深まることも少なくないので、一度読み切ることが大切なのです。

ひとつの問題が解けたことで、そこまでの内容が分かり、それが次の問題のヒントになる、というのが中学受験の国語の特徴です。問1が解けたらその答えが問2のヒントになり、次々といていく中で「あ、これはこういうことか」ということに気づくことができます。設問は連続的であることが多いので、最後の問題を解き終えてはじめて、その問題の読解が完成する、それが中学受験の国語なのです。

こうした国語の勉強法、読み方をマスターすると、結果も出るようになります。国語の点数を伸ばすことはそれほど難しいことではありません。ですから、作業力を身につけ、まずは読み通してみる。それを繰り返していってください。

理科・社会は暗記の前に興味と関心を養う時間が大切

理科と社会、というと「暗記でしょ」と考えていませんか?たしかに暗記が多い教科であることはたしかですが、覚えればいいはずなのに覚えられない、暗記に苦労するというお子さんは少なくないのが現実です。それはなぜなのでしょうか。

どうしても算数、国語の配点が高く、理科と社会は配点が低いという傾斜配点を実施する学校が多い関係から、まずは算数、国語、時間が合ったら理科社会、という形で後回しにしてしまったり、かけるべき時間をかけなかったりすることはよくあります。

暗記だから最後に何とか詰め込めばいい、という考えをお持ちの保護者の方も多いのですが、結論から言いますと、短期間で完璧に暗記する方法はありません理解する時間をとらなければいくら頭から覚え込もうと思ってもできるものではないからです。

また、理科では計算問題も入ってきます。これは、暗記した基礎事項をどう使いこなすか、ということがポイントになりますが、苦手とするお子さんが多いです。それはなぜかというと、暗記すべき基礎事項そのものを理解できていないからです。

理科と社会は、興味と関心があるからこそ点数を取れる教科です。しっかり時間を取って理解しながら覚えていけば覚えられる数がぐんと増えます。ですから、成績を上げるためにはじっくりとまずは興味と関心をもってものごとを理解する時間を取りましょう。算数と国語に時間を取られがちですが、1週間の勉強スケジュールの中で、ここでは必ず理科と社会をやる、と時間を確保してしまいましょう。

また、理科と社会の知識は「正確であること」が求められます。成績上位生でも意味を取り違えて覚えていることが多いので、あわてず時間を確保して一つひとつ理解しながら覚えていきましょう。

まとめ

今回は、知っておきたい中学受験の常識その1として、中学受験の重要性、必要性、そして各教科の勉強の特徴についてご紹介しました。いまや中学受験は決して珍しいものではありません。周りにもたくさん中学受験を目指して勉強しているお子さんもいるでしょう。

しかし、とりあえずはじめてみて、成績が伸びなかったらいいや・・・という甘い気持ちで乗り切れるほど中学受験は甘いものではありません。重要なのは、はじめたらリタイアせずに最後まで走り抜けること。なにごとでもそうですが、中途半端に終わらせてしまうと、せっかく得られたであろう結果を得ることができません。最後までやり切ってこそ結果がついてくること、そして必要以上に難しいことは求められているわけではないことに気づいていただきたいと思います。

中学受験が成功体験になれば、その後のお子さんの将来の選択肢が広がりますし、何より達成感を得ることができます。学習を続けていくなかで、達成感を得ることはとても大切です。「これができた」「だから次をやってみよう」という意欲が出るからです。

中学受験が終わっても、お子さんの学びは続きます。その環境をより良いものにしてあげるためにも、中学受験はとても大切な経験になるでしょう。

次回は、知っておきたい中学受験の常識その2として、塾や学習方法についてお伝えします。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、一橋セイシン会にて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。