【中学受験】入試方式が多様化!受験校をどう選ぶ?

中学入試は、基本的には国語・算数・理科・社会の4教科の入試が従来ではほとんどでした。現在も難関校・中堅上位校を中心に、4教科入試が中心であることに変わりはありません。しかし、近年、大学入試改革の影響も少なからずあり、中学入学のその後を見据えたさまざまな入試方式を採用する中学校が増えてきています。たとえば適性検査型入試や算数入試などの1教科入試といったものが代表的です。

入試方式の多様化が進むということは、受験校の選択肢の幅も広がるということです。ただし、たとえば1教科入試だからといって難易度が低くなるわけではありません。1教科入試の場合、その教科について腕に覚えのある受験生が集中するので、かえって難関となることもあるのです。

入試方式によってとらなければいけない対策はさまざまです。今回は、受験校を選ぶ際の参考として、近年いろんな形で導入されている入試方式についてご紹介します。それに対応するためにどのように学習を進めていったらよいのかについても解説しますので、参考にしてくださいね。

受験校を意識して対策を練る

中学入試で受験校をどこにするか決めるタイミングはいつでしょうか?ベストタイミングというのはお子さんによってさまざまですが、新・6年生のカリキュラムが始まる5年生の2月の時点の成績や模試の偏差値で決定するケースが多く、ひとつのタイミングと言えるでしょう。それまでにも4年生、5年生時のテストなどの偏差値は、参考にはなりますが、これから1年間、という受験学年に上がるときの実力の方がより受験校を選ぶ際の指標としては重要です。

6年生のはじめがひとつのタイミング

なぜなら、6年生からのカリキュラムというのは、基本的に中学受験において必要な学習単元を一通り終えたうえで、問題演習中心になります。つまり、中学受験の基礎基本が4教科すべてどのレベルまで固まっているのか、その状態を前提にするので、この時期の成績が受験校を決めるには一番参考になるのです。もちろん、今後の頑張りによって受験校のレベルアップの可能性は十分ありますが、いったん目標を定めてみるには、このタイミングが重要になります。

ただし、どの学校を受験するか、あるいは受験できるようになるか、ということを考えるうえで大切なのは、もちろん偏差値など成績データをたたき出すことも必要になりますが、受験を考えている学校の傾向に合わせた学習を進めていくことがそれ以降重要だということです。

受験校の出題傾向を吟味して

受験を考えている学校、特に第一志望の学校については、よく出題される単元や配点を研究して、対応できるように基礎から応用、発展問題まで学習していく必要があります。たとえば、特に難関校では算数で図形、それも立体図形の出題は不可欠です。図形が苦手だからと対策をしなければ、入試を受ける前に勝負がついてしまいます。また、文章題もレベルが高いので、結局のところいずれの単元も穴のないようにまんべんなく基礎基本を固め、問題演習して経験値を上げていくことが必要です。

国語であれば、どのような文種が出題されても対応できるような読解力、解法を身につける必要があります。また、何よりも長文読解に耐えきる力も必要となります。難関校では、7,000~10,000字程度の長文が出題されることも少なくありません。また、学校によって説明的文章に重点が置かれているのか、それとも物語文一本勝負なのか、など、出題される文種が異なります。受験を考えている中学校の出題傾向を押さえたうえで、苦手な文種があれば重点的に対策を行う必要があります。

理科や社会は知識問題が多いですが、分野ごとにまんべんなく出題されることが多いので、全体の範囲をむらなく理解し、知識を整理しておくことが必須になります。近年では理科なら実験観察問題、社会なら融合問題でリード文が長文化している傾向があります。また、ひとつの知識について多方面から聞いてくる問題も出題されやすいので、知識を理解したうえで使いこなせるまで身につける必要があるでしょう。

4教科入試はバランスが大切

このように4教科入試はバランスよくボリュームある受験勉強をする必要があるので、教科ごとの得意・不得意の波が大きかったり、1教科は飛びぬけていいけれどほかの教科の成績がなかなか上がらない、といった場合は、2教科入試や1教科入試といった入試方式も視野に入れることを考えても良いでしょう。

いずれにしても、受験校を意識した対策をおこなっていくというのが、受験生が意識しなければならないポイントです。現在6年生の受験生の皆さんは、受験校にはそれぞれ出題に特徴があり、毎年出ているような単元はしっかり克服するという意識が今まで以上に重要になります。

進学校と附属校の傾向も知っておこう

一概にいうことはできませんが、受験校が進学校なのかそれとも附属校なのかによっても出題の傾向が異なります。たとえば、進学校の場合は横綱級の難問、長文の問題を数少なく、あるいは基礎的な問題を数多く、というように分かれます。一方、附属校の場合は、短めの問題を大量に処理する事務処理能力が重視される傾向が一般的にはあります。ただし、たとえば女子学院は進学校ですが短めの問題を大量に出題する事務処理能力を重視しますし、慶應普通部は附属校でありながら、1問1問のボリュームが大きく、難問ぞろいという傾向があるので、最終的には大まかな傾向の中から、受験校に合わせた対策法を見出してそれを実行していくことになります。

どちらの型であっても、短い制限の時間で1問1問一見して解法を思い出し、試行錯誤して解答を出していくということに変わりはありません。適切な問題の解き方、そのプロセスをしっかり身につけておくように高いレベルで十分対策しておく必要があるのです。

1教科入試を選択する場合も4教科対策はやはり必要

従来は午前中入試のみということがほとんどでしたが、近年、午後入試という入試形態もすっかり定番化しています。午後入試は、午前入試から「はしご」して受験してくる受験生が多いこともあり、中学校側もいろいろと配慮しています。そのため、受験教科の少ない入試を実施するというのは自然な流れだったと言えるでしょう。

1教科入試もさまざま

たとえば、算数のみの1教科入試は男子校を中心に広がりを見せていますし、そのほかにも算数・国語・英語の中から1教科を選択して受験する入試や、算数・国語の2教科入試、算数・理科の2教科入試など、中学校によってさまざまな入試形式が編み出されているため、選択肢の幅が広がりつつあります。

とはいえ、入試教科数が少なくなれば楽になるかというとそうとは限りません。1教科入試は、基本的にその教科がとても得意、という受験生が集まってきます。塾で行われる模試などでは、4教科の偏差値を見てきたと思いますが、1教科となるともちろん偏差値は出るものの、模試の出題と学校ごとの1教科入試の出題傾向は大きく異なります。ですから、模試で出た偏差値だけを頼りに受験するのはリスクもあるということを知っておきましょう。

1教科入試は、その教科が飛びぬけて得意、いくらでも解き続けられるほどのレベルの受験生を合格させるための入試です。たとえば世田谷学園でおこなわれる算数1教科入試は非常に難度の高い問題が並びます。算数入試の先駆けとも言われる入試ですが、受験生の中には4教科バランスよく偏差値70以上というお子さんもいれば、算数だけは常に偏差値70程度、ほかの教科は50くらい、というお子さんもいます。ただし、算数には論理的思考が求められるので、ほかの教科が壊滅的、ということはまずありません。ですから非常にレベルの高い入試になることがわかります。

英語入試も増えている

また、英語1教科入試も増えてきていますが、以前は英語入試といえば帰国子女入試でした。現在は、一般入試の教科に英語を取り入れる中学校も出てくるなど、様変わりしています。レベルは学校によってさまざまですが、英検4級程度で大丈夫なところもあれば、英検2級、準1級レベルを要求する学校もあります。これまで小学校では英語の勉強は本格化していませんでしたので、現在の受験生の場合、それほど高いレベルでチャレンジすることができるかといえば、少し難しいでしょう。

いずれにしても、1教科入試をはじめ、4教科入試以外の入試を受験することをお考えの場合は、どんな受験生が受けに来る入試なのかという情報をしっかり集めて、実力を発揮できるように準備することが必要です。

それでも基本は4教科

負担が少なくなるなら・・・と1教科入試や2教科入試を選ぶという選択肢はもちろんありますが、最初から決め打ちしてしまうと、傾向が変わったときに太刀打ちできません。やはり多くの学校の入試の基本形は4教科入試なので、もしそれ以外の方式の入試を受けるうえでも、4教科まんべんなく学習することが必要になります。特に、とびぬけて1教科できる、というお子さんの場合、その教科ばかり勉強してほかの教科をおろそかにしてしまい、苦手となってしまって結果的には不合格になり、それを引きずって1教科入試を受けてそこでも不合格、という最悪のシナリオになってしまうこともあり得るのです。

1教科入試を考えている、という場合であっても、4教科まんべんなく基礎基本を押さえ、まずは4教科入試で競り負けない力をつけましょう。そのうえで、1教科入試の対象になりやすい算数・国語については訓練を積み、少なくとも2教科・4教科選択入試に対処できるようにしておくと、直前期に理科・社会が伸びて来たときに、さらに受験校の選択肢の幅が広がります。

適性検査型の入試においても4教科対策は必要

公立中高一貫校では、適性検査がおこなわれます。適性検査は、従来の入試とは異なり、単元ごとの個々の知識を問われるというよりも、その知識を前提にしてデータや図表を読み解き、知識をどう使いこなしてまとめるか、という問題が出題されます。大学入試改革や学習指導要領の改訂の流れに合致している入試形式です。

公立中高一貫校の入試の倍率は7~10倍程度と非常に高いです。そのため、公立中高一貫校を目指すならそれに合わせた対策が必要になりますが。それでも基本は4教科の正確な知識と使いこなす力なので、私立中学校の入試対策は非常に役に立ちます。出題形式が異なるだけで、データや図表をしっかり読み取るということはいわゆる4教科入試でもトレンドとなっています。

私立中学校の適性検査型入試の場合、公立中高一貫校を第一志望として併願校として受験するという方も少なくありません。問題の見た目が違うだけで、問われているのは4教科の基礎基本の知識や解法とその使いこなし方なので、4教科入試で思考型の問題を多く解いているとそれも対策のひとつになります。適性検査型入試をおこなっている私立中学校は、どちらかというと入口偏差値は低めで、出口偏差値が高くなる傾向があります。併願校のひとつに考えておくのも思考の訓練になるので良いでしょう。

ダブル出願、トリプル出願も考えよう

基本的には、1回の入試日については1校出願する、というご家庭が多いですが、万が一の不調に備えてダブル出願、トリプル出願をしておくというのも保護者としては考えておきたいところです。

ダブル出願、トリプル出願というのは、1つの入試日に2校、あるいは3校出願しておき、当日のお子さんの調子や、それまでの入試結果を踏まえてどこを受けるか選択肢をいくつか作っておく出願方法です。

たとえば、豊島岡女子中学校は、2月2日、3日、4日と3日連続で入試を行います。御三家の併願校としても有名ですが、いまや偏差値もうなぎのぼり、第一志望として考える受験生も非常に多い難関校です。この学校にどうしても行きたい、という場合、多くの受験生は複数日程に出願します。このように複数回入試をおこなう上位校は少なくありません。公表はしていませんが、学校によっては複数回受験することが優遇措置の対象になる場合もあります。

ただし、受験生の入試当日の精神状態は大変不安定なものです。そのため、入試本番で思うようにいつもの実力が発揮できないというケースも少なくありません。その結果、複数回受験の1回目、2回目ともに不合格となってしまう場合があります。そのような場合に備えて、あらかじめダブル出願、トリプル出願しておいて、お子さんの調子や意思の強さに応じて最も合格を狙いやすい学校を受験する、という方法があります。

複数回入試を実施している学校の場合、当日の朝の出願を受け付けている学校もあります。そういった情報も念頭に置きながら、受験校の候補を絞っていくと良いでしょう。

得意教科に合わせて志望校を決めるのもひとつの方法

さまざまな入試方法がありますが、中学受験においては合格校=お子さんに合った学校、という考え方もできます。中学受験生の学力には精神的な面も多分に影響するので、精神的成長によっては、志望校と受験生の状態の乖離が見られることは少なくありません。

志望校、受験校を選ぶ際には、まずはお子さんの4教科の状況をしっかり把握するようにしてください。基本は4教科の実力をバランスよくつけ、どのような学校にも対応できるようにしておく必要があります。その中で、お子さんが特にどの教科を得意としているのか、どの教科で点数が取れたときはどの教科で落としているか、などを細かく分析したうえで、4教科以外の入試形式も選択肢の中に入れていく、という方法をとると良いでしょう。

今後も各中学校の入試形式は変わっていくことと考えられます。大学入試改革が始まればそれに合わせて形式を変えてくる学校も増えてくるでしょう。それぞれの学校の入試の傾向をしっかり把握し、それに対する対策がどれだけできるかが結果的には入試の合否を分けます。

まとめ

現受験生の6年生の方は、9月に入り本格的に志望校対策が始まっている時期ですが、一つひとつわからないところがないようにつぶしていく必要があります。特に難関進学校の場合、解答までのプロセスが重視される傾向があるので、学校別の対策は必須となります。塾の志望校別コースに通うのが一般的ですが、新型コロナウィルスの影響や学校の補習授業などもあるので、例年通りにいかない可能性があります。その場合は、個別指導などもうまく活用し、自分がどこができていてどこができていないのか、どこから弱点を潰していくべきか優先順位をつけていくこともひとつの方法です。

お子さんに合った志望校、受験校を選ぶためにも、これからは実際の過去問演習を中心とした志望校別の対策が非常に重要になってきます。志望校や受験校の傾向が良くわからない、という場合はお通いの塾や、個別指導の先生に相談し、何から手を付けていけばいいのか、ということを早急に決めて学習計画を立てて着実に進めていきましょう。

並行して、学校情報を集め、どのような入試方式があるか、わが子が受験するのに向いているか、その学校について通わせても良いと思えるかどうか、そういったことも保護者の方が考える必要があります。ぜひ、お子さんの頑張りを後押しして、納得のいく志望校・受験校選びをしていきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。