社会問題読解〜国会と国際社会〜

今回は平成30年度の青山学院中等部の社会の過去問を一部修正して社会の問題の解き方、さらに国会、国際社会について説明していきます。 

問題 

次の【A】〜【C】の文章を読み、あとの問いに答えなさい。 

A 

日本では、国会が唯一の立法機関です。法律案の提出から「委員会でも審議・採決」を経て、「本会議での審議・採決」を衆議院・参議院で行い、両院で可決されれば法律案となります。 

問1

下線部の仕事として正しいものを次の①〜④から1つ選び、番号で答えなさい。
①最高裁判所の判決を審査する。
②裁判官として、ふさわしくない人を辞めさせる裁判を開く。
③最高裁判所長官を任命する。
④地方裁判所の裁判官を指名する。

【解答】

裁判官として、ふさわしくない人を辞めさせる裁判を開く。 

【解き方】

日本国憲法では国会内閣裁判所の独立した機関が互いに抑制しあい権力を分散させることで職権の濫用が行われないように、国民の権利と自由を保障するため三権分立」が定められています。 

それぞれの役割についておさらいしましょう。 

国会は裁判所に対し、弾劾裁判を行える権利を持ち、内閣(行政)に対し、内閣総理大臣の指名や内閣不信任案を提出できる権限を持っています。一方、内閣(行政)では国会の召集、衆議院の解散など国会に対する連帯責任を持ちます。更に裁判所に対しては裁判所長官の指名・任命権を持ちます。司法を司る裁判所は国会に対し、違憲立法審査権があり、内閣(行政)に対しても適法性を審査する権限を持ちます。 

以上のことを踏まえて選択肢を見ていきましょう。

  • ①最高裁判所の判決を審査する。→裁判所
  • ③最高裁判所長官を任命する。→内閣
  • ④地方裁判所の裁判官を指名する→内閣

よって国会の仕事に当たるのは裁判官として、ふさわしくない人を辞めさせる裁判を開く。となり、ふさわしくない人を辞めさせる裁判というのは弾劾裁判のことをさします。 

B 

昨年7月。日本とEUは交渉開始から44ヶ月の歳月をかけて、( イ )の大筋合意に至りました。( イ )は関税の引き下げだけでなく、貿易を妨げている事がらをなくすことを目的としています。 

問2

( イ )にあてはまるアルファベットの略称を次のから選び、番号で答えなさい。 

①TPP
②GATT
③EPA
④FTA

【解答】

③EPA 

【解き方 】

それぞれのアルファベットの略称が何をさすのか説明していきます。 

  • ①TPP
    環太平洋パートナーシップ協定( Trans-Pacific Partnership Agreement )
    …オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国及びベトナムの合計12カ国で結ばれた経済上の国益の確保・増進に関する協定。
    2015年10月のアトランタ閣僚会合で大筋合意し、2016年2月に署名されました。しかし、2017年に米国が離脱、残った国々で交渉が続いています。
  • ②GATT
    関税および貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade)
    …世界における貿易の障害を排除し、自由貿易の拡大を目指し1948年に制定されました。日本は1955年に加盟。1995年に WTO(世界貿易機関)が設立され、GATTはWTO協定に受け継がれる形となりました。
  • ③EPA
    経済連携協定(Economic Partnership Agreement)
    …二国間や、複数の国や地域の貿易における障害をなくし、貿易の自由化から、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作りなど幅広く経済活動に関わることが制定されています。
  • ④FTA
    自由貿易協定(Free Trade Agreement)
    …特定の国や地域における貿易の関税やサービス貿易の障害をなくし、円滑に貿易を行うことができるよう制定された協定です。

ポイント 

EPAFTAは似ており混同しがちですが、貿易の自由化について制定されたFTAに対し、EPAは自由貿易だけでなく、投資や知的財産など幅広く網羅している違いがあると覚えると良いでしょう。 

選択肢のアルファベットの略語の内容を把握した上で、【B】の問題を読んでみましょう。選択肢の後ろに「関税の引き下げ」、「貿易を妨げている事がらをなくすこと」などから貿易に関する協定だということは分かります。更に注目したいのは交渉相手がEUであるということです。TPPにはEU圏の国は含まれていないため、①TPPは選択肢から外れます。

昨年7」「EU」というところで結びついたかもしれませんが、20187月(この問題では昨年となっていますが、平成30年度(2019)の過去問題のため昨年に当たるのは2018年になります)に署名され、20192月に発行された協定はEU経済連携協定EUEPA)です。経済連携協定のため、答えは③EPAとなります。 

まとめ 

今回は問1日本の政治三権分立についての内容になっています。問2国際社会、特に貿易についてと大門の中でもジャンルが異なる問題でした。 

しかし、日本の政治についてはよく出てくる問題でもあるので、今一度それぞれの役割についておさえておくと良いでしょう。貿易については混同しやすいアルファベットの略語をまとめて覚えておきましょう。問2の問題をみてみると分かる通り、非常にタイムリー話題が問題となりこともあります。その年にニュースになった国際社会での動きや、日本の政治の話題も注目しておくと良いかもしれません。 

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