【中学受験】6年生、今からの学びと志望校対策の注意点

9月に入り、来年早々に中学受験をする6年生の皆さんは、徐々に近づく中学入試を意識して日々の受験勉強に取り組んでおられると思います。この時期は各塾で志望校別講座なども実施され、拘束時間も長くなるので効率的に勉強するにはどうしたらよいか迷うことも少なくないかもしれません。

日々の受験勉強としてこの時期何をやったらいいのか、というご質問を良く受けるのですが、基本は過去問対策と基礎基本の確認の両輪を回していくこと、ということになります。志望校の過去問を解くことは出題傾向を知り、制限時間内に解ききることができるか、どの程度点数が取れるか、という目安を知るために非常に重要なことです。ただし、過去問は「仕上がった」受験生が解くものですから、最初からなかなか合格点をとれないと焦ることもあります。

そこで必要になるのが、基礎基本の確認です。過去問対策としては、志望校の過去問だけでなく各中学校の入試問題の類題などを解いていくことになりますが、特に難関校の場合、解く問題数が多く、また難易度も非常に高くなります。今まで頑張って勉強したのになぜ解けないのだろう?と思うことも多いでしょう。そういったときは、原因を分析し、自分に足りないところを潰していくことが必要です。

ただし、その場合、ただやみくもにいろんなパターンの問題に手を出せばよいというものではないことに注意しましょう。過去問はたしかに時期的に4ヶ月、5ヶ月後の自分が解くレベルの問題なので難しく見えると思いますが、出題意図が分かれば基礎基本を使いこなして解くことができる、どこかで見たことがあるものがほとんどなのが現実です。問題の見た目にとらわれてしまい、全然解けない、もうだめだ、と考えてしまう受験生や保護者の方は多いのですが、実は「何を問われているのか」が分かれば対応できる問題がほとんどで、難問・奇問のたぐいは近年の入試ではあまり出題されることはありません。

特に今年は新型コロナウィルスの影響もあり、塾の授業を十分受けられなかった受験生に配慮して基本的な知識を問う問題を出題するという中学校の発表もあるくらいですから、問題の見た目に左右されるのではなく、求められている知識や解法といった基礎基本の徹底こそが合否を分けるカギになると考えられます。

過去問対策と基礎基本の確認の徹底のためには、何をどうやって進めていけばよいのか迷われることは多いと思います。今回は、6年生の今やるべき学びと、直前期までの準備として必要なことについてお伝えします。時間はまだ十分あります。これからがぐんと実力が伸びる時期なので、直前期をしっかり駆け抜けていきましょう。

6年生が今やるべき学びとは

9月に入り、志望校を意識した勉強にシフトしていく時期です。塾でも志望校対策を中心にさまざまなパターンの問題に取り組むことが増えてきます。ただし、やみくもに過去問や類題を解けば実力がつくのかというと必ずしもそうとは言えません。過去問は4ヶ月、5ヶ月後の自分が解くレベルの問題であり、その間の勉強がものを言うものです。ですから、今そのレベルの問題を解く時期なのかどうかはお子さんによって異なります。

思うように解けない場合は、思い切って弱点を洗い出し、短いスパンで弱点克服の対策をおこなうことも大切です。

薄い問題集を1冊、短いスパンで何回も回す

9月からの時期は、塾でも過去問演習が授業の中心となります。通常授業では、志望校以外の過去問を解いて答え合わせ、ということも多いでしょう。ですが、過去問をただ解いているだけでは、その問題を解けるか解けないかということにばかり意識が行ってしまい、なぜ間違えたのか、という原因を考える時間がとれません。

秋以降、過去問を中心とした問題演習をおこなう際に点数が取れない原因は、その問題で問われていることがわからないことにあります。問題を見て「何に関する問題なのか」が分からなければ正解はもちろん、解法を思い出すことすらできません。基礎基本が完成されていないと、いくら大切な過去問を解こうとしても使うべき知識を適切な場面で使いこなすことができません。そこで、過去問演習とともに基礎基本の理解を徹底することが必要なのです。

焦る気持ちはわかりますが、問題演習をしていてつまずかないためにも、各教科薄いコンパクトな問題集を使って受験に必要な範囲を短いスパンで何度も回すことをおすすめします。たとえば算数なら四谷大塚の四科のまとめや栄光ゼミナールの新演習コンプリ―ションなどは、薄い中にも受験範囲を網羅し、難易度も適切な問題がそろっています。まずはそういった問題集を使って、受験範囲を一通り復習してみましょう。お通いの塾でそういった問題集があればもちろんそれを使ってください。

目的は、自分の弱点を見つけてつぶしていくことです。3年間の学習範囲は非常に広範囲にわたります。そのため、「○○が弱い」とその都度思っていたとしても、毎週のカリキュラムに追われてなかなか復習できなかったという方も少なくないのではないでしょうか。また、今年は夏休みも短かったこともあり、より復習の時間をとることは難しかったはずです。

そこで、過去問演習を始める前に、あるいは過去問演習と並行して、薄い問題集を各教科1冊そろえて進めましょう。やり方としては、解法や知識が正確で一度できた問題は〇として、できなかった問題に×をつけます。この際、まぐれで正解したり知識があやふやでたまたま正解したという問題は〇ではなく×にしてください。どうしても×より〇にしたい気持ちはわかりますが、それでは弱点を見つけるという本来の目的からは外れてしまうので注意が必要です。

×がついた問題があるページにふせんなどで目印をつけておき、少し時間を空けてもう一度解き直してみましょう。一度正解した問題は除いて構わないので、次の一周では解くべき問題は減っているはずです。二度目に回した場合も、一度目と同じように〇×をつけ、また少し時間を空けて×の問題を解き直します。回数を増やすごとにできない問題は減ってきますので、より短いスパンで受験範囲を一周することができるので効率的です。

過去問や難問の問題演習ばかりしていると、受験生も心が折れてしまう瞬間があります。どうしてできないのか、と保護者の方が責めてしまってはさらに追い詰められてしまうことも少なくありません。「この直前期にこんな問題もできないの」と責めるのではなく、「弱点を見つけてつぶしていけば点数アップするよ!」と親子で積極的に弱点を把握し、克服していきましょう。今の時期にやるからこそ、入試直前は余裕をもって過去問演習に取り組むことができるのです。計画表を一緒につくって取り組むとより弱点が明確になります。カレンダーに、薄い問題集を回す予定を書き込み、できたら塗りつぶしていくと達成感も得られます。

達成目標を決めて学習する

9月以降、塾での課題も非常に増えます。通常授業以外にも志望校別講座があったりして、限られた時間の中で非常に多くの問題を解くことになります。ですが、よく考えてみてください。たしかに、御三家レベルの最難関校を志望校としているなら、応用・発展レベルの問題までも解けるようになる必要があるでしょう。ですが、そこまでは求められない、むしろ基本的な問題が大量に出題されるような中学校を志望している場合は、難問よりも受験定番問題を数多く解く必要があります。

このように、志望校のレベルや出題傾向によって、対策すべきことは異なってくることを意識して受験勉強を進めていきましょう。基本的には入試でも基本的な問題と差がつく応用問題、解ける人がほとんどいない発展問題が出題される傾向にありますが、学校によっては難問を数少なく出題したり、基礎的な問題を多く出題したりと傾向はまちまちです。

基礎問題については志望校がどこであるかにかかわらずすべてできるようになっておきたいところです。応用問題、発展問題については、取捨選択しないと時間的に余裕がなくなり、精神的にも追い詰められてしまうので、塾の先生や個別指導などで相談し、何をいつまでにやるべきか、志望校に合わせて目標設定ができるように計画を立てましょう。その計画に沿って学習を進めることで効率よく志望校対策ができます。

志望校が決まっているなら重点分野を克服しよう

第一志望校についてはすでに決まっている方がほとんどだと思います。志望校が絞り込めているなら、過去問演習に力を入れましょう。たとえば声の教育者の過去問題集の最初には、過去数年間の出題分野をまとめた表がついているので、それを参考にして頻出分野をつかみましょう。ただし、分析のしかたについては見方が異なる場合もあるので、塾の先生に相談したうえで頻出分野を理解することをおすすめします。

さきほど、基礎基本の問題集を短いスパンで回す、という勉強法をご紹介しましたが、志望校の過去問で頻出分野となっているところはぜひそういった問題集を活用して基礎基本を振り返っておきましょう。もし過去問を解いてできなかった問題がある場合は、基礎基本の問題集に戻り、その分野の知識や解法に戻ることも有効です。過去問演習をする際には基礎基本の復習を常に念頭に置いておきましょう。

過去問はどこまでさかのぼったら良いかというご質問を受けることがありますが、第一志望校については10年分程度、併願校は志望度合いが高い順から5年、3年程度が目安だと言えるでしょう。ただし、出題傾向がこの10年で大きく変わった学校もありますので、その場合は教科によって似た出題をする学校の過去問を使うなどの対応が必要です。塾の先生とも相談し、過去問計画表を作ると良いでしょう。

4教科の中でも社会については注意が必要です。社会に関するデータは刻々と変わっており、出題の根拠となるデータには新旧があります。こういったデータは国勢図会などをもとに出題されますが、このデータはおおむね3年程度で変化します。もちろん順位などに変化がない場合もありますが、入れ替わることもあるので、やはり最新のデータをもとに作問された問題を解く必要があるでしょう。

特に地理や公民はデータの変動が大きいので要注意です。そのため、社会については3年間は解くようにし、歴史についてはもう少しさかのぼっても良いでしょう。3年間では第一志望校対策としては足りないので、出題傾向が似ている中学校はどこか塾の先生に聞き、ほかの中学校の過去問を利用することをおすすめします。

最近では、塾のデータベースで会員登録すれば無料で過去問をダウンロードできるサービスもあります。四谷大塚などは代表的です。そういったサービスも活用し、過去問を入手すると良いでしょう。

また、特に国語の記述問題に言えることですが、過去問題集の模範解答が間違っているケースが散見されることにも注意が必要です。また、記述問題の場合、一字一句模範解答通りに書かなければいけないものでもないですし、部分点が要素ごとに配転されています。そのため、模範解答をうのみにするのではなく、書くべきポイントをかけているかを吟味する必要があります。

集団塾ではよほど親切な先生でないと添削や解説をしてもらうことは難しいので、過去問演習の国語、特に記述問題については個別指導を上手く活用することをおすすめします。自分の書き方のクセを指摘してもらえるだけでなく、うまくまとめるためのテクニックについても教えてもらえるので、そこはプロに任せるのも良いでしょう。

過去問で何点取ればいいのかというのもこの時期非常に多いご質問です。毎年中学校のホームページや過去問題集で、合格最低点や受験者平均点、合格者平均点などが公表されています。一部非公表の学校もありますが、志望校・受験校がそういった点数を発表している場合は、何%とれば合格するのかがわかります。それを参考にして、合格最低点をまずは超えるようにしましょう。

学校によって幅がありますが、合格最低点は6割~7割程度であることが多いです。中には年によって8割超えという学校もあるので、参考にしてください。最初は5割取れればよい方、というのが目安です。いま合格者平均点をとれていたら勉強する必要はありませんよね。これから入試本番までに合格点をとれるように訓練するのが過去問演習の目的ですから、一喜一憂せず、できなかった問題は基礎に戻って徹底的につぶす、という意識で取り組みましょう。

模試は正答率学習法で克服

9月以降、受験生は毎月のように総合模試を受けることになります。合不合判定テストやサピックスオープン、志望校別模試などさまざまです。1ヶ月毎週模試を受けるというケースも少なくありません。

模試はあくまでも模試なので、どう活用するか、という点を意識して受験することが大切です。受けっぱなしではその時間がもったいないですし、結果偏差値や点数といったデータだけ見て終わり、ではその後の志望校対策に活かすことができません。模試を受けたら、そこでわかったことを分析し、解き直しを含めて徹底的に活用しましょう。

模試を活用する際に意識していただきたいのが、「正答率学習法」です。この時期ですから、正答率の高い問題はやはり落としてはいけない問題だということができますし、志望校に合格するにはその回の模試で正答率何%以上の問題は必ず解けるようにするという目標を持って学習することが必要です。そこで目安になるのが正答率なのです。

間違えた問題をどう見直すか、その際には正答率を目安に着実に行っていくことが重要です。模試によって問題の難易度が異なるので一概には言えませんが、少なくとも解き負けないためには平均、つまり正答率50%以上の問題については解けるようにするというのがひとつの目安です。最初はもう少し正答率の高い、70%以上の問題が全問解けているかチェックしましょう。もしできていない場合は、基礎基本が欠けている可能性があるので、すぐに基本の問題集に戻って学習し再度解き直しをしましょう。

それから、正答率50%以上の問題に移ります。これもやり方は同じですが、その模試の受験層の平均ということなので、中には難しい問題も含まれています。ですから、模試の特性を把握したうえで「この問題は解けていたほうがいい」というものを塾の先生などに相談して、自分が今できていなければいけない問題はどれか、という分析をしてから解き直しをすると良いでしょう。

解き直しをする問題はコピーするなどして教科ごとに1冊の間違いノートを作っておくと、自分の弱点がどこなのかが一目でわかりますし、それを繰り返すことで着実に解ける問題が増えていきます。次の模試の前に一通り見直しておくと、同じ問題で二度と間違えないぞ、という意識変革にも役に立つのでぜひやってみてください。

せっかく時間をかけて受けるのであれば、徹底的に模試を活用し、弱点克服のための材料にしましょう。偏差値や点数が思ったほど出なかったことにこだわる必要はありません。もちろん目安にはなりますが、あくまで模試は入試本番の予行演習です。成績を安定させるためにも目先の数字より、実際にどこができてどこができていないのかを分析することを優先してくださいね。

特に正答率が非常に低い問題については、志望校が難関校の場合は解けるとなお良いですが、自分の志望校の出題傾向に合わせて解き直しまで必要なのかどうか判断する必要があります。難問であればあるほど解き直しにも時間がかかります。そのため、今解けているべき問題なのかどうか、塾の先生の意見も聞いて、優先順位をつけて解き直しをすることをおすすめします。

まとめ

中学入試までいよいよ本格化する受験勉強ですが、受験生がこれからやるべきことは、志望校に合格するために本当に必要な勉強を、取捨選択しながら進めていくことです。弱点補強と過去問対策の両輪をバランスよくやっていくことが重要です。そのためには、ほかの受験生と自分を比べるのではなく、自分だけの、自分に必要な勉強をすることが重要です。

また、保護者の方は、勉強は受験生ご本人と塾や指導者に任せ、大人にしかできない準備やシミュレーションをしっかりしていくことが重要です。ぜひうまく役割分担をして、志望校合格を勝ち取りましょう。保護者の方がするべき受験直前期の準備については別の機会に解説します。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。