そもそも敬語とは? 尊敬語と謙譲語のちがいって? 図と分かりやすい例文で覚える! 中学受験国語・敬語の基本のキ

 中学受験の国語でよく問題として出される分野が敬語です。小学生にとって、敬語は使うことも少なく、なじみのないものかもしれません。

しかし、中学生から高校生、大人となっていくにつれ敬語を使う機会はどんどんと増えていきます。だからこそ、大人になったときにはずかしい思いをしないように、今のうちから正しい敬語を覚えることはとても大事なのです。

 この記事では「そもそも敬語って?」という基本的な部分から、敬語の種類、そして受験でよく出る、覚えておくべき敬語まで順を追って説明していきます。覚えることは多いですが、一つ一つしっかりと頭に入れておきましょう。

敬語の基礎:敬語とは?

 敬語について勉強する前に、まず「敬語」とは何なのかを正しく理解しましょう。

敬語とは?

 敬語とは、話す相手や話題に出している人物に対して尊敬する気持ちやていねいに接する気持ちを表すために用いることばのことです。主に目上の人に対して用いることが多いですが、話している状況によっては同じくらいの立場の人に対して使われるものもあります。

 ここでクイズです。次の5つの文章のうち敬語を使っている文章はどれでしょうか?

  1. みんな、校長先生がこのクラスのことをほめてくださったぞ!
  2. ゆういち君にそう伝えておいてくださいね。
  3. さあ、お弁当を食べよう。
  4. いただきます!
  5. あなたに言いたいことがあるんだよ。

 答えは①~⑤のすべてです。敬語にはいろいろな種類があり、それぞれの文章で敬語が使われています。つまり敬語は「なじみのない」ものだけではなく、小学生のみなさんがふだん使っていることばにもたくさんの敬語がふくまれているのです。

 答えは最後に書きますが、この記事を読んで上の5つの文章のうちどの部分が敬語なのか分かるようになっていれば敬語についての基礎は完ぺきでしょう。

敬語の種類

 敬語には尊敬語謙譲語(けんじょうご)丁寧語(ていねいご)という3つの種類があります。これらは使う場面や相手などによって使い方がちがうのでまちがえないようにしましょう。そして、テストで問われるところでもあります。これら3つについては次の章でくわしく説明していきます。

敬語の表し方

 敬語にはいくつかの表し方があります。一つ目は特別な「敬語動詞」を使うパターンです。敬語動詞を覚える必要があるので、いちばんむずかしく感じるパターンかもしれません。覚えた方が良い敬語動詞については第3章で説明していきます。

 その他には、ふつうの動詞に「お~になる」などを足すパターンや「くださる」などの補助動詞・補助用言を足すパターン、助動詞や接頭語・接尾語を付けるパターンなどもあります。

敬語の種類

 続いて、1.2でふれた3種類の敬語について、それぞれが使われる場面や相手などもふまえながらくわしく説明していきます。

尊敬語

 1つ目は尊敬語です。尊敬語は、話し手が相手や話題に出てくる人のことを敬う場合に用いられます。また、相手や話題に出てくる人の動作を敬う場合に用いられることもあります。

尊敬語のイメージ

①尊敬語のイメージ

 尊敬語は7つの種類に分けることができます。

  1. 敬語動詞(敬語を表すための特別なことば)を用いる
    例: 校長先生が来る。 → 校長先生がいらっしゃる
  2. 「お(ご)~になる」の形
    例: 校長先生がお辞めになる。 先生がご説明になる
  3. 「お(ご)~くださる・なさる」の形
    例: 校長先生がお渡しなさる。 先生がご心配くださる
  4. 補助動詞「いらっしゃる」「くださる」を用いる
    例: 校長先生が待っていらっしゃる。 先生が教えてくださる
  5. 尊敬の助動詞「れる」「られる」を用いる
    例: 校長先生が話される。 先生がプリントを捨てれる
  6. 尊敬の意味のある単語(名詞)を用いる
    例: 先生・母上・あなた・どなた など
  7. 尊敬の意味のある接尾語や接頭語を付ける
    例: じいさま・家族 など

 ⑥や⑦はテストなどで問題になることは少ないので特に気にしなくても大丈夫です。また、②③④のパターンは形が決まっているので分かりやすいと思います。気を付けた方が良いのは①の敬語動詞と⑤の助動詞です。助動詞についてはこちらの記事も参考にしてしっかりと識別できるようになりましょう。

謙譲語

 謙譲語(けんじょうご)は、自分や自分の側の人(なかま)をへりくだる(立場を低くしひかえめにする)ことで、相手を敬う気持ちを表す敬語のことです。

謙譲語のイメージ

②謙譲語のイメージ

 謙譲語には5つの種類があります。

  1. 敬語動詞を用いる
    例: 明日父が行きます。 → 明日父がうかがいます。
  2. 「お(ご)~する」の形
    例: 母が家の前でお待ちします。 私からご説明します
  3. 「お(ご)~いたす・申す・申し上げる」の形
    例: 私が答えいたします。 私たちが案内申し上げます
  4. 補助動詞「あげる」「さしあげる」「いただく」を用いる
    例: お茶をくんでさしあげます。 先生に読んでいただく
  5. 謙譲の意味のある単語(名詞)や接尾語、接頭語を用いる
    例: わたくし・兄・妹・愚息(ぐそく) など

 尊敬語の時と同じように、①の敬語動詞に関してはしっかりと尊敬語と区別ができるよう気を付けましょう。また、②の「お~する」の形と尊敬語の「お~になる」の形も似ているので注意しましょう。

丁寧語

 丁寧語(ていねいご)は、ことばづかいを丁寧にしたりやわらげたりすることで、話している相手に対して敬う気持ちを表現する敬語のことです。目上の人に対してだけでなく、あらたまった場所や状況で使われることもあります。

丁寧語のイメージ

③丁寧語のイメージ

 丁寧語は3つの種類を覚えましょう。

  1. 丁寧の意味のある助動詞「です」「ます」を用いる
    例: 私が発表します。 ぼくが代表です。 田中くんはいません。
  2. 補助用言「ございます」「おります」を用いる
    例: 担任の山田でございます。 彼は部屋で休んでおります
  3. 丁寧の意味のある接頭語「お」「ご」を用いる
    例: 水・飯・米・洋服・皿 など

 丁寧語に尊敬語や謙譲語のような「敬語動詞」はありません。③の「お」や「ご」については、尊敬語と見分けることがややむずかしいかもしれません。文章を読んで、その文章で使われている敬語が何なのかによって判断しましょう。

尊敬語と謙譲語の違い・見分け方

 尊敬語と謙譲語のちがいがあまり良く分からない…という人もいるかもしれません。

 2つを見分けるときにポイントとなるのは、「誰が主語か・誰が動作をおこなっているか」という点です。尊敬語は相手や相手の動作に直接的に敬意(敬う気持ち)をあらわしているので、相手の行いが動詞となり、主語は相手となることが多いです。その一方で謙譲語は自分(の動作)をへりくだることで敬意を表しているので、自分や自分の側の人が主語となることが多くなります

 たとえば、「先生が私に言う」という文章を尊敬語にした「先生が私におっしゃる」という文章では、動作を行っている主語は「先生」であり、「先生」の「言う」という動作を敬う気持ちを表しています。一方で謙譲語の「私が先生に申し上げる」という文章では主語は「私」で、「私」を下げることにより間接的に「先生」の立場を高めているのです。

 もちろん全てではないですが、このように主語によって尊敬語と謙譲語を見分けられるパターンは多いので、まずはそこに注目してみましょう。

尊敬語と謙譲語の違いのイメージ

④尊敬語と謙譲語の違い

 尊敬語は「相手の動作を高めることで相手を敬う」謙譲語は「自分を下げることで相手を高くし敬う」とイメージしましょう。

 ここで注意したいのは「いただく」ということばです。「いただく」は動詞「いただく」と補助動詞「いただく」があり、たとえば「先生から賞状をいただく」「先生に来ていただく」などのように使います。これらは一見「先生」の動作のようにも思えますが、「いただく」は「もらう」という動詞が変わった形であり、ここでの動作の主体は「私」や「私」の側の人です。つまり「いただく」は謙譲語となります。

覚えておくべき敬語

 この章では、覚えておくべき「敬語動詞」について説明していきます。これらの動詞は試験でもよく出題されるポイントなので、しっかり覚えるようにしましょう。

覚えておくべき尊敬語

 覚えておくべき尊敬語の「敬語動詞」を一覧にしていきます。赤字のものは特にテストで聞かれやすいので注意してください。

  • 行く→いらっしゃる、おこしになる、おいでになる
  • 来る→いらっしゃる、見える、おこしになる、おいでになる
  • 居(い)る→いらっしゃる、おいでになる
  • 言う→おっしゃる
  • 見る→ご覧になる
  • する→なさる
  • 食べる・飲む→召(め)し上がる、召(め)す
  • 与える・くれる→くださる
  • 思う→思(おぼ)し召(め)す
  • 知る→ご存知、ご承知
  • 着る→召す
  • 死ぬ→お亡(な)くなりになる、逝去(せいきょ)する

覚えておくべき謙譲語

 謙譲語についても、赤字の「敬語動詞」は注意して覚えましょう。

  • 行く→参る
  • 来る→参る
  • 居(い)る→居(お)る
  • 言う→申す申し上げる
  • 聞く→うかがう承(うけたまわ)る、拝聴(はいちょう)する
  • 見る→拝見(はいけん)する
  • する→いたす
  • 食べる・飲む→いただく
  • 与える・くれる→さし上げる、あげる
  • もらう→いただく、ちょうだいする
  • 思う→存(ぞん)ずる、存(ぞん)じ上げる
  • 知る→存ずる、存じ上げる
  • 会う→お目にかかる
  • 見せる→ご覧に入れる、お目にかける
  • 尋(たず)ねる→うかがう
  • 訪(おとず)れる→うかがう

覚えておくべき敬語一覧

 覚えておくべき敬語を表にしました。赤字のものは特に覚えるようにしましょう。

まとめ……の前に

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まとめ:敬語を使った例文

 最後に、敬語を使った文章をいくつか見て実際の敬語の役割について確認してみましょう。以下の例文のどこに敬語が使われているか、どの種類の敬語が使われているか分かりますか?

  1. お母さんはようへい君に「先生はいついらっしゃるの?」と聞いた。
  2. 息子がいつも大変お世話になっております。
  3. まさき君は昨日、市長から賞状をいただいたようだ。
  4. とのさまは家来に「今日の夕食は何じゃ」とたずねられた。
  5. 明日美術館に行って、先生の作品を拝見する予定です。
  6. 間もなくそちらにご到着いたしますので、もう少しお待ちください。
  • ①には3つの尊敬語の表現が使われています。注目したいのは「お母さん」から「先生」へ向けた尊敬語です。このように、話し手(「お母さん」)が話し相手(「ようへい君」)ではなく話題の中の人物(「先生」)へ向けて敬語を使うことがある、ということに注意しましょう。
  • ②は①に続いて「お母さん」と「先生」が話している光景を思いうかべてみてください。ここでは、「お母さん」が話している相手(「先生」)に直接尊敬語を使っています。
  • ③は話し手が、なかまの「まさき君」の立場を下げることで間接的に「市長」の立場を上げ、敬う気持ちを示しています。
  • ④も同じように話し手が話題の中の人物である「とのさま」に尊敬語を使っています。ここでの助動詞「れる」が受け身などの意味ではなく、尊敬の意味であるということをしっかり思い出せましたか?
  • ⑤と⑥では、話し手が自分の動作(「見る」「到着する」)には謙譲語を使う事によって相手を敬う気持ちを表し、さらにカでは相手の動作(「待つ」)に尊敬語を使っています。
例文の解説画像

⑤敬語を使った例文

 ところで、この記事の最初に紹介した5つの例文のどこに敬語が使われているか分かったでしょうか?答えは以下の通りです。身近な表現でも実はさまざまな敬語が使われています。

  1. 尊敬語「校長先生」「くださった」(話し手→「校長先生」)
  2. 丁寧語「ください」(話し手→相手)
  3. 丁寧語「お弁当」(話し手→相手)
  4. 謙譲語「いただきます」(話し手→相手)
  5. 尊敬語「あなた」(話し手→相手)

おわりに

 この記事では敬語の基本について説明しました。敬語には3つの種類があることと、それぞれの敬語をどのように使い分けるかを理解し、重要な敬語動詞を覚えることができれば、中学受験で出てくる敬語の基本については問題ないでしょう。

 敬語についてはこちらの記事でもさまざまな問題を用意したので、ぜひ参考にしてみてください!

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参考

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初めまして。髙橋利弥と言います。 武蔵中・高校から一年浪人を経て今年東京大学文科三類に入学しました。中高時代はサッカー部に所属し、高校では主将を務めていました。現在は体育会サッカー部のスタッフとして主にプレー分析などを担当しています。趣味は音楽を聴くことで、[ALEXANDROS]などの日本のバンドのほか、QUEENも好きです。ボヘミアン・ラプソディーは浪人していたにも関わらず公開直後に観に行ってしまいました。また、ライブに行くのも大好きです。高校時代は部活で忙しくてあまり行けず浪人の時も我慢していましたが、大学に入ったからには行きまくりたいと思います。今ハマっていることはハリウッド版のGODZILLAシリーズです。オリジナルのゴジラは見たことがないのですが、興味がわいてきて見てみたいと思っています。最後に、自分は昔から文章を書くことが好きでこうやってライターとして仕事ができることがとても嬉しいです。まだまだヘタクソですが、これから経験を積んで成長していきたいです。 よろしくお願いします。