【神奈川男子御三家】浅野中学校の入試の国語の特徴を徹底解説!複数テキストに注意!その1・問題分析編

浅野中学校は、栄光学園中学校、聖光学院中学校と並んで「神奈川男子御三家」と呼ばれる人気の男子中高一貫校です。

毎年東京大学や一橋大学など国立難関校に多数の合格実績を誇ることに加え、近年では理系志向、特に医学部志向も顕著にみられるようになっており、神奈川御三家の名にふさわしい合格・進学実績を誇っていると言えるでしょう。

確かな知識と教養を身につけ、社会に貢献できる人材を輩出することを「浅野スピリット」として掲げており、志望校合格に向けた6か年教育を編成し、体験的な学びも大切にしています。

今回は、伝統の中にも進化を遂げつつある人気の男子校・浅野中学校について、国語の出題傾向や入試対策を詳しく解説します。ぜひ特徴を知って、合格に向けた対策をしっかり行っていきましょう。

入試情報

試験時間と満点、合格者最低点

国語の試験時間は50分、120点満点であり、4教科合計の満点は400点(国語・算数各120点、理科・社会各80点)です。合格最低点は発表されていませんが、受験生平均得点率・合格者平均得点率が発表されています。

2021年の国語の平均得点率は、受験者平均得点率は58.0%、合格者平均得点率は66.1%でした。国語の合格者平均得点率は受験者平均得点率よりも8%以上高く、その差は点数に引き直すと9~10点ですから、1,2問の差が勝敗を分ける、非常に厳しい入試であったと言えるでしょう。

なお、算数でも同じく合格者平均得点率が10%高くなっており、とるべき問題を確実に得点してはじめて合格に手が届く問題構成・難易度の高さになっていることがうかがえます。なお、2021年度入試の4教科合計の合格者最低得点率は、60.5%でした。過去5年間では57%~66%で推移しています。

このことからも、入試問題の難易度は比較的高めだと言うことができます。「差がつく」問題が随所にちりばめられており、どこで得点を重ねるべきか冷静な判断と確実な得点力が問われる入試となっていると言えるでしょう。

問題構成・解答形式

浅野中学校の国語の入試問題は、例年大問は3つと比較的少なめです。内容は漢字の読み書きが1題(8~10問)、長文読解が2題という出題形式が続いています。長文読解問題については、文学的文章(物語文)の読解が1題、説明的文章(説明文、論説文)の読解が1題ということが多いです。

2021年度の入試においてもその傾向は踏襲されており、漢字が1題(10問)、物語文の読解が1題、説明的文章の読解1題の出題で、大問数の合計は3題でした。ただし、説明的文章の読解には注意が必要です。

例年長文読解、しかも文章が僧とな長さであり、受験生にとって国語はいわば時間との戦いでした。2021年度は出題傾向が変わり、「複数テキスト」問題が出題されたのです。複数テキストとは、1題の中に複数の素材文が含まれている問題のこと。

2021年度の浅野中学校の入試問題では、異なる2つの文章が1題のなかに関連性なく含まれており、いわば1題で2題分の文章を読み、内容を把握したうえで設問に答えなければならないため、超長文の理解とはまた違った難しさがある出題だと言えるでしょう。

実は、複数テキストは大学入試においては比較的ポピュラーな出題形式です。そのことからも、浅野中学校が入学時から大学入試を意識しており、中高6年間の教育もまた大学入試を意識した、私立ならではの教育が行われることを示唆していると言えるのではないでしょうか。

2021年度の小問出題数は26問であり、うち漢字の読み書きが10問を占めるので、長文読解の設問数は16問と、一見して余裕がある入試だと思われるかもしれません。

しかし、実質的には長文を3題読んで答えなければいけないため、それほど1問にかけられる時間は多くはありません。しかも、合格者平均得点率と受験者平均得点率から、10点の差があることを考えると、1問も落とすわけにはいかないのです。

設問数が少ないということは、それだけ1問あたりの配点は高いということですから、1問落とすとそれが結果にダイレクトに返ってきますので、注意しなければなりません。2021年度は26問中漢字の読み書き10問、記号選択肢問題が11問、書き抜き問題が1問、記述問題が4問でした。

文章の理解について記号選択肢問題で問い、書き抜きで表現の理解を問い、記述問題で文章に即した問いに答える能力と表現力を問うという、全方向から「国語力」を問う良問ぞろいだと言えるでしょう。1問1問の小問の難易度の点からみると、記号選択肢問題の選択肢の文が非常に長く、時間をとられてしまった受験生も少なくなかったと考えられます。

正答が1つしかないわけですから、得点できるかできないかの二択しかありません。そのため、正確に選択肢を吟味し、確実に解答となる選択肢を選べたかどうかで大きな差がついたと言えるでしょう。

また、書き抜き問題は、一言一句間違えずに書き抜かなければいけないことは大前提ですが、字数指定がされているため、いくつか表現を変えて同じことを言っている部分から、正しいところを抜き出すためにも細心の注意が要求される傾向にあります。

書き抜くべき内容の見当がついた場合であっても、設問で指定されている字数が合わないことも散見されるので、時間をロスしてしまう受験生も少なくなく、差がついたと考えられます。記述問題は、比較的字数が抑え目で、一見楽そうに見えるのですが、書くべき要素があるのにコンパクトにまとめるのは意外と難しいです。

字数制限があるため、オーバーするわけにはいきませんし、空欄をあまり作るわけにもいかないですから、何を書くべきなのか、構成をしっかり行ったうえで記述しなければなりません。行き当たりばったり、文章に書いてあることをただ並べればいいという記述問題ではなく、大切な要素だけをコンパクトにまとめなければいけないという点で難易度は高いと言えるでしょう。

文章題は文学的文章の文章量が多く、5,000~6,000字程度、説明的文章は少し短めで1,000~2,500字程度の文章が出題されています。ただし、2021年度は複数テキストの大問が出題されており、実質的に見て説明的文章1題で3,000文字超の文章量でした。

複数の文章を読んであとに続く設問に答えていくので、どの設問がどの文章についての設問なのか、頭を切り替えながら解いていかなければいけません。設問数が少なめとは言っても、実際はかなり忙しい入試です。

近年の出題傾向

概要

浅野中学校の国語では、文学的文章の長文読解で1題、説明的文章の長文読解で1題という、漢字の読み書き以外はすべて長文読解問題の出題です。取り上げられるテーマは非常に幅広いですが、たとえば文学的文章の場合、中学受験生であればこれまでの受験勉強で何度も触れてきたようなテーマが多く取り上げられているので、読みにくいということはないでしょう。

主人公をはじめ登場人物の精神的な成長や変化がはっきり描写されているような文章全体というよりは、長文の一部シーンを切り取って出題しているという傾向です。シーンごとに人物像や登場人物の気持ち、気持ちの変化などについて、根拠を確認しながら読み進んでいった結果設問に対応できるというつくりになっています。

一方、説明的文章の長文読解は少し様相が異なります。どちらかというと、受験生に対して「新しい価値観」を提示し、その場で考えさせる出題が目立ちます。また、2021年度は説明的文章で複数テキスト問題が出題されました。2020年までの3年間は長文化傾向が続いており、受験生にとって、浅野中学校の国語はいわば時間との戦いでした。

しかし、2021年度は長文化がひと段落。その代わり、異なる2つの文章を理解して設問に答えるという、超長文読解とはまた違った難しさがある出題となっています。

2021年度の出題

大問1:漢字の読み書き

漢字10問は、書きの問題が8問、読みが2問でした。具体的な出題は以下の通りです。

校長先生の「コウワ」「将来のテンボウ」「屋根をホシュウする」「世界の平和をキキュウする」「農薬をサンプする」「リロ整然と」「入学試験にソナえる」「企業にツトめる」「定石どおり」「著しい」

いずれも、日々の漢字練習をしっかり行っていればそれほど難しくない漢字ばかりですが、同音異義語、同訓異字などといった出題がされるため、高い語彙力が必要です。普段の漢字練習の姿勢が問われる出題となっています。

大問2:文学的文章(物語文)

香月夕花「左手のルロイ」より

浅野中学校の国語の入試問題で、ひときわ長文が目立つのが、文学的文章(物語文)の出題です。「左手のルロイ」は、2018年に三田国際中学校の入試でも出題されるなど、中学受験の国語では定番と言われる文章のひとつ。

愛猫の「ルロイ」を亡くした主人公のもとに、ルロイにそっくりの猫「トト」がやってきます。家族はトトのことをルロイと呼びますが、主人公はそのことに違和感を抱く、という話です。

主人公の複雑な心情を読み解く、まさに中学受験の題材としてぴったりの物語文だと言えるでしょう。記号選択肢問題が6問、書き抜き問題1問、記述問題2問、小問数の合計は9問です。合否を分けたのは記号選択肢問題。

浅野中学校の国語では、記号選択肢問題の選択肢そのものが長文化しています。本文を読んだうえに長い選択肢(1つあたり2~3行にもわたる)を読み、正確に答えなければならないので、本文の内容を一読して頭に入れておかなければ時間が足りなくなるでしょう。

記述問題の字数は25~30文字と決して長くありません。しかし、「どのようなことに気づいたか」という問いであり、読み手にわかるように書くために十分すぎる字数とは言えないのが引っ掛かりポイントのひとつです。

何を書くべきか構成を決め、本文中から使える部分をピックアップしてまとめなければならないため、何段階もの作業が求められます。字数指定がある以上、オーバーは許されないので、制限時間が迫る中で冷静に、必要なことだけ書くというのは、決して易しくありません。

受験生の差が大きく開く出題だったと言えるでしょう。短い記述から長い記述まで対策を行ってきたか、長文を一読して重要な部分を理解できるかどうかが、合否を分けるポイントです。

大問3:説明的文章(論説文・説明的随筆文)

野矢茂樹編「子どもの難問」による/道尾秀介「煙の謎」による

2021年度の浅野中学校の国語の問題で目を引いたのが、この大問3です。複数テキスト、つまり1つの大問の中に複数(今回は2つ)の文章が含まれており、それらを読んで本文のあとにある設問に答えていく、という出題形式です。

それぞれの文章は、1,000文字、2,000文字程度と決して長くはありません。しかし、設問を解きはじめる前に複数の文章を正確に読み、内容を正しく把握しなければなりません。

また、2つの文章を、読み分けて「これはこちらの文章」と正確に把握していかなければ、もう一度読み直さなければならないことになりかねません。そうすると、制限時間内に解ききるのは非常に難しくなってしまいます。

また、文章そのものについても、近年の浅野中学校の出題傾向として、新しい価値観や考え方をまずは受け入れ、筆者がどのように考えているのかをつかむことが求められているので、受験生にとってレベルの高い文章だと言えるでしょう。

設問は、記号選択肢問題が7問、記述問題が2問。うち、語句に関する問題が2問なので、選択肢を読まなければならない問題が5問となります。選択肢は長文であり、題材に哲学が含まれているため、あくまで本文の内容を正確に把握できていないと正しいものが選べない、難易度高めの選択肢問題です。

記述問題は10~25文字が1問、20~30文字が1問と、決して長くありません。ただし、本文中の筆者の考えに対する深い理解が求められます。字数が短いので、端的に表現するテクニックも必要です。

まとめ~高得点をとるカギ

浅野中学校の国語で高得点を取るカギは以下の4つです。

  1. 要点を読み取るためのスピードと正確さ
  2. 文章中の根拠から外れた読解はNG
    記号選択肢問題では、選択肢の正確な読みが合否を分ける
  3. 記述問題は必要なことを簡潔にまとめる
  4. 漢字やことばの高度な運用能力

浅野中学校の国語の入試は、点数配分こそ120点と高めに思えるかもしれませんが、制限時間は他の中学校とほぼ変わりません。また、大問数、設問数ともに比較的少なめだと言えるでしょう。

しかし、だからと言って易しいわけでは全くありません。問題数が少ないからこそ、1問の不正解が命取りとなる、大変厳しい入試だと言えるでしょう。長い記述が出題されていない分、長い選択肢を読んで解答する記号選択肢問題のオンパレード。

本文の字数が比較的コンパクトであるものの、設問を解く際に読まなければならない文章が多く、全体的な字数としては決して短いとは言えないのです。

次回の記事では、浅野中学校の国語の入試について、その攻略法を解説します。ぜひ参考にしてくださいね。

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参考

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。