中学受験において、国語という教科はほかの教科と少し毛色が違います。算数、理科、社会は新しい知識や解法がどんどん出てきて、その回ごとに新しいことを学んでいきます。国語ももちろん毎週のように新しい漢字やことばの知識が出てきたり、新しい文章の読解をしたりしながら勉強を進めていきますが、どの学年でも語彙力をつけ、読解問題に取り組むといった点で、学習項目はそれほど変わるものではありません。
しかし、学年が進んでいくにつれて、国語の文章は非常に難化し、読まなければならない文章量もどんどん増えていきます。ひとつの学年の中であっても、前半と後半では目を見張るほど難易度が違ってくる、それが国語という教科の怖さです。
国語は中学入試でも配点が高い一方で、受験生の間で差がつきやすい教科でもあります。それは、「積み重ね」「継続」がものを言う教科なので、一度つまずいてしまったり、必要な時間をかけずに雑に学習していると、国語の問題を解くための「国語力」が身につかないからです。
国語力を身につけるためには、塾の授業に真剣に取り組むとともに、授業を受けたあと、家庭で着実に復習をしていかなければなりません。それも毎週、毎回です。それができていない受験生は少なくありません。特に文章読解の復習のやり方については、ただ出された宿題をざっと解いて終わりにしてしまうというケースも多いのです。それではいくら問題を解いたとしても国語力は身につきません。
そこで今回は、文章読解を中心に、国語の復習方法と、学年、時期ごとに意識しておきたい家庭学習のポイントを解説します。勉強しているはずなのに国語の成績が上がらない、とお悩みの場合は、家庭学習のやり方に問題がある可能性があります。ぜひ参考にしてください。
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4年生の国語学習で注意したいこと
これまで小学校で国語の成績は良かったのに、受験勉強をはじめたとたん、点数が取れなくなった、と感じることはありませんか?小学校4年生の前半には、このように思うものです。また、4年生の後半になると、読解問題の文種が増えてくるため、ますます点数が取れなくなった、というケースも少なくありません。
一見すると、国語の文章は小学校で読む文章と難易度があまり変わらないように思えるかもしれません。しかし、中学受験の学習の場合、当然のことながら読解問題はただ文章を読めばいいというわけではありません。設問がたくさんあり、それに着実に答えていかなければならないのです。
成績がなかなか上がらない、文章が読めなくなった、読解問題で点数が取れない、そうした兆候が見えはじめる理由として、実は文章の内容が難化していることがあるので、ただ読むだけでは点数が取れるわけもありません。では、4年生の国語の学習ポイントはどこにあるのでしょうか。
論説文の読解がはじまる!論説文は「構成」に注意
国語の文種の主なものに、「説明的文章」と「物語的文章」があります。説明的文章とは、説明文や論説文、説明的随筆などのことです。物語的文章は、物語文、物語的随筆などです。
このうち、説明的文章について、4年生の前半までは、説明文が国語の学習の中心を占めます。何かのテーマについて、筆者が分かりやすく読み手に伝えようという、いわば「事実」に重点を置いた説明的文章だと言えるでしょう。たとえば、「メダカの生態とは」「鳥の繁殖」「おもしろい動物の習性」といった文章について読んだ経験は皆さんあるでしょう。
これに対して、4年生の後半から5年生、6年生にかけて、論説文が説明的文章の中心になってきます。4年生の後半はちょうど説明文から論説文へと読解問題のステージが一段上がるタイミングだと言えます。論説文は、説明文のように単に何かを説明するというよりは、「物の価値」や「文化について」「経験することの重要性」など、テーマもより抽象的であるとともに、そのテーマに対して筆者が自分の意見を述べ、場合によっては反対の意見も紹介し、どちらがいいか結論付ける、といった文章です。「事実」も大切ですが、「筆者の意見」が文章の中心となる点が特徴的だと言えるでしょう。
説明文では、ひとつの話題を取り上げて、それについて詳しく説明されますが、論説文は、「テーマ+筆者の意見」という構成である点で大きな違いがあります。つまり、論説文では2つのことを同時に読み取らなければならない点で、説明文に比べて難度が高い文章だと言えるのです。説明文を読んでいるときは問題なく読めていて、設問にも答えられていたけれど、論説文に入ったら途端に読めなくなった、設問に答えられなくなったという受験生は少なくありません。
また、論説文では抽象的なテーマを取り上げることが多いので、文中に使われていることば自体が抽象的であることも少なくありません。そのことばの意味が分からずに止まってしまって、内容の理解も一層難しくなってしまう、それが論説文でなかなか点数が取れない原因のひとつです。
塾の授業で論説文を取り扱う場合は、先生がその文章の内容を説明してくれるだけに、本当は読めていないのに「読めた気」になってしまうのが論説文の読解がうまくいかない原因となっていることも少なくありません。読解問題の文章は自分の頭で考えながら読み進んで初めて設問にも答えられるものです。文章を読みながら「ここにテーマが書いてある」「ここに筆者の意見が書いてある」ことをチェックしていかなければならないのが論説文の読解ですが、それを先生に言われてしまうことに慣れてしまうと、サーっと読み飛ばしてどこに何が書いてあるのかわからなくて設問が解けない、ということも多いので注意が必要です。
そうした状況だと、授業中はわかった気になっていても、家庭学習で宿題などをやろうとしたときに、自力で読めなくなってしまい、設問にも答えられずに時間ばかり食ってしまうことになりかねません。家庭学習で論説文の勉強をするときには、まず論説文の文章の「構造」に着目しながら読むことに重点を置きましょう。論説文とは「あるテーマについて、筆者が意見を述べている文章だ」ということをまず理解することからはじめる必要があります。つまり、論説文の中にはどのような要素が含まれているか、文章の構成をつかむことが非常に大切であることを意識するのです。これができていないと、論説文を読むことはまずできません。
構成を考えながら、文章のなかでどこに何が書いてあるのかをつかんで最後までまず読み切ること。そして、文章を読み切った後は、「どういう内容が書いてあったか」「テーマはどこに書いてあったか」「筆者の意見はどこに書いてあったか」「その内容はどのようなものか」「反論が書いてあったか」といったことについてチェックしていくことが重要です。その際には、親子で対話しながら確認すると効果的です。
「どういうテーマが書かれていた?」「それに対して筆者はどんな意見を持っていた?」といったように発問し、お子さんが答える、という形式が論説文の読解では非常に有効です。どこに何が書いてあったかを自分の頭で考えて読み解くというプロセスを踏まずにいきなり設問を解こうとしても解けるわけがありません。ですから、論説文の読解で苦労しているなら、家庭学習でそうした対話を通して、文章の内容を理解していくステップが欠かせないのです。
もしお子さんが戸惑っているようなら、「意見が書かれているところを探してみよう」と焦らず、ある程度時間をかけて自分で見つけられるように誘導してあげましょう。お子さん自身が文章の内容を振り返ることが大切なので、「ここに書いてあるでしょ」と先に進もうとはしないで見守ってあげてください。その際に、意味が分からないことばが出てきたら、すぐに辞書で調べるように伝えてあげることも大切です。もちろん保護者の方が教えてあげてもいいのですが、自分でことばの意味を調べることも特に4年生のうちは大切です。
物語文を読むときは登場人物の「数」に注目
4年生前半までに読む物語文は、基本的には登場人物が少ないですし、あとから増えることもあまりありません。つまり、一度登場して来たらそれから人数の増減があまりないのが特徴です。最初に主人公、その友人といった中心人物が登場し、最後までその2人だけで物語が進んでいくことも珍しくありません。
しかし、4年生後半からの物語文の読解の場合、登場人物が増えたり、あるいは減ったりすることも少なくありません。物語の最後にいきなり登場する人物もいれば、主人公と同世代とは限らない登場人物が出てくるケースもあります。そうすると、単純な構造の物語文に慣れていた受験生は混乱してしまいやすくなってしまうのです。
たとえば、学校というのは物語文のシチュエーションとしてよくありますが、たとえば教室では同級生が3人出てきていたのに、場面が変わって校庭に出たら同級生がもうひとり増えている、といった具合に人数が増減します。また、先生という大人が登場することも少なくありません。
物語文の読解の中心は、登場人物の心情、心情の変化、行動やセリフの背景・理由、そして場面の変化です。登場人物が増える、また場面が変わるといった変化の生じる物語文に対して、読みにくいと感じる受験生も多いです。
物語文の典型的な設問の例としては、「傍線部のような行動をとった理由を答えなさい」というものや「○○さんはどんな気持ちだったでしょうか。答えなさい」という設問がよく見られます。つまり、「誰が何をしていたのか」が把握できていないと答えられない設問です。
こうした設問に代表されるように、物語文を家庭学習で勉強するときに意識したいポイントは、場所や時間の切り替わり、つまり場面の切り替わりごとに「いつ、どこで、だれが、どうした」を確認していくことです。加えて「なぜ」そういうことをしたのかを入れると、英語で言うところの「5W」になりますね。物語文の中で、登場人物は何か行動を起こしたり、ことばを発したりします。その背景には必ず理由があります。前の行動と後の行動の間には「因果関係」があります。それらの要素を一つひとつ丁寧に見ていくことが、家庭学習でも重要です。
たとえば、「この場面、時間はいつ?」「いま主人公がいる場所はどこ?」「ほかにはだれがいる?」「あとから加わった人はだれ?」といったように、保護者の方が発問して、お子さんが答えるという方式で楽しみながら文章を深く読んでいく練習をすることは非常に有効です。
物語文の読解があまり得意でないお子さんは、登場人物の増減がとらえられていないことが少なくありません。誰が、何を考え、どういう行動をしたか、にそって物語文は進んでいくので、登場人物の人数をしっかり把握して、誰がいるのか意識しないと、「誰の心情か」などを読み誤ります。そのため、家庭学習で文章を読む場合は、登場人物に丸をつけるなどして、いま誰が出てきているのか、そのことばは誰が発したものか、といったことを把握することを徹底しましょう。
理科や社会の知識も必要になってくる
4年生も後半になってくると、特に説明文や論説文では、理科や社会で出てくる語句が使われることも増えてきます。例えば、「化学反応」「稲作地帯」「湿度」「工場地帯」などです。説明文や論説文が扱うテーマは理科、社会に関係するものも多いので、当然のことながら理科的、社会的語句が使われることも多いのです。
そうした文章の読解が難しいのは、大人が書いている文章なので、「知っていることを前提に」書かれているということです。そして、設問も、知っていることを前提に作問されるので、語句の意味が分かっていないと、文章に何が書いているのか正確に把握することができず、設問でも間違えてしまうことが増えてしまうでしょう。
筆者が指導した生徒さんの中に、算数に時間が取られ過ぎて理科・社会の学習が進んでいないお子さんがいました。2教科の学校を志望しているケースもありました。そうしたお子さんがある日、書き抜き問題で「化石燃料」と書かなければいけないところ「化学燃料」と書いて×になってしまったことがありました。化石燃料は、理科・社会を勉強する際に必ず出てくる知識ですよね。しかし、化石燃料について理解していなかったため、そもそも語句を知らずに思い込んで書いてしまったのです。見落としによるケアレスミスとはまた違った深刻な間違いだったのです。
中学受験の国語では、このように理科や社会に関するテーマを取り上げたものが今後増えてきます。こうした文章を克服することは、家庭学習のやり方次第で十分可能です。保護者の方ともう一度文章を読み、キーワードとなっている何度も出てくることばをチェックし、そのことばの意味について確認し合うと理解が進みます。
理科や社会は、文章だけではイメージがつかみにくいものも多いです。そうした場合は、資料集や図鑑などを使って、「これだよ」とイメージを教えてあげるのもおすすめです。化石燃料は、理科社会どちらでも出てくる知識ですが、たとえば「化石燃料は私たちの身の回りでどのような形で使われているかな?」と一緒に考えてみると、お子さんの中でイメージが具体的なものになってきます。中学受験は今や、教科横断型の問題が当たり前のように出題される時代になっています。どの教科で学んだことも、すべてはつながっている、という実感がわいてくると、基本的な知識の理解が深まるでしょう。ぜひやってみてください。
小学校5年生は、中学受験の核となる学年です。5年生で学習する内容は一番重く、入試の基礎を網羅しているので、5年生の学習がうまくいくかどうかが、結果を分けることにもなり得ます。それは算数や理科、社会でも同じであり、5年生で学習した内容が入試に直結していると言えるでしょう。当然国語でも同じことが言えます。
5年生の半ば、後半になると、文章の内容は一段と難しく、また文字数も大幅にアップします。急に質・量とも上がるので、ついていけなくなるお子さんが増えるのもこの時期です。そうすると、何をどう復習されればよいのかがわからない、と悩む保護者の方も少なくありません。5年生で読む文章は長く難解なものも多いので、コツを押さえた効率的な家庭学習が成績を上げるためには欠かせません。キーワードは「論説文」「物語文」「文法事項」です。
論説文の読解ではテーマに対する理解がすべてを決める
5年生でも4年生と同様、前半と後半で難易度が変わってくるのが国語の難しさです。ほかの教科のように単元ごとの学習とは少し異なるので、少しずつ気づかないうちに文章の難度が上がっていくのが特徴です。
5年生の論説文、特に後半では、内容がより抽象的になってきます。塾のテキストの目次などを見ると分かるのですが、たとえば「異文化理解」「言語・コミュニケーション」「人間科学」「人間社会のありかた」といった、大学受験も顔負けの重量級のテーマが平気で出題されるようになります。テーマが抽象化されるだけに、それを読みこなさなければならない受験生にとっては「読みにくい」と感じるものです。
このように難しく感じる5年生の論説文ですが、実は論説文には頻出のテーマというものがあります。頻出テーマについてあらかじめ理解を深めておくと、同じような文章が出てくるので、「前に読んだ内容に似ているな」と思いながら、スムーズに読めるようになることがあります。
論説文の頻出テーマの例を見てみると、「人間社会のあり方」や「和の文化」などが挙げられます。たとえば、「人間は自然界で自分たちが一番優れていると考えているが、それは間違いではないか」「日本人は欧米人と比べると『和」の意識を大切にする。その一方で、同調圧力がとても強い」といった筆者の意見が述べられている文章などです。
ほかにもさまざまなテーマが論説文では取り上げられますが、テキストの冒頭に「今回の文章のテーマはこれ」と簡単に書かれていることもありますので、家庭学習の際には親子で一緒にテーマを読み合わせ、どういうことなのか少し意見を交わしてみてから読解をはじめるのがおすすめです。
塾で国語の授業を受けてきたら、読んできた文章のテーマを聞いて、その内容について簡単にお子さんに説明して、と持ちかけるのも有効な方法です。「このテーマってどういう内容だったっけ?」と問いかけてみると、お子さんの理解度も把握できます。宿題をする際は、授業で扱ったものと共通するテーマの文章が出ていることもあるので、「この間の授業で読んできた文章と似ていた?違うところはどんなところだった?」といったように、文章に対する興味を刺激してあげることで、お子さんにとって理解できる論説文のテーマの幅が広がり、定着していくのです。
物語文はとにかく「心情把握」
4年生までの物語文の読解でも、登場人物の心情は非常に重要なテーマでした。5年生になって難しくなる原因は、単なる一時点の心情を聞くにとどまらず、「心情の変化」が読解の中心になってくることがひとつ挙げられます。また、もうひとつ重要なのは、4年生までは受験生と同世代の主人公と友人の物語文が多かったのに対し、5年生、特に後半になると、多くの受験生にとって身近とはいいがたい登場人物像や家庭環境、人間関係、心情などの理解が求められるようになるということです。
なかには主人公が「大人」という物語文も出てきます。これは、御三家をはじめとする難関校でよく出題される物語文パターンですが、大人の目から見た少年少女の生活をテーマにした文章が出てくるのが5年生の国語の難しいところであり、その傾向は入試直前まで続いていきます。そうした物語文を理解するためには、大人の心情といったものについても理解が必要、つまり「大人的な視点」が必要になってきます。このような視点が持てるかどうかによって、5年生からの論説文の読解の成績は大きく分かれるでしょう。
たとえば、5年生になると、両親が離婚している家庭、祖父母に主人公が育てられているシチュエーション、両親と一緒に暮らしているものの関係性があまりよくなく、心が通い合っていない子どもを描いたような物語文がどんどん出てきます。
ある中学校の入試担当の先生に対し、受験生の保護者から「離婚なんて子どもにはふさわしくない、そんなテーマの文章を入試に出さないでくれ」といってきたことがあるそうです。しかし、その学校の考え方は「さまざまな価値観、生活があるということを小学生のうちから考えてほしい」「そうした状況にある人に寄り添える生徒であってほしい」という思いから、毎年出題するわけではありませんが、離婚といったデリケートな家庭環境を描いた物語文でも出題しているそうです。
こうした考えは、現在の中学入試ではしごく当然と受け止められているので、今後も自分の家庭とは異なるシチュエーションの家族を描いた物語文は出題され続けるでしょう。そこで、家庭学習でもやはり多様な価値観をお子さんが持てるように保護者の方が誘導することが有効です。
お子さんが文章を読んだ後に、「どんな登場人物が出てきた?」「その子の家族はどんな人がいた?」「登場人物の性格はどうだった?」「登場人物の生い立ちは?」「登場人物同士の関係はどう?」といったようなことを発問して、お子さんが自分なりに考えて回答する、ということを繰り返すのが効果的です。そうすると、やがてお子さんが自分自身でそうした多様な価値観を物語文の中から読み取ることができるようになってきます。
ただし、授業を受けてきたり、家庭学習で親子で対話したとしても、「私はこういう気持ちになったことがないからわからない」「どうしてここでこんな気持ちになるんだろう」といったように、なかなか理解が進まない可能性はあります。たとえば、「楽しい」「悲しい」といった、プラスマイナスがはっきりしている心情についてはわかりやすいでしょうが、「失望感」であればどうでしょう。5年生では、まだ失望感というものを感じたことがないお子さんも少なくありません。
このように経験したことのない心情、感情が多く出てくるので5年生の物語文の読解は難しくなるのです。その場合は、辞書をひいてもなかなか理解できないでしょうから、保護者の方が分かりやすく具体例を交えて助言してあげましょう。「こういう状況だったらどんな気持ちになる?」と聞いてみて、それに対して答えさせてみる、「それが○○感という感情なんだよ」と、一般的にどのような心情なのかを教えてあげてください。
実際に感じたことがない心情を理解するのは難しいことです。しかし、保護者の方の助けによって、ある程度知識をつけておけると、別の文章で同じような心情が出てきたときにもイメージできるようになるでしょう。
意外と難しい文法事項も理解しておこう
5年生に入ると、特に夏休みあたりから文法事項を詳しく学習する機会があります。といってもテキストに載っている、ということがほとんどで、文法については自分でテキストを読んでおいて、ということが多いでしょう。たとえば「主語」「述語」程度であれば4年生でもわかりますが、「助動詞」「助詞」といった文法事項も出てきます。
実際のところ、中学入試で文法知識だけを取り出して出題する中学校は限られています。それなのに、なぜ文法事項が受験勉強のカリキュラムに入っているのでしょうか。その理由は、文法の理解が、文の構造を理解することや、文脈を把握することに役立つからです。
主語・述語の関係が分かれば、たとえ一文が長かったとしても、「誰が・どうした」という構造が分かり、正確に意味を理解できるようになります。また、助動詞や助詞の理解ができれば、筆者の意見を理解しやすくなります。たとえば、「~か」という反語表現があります。「果たして人類は本当に自然を大切にしているのか」という文章があった場合、その中には「いや、していない」という意味が込められている、といった具合です。
家庭学習で文法を勉強するなら、読解の文章を使って、文中の主語・述語を抑えること、修飾語を区別すること、また、修飾語と被修飾語の関係までつかめるようにしておくとあとが楽です。助詞や助動詞などについては、どこまで深めるか加減が難しい部分があるので、塾の先生に相談して、「ここまでは知っておこう」というアドバイスをもらいながら、文章を読む中で身につけていくのがおすすめです。
授業で習ったことを説明できるか確認する
4年生、5年生の前半・後半での国語の家庭学習のツボをご紹介してきましたが、ここからは共通して家庭学習を行う際に注意しておきたい点を解説します。
塾のテキストには、多くの文章、つまり読解問題を解けるようにするための素材文が載っています。塾で取り上げた文章については、家庭学習の際にもう一度丁寧に読み直すことが大切です。1回のカリキュラムにいくつかの文章が取り上げられていますが、授業で扱われたということは、その回で読んでほしい文章だと先生が考えているということです。
ですから、家庭学習で文章読解を効率的に勉強するには、塾の国語の授業で教わったことをお子さんに先生になってもらって、教えてもらうのがおすすめです。テキストの文章をもう一度一緒に読み、何がどこに書かれているのかをチェックし、さらに授業で扱った問題の解き方についても説明してもらいましょう。たとえば、テキストの読解問題の中心は選択肢問題であることが多いですが、選択肢問題は適当に選ぼうとすると絶対に正解できません。ですから、なぜその答えになるのか、解答の根拠が文章中のどこに書いているのかを説明してもらいましょう。
塾で学習してきたことを説明できると言うことは、授業の内容が理解できているということです。また、授業で一度学習しただけではあやふやだったことについても、家庭学習でもう一度おさらいすることによって、再度定着させることができます。記憶があいまいな部分については、解説を一緒に読むなどして、理解を深めるよう親子で取り組んでみましょう。それほど時間が取れないことも多いでしょうから、そういうときは、「今日はどんな文章を読んだの?」「おもしろかった?」「難しい内容のところはあった?」というように問いかけて、記憶を喚起するだけでも十分です。
まとめ~学年ごとに家庭学習のポイントは違うことを意識して
国語の家庭学習というと、あまりセオリーがなく、なんとなく文章を読んでなんとなく設問を解いて終わる、という受験生の方も多いでしょう。しかし、国語は非常に論理的な教科であり、文種ごとに読み方のセオリーがきちんとあるのです。ただ、単元ごとに分かれているわけではないので、漠然としてしまい、何を勉強しているのか実感できずに時間を使っている、ということが少なくありません。
4年生なら、テーマや内容がお子さんにとっても身近で比較的わかりやすいものが多く、設問もそれほど難しくありません。そのため、カンで解いて正解してしまうことも多いですが、それでは成績アップは望めません。本当に理解して解けているのかどうか、そういったことを家庭学習で良くチェックしてください。
5年生になると、文章のテーマは抽象的になり、文章量も増加します。4年生で適当な読みのクセがついてしまうと、5年生になって急に国語ができない、点数が取れない、でも理由が分からない、というケースも多いです。そこで家庭学習が重要になるのです。授業で正解してきた問題であっても、本当に理解できているか、文章の構造が分かっているかどうか、発問と回答を繰り返し、読み込んでいくことを積み重ねていきましょう。
5年生になると、ほかの教科も非常に重たい内容になり、なかなか国語まで時間が回らない、というご家庭も多いのですが、文章がしっかり読めてこそほかの教科の成績も上がっていきます。限られた時間であっても家庭学習で読解練習をすることが大切です。文章の内容がつかめているか、どこに何が書かれているかを把握することを念頭に、時間を決めて毎日繰り返していきましょう。
6年生になれば受験学年になりますから、よりスケジュールがタイトになります。そこで重要になるのが、家庭学習での「取捨選択」です。これはどの教科でも言えることですが、すべてを完璧にすることは受験生にとってまず不可能です。ただし、志望校によって求められるレベルは異なりますから、そのレベルに達するために最低限必要なことを徹底して理解することが必要になります。
家庭学習は、塾の授業の内容を定着させる非常に重要な学習時間です。学習量が増えていけばそれだけ時間がない!ということになるかもしれませんが、何もH句集せずにただ毎回の授業を聞いていても経験値を積むことができません。中学受験で大切なのは、「これはどこかで見たことがある」という経験値です。それを養成するためにも、家庭学習では学年ごとの最適な学習内容を意識しながら行うことが重要になります。
難しく考える必要はありません。国語に毎日少しずつ時間を取り、文章を読んで内容を説明させるだけでも実力は大きく変わります。継続し、積み重ねることが大切なので、ぜひやってみてください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。