親の手助けが大切!国語の伸ばし方

国語は一体どうやったら伸びるのか(国語の特性)

国語はすなわち日本語で、私たち日本人にとって、生まれてからずっと付き合って来た自分の国の言葉で、最も馴染みがあり、全てその言葉を用いて情報を得ているといっても過言ではないでしょう。そんななじみ深い言葉なのに、何故国語が苦手で伸びない、という現象が起こるのでしょうか。

 それは、

『国語は言語なので、学問ではなく日常的に用いるツールなのである』

という事につきます。

つまり、他の三教科のように学問として暗記・基礎の理解と練習・発展的な考え方の習得といった作業を行う中で理解を深め得点を伸ばして行くものではない、という事です。

このように、国語は学問ではないのですから、算数のように難解な出題をしようがありません。また、公式や典型的な解き方、というものも存在しません。

 

それではツールとしての国語という言語は、どうやったら伸びるのでしょうか。

その答えはただ、『使う』という事だけです。

ツール=道具ですから、毎日沢山使って、より上手く使えるようになるよう努力する事しか出来ないのです。この『使う』事については、他の言語同様に場面が4つあります。

  • 聞く
  • 話す
  • 読む
  • 書く

の4つです。

基本的にはこの4つをバランスよく毎日せっせと『使う』事が必要になるのですが、中でも受験でテストとして問われる技能は読む・書くの2つです。

ここでは中学受験の国語という教科をどうやって伸ばすか、という話をしているので、特にこの2つの技能を伸ばす事に絞って話を続けて行きたいと思います。

一にも二にも、読解力をつける事に徹する(=読む技能)

まず読む・書く、という2つの技能を伸ばす時に、同時にという訳には行きません。

赤ちゃんもそうですが、聞いて理解できるようになるのと、言葉を発して自己表現が出来るようになるのには時間差がありますね。

そう、言語と言うのは赤ちゃんだけでなく大人になってから覚えてもしかりなのですが、まずは耳から聞いて自分の中に言葉のバリエーションをインプットして行く必要がある訳です。

そうしてそのバリエーションがある程度揃った時に、今度はアウトプットの練習をし始めるのですが、焦らずインプットを丁寧にした方が、いったんアウトプットに移行した時に極めて完成度の高い表現力を持った言葉として発せられるのです。

 そこでまず大切なのは、

『良い文章を沢山読んで自分の中にインプットする』

という作業を行うことです。

学問でなく言葉ですから、毎日この作業を行っていれば嫌でも作業時間は日に日に短縮されて行きます。そしてそれは、他の教科、例えば算数の文章題や社会の暗記といった作業に割く時間も同時に縮めてくれるようになるのです。

よく、「塾の宿題やその他教科の予習や復習の時間を考えると、とても毎日悠長に読書に充てる時間なんて取れません。」とおっしゃる親御さんがいらっしゃいます。

しかし、それに対して筆者が必ずお伝えしているのは、「そうおっしゃるという事は現時点でまだまだ国語の読解力が足りていない、という事になる訳で、だったら尚更全体の作業時間を短くして、教科にかかわらずより多くの課題を楽に処理出来るようにする為に、数か月の間辛抱をして多読に時間を充てて下さい。」という事です。

その間は下手したら、まだ十分な読解力がついていない訳ですから、当然解説を聞いても、読解力がついている子よりは理解度が低いという事になるので、あまりに時間が無い事が子供の負担になるようであれば、極端な話 国語の授業は読解力(=聞いていて先生の言っている事が手に取るように理解出来る力)がつくまでは受けなくても大丈夫です。

むしろその時間を、代わりにひたすら多読に充てていただきたいと思います。

そうして、読解力がついた事はいつ頃どうやって判断するのかというと、以下を目安にしてください。

  • 国語のみならず全ての学習において、作業時間が目に見えて短くなった。
  • 目安として、子供向けの文庫本なら一日一冊読めるようになった。
  • 親や先生の質問に対して、単語でなく筋道立てて文節で答える事が出来るようになった。

子供は親が思うより習得が早いので、数か月も続ければ上記の兆候が必ず見えて来る事と思いますが、他の教科よりは成果が目に見えるまでの期間が少し長いので、根気よく、毎日欠かさずにやらせて下さい。

少しでも読解力がついてくると、言わなくても自分から「読む」作業を行うようになりますから、親が仕向けるのはやるようになるまでのほんの数か月間だけです。

文章を一部だけ抜き出した問題では読解力はつかない 

まだ受験までに時間的な余裕があるご家庭は上記の作業をする心の余裕もあると思いますが、もし土壇場(受験する年の秋以降)になってこの記事に出会って、非常に焦っているのでとてもじゃないけど時間がかかる読書をさせる時間も取れないし、そんな心境でもない、というご家庭もあるでしょう。

しかし、そこでも再度考えて頂きたいのです。

この記事が目に留まった、という事は、残念ながら今まで国語を伸ばす方法に出会えずに来てしまって、現時点で国語がどうしても足を引っ張っていて点が伸びない、という状況にあるのではないでしょうか。

それであれば、少しでも現状から脱しないと、結局気ばかりが焦っても今の状態は変わらないまま本番を迎える、という事になってしまいますね。

土壇場になるまで気付かなかったからこそ、気づいた今からでも、少しでも読解力を上げて国語の点数を伸ばし、あわよくば他の教科の点数も伸ばす事が必要なのではないでしょうか。

土壇場になると他の教科と同じで、これまでやってきたことの総復習と、出題傾向の把握も兼ねた過去問演習がメインの作業になってきます。

もちろん、他の教科はそれで良いのですが、国語に限っては違います。

読解力が十分でないのに、本の一部だけを持ってきて問題として加工している問題集や過去問は、あくまで現時点での読解力をはかるためのものですから、いくらそれをやっても読解力はあがらず、ただ毎回今の読解力を繰り返しはかえって、点が取れない事を思い知らされているだけになってしまいます。

現時点での読解力は模試で把握しているはずですから、何度も時間を費やしてはかる必要はありませんので、是非その時間を少しでも読解力を上げる作業に使って下さい。

読解力をあげる時に、一部を切って持ってきた文章をいくら読んでも意味がありません。

必ず通しで一冊の本を読み切って、著者の言わんとしている事を理解する事に努めさせて下さい。

過去に担当した生徒さんで、受験の年の9月から慌てて国語の指導を頼まれ、それまで通っていた塾の国語の授業の受講をやめて、私の言う通り、過去問を解くのではなく貸した本を数日でひたすら読んで要約する(この作業については後述します)、という作業をギリギリまで繰り返してくれた子が何人かいらしゃったのですが、直前の1月の模試でみんな国語の偏差値が40台から一気に60台まで上がり、漢字・語句問題の間違いを除いてほとんど正解という状態で本番に臨む事が出来ました。

それらの生徒さん達からは後日、不思議なぐらい他の教科も早く解答出来るようになり、全体的に点数が上がった!と感謝された事は言うまでもありません。


一番効果的なのは読書(≠楽しむ)

ここに至るまでに書いて来た事の繰り返しになるようですが、中学受験の国語を伸ばすのに最も効果的なのは『読書』であると言い切れます。

ただし、ここで言う読書とは、その書物を楽しみながら読み、その世界観に入り込み、他人の体験をその書物を通して疑似体験し共感したり、著者の考え方に感銘を受けて何かに開眼し、今後の人生の糧とするような本当の意味での読書のことではありません。

もちろん、時間に余裕があれば読書を楽しむことから始めるのが本来の手順です。

しかし、既に読書を楽しむ習慣がある子供ならば、受験の段階において既に国語が得点源になっている事と思いますので伸び悩んで今方法を模索しているという事にはならないはずです。

今この記事を読んで下さっている方は、何故国語が伸び悩んでいるかわからない、あるいは読書が足りていなかった事を薄々気付いて後悔しているのだけれど、とにかく入試までの時間に限りがあって、ゆっくり読書を楽しんでいる余裕はないが何とかして国語の点数を上げたい、と思っていらっしゃる状況だと思います。

そこで、国語の得点アップまでのせめてもの最短ルートとして、『楽しまない読書』をお勧めする次第です。

では、具体的に『楽しまない読書』とはどういう作業かというと、とにかく入試で扱われそうな書物(名作文学作品や評論など。問題集や過去問の巻末に掲載されている、文献リストを参考にすると良いです。)を多読し、一冊読み終える毎に

『著者がその本を通して読者に最も訴えたかった事は何か。』

を見つける、という作業です。

一冊の物語、または評論文には必ずそれがあり、原稿用紙にすると半ページ~1ページ分でまとめられる程度の内容にまで凝縮出来るはずです。

一冊ごとに必ずそれを見つけ、書き留めるか口頭で保護者の方に説明出来るように練習の場を提供してあげて下さい。

なお、読解力がないうちからいきなり著者が最も訴えたかった事を読み取るのはとても難しいですから、ある程度読解力がつくまでは的がずれていても訂正させる必要はありません。

読解力が既にある人が見つけた『著者の最も言いたいこと』を伝えても意味がなく、自分で読み取って初めて意味があるからです。読解力がついてくれば、自然に的を得て来ますのではじめは兎に角この作業を欠かさず行う事だけに専念し、慣れて読解力がついて来るのを根気よく待ってください。

そして、言うまでもありませんが出来るだけ早く成果を出したいのであれば、一冊でも多く読んで一回でも多くこの作業を行う事です。

あと、可能であれば的を得ているかどうか判断する為にも、親御さんもざっとその本を読んで頂き、あらかじめご自分でも『著者の最も言いたいこと』を洗い出しておいて頂きたいのです。

忙しいし苦痛かもしれませんが、親がその作業を簡単に出来ないとなると子供の読解力がついたかどうかも判断してあげられませんし、また子供がどうしても見つけられない時に何が言いたいことなのかを説明してあげることも出来ません。

それに親でも見つけるのが難しいものであれば、ましてお子さんにとっては非常に難しく苦痛な作業となってしまうでしょう。

「お母さんは何が言いたいか見つかったよ。頑張って見つけてみて!」と、一緒に探す作業を楽しむ感覚で取り組んで頂くとお子さんも苦痛にならないと思います

これが出来るようになると、入試国語の選択問題で迷わず正解を選び出せるようになります。

選択問題の正解が、まさにこの『筆者が最も言いたいこと』であるからです。自分で見つけ出せれば、他のまやかしに目を捕われて迷う事はなくなる訳です。

必ず要約する(=書く技能)

ここまで来て、あと残されているのはアウトプットの部分です。

理解出来た内容を、他人に伝わりやすい表現で上手く指定字数にまとめて書き上げる、というのもまた簡単ではありませんが、練習を積めば必ず誰でも出来るようになります。

これも面倒に感じるかもしれませんが、一冊読み終える度に字数を決めて、筆者が最も言いたいことを含めたその本の要約を必ず書かせるようにして下さい。

自分が理解できる事と、その理解した内容を他人に伝える事ではまた別の技能です。

そしてこれも、書けば書く程表現力がついて来ますから、必ず省かずに行うようにして下さい。この作業が入試国語の記述問題の対策に最も効果的なのです。

記述の場合は、例え答えなくてはいけない事が頭でわかっていても、書き方が稚拙で採点者に上手く伝わらなければ得点になりません。

逆に少しだけ求める解答からずれていても、表現力で以て採点者の心に響く解答が書ければ、点数をくれるのが中学受験の国語の記述です。

国語の採点者は、「この子は決して簡単ではないこの問いに、どういう答え方をしてくるのか。」という感性とも言える部分を期待している面もあるからです。

問題集や過去問をやらずとも本は読む事(=上記の作業は行う事)

ということで、中学受験の国語の得点を伸ばすためには『問題を沢山解くのでなく、日本語力を磨かなくてはならないのだ』という事がお分かり頂けたと思います。

逆に言えば、問題を全く解かなくても、読解力と記述力さえあれば漢字・語句問題を除けばほとんど正解が出来てしまう、というのが国語です。(過去問だけは、出題傾向やボリュームを知るためにも受験校のものに目を通しておく必要はありますが。)

したがって、国語の授業を受ける事と問題演習を行う事にはあまり時間を割かない方向で入試までのスケジュールを立てて頂くのが良いでしょう。

上記で述べた作業だけを毎日着実にやって頂くだけで、間違いなく中学受験国語は得点源となるほどまで点数が伸びる事でしょう。

そして、この作業を続ければ続ける程他の教科の出題の意図や、何を解答すれば良いのかを瞬時に読み取る力がつき、自然に算数や理科、社会の得点力が上がって来ている事に気づく日も近い事と思います。

読んだ本の再利用は抜き出しゲーム(=テストで得点する為のプラスαの技能)

さて、ここまで述べてきた事で最低限必要な作業は終わりです。

もしもう少し時間的に余裕がありそうな方には、折角入手した本の、受験に役立つ再利用の方法をお伝えしておきたいと思います。

所謂抜き出し問題で、「傍線部の主人公の心情が最も良く表れている箇所を文中から25字以内で抜き出しなさい。」等の指示がある時に、抜き出す部分が浮き出て見えるようになる練習です。

読み終えた本一冊に対して、その文章の中からランダムに3-5か所、探し出しにくいと思われる一文(文になっていれば何文字でもかまいません)を紙に書きだして下さい。

そしてお子さんには、その一文が何ページの何行目に書いてあったか探し出してもらう、という作業をゲーム感覚で行います。

この探し出すまでの時間が短ければ短い程良いです。

本の内容が記憶に鮮明に残っている程、この作業完了までの時間は短くなるはずです。これを繰り返し行う事で、終わった後にランダムに抜き出ししなくてはならないため、無意識のうちに読んでいる時から一文一文をよりしっかりと記憶する習慣がつきます

これが本番で出来るようになると、本一冊に比べたら短い問題文を、読み返さなくても問いで訊かれた時に「あ!あそこに書いてあった文だ。」と思い出す事が出来るのです。

また、勘が養われてくると、本文を読んでいる時に「ここは問題で訊かれそうだな。」とさりげなく線を引くなりしてチェックしておく事も出来るようになります。

 

あくまで読む事と要約する事が優先にはなりますが、この作業もやっておく事で国語力を最強のものとして固める事が出来ますので、是非お勧めいたします。

まとめ

以上、多くの方が悩む中学受験の国語の伸ばし方について書いて来ましたが、いかがでしたでしょうか。

他の教科より手間はかかるものの、国語力は一度ついてしまえば下がる事はありませんので、国語に割く時間は後半になればなるほど、どんどん短くなって行きます。

それに、国語力をつければ必ず他の教科が付随して伸びて行くのですから、こんなお得な教科はありませんね。

是非この記事を参考に、少しでも時間に余裕があるうちに親子共同作業でお子さんの国語力を伸ばしてあげて下さい。

国語は一体どうやったら伸びるのか(国語の特性)

国語はすなわち日本語で、私たち日本人にとって、生まれてからずっと付き合って来た自分の国の言葉で、最も馴染みがあり、全てその言葉を用いて情報を得ているといっても過言ではないでしょう。そんななじみ深い言葉なのに、何故国語が苦手で伸びない、という現象が起こるのでしょうか。

 それは、

『国語は言語なので、学問ではなく日常的に用いるツールなのである』

という事につきます。

つまり、他の三教科のように学問として暗記・基礎の理解と練習・発展的な考え方の習得といった作業を行う中で理解を深め得点を伸ばして行くものではない、という事です。

このように、国語は学問ではないのですから、算数のように難解な出題をしようがありません。また、公式や典型的な解き方、というものも存在しません。

 

それではツールとしての国語という言語は、どうやったら伸びるのでしょうか。

その答えはただ、『使う』という事だけです。

ツール=道具ですから、毎日沢山使って、より上手く使えるようになるよう努力する事しか出来ないのです。この『使う』事については、他の言語同様に場面が4つあります。

  • 聞く
  • 話す
  • 読む
  • 書く

の4つです。

基本的にはこの4つをバランスよく毎日せっせと『使う』事が必要になるのですが、中でも受験でテストとして問われる技能は読む・書くの2つです。

ここでは中学受験の国語という教科をどうやって伸ばすか、という話をしているので、特にこの2つの技能を伸ばす事に絞って話を続けて行きたいと思います。

一にも二にも、読解力をつける事に徹する(=読む技能)

まず読む・書く、という2つの技能を伸ばす時に、同時にという訳には行きません。

赤ちゃんもそうですが、聞いて理解できるようになるのと、言葉を発して自己表現が出来るようになるのには時間差がありますね。

そう、言語と言うのは赤ちゃんだけでなく大人になってから覚えてもしかりなのですが、まずは耳から聞いて自分の中に言葉のバリエーションをインプットして行く必要がある訳です。

そうしてそのバリエーションがある程度揃った時に、今度はアウトプットの練習をし始めるのですが、焦らずインプットを丁寧にした方が、いったんアウトプットに移行した時に極めて完成度の高い表現力を持った言葉として発せられるのです。

 そこでまず大切なのは、

『良い文章を沢山読んで自分の中にインプットする』

という作業を行うことです。

学問でなく言葉ですから、毎日この作業を行っていれば嫌でも作業時間は日に日に短縮されて行きます。そしてそれは、他の教科、例えば算数の文章題や社会の暗記といった作業に割く時間も同時に縮めてくれるようになるのです。

よく、「塾の宿題やその他教科の予習や復習の時間を考えると、とても毎日悠長に読書に充てる時間なんて取れません。」とおっしゃる親御さんがいらっしゃいます。

しかし、それに対して筆者が必ずお伝えしているのは、「そうおっしゃるという事は現時点でまだまだ国語の読解力が足りていない、という事になる訳で、だったら尚更全体の作業時間を短くして、教科にかかわらずより多くの課題を楽に処理出来るようにする為に、数か月の間辛抱をして多読に時間を充てて下さい。」という事です。

その間は下手したら、まだ十分な読解力がついていない訳ですから、当然解説を聞いても、読解力がついている子よりは理解度が低いという事になるので、あまりに時間が無い事が子供の負担になるようであれば、極端な話 国語の授業は読解力(=聞いていて先生の言っている事が手に取るように理解出来る力)がつくまでは受けなくても大丈夫です。

むしろその時間を、代わりにひたすら多読に充てていただきたいと思います。

そうして、読解力がついた事はいつ頃どうやって判断するのかというと、以下を目安にしてください。

  • 国語のみならず全ての学習において、作業時間が目に見えて短くなった。
  • 目安として、子供向けの文庫本なら一日一冊読めるようになった。
  • 親や先生の質問に対して、単語でなく筋道立てて文節で答える事が出来るようになった。

子供は親が思うより習得が早いので、数か月も続ければ上記の兆候が必ず見えて来る事と思いますが、他の教科よりは成果が目に見えるまでの期間が少し長いので、根気よく、毎日欠かさずにやらせて下さい。

少しでも読解力がついてくると、言わなくても自分から「読む」作業を行うようになりますから、親が仕向けるのはやるようになるまでのほんの数か月間だけです。

文章を一部だけ抜き出した問題では読解力はつかない 

まだ受験までに時間的な余裕があるご家庭は上記の作業をする心の余裕もあると思いますが、もし土壇場(受験する年の秋以降)になってこの記事に出会って、非常に焦っているのでとてもじゃないけど時間がかかる読書をさせる時間も取れないし、そんな心境でもない、というご家庭もあるでしょう。

しかし、そこでも再度考えて頂きたいのです。

この記事が目に留まった、という事は、残念ながら今まで国語を伸ばす方法に出会えずに来てしまって、現時点で国語がどうしても足を引っ張っていて点が伸びない、という状況にあるのではないでしょうか。

それであれば、少しでも現状から脱しないと、結局気ばかりが焦っても今の状態は変わらないまま本番を迎える、という事になってしまいますね。

土壇場になるまで気付かなかったからこそ、気づいた今からでも、少しでも読解力を上げて国語の点数を伸ばし、あわよくば他の教科の点数も伸ばす事が必要なのではないでしょうか。

土壇場になると他の教科と同じで、これまでやってきたことの総復習と、出題傾向の把握も兼ねた過去問演習がメインの作業になってきます。

もちろん、他の教科はそれで良いのですが、国語に限っては違います。

読解力が十分でないのに、本の一部だけを持ってきて問題として加工している問題集や過去問は、あくまで現時点での読解力をはかるためのものですから、いくらそれをやっても読解力はあがらず、ただ毎回今の読解力を繰り返しはかえって、点が取れない事を思い知らされているだけになってしまいます。

現時点での読解力は模試で把握しているはずですから、何度も時間を費やしてはかる必要はありませんので、是非その時間を少しでも読解力を上げる作業に使って下さい。

読解力をあげる時に、一部を切って持ってきた文章をいくら読んでも意味がありません。

必ず通しで一冊の本を読み切って、著者の言わんとしている事を理解する事に努めさせて下さい。

過去に担当した生徒さんで、受験の年の9月から慌てて国語の指導を頼まれ、それまで通っていた塾の国語の授業の受講をやめて、私の言う通り、過去問を解くのではなく貸した本を数日でひたすら読んで要約する(この作業については後述します)、という作業をギリギリまで繰り返してくれた子が何人かいらしゃったのですが、直前の1月の模試でみんな国語の偏差値が40台から一気に60台まで上がり、漢字・語句問題の間違いを除いてほとんど正解という状態で本番に臨む事が出来ました。

それらの生徒さん達からは後日、不思議なぐらい他の教科も早く解答出来るようになり、全体的に点数が上がった!と感謝された事は言うまでもありません。


一番効果的なのは読書(≠楽しむ)

ここに至るまでに書いて来た事の繰り返しになるようですが、中学受験の国語を伸ばすのに最も効果的なのは『読書』であると言い切れます。

ただし、ここで言う読書とは、その書物を楽しみながら読み、その世界観に入り込み、他人の体験をその書物を通して疑似体験し共感したり、著者の考え方に感銘を受けて何かに開眼し、今後の人生の糧とするような本当の意味での読書のことではありません。

もちろん、時間に余裕があれば読書を楽しむことから始めるのが本来の手順です。

しかし、既に読書を楽しむ習慣がある子供ならば、受験の段階において既に国語が得点源になっている事と思いますので伸び悩んで今方法を模索しているという事にはならないはずです。

今この記事を読んで下さっている方は、何故国語が伸び悩んでいるかわからない、あるいは読書が足りていなかった事を薄々気付いて後悔しているのだけれど、とにかく入試までの時間に限りがあって、ゆっくり読書を楽しんでいる余裕はないが何とかして国語の点数を上げたい、と思っていらっしゃる状況だと思います。

そこで、国語の得点アップまでのせめてもの最短ルートとして、『楽しまない読書』をお勧めする次第です。

では、具体的に『楽しまない読書』とはどういう作業かというと、とにかく入試で扱われそうな書物(名作文学作品や評論など。問題集や過去問の巻末に掲載されている、文献リストを参考にすると良いです。)を多読し、一冊読み終える毎に

『著者がその本を通して読者に最も訴えたかった事は何か。』

を見つける、という作業です。

一冊の物語、または評論文には必ずそれがあり、原稿用紙にすると半ページ~1ページ分でまとめられる程度の内容にまで凝縮出来るはずです。

一冊ごとに必ずそれを見つけ、書き留めるか口頭で保護者の方に説明出来るように練習の場を提供してあげて下さい。

なお、読解力がないうちからいきなり著者が最も訴えたかった事を読み取るのはとても難しいですから、ある程度読解力がつくまでは的がずれていても訂正させる必要はありません。

読解力が既にある人が見つけた『著者の最も言いたいこと』を伝えても意味がなく、自分で読み取って初めて意味があるからです。読解力がついてくれば、自然に的を得て来ますのではじめは兎に角この作業を欠かさず行う事だけに専念し、慣れて読解力がついて来るのを根気よく待ってください。

そして、言うまでもありませんが出来るだけ早く成果を出したいのであれば、一冊でも多く読んで一回でも多くこの作業を行う事です。

あと、可能であれば的を得ているかどうか判断する為にも、親御さんもざっとその本を読んで頂き、あらかじめご自分でも『著者の最も言いたいこと』を洗い出しておいて頂きたいのです。

忙しいし苦痛かもしれませんが、親がその作業を簡単に出来ないとなると子供の読解力がついたかどうかも判断してあげられませんし、また子供がどうしても見つけられない時に何が言いたいことなのかを説明してあげることも出来ません。

それに親でも見つけるのが難しいものであれば、ましてお子さんにとっては非常に難しく苦痛な作業となってしまうでしょう。

「お母さんは何が言いたいか見つかったよ。頑張って見つけてみて!」と、一緒に探す作業を楽しむ感覚で取り組んで頂くとお子さんも苦痛にならないと思います

これが出来るようになると、入試国語の選択問題で迷わず正解を選び出せるようになります。

選択問題の正解が、まさにこの『筆者が最も言いたいこと』であるからです。自分で見つけ出せれば、他のまやかしに目を捕われて迷う事はなくなる訳です。

必ず要約する(=書く技能)

ここまで来て、あと残されているのはアウトプットの部分です。

理解出来た内容を、他人に伝わりやすい表現で上手く指定字数にまとめて書き上げる、というのもまた簡単ではありませんが、練習を積めば必ず誰でも出来るようになります。

これも面倒に感じるかもしれませんが、一冊読み終える度に字数を決めて、筆者が最も言いたいことを含めたその本の要約を必ず書かせるようにして下さい。

自分が理解できる事と、その理解した内容を他人に伝える事ではまた別の技能です。

そしてこれも、書けば書く程表現力がついて来ますから、必ず省かずに行うようにして下さい。この作業が入試国語の記述問題の対策に最も効果的なのです。

記述の場合は、例え答えなくてはいけない事が頭でわかっていても、書き方が稚拙で採点者に上手く伝わらなければ得点になりません。

逆に少しだけ求める解答からずれていても、表現力で以て採点者の心に響く解答が書ければ、点数をくれるのが中学受験の国語の記述です。

国語の採点者は、「この子は決して簡単ではないこの問いに、どういう答え方をしてくるのか。」という感性とも言える部分を期待している面もあるからです。

問題集や過去問をやらずとも本は読む事(=上記の作業は行う事)

ということで、中学受験の国語の得点を伸ばすためには『問題を沢山解くのでなく、日本語力を磨かなくてはならないのだ』という事がお分かり頂けたと思います。

逆に言えば、問題を全く解かなくても、読解力と記述力さえあれば漢字・語句問題を除けばほとんど正解が出来てしまう、というのが国語です。(過去問だけは、出題傾向やボリュームを知るためにも受験校のものに目を通しておく必要はありますが。)

したがって、国語の授業を受ける事と問題演習を行う事にはあまり時間を割かない方向で入試までのスケジュールを立てて頂くのが良いでしょう。

上記で述べた作業だけを毎日着実にやって頂くだけで、間違いなく中学受験国語は得点源となるほどまで点数が伸びる事でしょう。

そして、この作業を続ければ続ける程他の教科の出題の意図や、何を解答すれば良いのかを瞬時に読み取る力がつき、自然に算数や理科、社会の得点力が上がって来ている事に気づく日も近い事と思います。

読んだ本の再利用は抜き出しゲーム(=テストで得点する為のプラスαの技能)

さて、ここまで述べてきた事で最低限必要な作業は終わりです。

もしもう少し時間的に余裕がありそうな方には、折角入手した本の、受験に役立つ再利用の方法をお伝えしておきたいと思います。

所謂抜き出し問題で、「傍線部の主人公の心情が最も良く表れている箇所を文中から25字以内で抜き出しなさい。」等の指示がある時に、抜き出す部分が浮き出て見えるようになる練習です。

読み終えた本一冊に対して、その文章の中からランダムに3-5か所、探し出しにくいと思われる一文(文になっていれば何文字でもかまいません)を紙に書きだして下さい。

そしてお子さんには、その一文が何ページの何行目に書いてあったか探し出してもらう、という作業をゲーム感覚で行います。

この探し出すまでの時間が短ければ短い程良いです。

本の内容が記憶に鮮明に残っている程、この作業完了までの時間は短くなるはずです。これを繰り返し行う事で、終わった後にランダムに抜き出ししなくてはならないため、無意識のうちに読んでいる時から一文一文をよりしっかりと記憶する習慣がつきます

これが本番で出来るようになると、本一冊に比べたら短い問題文を、読み返さなくても問いで訊かれた時に「あ!あそこに書いてあった文だ。」と思い出す事が出来るのです。

また、勘が養われてくると、本文を読んでいる時に「ここは問題で訊かれそうだな。」とさりげなく線を引くなりしてチェックしておく事も出来るようになります。

 

あくまで読む事と要約する事が優先にはなりますが、この作業もやっておく事で国語力を最強のものとして固める事が出来ますので、是非お勧めいたします。

まとめ

以上、多くの方が悩む中学受験の国語の伸ばし方について書いて来ましたが、いかがでしたでしょうか。

他の教科より手間はかかるものの、国語力は一度ついてしまえば下がる事はありませんので、国語に割く時間は後半になればなるほど、どんどん短くなって行きます。

それに、国語力をつければ必ず他の教科が付随して伸びて行くのですから、こんなお得な教科はありませんね。

是非この記事を参考に、少しでも時間に余裕があるうちに親子共同作業でお子さんの国語力を伸ばしてあげて下さい。

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