小学校では5年生辺りで習う「平均の求め方」は、多くの中学受験のカリキュラムでは4年生のうちに学習します。
合計して個数で割るだけの計算なので、平均を求めること自体はそれほど難しいことではありません。しかし、速さの問題の中で「往復の平均の速さ」を聞かれたとき、正しく答えられる生徒さんはどのくらいいるでしょうか?
この記事では、一般的な平均の求め方と、往復の平均の速さの求め方について触れていきます。
また、中学受験用のカリキュラムの中には「平均算」というものがあります。平均算はただ平均を求めるだけでなく、面積図と比を使って解いていくことがあります。その平均算の面積図を利用した解き方も少しだけ載せています。
平均の求め方と面積図の基本
平均というのは「平らに均す」と書きます。イメージとしては、棒グラフで考えるとわかりやすいですね。高さがバラバラになっているものを、総量を変えずに同じ高さに揃えます。
平均の求め方=全体の和÷個数、というのが公式となります。
例えば、4教科のテストの平均点は「4教科の合計点÷4」、5人家族の平均体重は「5人の体重の和÷5」です。
下の図のように平均を棒グラフで考えたとき、「平均より上に飛び出る分の合計」と「平均より下にへこんでいる分の合計」が等しくなります。これが面積図の考え方の基本の部分となります。
- (問題)4教科のテストを受けたところ、算数は100点、国語は90点、理科は70点、社会は74点でした。4教科の平均点は何点ですか。
- (解答)(100+90+70+74)÷4=84(点)
平均を求めるだけであれば、このように計算をするだけになります。面積図を利用する際には、平均より上と平均より下の合計が同じになることに注目します。
- 算数は平均より16点上、国語は平均より6点上→平均より上の部分は合計22点
- 理科は平均より12点下、社会は平均より10点下→平均より下の部分も合計22点
中学受験入試で出題される平均の問題には、単なる平均の計算では求められない問題が出題されることがあります。そのような問題は、面積図と比を利用して解くことになります。
面積図を利用しなければならない問題のパターンについてはまた別の記事で触れるとして、今回は多くの生徒が最初は間違えてしまう「往復の平均の速さ」について考えていきます。
間違えやすい「往復の平均の速さ」
往復の平均の速さの問題を見たとき、よくありがちな間違え方が「行きと帰りの速さを足して2で割る」という計算方法です。そもそも速さというもの自体が「進んだ道のり÷かかった時間」によって計算しているので、平均を表しているのと同じはずです。
例えばこれが、女子4人のテストの平均90点、男子5人のテストの平均72点だったとして、全体の平均を求めるときはどうするでしょうか?女子の平均と男子の平均を足して2で割るのは間違いだとわかるのではないでしょうか。
まず女子の合計と男子の合計を計算して、全体の合計を求めてから男女の人数の合計で割るはずです。往復の平均の速さを求める場合、これと同じようなことを考えます。
例えば、次のような問題があったとします。
- (問題)家から学校まで900mの道のりを、行きは毎分60m、帰りは毎分90mの速さで往復しました。往復の平均の速さは毎分何mですか。
- (解答)行き→900÷60=15(分)、帰り→900÷90=10(分)、往復900×2=1800(m)なので、1800÷(15+10)=72(m/分)
上の図の面積図を見てもわかるように、行きと帰りではかかる時間が異なるため、往復の平均の速さは行きと帰りのちょうど真ん中にはなりません。もしこれが、同じ時間かかったというのであれば足して2で割るのでも問題ありませんが、同じ長さの道のりを異なる速さで進む場合に時間が同じになることはありえません。
このように、具体的な距離と速さが条件として与えられている場合には、「往復の道のりの合計÷往復にかかった時間の合計=往復の平均の速さ」として求めることができます。
距離がわからなくても「往復の平均の速さ」は求められる?
具体的な距離(道のり)が条件として与えられていない場合にも、往復の平均の速さを聞かれる問題が存在します。この場合、「片道の距離を計算しやすい数値に勝手に設定する」という方法で答えを出しても、何ら問題はありません。
同じ長さの道のりを進む場合、かかる時間は速さの逆比となります。行きは毎分60m、帰りは毎分90mの速さで進むとして、片道が900mであれば行きは15分、帰りは10分です。
例えばこれば片道1800mであれば、行きは30分、帰りは20分です。仮に片道180mであれば、行きは3分、帰りは2分です。距離を何mに設定しても、速さの比が2:3なので、同じ距離を進むのにかかる時間は逆比で3:2となっています。
このことを利用して、次のように往復の平均の速さを求めることができます。
- (問題)家から学校までの道のりを、行きは毎分60m、帰りは毎分90mの速さで往復しました。往復の平均の速さは毎分何mですか。
- (解答)片道を180mとすると、行き→180÷60=3(分)、帰り→180÷90=2(分)なので、180×2÷(3+2)=72(m/分)
- (別解)上の図の面積図による解答を参照。かかる時間の比は速さの逆比で3:2となり、速さの平均は60と90の間を2:3に分けるところ(=72)になる。
面積図を使った解法は、平均の面積図を習っていない場合には難しく感じるかもしれません。仮に面積図が理解できなくても、「距離を計算しやすい数値で設定して問題ない」ということが理解できれば、往復の平均の速さを求めることが可能です。
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まとめ
平均の面積図を理解しておくと、今回のような往復の平均の速さの問題だけでなく、様々な問題で活用できます。食塩水を混ぜ合わせる問題などはその代表例となります。
重さも濃度も異なる2種類の食塩水を混ぜ合わせる場合にも、濃度の平均は足して2で割るのでは求められません。食塩水に関する問題については別の記事で説明したいと思います。
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