学校でも塾でも、漢字は必ず勉強しますよね。お子さんは、どのように漢字の学習に取り組んでいるでしょうか。自分から進んでできているでしょうか。興味を持って、面白いと思って学習できているでしょうか?
そもそも、なぜ漢字の学習が必要なのでしょう?漢字は、その文字だけ覚えればいいというものではありません。学年ごとに段階はありますが、その漢字が入ったことばを、文章を読んだり書いたりするときに自由自在に使うことができる、いわば国語の運用能力を高めるための道具として必要だから学習をするのです。
そんな漢字の学習の基本は繰り返し練習です。でも、同じことをひたすら繰り返す勉強はどうしても「写すだけ」のような作業になりがちで、面白さを感じることも少ないでしょう。でも、お子さんが目を輝かせて取り組む教材があったとしたら・・・?ぜひ使ってみたいですよね。
そこで、今回は、いま子どもに大人気の漢字ドリル、「うんこ漢字ドリル」を取り上げてみたいと思います。塾で国語を教える立場から、話題沸騰中の「うんこ漢字ドリル」の特徴をご紹介し、学習効果を上げるための使い倒しポイントを書いていきたいと思います。
話題沸騰!「うんこ漢字ドリル」の特徴とは?
「うんこ」とついているからといって、不真面目なドリルではありません。ドリルに必要な点を押さえたうえで、子どもが楽しく漢字を学習できるようにいろいろな工夫がされています。たとえば・・・
全ての例文に「うんこ」ということばが入っている
これぞ、「うんこ漢字ドリル」たるゆえんですね。このドリルには、1つの漢字につき3つの例文が載っています。1年生用から6年生用まで合わせると全部で3018の例文があり、そのすべてに「うんこ」ということばが使われているのです。
「うんこ」ということばは、大人でも口に出すのははばかられるものですが、そういう少し背徳感のあるものに対する子どもの食いつきはすごいものがあります。中には「え、現実的にそんなことある?」という例文もありますが、一度興味を持った子どもにとっては、楽しみながら学習できる絶好の漢字ドリルです。
のちほど書きますが、漢字は例文の中でどのように使うのかを意識して覚えなければ定着しません。例文を大事にしてドリルを進めると良いでしょう。
その学年で習うすべての漢字が収録されている
ただ奇をてらったドリルというわけではありません。新学習指導要領に対応しており、各学年で習うすべての漢字が収録されています。そして、覚えやすい順序で漢字が並べられているという工夫がされています。また、前の学年で習った漢字一覧が載っており、その漢字を組み合わせて作ったことばや同じ部首の漢字も整理されているので、繰り返し練習することができます。
それぞれの漢字を使ったことば(用語)が挙げられている
最初にも書きましたが、漢字はそれ単体で覚えればいいというものではありません。その漢字を含む2文字、3文字などのことばの知識を広げ、文章を読んだり書いたりするときに使えるようにしてこそ学習する意味があります。「うんこ漢字ドリル」では、1つの漢字につき、2~3つずつ、その漢字を使ったことば(用語)が挙げられているので、それも覚えられれば、語彙力アップにつなげられます。
おくりがな、特別な読み方にも対応
漢字にはおくりがながつきものですが、意外と正確に覚えられないものです。「うんこ漢字ドリル」では、おくりがなが赤字で目を引くように書かれているので、おくりがなも意識しながら学習できるようになっています。
特別な読みをする漢字(小学校で習うもの)には印がついているので、同じ漢字でも色々な読み方を知ることができます。たとえば、「士」という漢字は「し」と読みますが、「博士」ということばになると「はかせ」と読みますから、「せ」という特別な読み方をすることがわかる、という具合です。また、それぞれの漢字に音読み、訓読みが書かれているので、おろそかになりがちな漢字の「読み」も学習できるように工夫されています。
他にも工夫が・・・
ところどころに「うんこ先生」が登場し、間違って覚えがちなポイントや、覚え方のポイントを指摘してくれるので、学習している時に頭に焼き付けやすいように工夫されています。
また、巻末にはその学年で学ぶ全部の漢字を総ざらいできるようになっている一覧表があります(うんこ漢字ドリル学習証明書付き)。仕上げにやってみて、目につきやすいところ(まさにトイレなどがおすすめです)に貼っておくなどすると、自然に思い出す習慣がつけられるのでぜひ活用したいですね。
「うんこ漢字ドリル」に期待できる学習効果
「楽しくない」漢字練習をやる気にさせる
例文がすべて「うんこ」に関するものなので、もっといろんな例文を読みたい、という子どものやる気を引き出せるという特徴があります。漢字練習は「楽しくない」「書くだけ、読むだけで終わり」と思っていた子どもが、例文読みたさに自分から漢字練習をやる気になるという効果が期待できます。
自分でどんどん進められる
1ページに2つの漢字(1年生は1ページに1つ)が収録されており、見た感じの負担感がそれほどないので、子どもが一人でどんどん進められるドリルだと思います。6年生まで全部やりきれば、学習指導要領で定められている漢字(小学校で習う漢字)をすべて学習できます。自分の学年より上の学年の漢字を早い時期に一巡してしまえば、「知っている」ことによる学習意欲の向上につながるでしょう。
子どもの好奇心を刺激できる
自分でどんどん進められる結果として、「他の子よりたくさん漢字を知っている」状態になれば、「やればできる」という実感を持つことができます。そうすると、自信がつき、漢字だけでなくほかの科目などにも好奇心を持って取り組むことができるきっかけができます。子どもは本来好奇心旺盛で、人の知らないことを知っていることについてちょっとした優越感をもつと、やる気に火がつくものです。
また、最近は読書の習慣がないお子さんが増えていますが、漢字やことばをたくさん知っていると、読める本や文章が一気に増えます。読書習慣を身につけることができたり、長文に対する抵抗がなくなるので、「どんどん読んでみよう」「書いてみよう」という意欲を持つことができます。
「やり切った感」が持てる
「うんこ漢字ドリル」は1冊1冊が薄いので、1冊をやりきるのにそれほど時間はかからないでしょう。もし漢字に苦手意識を持っているお子さんであれば、低学年のものからやってみて、1冊仕上げることができると、「自分の力でやり切った感」をもつことができ、不要な挫折感を味わうことなく次の学年の学習に進むことができます。この「やり切った感」は学習するうえでとても大事なものです。これを継続できれば、多少苦手なところがあっても、意欲的に学習に取り組む姿勢を保つことができます。
「うんこ漢字ドリル」の学習効果をよりアップするためのポイント5つ
ポイント①漢字テストをやってみる
いろんな学習効果が期待できる「うんこ漢字ドリル」ですが、残念ながら漢字テストは収録されていません。ひとりでどんどん進められる反面、本当に覚えたのか、定着したのかをはからないと、「面白かった、終わり!」となってしまい、せっかくドリルに取り組んだ時間がムダなものになってしまいます。そこで、親御さんの出番です!
何ページまで、あるいは何個までドリルをやったら、親御さんがチェックテストをしてあげると学習効果がアップします。簡単なもので構いません。ドリルの中の例文を使ってもよいですし、違う例文を作ってあげてもよいでしょう。順番を入れ替えるなど工夫して、確実に覚えているかどうかチェックしてあげましょう。
ポイント②漢字の意味、成り立ちについて辞書で調べる
「うんこ漢字ドリル」には漢字の意味や成り立ちについての解説がありません。漢字を学習する際には、その漢字がどんな意味を持つのか、どんな時に使われるのか、まで身につけないとすぐに忘れてしまいます。小学生用のイラストなどが多用された辞書で十分です。また、1つの漢字につき2~3個挙げられていることば(用語)についても意味が書かれていないので、同じように辞書を引いて意味やどんな時に使うのかを理解することが大切です。
また、音読み・訓読み、おくりがなはドリルに載っていますが、これも辞書を使って、漢字ごとに「音読みの場合はどのようなことばがあるか」「訓読みの場合はどのようなことばがあるか」を調べておきましょう。学年が上がってくると、同音異義語、同訓異字などの学習が出てきます。似たような読み方に惑わされて間違えやすいところです。そのときに丸覚えしてもたいていのお子さんは混乱し、苦手意識をもってしまいます。漢字の学習をしている時に同時に調べておけば、あわてる必要もありません。
せっかく学習するのですから、辞書で漢字の意味や用法を調べ、「身についた知識」として定着させるようにしましょう。最初のうちは親御さんが一緒に辞書を引いて調べ方を教えてあげてもいいですね。自分で辞書を引いて身につけた知識はなかなか忘れないものです。頑張った漢字学習の効果を上げるためにも、辞書で調べるという習慣をつけましょう。
ポイント③例文全体で漢字の使い方を覚える
「うんこ漢字ドリル」には1つの漢字につき3つの例文が作られています。漢字はただ単体で覚えればいいというものではなく、例文の中でどのように使うのかを意識して学習しないと、定着せず、間違った使い方で覚えてしまうことがよくあります。これは、どのドリルを使う上でも共通して言えることです。漢字を書く、読むで終わらず、例文ごと覚え、使えるようにすることはとても効率的な漢字学習方法です。ぜひ、例文を口に出しながらドリルをやってみてください。しばらく「うんこの例文」が家の中で飛び交うかもしれませんが、親子で一緒に楽しんでみるといいでしょう。
ポイント④「うんこ」以外の例文で学習効果をアップ!
「うんこ漢字ドリル」は最初に書いたように3018もの「うんこ」を使った例文が載っています。大したものだと思います。ですが、少し問題があるのです。それは、
- 一つ一つの例文が短い
- 非現実的な例文が多い
ことです。本来、漢字やそれを含んだことば(語彙)は、日常会話で使ったり、本を読んで繰り返し触れることによって自然に習得されていくものです。会話や文章はそれなりの長さがありますから、「うんこ漢字ドリル」の短い例文だけでは「自然に」覚えていくことは少し難しいかもしれません。
ここで、ぜひ親御さんにサポートしていただきたいことがあります。それは、お子さんがある漢字を覚えようとしているときに、その漢字を使った、少し長めの例文をいくつか出してあげる、ということです。その場合「うんこ」を使う必要はありません。現実世界で常識的に使うようなものにしましょう。学習意欲が上がっている時ですから、「こういう使い方があるんだよ」ということを親御さんが示してあげて、一緒にその漢字やことばについて話し合ってみることをおすすめします。より自然な例文でさらに定着をはかることができ、学習効果がアップします。
例文ごと漢字を覚えるのはとても効率的な漢字学習方法です。「うんこ漢字ドリル」の短い例文で抵抗感をなくし、親御さんが少し長めの例文をいくつか出してあげることによって、漢字の意味を覚え、文脈の中でどのように使われるかを理解できるようになれば、鬼に金棒です。
ポイント⑤自分で例文を作ってみる
例文ごと漢字を覚えることはとても有効なことです。どのような文脈でその漢字や漢字を含むことばが使われるのかを理解できるので、定着しやすいからです。最初は「うんこ漢字ドリル」の短い例文、次に親御さんが出してあげるより自然な長めの例文でしっかり練習しましょう。
それができたら、ある漢字やその漢字を含むことばを使った例文を自分で作ってみることをおすすめします。これができれば、どのような文脈で漢字やことばが使われるのか、しっかり理解できたといってよいでしょう。最初は難しいと感じるかもしれませんので、簡単なものからで構いません。
まず「例文ノート」を作って、漢字やことばを上に書きます。それをもとに、まずお子さんに例文を作らせてみましょう。それを親御さんがチェックして、使い方や文脈がおかしいところを一緒に直していく、という学習です。これを繰り返していくと、ただ漢字を書いて覚えるだけでなく、文を正しく書く、つまり記述の練習にもなります。一度にたくさんやる必要はありません。コツコツ少しずつやってみてください。
まとめ
漢字の学習はあたり前のように皆やるものと思われていますが、ただ覚えて終わりではつまらないですし、すぐ忘れてしまいます。最初にも書きましたが、本来、漢字やそれを使ったことばは、文章を読んだり書いたりするときに自由自在に使うことができる、つまり国語の運用能力を高めるための道具です。その道具を身につけなければ読み書きができないから学校でも塾でも漢字の学習をするわけです。
今回は、「うんこ漢字ドリル」を1年生用から6年生用まで見て、その内容と学習効果を分析してみました。子どもの「ちょっと下品なことに対する食いつき」をうまく利用した漢字ドリルだと思います。子どもはほんの小さなきっかけで自分でやる気の火をつけることができます。そして、自分から進めていく姿勢が一度身につくと、大人が目を見張るような学習態度をみせ、学習効果も高いものが得られます。
「うんこ漢字ドリル」には、楽しくない作業になりがちな漢字の学習を楽しいものに変えてくれる学習効果があります。そして、親御さんがサポートすることによってさらに学習効果をアップすることができます。本記事の内容をぜひ参考にしていただき、コミュニケーションを楽しみながら、お子さんを「漢字博士」にしてしまいましょう!
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。