【中学受験】入試直前!科目別・入試の傾向と問われる力とは~社会編

東京・神奈川の入試が始まるまであと1日。受験生の皆さんは、よくここまで頑張って学習を積み重ねてきたと思います。

最後の仕上げに、各科目の近年の入試問題の傾向と、問われている力についてまとめています。最後は社会です。社会というと、「暗記」という意識を強く持って、なんとか覚えよう、と頑張ってきたと思います。たしかに、社会は4教科の中でも、一番暗記の要素が強い教科だといえるでしょう。

しかし、最近は、単に断片的な知識をバラバラに覚えればどれかは当たる、というような問題は出題されません。知意識を聞くにしても、一つのテーマをさまざまな方向から、またさまざまな分野の知識を聞いてくる出題が増えています。そういった問題に答えるためには、1問1問頭を切り替えながら、聞かれていることに答えなければいけません。

そして、試験時間が短いわりに問題数が多いのも社会の特徴です。また、学校によってどの分野から多く出題するかはある程度は決まってはいるものの、「この問題は歴史の問題だから歴史の知識しか聞かれない」というものではなく、他の単元からも出題されます

最後に社会のおさらいをするとしたら、やるべきことは基礎的な用語の意味を簡単に説明できるかどうか確認することです。社会は知識の比重が高い教科ですから、知識の内容を理解できているかが勝敗を分けるといっても過言ではありません。

直前の1日、いろいろやらなければいけないことがあると思うでしょうが、やるべきことは、基本を確認することです。解けなかった難問を解くよりも、他の受験生が確実に得点してくるであろう知識をひとつでも確実に理解することです。

この分野は少し不安だな、というところがあれば、そこを重点的にもう一度理解するように意識して、知識を確認していきましょう。

社会は、基礎基本が合否を分ける!

社会も、他の教科と同じように、基礎・基本の知識を問う問題が入試問題の大部分を占めています。つまり、合否は基礎・基本問題のでき具合によって決まるといっても過言ではありません。基礎・基本というと、「簡単でしょ?」「そんなの今さら、もう知っている」と思うかもしれませんが、入試問題の形で出題された時に、それが正確に定着していて、どんな聞き方をされても必ず答えられるようになっていることが大切です。

選択肢の問題では、国語でも触れましたが、「正しいものをすべて選びなさい」「間違っているものをすべて選びなさい」「正しいものを〇個選びなさい」「正しいものがないときは△という記号を選びなさい」など、複数の答えを選ばせる問題が増えています。選択肢問題は、正解か不正解しかありません。ですから、確実に正確な解答をしなければいけないということを忘れないようにしましょう。

たとえば、2017年度は、渋谷学園幕張中学校で、イギリスのEU離脱に関する問題が出題されました。その問題は、XとYの2つの文章が出され、「両方が正しい」「Xのみが正しい」「Yのみが正しい」「両方が誤り」という4つの選択肢から正解を1つ選ばせる形式でした。このような形式の選択肢問題はこれからも増えてきます。知識の正確さを問うために学校側が工夫している、また、受験生の知識の正確さによって差をつけるという目的もあります。

ときどき、大学入試レベルではないかと思うような難しい、マニアックな知識を問う難問も出題されることがありますが、このような難問を正解するために難しい問題ばかりの対策をとるより、基礎・基本知識を正確に覚えることに力を入れたほうがよいでしょう。

開成中学校は、「東京問題」という特徴的な問題を社会で出題します。山手線沿線に関する地名や史跡などについて聞く問題ですが、2017年度は、「神田明神」や「不忍池」といったことばを漢字で書かせる問題が出題されました。このように、学校周辺の地理や歴史に関する「ご当地問題」を出題する学校は増えてきていますので、最後の仕上げに、自分が受験する学校に関することを少し書き出してみてもいいですね。

記述問題、資料の読み取り問題が増えている

入試問題の社会の出題形式を見ると、7割の学校が用語を漢字で書くことを要求しており、8割の学校で記述問題も出題されています。また、資料の読み取り問題も増えています。たとえば、地形図は35%の学校で、統計は88%の学校で、写真・図表が63%の学校で出題されており、資料の読み取りを出題しない学校はほぼないといってよいでしょう。

記述問題や、資料の読み取り問題では、「なぜですか」という理由を尋ねる問題が多いです。自分が「?」と思ったことに対して、どう答えるか、という姿勢を持っておくことが必要です。ほかにも、2つのことを比較させて自分の意見を書かせる問題や、長文を読ませて、「このような現象が起こっているのはなぜですか」ということを、自分のことばで答えさせる問題も頻出になっています。

時事問題の出題は増加中

2017年度、時事問題、あるいは時事問題を意識したと思われる問題は9割以上の学校で出題されています。特に多かった時事問題は、以下のようなものでした。

  • 2016年の参議院議員選挙(合区問題を含む)、1票の格差
  • イギリスのEU離脱
  • リオオリンピックに関連して、難民選手団、時差、バイオエタノール、国連環境開発会議、ブラジルについて
  • オバマ全アメリカ大統領の広島訪問
  • 難民問題(シリア、モスクなど)
  • 伊勢志摩サミットについて、三重県についての知識など
  • 東京都知事選について、知事名、選挙権・被選挙権など
  • 世界遺産について
  • 18歳から選挙権が与えられたこと
  • 天皇の生前譲位、皇室典範について
  • 待機児童問題
  • 熊本地震、関連して熊本城や歴史
  • 2020年の東京オリンピック
  • その他、消費税、ヘイトスピーチ、訪日外国人の増加、パリ協定

今年度の入試でも引き続き出題されるテーマも多いので、正しく理解できているかどうか確認しておきましょう。

具体的にどのように出題されたかというと、参議院議員選挙については、議員の任期や定数などの参議院についての基礎的な知識を問う問題が多く出題されました。イギリスのEU離脱については、ユーロの切替や、イギリスの地理などについて問う問題が多く出題されました。

オバマ前大統領の広島訪問に関しては、演説の内容そのものを出題した学校が数校見られました。伊勢志摩サミットについては、サミットの正式名称や、サミットが開かれた島の名前(賢島)、なぜそこで開かれたのかという理由を、地図や写真を見ながら書かせる問題が出題されました。

また、周年問題としては、徳川家康没後400年、吉野作造の民本主義100年、日本国憲法発布70年、水俣病が公式に認定されてから60年、日本の国連加盟60年といった、少し高度なものも出題されました。

時事問題を反映し、略号について、たとえばUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)、TPP(環太平洋経済連携協定)、EU(ヨーロッパ連合)などが出題されました。これらも時事問題、国際関係の問題で必須の知識なので自信がないものについては最後に見ておきましょう。

公民では憲法は頻出!条文番号も含めて内容を確認しよう

社会の中で、一番最後に学習を始める公民分野。大人でもイメージを具体的につかむのは難しい分野です。その中でも、出題が多いのは、政治に関するところです。国会、内閣に関係するところですね。国会に関しては、国会議員の選挙を題材にした時事問題の中で、基礎知識が正確かどうかを試す出題が多いです。内閣については、省庁も含めて、どのような大臣で構成されているのか、大臣の任免権は内閣総理大臣にあることや、内閣総理大臣と他国の大統領では選ばれ方が異なることなどがよく出題されます。最後に、頭の中でもいいので、三権分立の図を思い出してみましょう。

また、公民分野の出題で注意が必要なのは、「憲法」についてです。おおよそ40%前後の中学校で憲法に関する問題が出題されています。憲法の条文に書かれている内容は難しいものが多いので、完全に覚える必要はもちろんありませんが、よく出題される条文については、条文の番号と、その条文が何について定めているのか、できれば具体例が頭に浮かぶようにしておくといいですね。

2017年度に多く出題された憲法の条文は、憲法第25条「生存権」でした。生存権は、全国民が健康で文化的な施最低限の生活を送ることができることを保障するという内容をもう一度おさらいしておきましょう。そして、「健康で文化的な最低限の生活とはいったい何だろう」ということについて、身近な例を挙げられるようにしておくといいですね。生存権は、生活保護や児童福祉などの社会保障や、少子高齢社会に関連して、選択問題から記述問題にいたるまで問題が作りやすいところなので、よく出題されます。2017年度も10校以上で出題されています。

ほかにしっかり理解しておきたいのが、憲法第9条の「戦争の放棄」についてです。9条も、25条と同じくらい出題されました。歴史の問題で、戦争をテーマにして、その中で現在の日本が憲法で戦争の放棄を憲法で定めていることや、沖縄の基地問題、アメリカとの安全保障問題など、内容はニュースなどでよく聞く内容について問う問題が出題されます。もちろん、9条に特化して、どのように考えるか、というような問題は、小学生相手に真正面から論じさせるようなことはまずありません。それよりも、どのような経緯でこの憲法第9条ができたのか、歴史的経緯やアメリカなど他国との関係について基本を押さえておけば十分です。

このほか、憲法第1条「天皇の地位・国民主権」は、天皇の生前譲位に関連して今年度も出題される可能性が高いと考えられます。これに関連して、皇室典範という法律の名前も書けるようにしておきましょう。また、三権分立の図を頭に浮かぶようにしておこうということを先ほど書きましたが、国民主権とはどういうことなのか、それを守るために憲法があり、三権分立という制度があるということをまとめておさらいしておくとよいでしょう。

また、憲法第27条「勤労の権利と義務」、憲法の前文(国民主権など)も出題されることがあります。国民の権利と義務、先ほども書いた国民主権を憲法でわざわざ定めた意味など、一見憲法の問題に見えない問題でも、関連して憲法の知識を問う問題が出題されることがあるので、このような重要な条文は覚えておきましょう。

教科書の内容を侮ってはいけない!教科書からの出題の増加

これは、理科の記事の中でも書いたことですが、近年、小学校の教科書、特に6年生の教科書の内容からの出題が、難関校を中心に増えています。2017年度だけ見ても、開成中学校、麻布中学校、駒場東邦中学校、芝中学校、桜蔭中学校、女子学院中学校、雙葉中学校、横浜雙葉中学校など、多数の難関校の入試問題で出題されました。

たとえばどのような問題が出題されるかというと、開成中学校の問題では、『江戸図屏風』にみられる、天守閣、高札、「うだつ」についての問題が出題されました。教科書に出ている資料を知っていれば、解くヒントが見つけられた問題です。「うだつ」については、問題文の誘導にのることができたか、あるいはことばの意味を知っていたかという国語力が試されたといえるでしょう。

また、麻布中学校では、長野県松本市にある、『開智学校』の写真が示され、この建築物の名前は何か、建てられた場所を問う問題が出題されました。これも、教科書に載っている文章や図の説明などを注意深く読んでいれば答えられる問題でした。

教科書からの出題といえば、例年、男子の最難関校である、筑波大付属駒場中学校は、国立ということもあり、学習指導要領、つまり教科書で習う知識を逸脱してはいけないことになっています。そのかわり、社会でも理科でも、教科書のすみずみにわたった内容が出題されるので、教科書、特に図の下に書いてあるような細かい説明まで知っておく必要があります。

このような、教科書に載っている内容を題材にして作られた問題は、題材は教科書レベルであったとしても、そこから発展させて考えさせる問題の出題が目立ちます。大学入試改革でも問われる力ですが、このような問題の対策としては、「なぜこうなるのだろう」「どうしてこのようなことが起こったのか」ということを念頭において、学校の授業をおろそかにせずに、教科書をしっかり読んでおくことがとても大事です。

それに加えて、教科書に載っている絵画や写真などの資料からいったい何が読み取れるかを注意深く考えたり、絵画や写真の下に書かれている細かい説明も余裕があれば読んでおくと理解が進みます。特に難関校を志望している受験生の方は、このような細かい説明をできるだけ注意して読むとよいおさらいになります。全てでなくてかまいません。自分があまり覚えていないな、というもので構わないので、入試の休憩時間などに気分転換に読んでみるのも良いのではないでしょうか。

日常生活で身近なものをテーマにした出題が増えている

社会は、日常生活と一番密接に関係している科目かもしれません。私たちが食べている食品はどこから輸入されているのか、それとも国産なのか、どのような産業が今は好調なのか、さらに先ほど憲法のところで書いたような、生活に関係する内容を学ぶ科目といえるでしょう。

では、どのような形で、身近なものをテーマにした入試問題が出題されているのでしょうか。たとえば、駅のナンバリング(JRや地下鉄など、駅のホームや車内アナウンスでも見たり聞いたりしますね)についての問題が開成中学校、学習院中等科で出題されました。電車に乗ったことのない人はあまりいないでしょうから、非常に身近な題材といえるでしょう。

ほかにも、ジェネリック薬品についての問題が淑徳与野中学校で、アルミニウム製品のリサイクルに関する問題が桜蔭中学校で出題されました。ちなみに、アルミニウム製品のリサイクルについては、愛知県にある海陽中等教育学校でも類題が出題されています。豊島岡女子学園中学校の問題はユニークで、イチゴのショートケーキに関連して、ケーキの材料の自給率や産地、陶磁器やフォークなどの洋食器の生産地を問う、多方面から基本的知識を聞く問題が出題されました。

そのほかに目についたのは、武蔵中学校の「塩作り」について、麻布中学校の「住宅と町」、栄光学園中学校の「紙に関する問題」、逗子開成中学や党員中等教育学校で、「和食」について、渋谷教育学園渋谷中学校で「衣類について」、桜蔭中学校で「お茶について」、大妻女子中学校で「遊びについて」、吉祥女子中学校で「火について」など、さまざまな、日常生活に関する身近なテーマが出題されています。本郷中学校では、「貼る、くっつける」をテーマにして、「歴史のないものはない」ということがわかるような、ユニークな出題がありました。

社会というと、どうしても地理、歴史、公民、と分野ごとにばらばらの知識として覚えてしまいがちですが、近年の出題傾向は、身近なもの、ことをテーマにして、一つの分野にとどまらない設問をたくさん用意しているケースが増えています。設問ごとに頭を切り替えていかなければいけないので、やはり基礎知識の問題を落とさないことがカギになります。

複数の資料を読みとらせる問題、思考力を問う問題が目立つ

ほかの教科と同じように、社会も問題文は長文化が進んでいます。何ページにもわたるリード文に加えて、示される資料の種類や数も増えてきています。たとえば、駒場東邦中学校では、食料自給率について国ごとに比較する問題、日本やイギリスの品目別の生産量・供給量、日本人ひとり当たりの1日の食べ物の変化などについて、複数の資料を読みながら、食料自給率について深く考察する問題が出題されています。このような問題は、単に食料自給率について断片的な知識を持っていても解けません。また、資料についてもいくつも出されるので、それらを分析するだけでなく、分析の結果わかる、背景にある「理由」を問うような、「問題を深く読んで答える力」が求められます。

また、思考力や応用力が求められる出題の例として、たとえば渋谷学園幕張中学校では、日本のロケットの打ち上げ台がある都道府県名を問い、打ち上げ台がその場所に設置された理由について、「自然条件および当時の日本がおかれていた状況について」述べなさい、という問題が出題されました。都道府県名だけなら基礎知識だけで解けますが、自然条件や当時の日本が置かれていた状況といった背景事情についても深く理解していなければ解けません。

この問題の正解は鹿児島県です。これは、ニュースでもよく出るのでわかりますね。なぜ鹿児島県に設置されたかというと、ロケットの打ち上げには、地球の自転の速さを利用するため、低緯度のところほど有利だからです。であるほど良いわけですね。本来なら沖縄県がベストですが、沖縄県は米軍の支配下にあったため、打ち上げ基地をつくることができなかった、ということが、沖縄県に作ることができなかった理由になります。これは、理科と社会の両方の知識が必要とされる、教科横断的な、思考力を問われる良問だったといえるのではないでしょうか。

社会の学習で大切なことは、基礎基本の徹底と、教科横断的な学習

2017年度の入試問題を題材にして、近年の社会の問題の出題の傾向や、問われる知識などをまとめてきました。今年度も、このような傾向は続いていくと考えられます。

社会の入試問題で問われているのは、一見すると難しく思われるものもあるかもしれませんが、なんといっても、基礎基本の定着、つまり正確な知識を身につけ、しっかり理解しておくことが大切です。教科書からの出題も増えていますので、教科書をおろそかにせずに、塾のテキストと一緒に見直して、用語のチェックを行っておきましょう。

また、今後の大学入試改革から考えても、さまざまなことに興味を持ち、自分で調べて理解する習慣をつけることが、教科の枠を超えた横断的な学習につながります。中学校に入ってからも、大学に入っても、必要な学習姿勢です。このような学習姿勢、習慣が、教科のわくを超えて、持っている知識を他の科目にも応用できるような横断的な知識を自然と身につけることができます。時事問題や、長い文章や多くの資料を、自分の意見を持ちながら、ときには「本当に正しいのだろうか」という視点を持って読み解いて、解答を見つけていく力こそ、これから求められていく学習能力だからです。

社会は、中学受験ではどうしても「暗記すれば何とかなる」と思われがちですが、このような学習習慣を身につけるには非常に重要な教科でもあります。読解力、思考力、表現力といったこれから培っていくべき力の第一歩が中学入試の問題といえます。最後まであきらめずに、持っている知識どうしを結び付けて、入試を通してさらに思考力を深めていきましょう。

試験前日は難しい知識を詰め込むのではなく、みんなが知っているであろう知識を落とさないこと、記述問題が出題される学校を受ける方は、何について書くのか、結論はどうするか、その理由付けはどうするか、ということに気を配って、自信をもって問題にくらいついて楽しんできていただきたいと思います。

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