入試直前には特に注意!親のNG声かけとポジティブ声かけ

早いもので、12月も終わろうとしています。冬期講習を受けていらっしゃる方はちょうど折り返し地点ですね。お正月も学校別、志望校別クラスなどで正月特訓、という受験生の方も多いと思います。毎日それこそ朝から晩まで長時間たくさんの問題に取り組んでいらっしゃることでしょう。

冬期講習では、新しい知識を習うというよりはもう実戦演習をしていることが多いと思います。単元別テスト、総合テスト、またさまざまな学校の過去問を時間をはかって解いて採点をして帰ってくる・・・なかには点数と順位表が張り出され、それを目にすることも多いのではないでしょうか。

常に安定した点数がとれていて、順位も上位をキープできていればいいですが、そのようなお子さん現実的には一握りです。全ての科目、単元を完璧にマスターしている受験生はまずいません。ですから、テストのたびに点数は上がったり下がったり、順位もなかなか上がらない、そういう状況の受験生がほとんどです。

ですが、親御さんからすると、「この直前期にこんな成績しかとれないなんて、うちの子はいったいいままで何をやってきたのかしら」と思ってしまうのではないでしょうか。その気持ち、とてもよくわかります。ですが、点数や順位は入試本番のものではないですし、本当に大切なのは「どこができていて、どこができていないのか」を分析することだということを忘れていませんか?それを忘れてしまうと、一日頭を使って疲れて帰ってきているお子さんに対して、ついきついことばをかけてしまいがちになります。一日の終わりにけんかをして次の日また講習に出かけていく・・・それはお子さんにとっては非常につらいことですし、親御さんにとっても後味が悪いでしょう。

まもなく始まる受験本番に向けて、特に直前期には、親御さんがお子さんに対してどのような声かけをしていくか、ということがとても重要になってきます。お子さんは自分の力を振り絞って頑張ろうとしています。その気持ちをくじけさせることだけはしたくないですよね。

今回は、入試直前期に特に注意したい、親御さんの声かけについて、NG声かけとポジティブ声かけ、行動についてお伝えしていきたいと思います。

子どもが不安になっているとき

入試直前期をむかえたお子さんは、「この問題、前にも見たことあるような気がするけれど解き方を忘れてしまった、どうしよう」とか、「あれ、この漢字知っているはずなのに出てこない、どうしよう」など、問題を解いているときに不安感に追われるようにして勉強していることが多いです。「勉強していないことがまだあるんじゃないか」という不安感が焦りをうみ、解けるはずの問題が解けない・・・そういう状況に陥ってしまうことは、勉強の悩みなどなさそうに見える成績最上位生でもあることです。入試に「絶対大丈夫」はないので、それはある程度しかたないことではあります。

「勉強していないことがまだあるんじゃないか」という不安感は、お子さんだけではなく親御さんも同じように持っていらっしゃるのではないでしょうか。「今までやってきたことだけでは足りないのではないか」「もっとやらせないと間に合わないのではないか」と思うことはありませんか?

このような、「足りないところがあるかもしれない」という不安感をもつことは、どの受験生のご家庭にもあることです。それも、普段の成績の高低に関係なくです。これまで様々な生徒さんの受験指導をしてきましたが、ある年、御三家志望の最上位生が志望校別の正月特訓の初日に行われたテストで、得意にしていた科目で最下位の点数をとったことがありました。本人は授業中は何とかこらえていたようですが、帰りの電車で号泣し、親御さんに電話をかけてきたそうです。

「お母さん、もう合格できない、どうしよう」「こんなに勉強してきたのに、なんでこんな点数とっちゃったんだろう」「もう受験やめたい」このような悲痛な叫びに親御さんも動転してしまい、すぐに電話がかかってきました。次の日に落ち着いて勉強に集中できるように、すぐに本人と一緒に面談に来てもらいました。

その日のテストの答案をチェックし、ずっと泣いている本人の気持ちが落ち着くまで待ってからよく話をしてみると、以前からなかなか苦手意識が払しょくできていなかった分野の問題が出たらどうしよう、という気持ちが強すぎて、逆に普段めったに落とすことのない、むしろ得意としていた分野の問題で総崩れを起こしていたのです。

「まだ足りないところがあるかもしれない」という不安感、おそれというものは、受験当日まで多かれ少なかれ持ち続けていくことになると思います。このようなとき、どのように声をかけますか?

「やっぱり今回もできなかったじゃないの!」「何度やったらできるようになるの!」というような、受験生のこれまでの頑張りを完全否定してしまうようなことばは決してかけてはいけません。ですが、逆に「大丈夫だよ」「たまたまだから気にする必要ないよ」と、「足りないところ」から目をそむけるような甘いことばをかけても、不安感を消すことはできません。もしもう一度同じような間違いをしたときに立ち直れなくなるからです。そうなると、不安感が増すばかりになってしまいます。

やはり必要な声かけは、「足りないところ、苦手な科目や分野ができるようになるイメージを具体的に持たせる」ようなものであるべきです。ただ責める、ただなぐさめるだけでは、実力は伸びません。塾の先生の力も借りて、お子さんが前向きに受験当日まで勉強を続けていけるようにすることが大事です。そのためには、間違っていたところをピックアップして、どこまではできていて、どこから混乱してしまったのか、あるいは最後の処理を間違えたのか、ということをお子さんと一緒に考え、「ここができるようになったらこの分野はもう大丈夫」という、根拠のある褒めことばをかけてあげましょう。

なかには親御さんのおっしゃることをなかなか聞かないけれど、塾の先生のいうことはよく聞く、というお子さんもいらっしゃると思います。最近はそういうお子さんが非常に増えています。「自分ができないところ」を親御さんに見せたくないという気持ち、怒られたくない気持ち、そういう気持ちが絡み合ってしまい、なかなか素直に親御さんのいうことを聞くことができないのです。6年生ともなればそれも決して不思議なことではありません。

このような場合は、塾の先生にお子さんの状況を伝え、アドバイスを直接お子さんにしてもらう時間をとってもらうことが効果的です。お子さんの見えないところで、信頼できる先生に相談し、前向きなアドバイスをもらうことをオススメします。不思議なものですが、塾の先生のいうことだと、少々厳しいことばであっても奮起するお子さんも多いのです。家族が声をかけても反発するようでしたら、そのような手段をとることも一つオススメの方法です。

テストで点数がとれなかったとき

さきほど書いたことと重なりますが、直前期のテストはお子さんにとっても親御さんにとってもとてもドキドキするものです。どのような結果を出すことができるのか、そのテストで志望校の合否が決まってしまう、そのように考えてしまうことも非常に多いです。

思うような点数がとれないと、親御さんも気持ちが落ち込みますよね。このままでは合格できない、何をすればいいのか・・・と不安でいっぱいになると思います。特に冬期講習中は、毎日のように何らかのテストが行われますから、期間中毎日のように点数に一喜一憂しなければならないことになります。それでは、精神的にもちません。

ですが、忘れてはいけないことがあります。一番不安になっているのはお子さんだということです。どうしても親の目線からすると、お子さんの努力不足に腹を立て、「この間やったばかりのところじゃないの!」などときついことばを書けてしまうことが多いかもしれませんが、それでは親御さんの焦りや不安の表れであって、それをお子さんにぶつけているだけになってしまいます。

一番大切なのは、親御さんはどっしり構えているように(心の中は不安でいっぱいであっても、です)お子さんには見せて、「残っていた弱点がいまわかってよかったよ」「まだ時間はあるからもう一度わかっているところとあやふやなところを見直してみよう」など、テストで点数がとれなかったことを「一つのチャンス」としてお子さんがポジティブな気持ちになれるような声かけをしてあげてください。

これは、親御さんの気持ちの持ち方にとっても実は非常に重要なことです。「こんな弱点があるなんて、もう時間もないのにどうするつもりなのよ!」などと責めたり、よけいにお子さんを不安にさせるような声かけはしないようにしましょう。そのようなことばをかけられると、お子さんは親御さんに見捨てられたような気持ちになり、直前期まで安心して勉強に集中することができなくなってしまいます。そういう姿を見ると、親御さん自身もどうしたらよいかわからなくなり、苦しくなってしまうでしょう。

あと1カ月しかない、と思う気持ちを「まだ1か月もある」「弱点補強をするじかんはまだまだある」、親御さんご自身がそのような気持ちをもって、ご自分だったら自分自身にどのようなことばをかけるだろうか、あるいはかけたくないことばはどのようなことばか、ということも考えてみてはいかがでしょうか。

入試前日、当日

これはまだ少し先のことですが、入試前日、当日緊張感が一番ピークとなっている日にはどのような声をかけるべきでしょうか、また、かけてはいけないことばはどのようなことばでしょうか。

まず第一に、絶対にNGなのは「もし不合格だったら明日以降はどうしよう」というような、不合格を前提としたようなことばをお子さんにかけることです。ご両親の中で、もしこの日が不合格だったら次の日はどこを受けに行こうか、という出願作戦を考えることはもちろん必要なことですが、それは大人だからできる話です。お子さんの不安をあおるようなことばは決してかけてはいけません。

たとえ「志望校に落ちても大丈夫だよ」というように、励ましのつもりで声かけをしたとしても、お子さんはそうは受け取りません。親御さんが「自分が不合格になると思っている」というように、マイナスにとらえてしまいます。そうすると、「不合格だったら」と考えて、不安な思いを引きずったまま入試に向かうことになります。それでは、他の受験生に、気持ちの面ですでに負けてしまっていることにほかなりません。

入試前日や当日は「合格」や「不合格」ということばは使わず、「入試を楽しんでおいで!」と送り出してあげましょう。力を出し切っておいで、これまで頑張ってきたことはよくわかってるよ、よくここまで頑張ってきたね、そのような親御さんの気持ちが伝わるようなことばをかけてあげてください。

そして、入試を終えて出てきたお子さんには、「楽しかった?」と声を変えてあげましょう。何も声をかけないとお子さんは不安になりますから。ですが、決して「できた?できなかった?」ということは聞かないようにしましょう。お子さんが自分から、「このくらいできたと思う」など、自分から言ってきた場合は別です。そのような場合は、そうなんだ、これまで頑張ってきた実力が出せてよかったね、とねぎらってあげてください。

入試の場は子どもにしか経験できない特殊な時間です。その時間、逃げずに頑張り切ってきたお子さんの努力を褒めてあげるようにしてあげるのがよいでしょう。入試期間は何日にもわたることがありますが、親御さんが自分を信じてくれているということは、お子さんにとって何よりの自信になります。今までやってきたことのすべてをぶつけてこられるように配慮してあげるようにしましょう。

まとめ

1月に入ると、10日の埼玉入試解禁を皮切りに、3年、あるいはそれ以上の時間をかけて頑張ってきた受験勉強の成果を出す入試期間が怒涛のように始まります。毎年、合格するだろうと思った押さえの学校が不合格で、受かると思わなかったチャレンジ校に合格する、あるいはまず大丈夫だろうと思っていた第1志望校に不合格で、そのあとどこを受けたらいいのか、どうしたらいいのかわからなくなってしまうことも起こります。そういう意味で、中学受験は一生に一度しかない特別な時期です。短期間にいろいろなことを決めなくてはならず、親御さんも悩む日があると思います。

この時期にやるべきことは、難しい新しい問題に手を出しすぎるよりも、過去問やこれまでに解いた問題を中心に、弱点を克服する、それこそ「総復習」です。できるところ、できないところはもうこの時期、一人ひとり全く違います。できるところの学習に時間を使うよりも、苦手なところの復習に時間をとる、まさに「自分の勉強」をすることです。やるべきことの取捨選択も必要になってきます。

そして、精神的な面では、なによりも受験生であるお子さんが安心して勉強していけるように声かけを含め、環境を整えてあげることがとても大切です。親御さんの態度にお子さんはとても敏感です。お子さんにかける一つひとつに対してもです。

親御さんも受験に向けてやらなければいけないことが山積みでついイライラしてしまうと思いますが、親御さん自身もストレスをためないことが大切です。迷ったとき、困ったときはぜひ塾の先生やすでに受験を経験した方などに相談するなど、第三者の手を借りることも必要です。決して恥ずかしいことではありません。できることはなんでもやる、でも無理はしすぎないように、ときには人の手を借りて入試直前期を乗り切りましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。