【中学受験】桜蔭中学校の入試の傾向と対策理科編

前回まで、桜蔭中学校の入試の出題傾向と対策について、算数、国語、社会についてまとめてきました。桜蔭中学校は女子御三家の中でも随一の難易度を誇り、毎年、東大や国公立大学医学部などの難関大学への合格者を数多く輩出している、全国でも珍しい超難関の女子校です。

入試問題にも入学後の授業で必要とされる高い能力を測る学校側の意図が色濃く反映されています。特に算数と国語は高度な思考力と同時に情報処理能力がバランス良く求められる傾向にあります。一方で、社会と理科に関しては堅実な対策を積んでいれば解きにくい問題はどちらかというと少なく、難問・奇問といったものはほとんど見られません。

だからこそ、いかに対策してきたかということがはっきりと得点結果に表れる教科だと言えるでしょう。逆に、しっかり出題傾向をつかみ、基礎基本を大切にしながら対策をおこなっていれば、上位層の間ではあまり差が付かないのも桜蔭中学校の理科・社会の特徴でもあります。このため、理科と社会をいかに確実な得点ソースにしていけるかが、桜蔭中学校合格のための近道と言っても過言ではないでしょう。

桜蔭中学校の算数は、桁数の多い分数が現れるなど、正解の数字が汚くなることが多いですが、この傾向は理科においても例外ではありません。日常塾でおこなわれるような確認テストなどでは、基本的に正解は整数であったり、もしくは小数第一位程度の比較的「きれいな」数字で収まることが多いと言えますが、桜蔭中学校においてはそうではありません。このため、主に化学分野や物理分野で、正確で速い計算力が必要となってきます。

一方、そのような汚い数字が出てくるため高い計算能力が必要となる点を除けば、桜蔭中学校の理科の問題自体はどちらかというと非常にオーソドックスなものが多いです。落ち着いて対策していれば確実に取れる問題がそろっていることがほとんどなので、あわてずしっかり対策していれば十分攻略できるのが桜蔭中学校の理科の特徴です。

今回はそんな桜蔭中学校の理科の出題傾向、そしてその対策方法について見ていきましょう。基礎基本を身につけて攻略していくことが何よりも大切です。

桜蔭中学校の理科の出題傾向

桜蔭中学校の理科の入試問題の問題数は、年度によってばらつきがありますが、少ない年度で25問弱、多い年度では30問を超えることもあります。大問自体はおおむね4問~5問程度であることが多いです。

出題される分野は、生物・地学・化学・物理の4分野から、まんべんなく毎年出題されることがほとんどです。また、以前は良く出題されていた単元がしばらく出題されなくなったかと思えばいきなり復活してきたりするので、必ずこの単元が出題される、という傾向はつかみにくいという特徴があります。たとえば、物理分野の力学に含まれる「滑車」については、10年ほど前まではほとんど出題されることはありませんでしたが、現在ではたびたび出題されることがあるので、出題分野がなかなか読めないので注意が必要です。

そのため、桜蔭中学校の理科を攻略するためには、4分野すべてにわたって、すべての単元を細かくカバーし、正確な知識を理解しておくことが何よりも重要になることを知っておきましょう。

桜蔭中学校の理科の頻出単元は?

このように、4分野すべて、また単元もまんべんなく対策することが必要な桜蔭中学校の理科ですが、そうはいってもやはり頻出単元、必ず押さえておかなければならない単元というものは存在するのも事実です。では、どのような単元が頻出・重点単元と言えるのでしょうか。

桜蔭中学校の理科の頻出・重点単元として挙げられるのは、難関校では必ずと言って良いほど出題される分野・単元ばかりだと言えるでしょう。たとえば、気体の発生、水溶液の中和、ものの解け方、てこ・浮力(力のつり合い)、天体の動きといった単元は良く出題される単元です。

これらの単元の特徴として共通するのは、計算問題が多く出題されるという点が挙げられます。必要な知識自体はそれほど細かいものではなく、基礎基本、平均的なレベルなのですが、いざ解かなければならない問題は、計算が難解であり、手間がかかるという桜蔭中学校の出題傾向が色濃く反映されています。この計算の手間を考えると、どの年度でもさきほど挙げたような計算を多用する単元に対する対策をしっかりおこなっておくことは必須だと言えるでしょう。

もちろん、さきほども述べた通り、出題傾向にこれといった明確なパターンはないため、全ての単元をまんべんなく対策しておく必要がありますが、特に計算問題が出題されやすい単元は重点的に対策しておく必要があるので注意しましょう。

特徴的な出題傾向

桜蔭中学校の理科においては、知識問題の場合、非常にオーソドックスなものが多く、そこまで特徴的だとは言えません。唯一「桜蔭らしさ」が見られる問題といえば、最低1問は毎年必ず出題される「記述問題」が挙げられます。ただし、こういった記述問題についても、実は問われ方が変わっており、記述形式で答えるというだけで、基礎的な知識を答えるという点ではほかの問題と大きな違いはありません。

毎日の受験勉強のなかで、しっかりと基礎知識を固めていれば実は記述問題であってもそれほど苦労することなく解くことができる場合が多いと言えるでしょう。まれに化学分野や物理分野といった4分野にはっきり分かれるのではなく、分野横断的な問題が出題されることもありますが、そのような問題でもそこまでの奇問はあまり見受けられません。あくまで各分野、単元の基礎基本知識をしっかり理解し、使いこなせるようになっていれば対応できるものがほとんどです。

桜蔭中学校の理科の攻略のカギとなるポイントとして挙げられるのは、先にも述べた通り、やはり膨大な量の計算問題を如何に正確に、かつスピーディーに処理できるか、という点だと言えるでしょう。桜蔭中学校の理科は制限時間が30分しかないという忙しい入試になります。しかも、理科の場合は、制限時間の短さに加えて難解で面倒な計算問題をしっかりと解き切る、という課題がのしかかってくるのが特徴です。

算数の記事でも述べましたが、桜蔭中学校で出題される計算問題は、とにかく正解の数字が汚いのが大きな特徴です。塾で受ける模試やテストでは、算数ではたまに複雑な答えになる問題が出題されることもありますが、理科の場合は、解答が分数になるような計算はほとんど見られませんよね。しかし、桜蔭中学校はそのような数字が汚い、複雑な計算結果になる問題を平然と出してきます。だからこそ難関校だと言えるのです。

計算に必要な知識自体は、基本的なことであって突出して難解というわけではありません。しかし、出てくる数字の複雑さ、不安にさせる計算結果、さらには制限時間に対しての問題量の多さを考えると、桜蔭中学校の理科を攻略するためには、この計算問題対策が必須になってくると言えるでしょう。

攻略のためのトレーニング

桜蔭中学校の対策全般において言えることですが、対策するにあたって、まず受験生の層について考えなければなりません。桜蔭中学校は、東大や国公立大学医学部をはじめとした難関大学への揺るぎない合格実績を誇る、女子御三家随一の名門校です。

そんな桜蔭中学校ですから、受験者層も全中学受験生のなかでトップクラスの集団だ、ということがわかるでしょう。桜蔭中学校は毎年倍率は2倍前後ですが、それはトップクラス集団の中での2倍であって、倍率が低いから入りやすいということではないので注意が必要です。

基礎基本を落としたらアウト

桜蔭中学校の受験生なら、基礎的な問題を落とさず確実に得点するのは当たり前であり、さらに高い難度を誇る応用問題をどれだけ多く正解して周囲の受験生にに差を付けることができるか、という非常に高度なレベルの競争をしているのです。

そんな厳しい入試において、理科や社会といった、桜蔭中学校にしては比較的難易度の高くない教科、対策すれば誰でも得点できるようになる教科でを落とし、失点を重ねてしまうと、大きく周囲の受験生に差をつけられることになってしまうのでその点には注意が必要です。

つまり、桜蔭中学校の理科の対策をおこなううえでの大前提として、まずは「絶対に間違えない」「1問も落とさない」という意識を強く持っておく必要があると言えるでしょう。プレッシャーをかけるようで恐縮なのですが、現に理科で差を付けられてしまっては、横綱級の算数や国語といった教科でリカバリーすることはほぼ不可能なのが現実です。

そのため、過去問を解いたり模試などを受験する際にも、全問正解するぐらいの気持ちで臨みましょう。特に学校別模試はひとひねりもふたひねりもされていることが多いのですが、傾向を踏まえて問題が作られているので、対策に非常に有効ですから、必ず受験し、しっかり解き直しをして足りない部分を復習するという地道な積み重ねが必要です。

基礎基本を固めて計算問題対策を

やるべきこと、受験する模試や過去問対策などの指針が決まったら、まずは基礎知識固めからスタートしましょう。これに関しては変に気負う必要はありません。日々の知識学習を着実に積み重ねていき、苦手な単元は特に念入りに復習・定着させるようにして、通常通りの学習を心掛けましょう。

ただし、桜蔭中学校で求められる基礎知識は、そもそもレベルが高いです。単に用語を知っているというだけでは足りません。「なぜそうなるのか」という理由、どのような条件があるとどう結果が変わるか、といったことに注意を払いながら基礎基本を固めていくことを意識しましょう。実験考察問題が多く出題されるので、基礎固めにおいても理由や条件が変わったらどうなるかを考えながら知識を身につけていくことが重要です。

最も重要になってくるのは、やはり計算問題対策です。計算力のトレーニングは算数とまったく同じで構いません。桜蔭中学校の特徴である、桁数の多い数字の計算や分数・少数の計算を自由自在にできるよう、四則計算を徹底して訓練しましょう。本番で計算問題を解いている最中に複雑な数字が出てきてもそれが桜蔭中の大きな特徴なので疑問を持つことなく、最後まで自信をもってスムーズに解ききるだけの計算力を身に付けることが何よりも重要です。

過去問対策は非常に重要

受験に必要な基礎知識や計算力が身に付いてきたなと思ったら、あとは過去問にできるだけ数多く触れておくことが大切です。桜蔭中学校の入試問題は、塾のクラス分け模試や合不合判定テストで出題されるような、いわゆるオーソドックスな一般的な問題には見られない特徴を持っています。

そういった問題に対応できるようにするためには、実際に過去問に触れて慣れておくことが非常に重要です。もちろん第一志望校にする受験生が多いので、過去問はこれから秋以降数多く解いていくことになりますが、1年分ごとに丁寧に解いていき、そこで出てきた基礎知識について抜け漏れがあったらしっかり戻って対策していきましょう。

桜蔭中学校の理科は、一度出題傾向に慣れてしまえば、身に付けた基礎知識や計算力を100%発揮することは決して難しくない問題構成となっています。ただし、焦りは禁物なので、まずは基礎基本を固め、土台をしっかり作ることから着実に対策していきましょう。

桜蔭中学校が求める力とは

今回は、桜蔭中学校の理科の出題傾向と対策について解説してきました。桜蔭中学校の理科は、ほかの教科に比べると4教科のうちで一番オーソドックスで難易度が低いのが特徴です。とはいえ、ほかの教科が横綱級なので、それに比べて比較的難易度が低めということなので、なめてかかっては痛い目に遭います。

桜蔭中学校の理科は、難易度が比較的低めの基礎的な問題も多く出題されますが、中には難解で複雑な計算問題を出題し、これぞ桜蔭中学校、というような出題も見られます。そのため、ほかの教科の出題傾向もしっかり押さえたうえで、理科に対しても攻略方法を練ることが大切になってきます。

4教科の中で比較的易しいと言われる理科ですが、ただ優しいわけではありません。学校側の意図としては、「この程度の問題を基礎として、当たり前に正解できる生徒を求めている」ということが言えるでしょう。つまり、理科の出題も桜蔭中学校が求める人物像がしっかり現れており、アドミッションポリシーを理解して受験してきてね、というメッセージが伝わる出題となっています。

こうした出題傾向に対峙するためには、単なるひらめきや天才的な発想や気づきを求められているわけではなく、日々の受験勉強の中で培ってきた基礎知識を、入試問題を解く現場で100%のパフォーマンスとして発揮することができるかどうかが重要だということを意識してください。これは特別な能力ではありません。コツコツと面倒くさがらずに基礎知識を身につけ、必要とされるすばやく正確な計算能力という、ごくオーソドックスな実力を身につけておくことで十分なのです。

女子最難関校と言われる桜蔭中学校ですが、求められている力をしっかり把握し、それを身につけるよう過去問などを用いてしっかり対策していれば、周囲の受験生に差をつけられることはありません。ただし、理科の場合は1問も落とせないハイレベルな戦いになることは目に見えているので、まずは基礎力の重要性を今一度確認し、様々なタイプの問題演習をおこなうようにすることが大切です。

しっかり対策すれば得点源となるのが桜蔭中学校においては理科です。平均点も高いので、解き負けないようにしっかり対策をし、合格へのカードを手にしてくださいね。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。