今年度の中学受験もほぼ終わりです。中学受験ナビでは、中学受験にまつわる失敗談や、中学に合格後、入学準備で意識していただきたいことについて現在ご紹介しています。これから、さらに中学校の特徴をご紹介したり、オススメ問題集や勉強法など、受験に直結する内容をお届けしていきます。
中学受験を来年、再来年に控えてすでに受験勉強をはじめていらっしゃる方、これから中学受験をお考えのまだ小学校低学年という方も多いと思います。皆さんは、中学受験というと、どの教科が一番大変だと思いますか?
多くの方は、やはり「算数」とお考えだと思います。中学受験の算数は、小学校では習わない特殊算や図形の複雑な問題が出題されたり、何より進度が非常に速いです。中学受験の勉強は、同じ単元を何回か繰り返すので、最初はわからなくても大丈夫ですよ、と塾で説明を受けた方もいらっしゃるかもしれませんが、現実はどうでしょうか?
次の学年になれば、前の学年に学習した同じ単元であっても、さらに深く、難しい問題に取り組みます。しかも大量にです。ですから、「中学受験をやるならまず算数に一番時間をかけて、算数で高得点をとらなくては!」と思うのも当然だと思いますし、現実的にも中学受験算数は特殊ですから、時間をかけて学習していく必要があるのはたしかなことです。
では、入試で算数と同じ高配点となっている「国語」に対してはどう考えていらっしゃるでしょうか?普段から話していることばだし、読めるから、国語の勉強は特にしなくてもいい、何となく読めるから今のところ困っていない、いざとなれば直前にやればいい、それよりもまずは算数や暗記ものを・・・そうお考えの方が多いのではないでしょうか。
ですが、実は中学入試(に限ったことではないのですが)は、「国語力」こそが勝負の要になるということを意識されたことはあるでしょうか?教科としての国語だけでなく、近年の中学入試の傾向は、算数でも長く複雑な文章を読ませたうえで答えを出すという出題にシフトしています。理科、社会も、長い文章をもとに、資料などを駆使して答えなければならない出題になっており、「読む力」「内容を正確に把握する力」がなくては、歯が立ちません。その、「読む力」「内容を正確に把握する力」、それこそが「国語力」なのです。「国語力」がなくては、最初のうちはなんとかなっても、学年が上がるにつれて、国語の成績はもちろんですが、ほかの科目にも大きな影響が出てきます。
「国語力」がないと、見たことがあるような問題であっても、条件を読み違ったり、設問の条件を読み飛ばしたりして、得点力自体が非常に下がってしまうという怖さがあるのです。「本を読むのが好きだし、たくさん読んでるから大丈夫でしょう」と思っていたとしても、お子さんは本を読んで楽しんでいても、内容をしっかり把握しているとは限りません。そうすると、たくさん文章に触れてはいるものの、実際の受験勉強には役に立たない、ということになりかねないのです。
今回は、これから中学受験に臨むみなさんに向けて、特に意識していただきたい「国語力」の重要性について書いていきたいと思います。国語はただ文章を読んで答えればいいという強化ではありません。ほかの教科にも絶対に必要になってくる、「すべての教科の基本」です。時間がまだあるうちに、その重要性について、改めて認識していただき、学習を進める上で常に意識していただきたいと思います。
Contents
国語の学習の基本は「音読」
塾で国語の問題を解くときは、あまり音読をしないかもしれません。先生によっては音読を指示する場合もありますが、文章が長いので、音読をしていては授業の時間が足りなくなり、問題を解くときにざっと読む「黙読」が中心になっているのではないかと思います。
では、小学校で国語を学習するときや、宿題ではどうでしょう?「音読」がまず定番といえるのではないでしょうか。もし国語に苦手意識をお持ちなら、「国語力」を養成する第1ステップは、この「音読」です。お子さんがもっと小さいときに、絵本の読み聞かせをなさいませんでしたか?文字が読めないお子さんでも、音読される本の内容に笑ったり、泣いたり、怖がったり、面白がったり、いろんな反応を見せませんでしたか?それだけ、「国語力」の養成には音読が非常に重要な役割を果たすのです。
「音読」は、文章を読むこと(インプット)と声に出すこと(アウトプット)という、2つのことをを同時に行うことです。このように複数のことを同時に行うことは、脳を活性化し、さらには記憶力を上げる効果があるといわれています。だからこそ、「音読」をすることは、「国語力」を上げるためにとても有効的な学習法といえます。
もし、お子さんが「国語がどうも点数がとれないな・・・」という場合は、親御さんの前で文章を音読させてみてください。音読によって相手に伝わるように読むということは、文章の中に出てくる「単語」を「単語」としてわかっている、あるいは「文」を「文」としてとらえることができているということです。ですから、音読をするときに変なところ、たとえば単語の途中でつっかえたり、句読点を無視してダラダラ読んだりしている場合は、「単語」や「文」という意識を持つことができずに、ただ「読んでいるだけ」という状態だといえます。
文章は、どんなに長くても、単語→文→段落→文章というつくりになっています。その中で、どこが文章の中で重要なことなのかを意識していかなくてはいけません。しかし、文や単語でつまずいてしまっていては、文章全体の内容を正確に把握することはできません。そして、そのことに危機感を感じずにただ読んでいても、「国語力」を身につけることはできません。
そして、最初にも書きましたが、この「国語力」は、国語という教科だけでなく、他の教科にも大きな影響を及ぼします。もし、算数の文章題で点数がとれないという場合は、解けなかった問題の文章を音読してみましょう。おそらく、文章の中で、「何を求めるのか」ということが理解できていないことがわかると思います。
「何を求めるのか」がわかっていなければ、文章の中に出てきている数字などのヒントをつかむことができず、図を描くこともできないでしょう。それでは、正解することはできません。図形の問題でも同じことです。声に出して条件を読むことで、「これを使うんだ」ということを理解しながら解き進めることができます。
同じことが理科や社会でも言えます。文章題に限らず、短い問題であっても、声に出して音読してみましょう。聞かれているのはどの産業の、どのような産物についてなのか、どの県についてなのか、どの動植物の特徴を聞かれているのか、どの物質の溶け方を聞かれているのか、おもりの重さを聞かれているのか、ばねの長さを聞かれているのか、そういったこともすべて問題文の中に書かれています。
声に出してそれを確認する、というワンクッションを入れることによって、その問題に対する理解が深まります。日本語なんだから読めて当たり前、という意識ではなく、「問題を解くためのヒントをつかむために必要なこと」というように意識を変えて、まずは文章を音読してみてください。
ただ音読すればいいというものでもない
国語でよくあることかもしれませんが、同じ文章を音読し続けると、お子さんによっては内容を暗記してしまうことも十分ありえます。それは、「読むこと」と「声に出すこと」、つまりインプットとアウトプットを続けることによって、記憶力が向上するから、ということが言えるからです。また、音読を続けて暗記できるということは、その文章がたとえば物語文なら描かれている情景を思い浮かべながら読むことができていますし、説明文や論説文では、内容は少し難しく感じるかもしれませんが、さまざまなテーマに対する好奇心が生まれるきっかけを自分で作ることができているということだともいえます。
このようなことができるということは、音読を通して、文章自体を「読み解く」、つまり読解力の基礎を身につけることができているということでもあります。ただ音読してつっかえずに読むことができてそれでよし、最初はそれでも良いですが、慣れてきたら、毎回、書かれている内容を意識しながら読むことができているかどうか、ということを確認していくといいでしょう。ただ読むだけではなく内容を読み解くことができること、それが「国語力」です。
音読は漢字の練習にも活用できる
国語の成績がなかなか上がらない、苦手意識がある、というお子さんに多いのは、漢字が書けない、ということが一つ挙げられます。漢字の練習は無味乾燥に思えるかもしれませんが、それは、ただ「書いているだけ」で、その漢字の持つ意味や熟語の持つ意味を理解しようという姿勢がないからです。
音読をすることによって、文章の内容を理解するためには、出てくることばの意味を理解していなければなりません。中にはたくさん漢字が出てきます。読み方がわからなければ、また意味が分からなければ辞書を引くなどして、自分で調べること、そのきっかけにもなるのが「音読」です。
漢字で点数がとれない、というのは、後回しにしていると致命的になってしまいます。国語だけでなく、近年は社会でも解答する際に漢字指定されている問題が増えています。人名、地名を覚えていたとしても、漢字で書くことができなくては0点です。それではとてももったいないと思いませんか?もちろん、国語でも、模試で漢字で点数がとれないとそれだけで10点から20点落としてしまいます。非常に大きい点数ですよね。
音読をすることによって、書かれている漢字やことばに対する興味を持ち、問題文の内容を正確にとらえることができれば、点数をしっかりとることができるようになります。
記述の力は、最初は「まねすること」から始める
低学年の場合、まだあまり出てこないかもしれませんが、近年の入試問題では記述問題が多く出題されます。国語だけでなく、他の教科でも同じことが言えます。ですが、記述が苦手、というお子さんはとても多いものです。そして、そのようなお子さんは、記述に対して非常に強い苦手意識を持っていることが多いです。
「なぜ苦手なの?」と聞くと、決まって返ってくる答えは、「なんて書いていいかわからないから書けない」というものです。ですが、記述に関しては、ただ書く練習や量が足りないからだと決めつけて、毎日作文を書かせようとしたり、記述問題ばかりに取り組ませても、何をどう書いたらいいのかわからなくて書けないのですから、ますます記述に対する抵抗感が強くなっていくだけになっていくだけで、決定的に嫌いになってしまうことにもなりかねません。
記述に関しては、まず「型」を身につけることから始めましょう。そのためには、できるだけ多くの文章にふれることが効果的です。自分が読む文章も、誰かが「書いた」文章です。大人が書いている文章ですから、使われていることばが難しいな、と感じることもあるかもしれませんが、最初はその文章をまねて書いてみる練習をするとよいでしょう。短い文でも構いません。たとえば、「ここで主人公はなんて言っているか」と聞いてあげると、それは文章の中に書かれていますから、その部分を抜き出すことなども効果的です。入試問題でも、抜き出し問題は頻出です。そのような練習を繰り返していくうちに、少し長い文章も、まねをして書くことができるようになっていきます。
最初から「さあ、長い文章を書きなさい」といってもそれは無理です。中学受験で求められる記述は、完全な自由作文は少なく、条件が設問に書いてあって、それにそって書くというものがほとんどです。そして、答えは文章の中にあります。
ですから、読んでいる文章をまねて書くという練習を繰り返し、「こういうふうに書けばいいんだ」という「型」を身につけることができると、記述に対する怖さや抵抗感は減っていきます。まねして書くことができるような文章にたくさん出会うためには、まず「読む」ことです。
読むことに抵抗がなくなれば、文章をまねして書くこと、さらには記述問題に対する抵抗感がなくなっていきます。そうすると、文章力も上がっていき、「聞かれていることに答える」ということができるようになり、文章力もついていきます。ただし、すぐに身につくものではありません。入試3カ月前になって焦るよりも、まだ1年、2年あるうちから、国語力を身につけるように意識していくことが重要です。
国語力を他の教科に活かせると、全体的な成績の底上げができる
音読を例にとって書いてきましたが、「記憶力」や「読み解く力」のような「国語力」が向上すると、国語だけではなく、他の教科にもよい影響があります。最初にも書きましたが、たとえば、全く別の教科で国語など関係ないと思われがちな算数であっても、文章問題を「読み解く力」が必要です。
特に入試問題のような長文になると、書かれている内容や条件も多岐にわたります。国語力がないと、いずれ算数にも拒否反応を示す、というお子さんがとても多いのが現実です。長い問題文を読み進むうちに、解答のヒントを読み飛ばしてしまい、「何を求めればいいのかわからない」という経験がある場合には、国語力が身についていない可能性があります。
そして、先ほども書きましたが、「国語力」はそう短期間に身につくものではありません。目の前にある1問1問を音読したり、大切だな、と思うところに線を引きながら読み進むなどの工夫をして、時間をかけて身についていくものです。特に算数に関しては、すぐに成績を上げたい!と思う教科だと思いますが、問題を正確に読むことができていないのに、どんどん難しい問題を解きなさいといっても、それは無理な話です。少し時間はかかりますが、特に苦手な分野に関しては、基本的な問題に戻って、問題文をよく読む練習をしてみてください。
社会や理科でも、問題文の長文化が進んでいます。入試問題だけでなく、模試でも、さまざまなデータをもとにした問題を出題するということが定着しています。これらの問題をしっかり解いて点数をとるためには、国語でいうと説明文や論説文といった文章を読み解く力がないと、なかなか最後まで読み切ることは難しく、問題に答えることができないでしょう。問題文を見てぱっと直感的に解こうとするのではなく、まずもとになる問題文をしっかり読み、条件を書き出したり、データと文章を合わせて読む練習をしましょう。ここでも、やはり「国語力」が非常に重要になっています。
まとめ
音読をはじめとして、「国語力」の重要性について書いてきましたが、中学入試(高校入試や大学入試でも)では、「国語力」があるお子さんがしっかり合格を取ってきます。しっかりと問題文を正確に読み、答える「自信」があるからです。
読んでも分からない文章が出てきたらどうしよう・・・そのように腰が引けていては、入試で得点することは非常に難しいですし、模試でも点数をとることは難しくなってくるでしょう。まずは「読む」ことについて苦手意識を持たないことが受験勉強のスタートです。これから受験に臨む皆さんには、まだ時間が十分にあります。どうしてもおろそかになりがちな国語ですが、ほかの教科でもしっかり得点をし、4教科高得点をとるだけの力をとり、その中で特に得意な科目があれば、しっかりと合格を得ることができます。
ほかの科目の勉強が忙しいから、そう思うときこそ、なぜその科目の勉強に時間がかかるのか、立ち止まって考えてみてください。問題文を読み切るのに非常に時間がかかってしまっていたり、勘違いして正確に読むことができていない可能性があります。
「国語力」があるお子さんは自信をもって受験勉強を進めることができます。それは、限られた時間の中で長い文章を読み、たくさんの問題を解いていく今の入試ではとても重要な力です。ぜひ、音読や、内容を正確に把握しているか確認するなどして、「国語力」を身につけながら受験勉強を進めていきましょう。解ける問題が増えると、お子さんの知的好奇心に火が付きます。そうすると、問題を解くのが楽しくなってきます。ぜひ、早いうちから「国語力」を意識して中学受験の勉強をしていくきっかけをつかみましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。