鴎友学園中学校は、東京都世田谷区の自然豊かな環境にある、中高一貫の女子校です。女子御三家を追う上位校として、近年その人気はますます高まっています。
複数回入試(第1回・第2回)を実施していますが、特徴として挙げられるのが、すべての入試回に出願する受験生が多く、第一志望校として不動の地位を築きつつあるということです。
そんな鴎友学園中学校は、実はキリスト教の精神を基盤とした教育を行っています。無教会派なので宗教色がないと思われる方も多いのですが、「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」を校訓として、思春期の女子学生に対して心の教育を行っているのです。また、リベラルアーツ教育やグローバル教育など、大学教育にも通ずる教育に力を入れていることも、高い人気を集める一つの要因となっています。
毎年東京大学や一橋大学をはじめとした国立難関校、早慶上智といった私立最難関校や医学部などに多くの合格実績を誇っており、「出口」の実績も十分。今後、ますます進路の広がりが期待されている学校です。文系・理系バランスよく合格者を輩出しているのも、進路選択の特徴だと言えるでしょう。
「どう生きるか」を考えさせる生活指導とともに、主体的・能動的な活動を重視した学習指導を両輪としたカリキュラムポリシーのもと、心身共に成長著しい中高6年間を支える体制ができている鴎友学園中学校は、今後も大きな飛躍が期待されています。
今回は、全人格的な教育を実践し、進化を遂げている人気の女子校・鴎友学園中学校について、国語の入試出題傾向や対策を解説します。ぜひ特徴を押さえて、合格に向けた対策をしっかり行っていきましょう。
Contents
入試情報
試験時間と満点、合格者最低点
国語の試験時間は45分、100点満点であり、4教科合計の満点は400点(国語・算数・理科・社会各100点)です。2021年度入試の4教科の合格最低点は第1回が269点(67.3%)、第2回が288点(72%)。
合格最高点は第1回が361点(90.3%)、第2回が363点(90.8%)でした。合格平均点は第1回が292,2点(73.1%)、第2回が301.4点(75.4%)。受験者平均点は第1回は259.3点(64.8%)、第2回は249.9点(62.5%)でした。
この結果から見ても分かるように、合格最低点は例年65%~75%の間で推移しています。中学受験全体から見て平均的な合格最低点となっており、過去問対策などでもそのあたりのレンジをキープできるように対策すると良いでしょう。
国語の合格最低点は公表されていませんが、合格平均点は公表されています。2021年度の合格平均点は第1回が77.1点、第2回が76.5点。受験平均点は第1回が70.3点、第2回が67.3点です。他の3教科に比べて国語は合格平均点が高いことからも、着実に国語を攻略できなければ合格が難しい試験だと言えるでしょう。
受験平均点より合格平均点が7~10点近く高いことからも、国語で確実に点数を積み重ねないと合格できないことがわかります。合格のために必要な点数が高めということから考えると、「点数がとりやすい」入試問題だと言えるかもしれませんが、取りこぼしが命取りになることを考慮すると、ミスが許されない難易度が比較的高いのが鴎友学園中学校の国語。
記述式問題が多く、1問で差がついてしまう構成になっているため、どの問題で確実に得点すべきか冷静に判断し、しかも確実な得点力が問われる入試だと言えるでしょう。
問題構成・解答形式
鴎友学園中学校の国語の入試問題は、例年大問3題と比較的少なめです。内容は、長文読解が2題、漢字の書き取りが1題(5問程度)という出題形式が続いています。長文読解問題については、文学的文章(物語文)の読解が1題、説明的文章(特に論説文が頻出)の読解が1題ということが多いです。
2021年度の入試においてもその傾向は踏襲されており、物語文の読解が1題、論説文の読解が1題、漢字の書き取りが1題(5問)でした。以前は韻文(詩など)が出題されていたこともありましたが、現在のところこの3題構成が続いています。
大問3題、しかも1題は漢字ということから、難易度はそれほどでもないのでは、と考えられる受験生のご家庭もいらっしゃいます。しかし、詳しくは後述しますが、設問はオール記述であり、中には100字程度の記述問題も出題されるので、決して時間的余裕がある入試だとは言えません。
文章量が非常に多い
鴎友学園中学校の国語の最大の特徴と言えるのが、素材文として取り上げられる文章量が非常に多いということです。一読するだけでも時間がかかるだけでなく、後の記述式問題に確実に応えていくための「深い読み」が求められます。試験時間は45分とあまり余裕はありません。
ただし、文章量は多いですが、文章の難易度そのものはそれほど高くはなく、難解な文章はあまり出題されません。中学受験生が学習する平均的、オーソドックスな親しみやすい文章が毎年出題されているので、それほど怖がる必要はないでしょう。ただし、読み返している時間はまずありませんから、一読してどれだけ内容を把握できるか、どこに何が書いてあるのか理解することができるかどうかが勝負の分かれ目と言えます。
受験生の結果を大きく分けるのは、やはりこの文章量の多さという「見た目」です。内容はオーソドックスなのですから、怖がらずに読み進み、設問に答えていけば十分対応できる問題構成です。だからこそ、鴎友学園中学校の入試においては、国語の合格者平均が非常に高いのだと言えるでしょう。
また、設問は傍線部について説明させる問題がほとんどです。つまり、解答の道筋は素材文の中に十分含まれると言っても過言ではありません。だからこそ、どれだけ確実に文章の内容を拾い、それらを上手く組み合わせて意味の通る記述解答に仕上げていくかが結局は合否を分けるというわけです。
また、傍線部について説明させると言いましたが、素材文が長いだけに、解答として使える部分が傍線部のすぐ近くにあるとは限りません。文章全体に散らばっていることも、鴎友学園中学校の国語の難しさだと言えるでしょう。傍線部近くを「答え探し読み」するだけでは太刀打ちできません。文章全体から、傍線部に関わりのある部分を見つけ出すことが大切なのです。
後述しますが、鴎友学園中学校の国語の設問はすべてが記述式問題です。したがって、選択肢問題に比べてオールオアナッシングというわけではなく、部分点も十分狙える問題構成なのです。だからこそ、「何が何でも解答を作る」という姿勢が勝敗を分けると言ってもいいでしょう。
普段から長文読解を丁寧に行い、文章のどこに何が書いてあったのかを確認する、その地味な積み重ねが合格点をとるためのカギです。
オール記述の設問。空欄を作ったら負け
鴎友学園中学校の国語を「難しそう」に見せている最大の要因は、何といっても漢字の問題を除き、すべての設問が「記述式問題」であるということです。このオール記述の問題構成こそが鴎友学園中学校の国語の入試の最大の特徴であり、攻略ポイントでもあります。
記述問題の設問は、字数制限のある問題から、字数制限は設けられておらず、3行程度の解答欄(枠)に考えた通りに記述する問題、また、100字程度と長めの記述問題も出題されるなど、記述問題のバリエーションを網羅した出題となっています。
そして、2021年度の入試では、すべての小問が「説明しなさい」という問題でした。この傾向は続いており、文章全体の内容を把握したうえで、傍線部について説明するというのが、鴎友学園中学校の国語の設問の最たる特徴です。
「○○について説明しなさい」という出題は、東京大学の入試問題で頻出です。もちろん大学入試との難易度のレベルはまったく異なりますが、問われていることは変わりません。素材文の内容を正確に理解できているか、文章の構造がわかっているか、そして把握した内容に即して的確な表現で答案を作り上げることができるかという、理解力+表現力という、いわば総合的な「国語力」が問われる入試となっています。
記述式問題は、聞かれたことに対して文章で答える問題です。つまり、いくら書いても読む相手にとって読みにくければ、あるいは聞いたことと違う、と思われてしまえば、点数には繋がりません。記述対策をしていると、「とにかく書けばいい」とむやみやたらに文章を膨らませようとする受験生が散見されますが、それでは鴎友学園中学校のようなオール記述の出題に対して、点数を重ねることは難しいでしょう。
記述の中心となるのは、聞かれていることの答えです。まずは「どういうことを聞かれているのか」「それに対する答えは端的に何なのか」を骨子として、そこに理由付けなどを肉付けしていきましょう。そうした骨子だと文章量として足りませんから、必ず肉付けが必要です。その理由も、同じことを繰り返して書いても点数にはなりませんから、「結論→理由」という順番で、何をどのように書いたら良いのか決めて書いていくことがとても大切だと言えるでしょう。
素材文の内容把握が合否を分けるカギ
このように、鴎友学園中学校の国語では、漢字の書き取り問題を除くすべての問題が「説明しなさい」という出題ですから、何よりも文章の内容把握力が問われる入試です。
2021年度もすべて記述問題ですが、長文読解の設問は6問と非常に少ないです。ただし、制限時間が45分、しかも8,000~10,000字程度という長文を読んだ上で構成を考え、表現していかなければいけませんから、読む時間を考慮すると1問あたりにかけられる時間はそれほど多いとは言えません。
しかも、合格者平均と受験者平均に7~10点程度の差があることを考えると、1問確実に得点できるかどうかが合否を分けるカギであり、誤解を恐れずに言えば「1問も落とすわけにはいかない」入試であることを忘れてはいけません。
設問数が少ないということは、それだけ1問あたりの配点が高いということですから、1問だけできなくてもいいだろうということはなく、書けなければそれが結果にダイレクトに返ってくるわけです。そのため、1問1問慎重に吟味し、確実に得点しなければならないのが鴎友学園中学校の国語なのです。
記述問題の勉強方法にはさまざまありますが、大切なのは「書きっぱなし」にしないこと。どうしても答案を作るとそのあと答え合わせをして、なんとなく読み比べてこんなものか、で終わりがちです。しかし、それでは的を得た記述は書けるようになりません。
できるだけ塾の先生や個別指導の先生などに相談し、自分の作った記述答案が、どこが良くてどこが足りないのか、ポイントについても指摘してもらい、さらに書き直して自分なりの解答方法を見つけていくことが大切なので、そうした習慣づけを意識していきましょう。
まとめ
今回は、鴎友学園中学校の国語の入試問題について、出題の特徴を中心に解説しました。鴎友学園中学校の国語の特徴をまとめると、以下の通りです。
- 文章量が非常に多い
- オール記述の設問なので、空欄を作ったら負け
- 長い素材文の内容把握がどこまでできるか、が合否を分けるカギ
設問数が少ないだけに、1問でも落としてしまう(的外れな解答を書いてしまう)と、合格は大きく遠ざかります。設問数が少ないということは、1問あたりの配点が高いということでもあるからです。
どこの中学校でも、入試本番は非常な緊張感の中で問題を解くわけですから、いつも以上に素材文も難しく見えてしまいがちです。しかし、鴎友学園中学校の国語で出題される文章は決して難解ではありません。だからこそ、どれだけ正確に読み、筆者・作者の意図するところを汲めるか、が合否の分かれ目となると言えるでしょう。
では、実際の入試問題はどのようになっているのでしょうか。次回は、分析編その2として、鴎友学園中学校の国語の2021年度入試を取り上げて、より掘り下げていきます。ぜひ参考にしてくださいね。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。