【伝統と革新が共生する女子校】大妻中野中学校の入試の国語の特徴を徹底解説!分析編その1

大妻中野中学校は、東京都中野区という、都心でありながら豊かな自然も色濃く残る地域に校舎を構える、中高一貫の女子校です。

JR中野駅から徒歩10分、西武新宿線新井薬師前駅からは徒歩8分と、アクセスも良好です。

大妻中野中学校の歴史は、1941年(昭和16年)にまでさかのぼります。大妻中学校の学祖でもある大妻コタカ氏がスタートした本校の建学の精神は、「何のために学ぶのか」という、教育・学習の根本を問うています。

自己を学問的・人間的に鍛えて高等教育機関への進学を目指すとともに、将来的には社会のため、人類のため、それぞれの勤めに励むこと、そして一人ひとりが「幸福の自己実現」と「社会に貢献できる人材になること」を目標とすることを目指す。つまり、「学芸を修めて人類のために」を見学の理念としています。

2020年度の進学実績は、東京大学などの難関国立大学をはじめ、G-MARCHなどの私立大学にも多数の実績があります。近年は、医学部医学科を目指す生徒も増えてきました。また、伝統校らしくG-MARCHをはじめとした指定校推薦の数が多いのも大妻中野中学校の進学体制の特徴でもあります。

生徒は、幅広い選択肢の中からキャリア教育などを通し、将来を見据えて進学先を選ぶことができています。

今回は、長い伝統を誇りながらも全人格的な教育を発展させ、ますます進化を遂げつつある人気の女子校・大妻中野中学校について、国語の入試出題傾向や対策を解説します。

ぜひ特徴を押さえて、合格に向けた対策をしっかり行っていきましょう。

入試情報

試験時間と満点、合格者最低点

大妻中野中学校の直近2021年度入試をもとに、入試結果データを見ていきましょう。大妻中野中学校の入試は、いわゆる一般入試とは少々違う様相を呈しています。

入試区分としては、「アドバンスト入試」「グローバル入試」「新思考力入試」が実施されています。このほかに帰国生入試もあります。

入試の中心となるのはアドバンスト入試です。第1回から第4回まで、合計4回実施されており、第1回は2月1日午前、第2回は2月1日午後、第3回は2月2日午後、第4回は2月3日午前に行われています。

午後入試、あるいは国語・算数の2教科入試も導入しており、4教科入試を行うのは第1回・第4回のみ。両方の回で2教科も選択できます。こうしたことから、併願校として受験スケジュールに組み込む受験生のご家庭も少なくありません。

アドバンスト入試の配点は、4教科入試で300点満点(国語・算数各100点、理科・社会各50点)、2教科入試で200点満点(国語・算数各100点)です。

2021年度入試における合格最低点は、第1回が4教科で178点(59.3%)、2教科で130点(65%)。第2回は2教科で133点(65.2%)、第3回は2教科で107点(53.5%)、第4回は4教科で155点(51.2%)、2教科で128点(64%)となっています。

2教科入試の方が国語・算数に特化していることもあり、合格最低点は高めとなっています。

これらの結果データから見ると、4教科で51%~60%が合格最低ラインとなっている一方、国語に関して言えば63%~71%と、合格に必要な点数のラインが比較的高めだと言うことができるでしょう。

4教科入試の合格最高点は約8割、2教科入試では8~9割と非常に高い水準ですが、合格最低点を考慮すると、必ずしもそこまでの高得点が求められているわけではありません。

あくまでも他の受験生に「競り負けないこと」が必要なわけですから、国語に関しても他教科とのバランスを考えて得点率を上げていくことが何よりも重要です。

国語は全体的に見て、合格者の得点率は比較的高め。

算数は、年によって違いはありますが6割~7割5分前後が合格者平均点となっていることが多いため、偏りなく国語・算数でしっかり得点できることが合否を分けるポイントだと言えるでしょう。

過去問を解く際にも、その回の合格者平均点を意識しながら、結果を検証しておくことが大切です。

問題構成・解答形式

大妻中野中学校の国語の入試問題は、例年大問2題の出題が続いています。1題は長文読解の問題、もう1題は知識問題の集合です。

女子校には珍しく長文読解問題が1題であるため、素材文の文字数はそれほど多くありません。内容的にも中学受験生としての平均的な力があれば十分対応できる難易度だと言えるでしょう。

読むスピードの速さ、手際よく記号選択式問題を解き、記述問題に時間をかけるという時間配分をしっかり念頭に置きながら解き進めば、合格最低点を上回ることはそれほど難しくありません。

女子校の国語の入試では複数題の出題の中に物語文が含まれていることが多いですが、大妻中野中学校の場合は長文読解問題が1題であることから、どの文種にあたるかわかりませんので、まんべんなくさまざまな文種の読解法を身につけておくことが必須だと言えるでしょう。

大妻中野中学校の国語の入試では、長文読解問題であまり差がつかない状況が例年の特徴です。合格者平均点と受験者平均点の差があまりありません。

では、どこで差が付くのでしょうか。それは、もう1題の大問である「知識問題集合」です。配点は非公表ではありますが、おおむね知識問題だけで30~40点程度の配点があると推測されます。

こうした知識問題が独立した大問として、しかも高い配点で出題されるのが大妻中野中学校の最大の特徴です。

そのため、知識の引き出しを広げておき、あらゆる知識問題が出題される入試に対応できるよう、高い知識レベルをキープすることが合格のためには不可欠だと言えるでしょう。

長文読解では、論説文を中心に説明的文章が頻出

大妻中野中学校では、例年長文読解問題が1題出題されます。出題される文種としては、論説文・説明文といった説明的文章であることが多く、過去10年の間には2015年、2017年に物語文や随筆文が出題されましたが、基本は説明的文章、中でも論説文の出題がほとんどだと言えるでしょう。

このように、女子校としては珍しく長文読解問題が1題、しかも論説文の出題がなされることが、大きな特徴だと言えます。

このように、長文読解問題が1題であり、素材文のボリュームも少ないことから、総文字数も少ない傾向にあります。そのため、がむしゃらに制限時間内で解けば得点できると考える受験生や保護者の方も少なくありません。

しかし、それは早計です。たしかに、短めの素材文を一読して速やかに正解に至ることができる設問も散見されます。たとえば、傍線部の前後に解答のヒントがあり、その部分から正解を探す「答え探し読み」でも正解できてしまう問題はあります。

しかし、すべての問題がそのように攻略しやすい出題ではありません。例年おおむね2~4問程度、一筋縄ではいかない「差がつく」問題が出題されています。

例えば、要旨をしっかり追って行ってはじめて正解にたどりつくような文章全体の読解がしっかりできていることが前提となる問題や、言い換え表現、特に記述問題で、比喩の表現の言い換えを求められるため自分で考えて答えなければならないなど、時間をくってしまう問題も出題されているのです。

また、段落ごとの要点をしっかりつかんだうえで答えなければ正解できない問題も散見されます。

全体的な問題の難易度自体はそれほど高くはありませんが、挙げたような「差がつく」問題で失点してしまう可能性は十分考えられます。そのため、8割以上といったような高得点を取ることは難しくなっているのが現状です。

おおむね合格者平均点が6~7割程度におさまっているのもこうした問題が入っていることが大きな要因の一つです。

ただし、全体的に読まなければならない素材文の難易度自体はそれほど高くはありません。一読して「難しい」「読めない」というレベルの文章が出題されることはまずないでしょう。

中学受験生が学習してくる平均的なレベルの文章が揃っており、小学校6年生でも親しみやすい文章、語り口の柔らかい文章が多く出題されていますので、それほど身構える必要はありません。

大妻中野中学校で出題される文章の内容はオーソドックスであり、怖がらずに読み進んで設問に丁寧に答えていけば、十分合格点がとれるように作られています。

しかし、記述問題や一読しただけで答えがわからないような問題については「難しいかも」という先入観が生まれてしまうのも、中学受験生のよくある心理状態です。普段から読み慣れているタイプの文章で、確実な「読み」を行うことを意識しなければなりません。

記述問題は意外と手ごわい

大妻中野中学校の国語の長文読解問題では、10問程度の設問が出題されます。ほとんどが記号選択肢問題と書き抜き問題ですが、記述問題が例年1問は出題されているのも特徴です。

記述問題の文字数は年によって異なりますが、以前は20~30字程度の出題が続いていましたが、2019年以来50~60字で書きなさい、という出題が続いています。2021年度の入試でも、50~60字で記述しなさい、という問題が出題されました。

記号選択肢問題を着実に正解し、記述問題にも部分点狙いでもよいので必ず取り組まなければ、大きく差をつけられてしまうでしょう。

そのため、記述問題対策は必須なのが大妻中野中学校の国語対策の特徴でもあります。論説文などの説明的文章が長文読解問題の出題の中心だということを考慮すれば、文章中に必ず解答のヒントがあるわけですが、入試独特の雰囲気、知識問題で確実に正答しなければならないというプレッシャーのもとで解答しなければならないため、焦ってしまうと的外れな解答を作ってしまい、大きく失点してしまうことも考えられます。そのため、「差がつく」問題の一つとして、記述対策は必須なのです。

50~60字という制限文字数も、難易度を上げる要因の一つです。これが100文字以上といった長いものであれば、書くべきことが多いことから、要素を一つ取りこぼしたとしても挽回するチャンスはあります。

しかし、50~60字という制限文字数は、そうした取りこぼしが絶対に許されない文字数設定だと言えるのです。

記述問題は、ただむやみやたらと自由に書けばよいというものではありません。聞かれていることに端的に答えることが求められているのが中学受験の記述問題です。

50~60字という文字数のなかには、書かなければいけない要素が複数隠れています。一つでも要素を落としてしまうと大きく失点することになるでしょう。

そのため、文章中のヒントを一読する際に確実に印をつけるなどして押さえておき、必要な要素をまとめていって制限文字数内に収めることが求められます。字数を超えてもいけませんし、あまりに少なくてもいけません。

出題者の意図としては、必要な要素をすべて過不足なく拾って書くことができればその制限字数に収まるはず、というものですから、多すぎる、少なすぎるということは本来ないはずなのです。その点を意識した記述問題対策が必要となります。

点差がつきにくいからこそ「差がつく問題」は確実な得点がマスト

大妻中野中学校の入試の合格ラインは4教科で51%~60%が合格最低ラインとなっている一方、国語に関して言えば63%~71%と、合格に必要な点数のラインが比較的高めです。

合格者平均点と受験生平均点の差もそれほどある訳ではありませんので、点差がつきにくいのが大妻中野中学校の国語の特徴の一つだと言えるでしょう。ただし、2020年以降は、2教科入試と4教科入試で点差がみられるようにはなっています。

つまり、競り負けないようにするためには、受験生がみんな正解してくるであろう問題は確実に正解し、「差がつく」問題で点数を積み上げることが必須です。

他の3教科も受験生内であまり差がつかないため、国語での確実な得点が合否を左右します。

まとめ

今回は、大妻中野中学校の国語の入試問題について、出題の特徴を中心に解説しました。特徴をまとめると、以下の通りです。

  • 長文読解問題と知識問題1題ずつ、素材文の文章量は比較的少ない
  • ほとんどが「オールオアナッシング」の記号選択肢問題
  • 記述問題が差を分ける

記号選択肢問題、しかも正解がひとつという出題が多い大妻中野中学校の国語では、1問でも落としてしまうと他の受験生に大きなアドバンテージを許してしまいかねません。

また、記述問題についても素材文にすべての設問のヒントが隠されているわけですから、読み負けないことも大切です。

決して難解な文章が出題されるわけではありませんが、逆に的外れな読解をしてしまうと、わかっているのに正解できない、という状況に陥ってしまうので注意しなければなりません。

どれだけセオリーにしたがって読み進め、着実に設問に答えられるかが合否を分けるのです。

次回は、分析編その2として、大妻中野中学校の2021年度第1回入試の国語の問題を取り上げて、実際の入試問題対策のイメージを持っていただきます。ぜひ、参考にしてくださいね。

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参考

 

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。