【中学受験】時事問題の傾向と対策の総まとめ その2

先日の記事では、時事問題とはどのようなものを指すのか、なぜ年々出題が増えているのか、入試でよく出題される時事問題のカテゴリーをご紹介しました。そのときにも書きましたが、近年の中学入試では、どの学校でも時事問題、あるいは時事に関連した問題が必ずといっていいほどの高い確率で出題される傾向にあります。

「時事問題」をやらなければ、と思ったときに、どのような意識をもって学習しますか?各塾で秋以降出版される時事ニュースを集めた問題集・参考書をもとに学習を進めることが多いと思いますが、それらのテキストの内容を頭から覚えたからといって時事問題を確実に得点できるとは限らないことには注意が必要です。

それはなぜかというと、時事問題を出題する中学校側の目的、アドミッションポリシーが関係するからです。もちろん一つには、最近世の中で起こっている出来事に興味を持つという知的好奇心を受験生が持っているかどうかということが時事問題を出題する理由になっていることはたしかです。世の中がどのように動いているのか、国内で起こっている問題はなぜ、どのようにして起こっているのか、国際的な問題に対する各国の姿勢、特に日本はどのような姿勢で解決しようとしているのかということを理解しておくことは、中学に入ってから求められる学習姿勢ですから、そのような素養があるかどうか、中学に入ってから意欲的に学習していけるかどうかを測る一つの要素になっています。

このように、入学後の学習姿勢にも大きく関わってくる時事問題ですから、中学校側も様々な形の問題を出題してきます。そう聞くと、「時事問題って難しい」と思ってしまいがちになりますよね。しかし、実は重箱のすみをつつくような細かい知識を聞くというよりも、時事問題の形をとって、あるテーマについて地理や歴史、公民や国際関係といった、これまで学習してきた基礎知識を確実に身につけているかということを確認するような問題が多く出題されています。

時事問題は、意識して学習する時期が直前期になりがちで、「範囲がとても広い」「こんなに覚えられない」と思ってしまう受験生も多いと思います。でも、問題をよく読んで、聞かれていることが何なのか考えてみてください。決してこれまで学んだことのないような知識が出題されているわけではありません。以前は難問奇問といわれるような、小学生レベルで走っている方が珍しいような知識が出題されたこともありましたが、現在はそのような問題はほとんど出題されません。ですが、時事問題だと思うと、反射的に「何が出るかわからない」と、全く知らない知識が出るのではないかというような一種の恐怖感を持ってしまう受験生が非常に多いことも確かです。

もう一つ、中学校が時事問題を出題する理由として意識しておきたいことは、先ほど書いたような学習姿勢や好奇心を見たいという以外に、中学に入学するうえで必要となる基礎的な知識をおろそかにせずに学習しているか、理解しているか、また、問題文に食らいついて正確に読みとろうという意欲が見られるか、という点を見たいという意図がある、ということに気をつけてください。もちろん、この1、2年の間に起こった大きなニュースの内容を知っておくことは大切です。ですが、重要なのはその出来事の名称ではなく、なぜそのような出来事が起こったのか、それはいつから続いているものなのか、ということをその場で考え、持っている基礎知識を総動員して解答する粘り強さを中学側は見ています。

どうしても難しいという意識を持ってしまう時事問題ですが、問題文をしっかり読み、学習してきた出来事や関連する人物などの基礎知識で十分に答えられる問題が多いということを思い出すように直前まで取り組んでください。自分の持っている基礎知識が問題とぴったり合ったとき、時事問題は怖くないということがわかります。いまからでも自信をもって知識と問題の関係を意識するように学習を進めましょう。

今回は、特に2017年の夏までに起こった出来事を中心に、直前期に見直しておきたい出来事についてまとめていきます。もし抜けている知識があったら、もう一度基本のテキストに戻って確認してみましょう。

日本で起こった出来事

まず、日本国内で起こった出来事で目立ったことがらについて確認しましょう。

憲法改正の動き

憲法改正への動きが活発化しています。今の日本の憲法は、第二次世界大戦後にアメリカが中心となって作ったものであり、今の日本の現状に合っていないのではないかという議論が長きにわたって行われています。とくに、自衛隊は憲法違反ではないか、戦争放棄という厳しい今の憲法のあり方を変えるべきかどうか、という点は非常に重要です。憲法9条に関する問題です。

これに関連して、憲法を改正するには普通の法律を改正するよりも厳しい条件が憲法の中で定められていることを確認しておくことも大切です。憲法を改正するには、衆議院、参議院それぞれの議員の3分の2の賛成によって憲法改正の発議がなされ、さらに国民投票を行って初めて実現することができる、ということを確認しておきましょう。

また、憲法に関連しては、憲法とは何のためにあるものなのか、という根本的な知識も知っておきましょう。憲法99条では、「憲法尊重擁護義務」が定められています。難しいことばですが、これは、憲法を守る義務を負っているのは天皇や国務大臣、国会議員などの公務員である、ということです。日本国民はその中には入っていません。憲法は、一般国民の権利を守るために、国家権力が暴走しないように定められたものだということを知っておきましょう。

また、現代の日本国憲法と、第二次世界大戦までの大日本帝国憲法の違いについて、天皇が決めた憲法(欽定憲法)なのか、国民の総意で決めた憲法なのか、という違いについては混乱しないように整理しておきましょう。天皇は大日本帝国憲法では非常に強い権力を持っていましたが、日本国憲法では「象徴」です。できることもかなり違うので、それぞれの憲法が定められた時代の背景、人物などについての知識を整理しておきましょう。

天皇退位問題

先日、現在の天皇(今上天皇といいます)が退位の意思を発表し、関係各所が調整を行って、2019年の5月に今の皇太子が天皇に即位し、現在の天皇は「上皇」となるという方向で調整が行われています。「上皇」とは「太上天皇」の略です。このこと自体は時事問題として出題される可能性のある問題です。

では、日本で最初の太上天皇が誰だったか知っていますか?それは、持統天皇(天武天皇の皇后で、天武天皇のあとを継いで天皇となり、孫が天皇となるときに太上天皇になりました。生前譲位しています)です。また、上皇として有名なのは白河上皇による院政もあります。これらの知識は歴史分野の学習で必ず学んでいるはずのものです。天皇の退位に関しては、このように退位した後に上皇となった人物がどのような事件に関連したか、などということも非常に重要な知識です。

また、現在天皇の退位にともなって話題となっている、日本国憲法に定められている「天皇の国事行為」とはどういうものか、また、皇室典範についても重要な基礎知識で構いませんから、これを機会におさえておきましょう。

また、天皇が変わると元号が変わります。今の元号は「平成」ですが、その前は「昭和」でした。このように元号が変わることを「改元」といいます。新しく天皇が即位する際にも新しい元号になるので、これは常識として覚えておきましょう。江戸時代までは何かきっかけがあると元号が良く変わっていましたが、明治時代になってから、一人の天皇に対しては元号は一つになりました。これを「一世一元の制」といいます。そのような仕組みの変化があったということを知っておきましょう。

2016年の訪日外国人は過去最高の2400万人

「爆買い」などということばをニュースでも耳にしたことは多いのではないでしょうか。中でも特に多いのは、中国、韓国、台湾、香港からの訪日外国人です。

「訪日外国人が過去最高」ということは時事問題といえますが、では、なぜ訪日外国人が過去最高の人数を記録したのでしょうか。訪日外国人の増加の理由としてどのような背景があったのかをしっかり押さえておきましょう。当時は円安でしたので、日本の製品を大量に買い占めて自国に持ち帰る外国人が非常に増えました。高級品だけでなく、日常生活用品をドラッグストアでそれこそ爆買いしている様子を見たことがあるのではないでしょうか。また、来日するにあたっては、いわゆる「旅費」の問題がありますが、格安航空(LCC)の国際線の増加等も訪日外国人の増加を後押ししました。

法務省の発表では、2015年末時点の国別の在留外国人の割合は、中国が約30%、次いで韓国が約20%、以下、フィリピン、ブラジル、ベトナムの順に高くなっています。在留外国人は日本で働く人や、留学生などいろいろな目的を持っている人が多いですが、2016年に外国人労働者は100万人を超えています。ここでも、一番人数が多いのは中国です。

沖縄に関する問題

沖縄には、日本に在留するアメリカ軍の基地が集中しています。特に、アメリカ軍普天間基地の、辺野古(へのこ)沿岸への移設が大きな問題になっています。移転場所として挙がっている辺野古は、サンゴ礁が有名で、ジュゴンの餌場にもなっており、海洋動物や植物の宝庫とも言われているので、基地の移転によってそのような自然がダメージを受けるウことが予想されます。一度破壊された自然をもとに戻すのはそう簡単なことではありません。そのため、沖縄県民をはじめとして反対する運動が盛んになっているのです。

また、アメリカ軍嘉手納(かでな)基地爆音訴訟では、住民が国に求める賠償金の額は過去最高の302億円にのぼっています。アメリカ軍の戦闘機などの爆音は住民生活にとって体調不良を引き起こすなど深刻な問題となっています。沖縄は、日本の国土面積の0.6%で、人口密度は全国で9位です。非常に狭い地域に、日本にあるアメリカ軍基地の70%が集中しているという数字についても押さえておき、なぜ沖縄がアメリカ軍が駐留するのに都合が良いのか、駐留し始めた理由は何なのか、日本政府はどのような動きをしているのか、アンテナを貼っておきましょう。

また、南スーダンから陸上自衛隊が撤収するにあたり、さまざまな問題が表面化しました。当時の防衛大臣が事実上更迭されるほどの大きな問題となり、国会も紛糾しました。自衛隊がどのような活動をしているかについて整理するとともに、南スーダンの位置を世界地図で確認しておきましょう。

原発事故関係

福島の原発事故に関する裁判で、前橋地方裁判所は、「国と東京電力は津波を予見(起こるだろうとすること)できた」と指摘しました。地震などを原因とする原発事故によって原子力発電について様々な意見が交わされており、原発の稼働を停止するように裁判所が決定を下しているケースもみられるようになってきてます。一方で、大阪高等裁判所は、高浜原発(福井県)の再稼働を認めています。原子力発電所のメリットやデメリット、国内の電力に占める原子力発電の割合などについても意見が分かれていることは知っておきましょう。

また、原発と直接関係はしないかもしれませんが、日本は唯一の被爆国です。それにもかかわらず、日本は「核兵器禁止条約」交渉に反対しました。アメリカとの関係など、国際情勢にもかかわることではありますが、これは中学に入ってからも我々日本人は考え続けなければならない重大な問題です。

世界遺産関係

2017年に、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺跡群」がユネスコの世界文化遺産に登録されました。これで、日本の世界文化遺産は17件、世界自然伊勢さんは4件、合計21件になりました。沖ノ島は、「海の正倉院」と呼ばれ、戦後の調査で多くの遺産が出土しています。

また、2018年度に向けて、世界文化遺産としては「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県・熊本県)」、世界自然遺産としては「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島(鹿児島県・沖縄県」を推薦しています。

また、ユネスコの無形文化遺産として、茶道、盆栽や、8件10件の伝統行事(「来訪神 仮面・仮想の神々(男鹿のナマハゲなど)」を申請する準備が進められています。

世界遺産ではありませんが、自然保護として、奄美群島(鹿児島県)が34番目の国立公園になりました。

世界遺産や自然保護関連は、入試でも大問として出題されることもありますし、日本だけでなく他国の世界遺産についても重要なものはしっかり押さえておく必要があります。

法案、捜査などについて

国会では、「共謀罪」法案が閣議決定されました。テロなどの準備をした場合に、テロなど準備罪処罰法によって操作の対象になり、刑罰を受ける可能性があるということです。ただし、テロはどこでどのように準備されているかを突き止めるためには、盗聴や密告など、普通の捜査のやり方では証拠を集めるのが難しいという問題があります。そのため、疑わしければすべて捜査の対象にすることは、個人の人権を無視することにもなりかねないので、「平安の治安維持法」と呼ばれることもあります。

一方、最高裁判所は、警察が勝手にGPSを用いた捜査をすることを違法とする判断を出しました。事件によってすべてに当てはまるとは限らないかもしれませんが、本来の手順をとらずに捜査をすることは違法、やってはいけないことだというこという感覚を持っておきましょう。

その他

以上に挙げてきたもの以外にも、国会で与野党が議論をし、結局結論が出ていない森友問題、これに関連して国政調査権や教育勅語の問題、徳川家康を祭っている日光東照宮の大規模修復作業が終了したこと、違法残業問題で自殺、病死が相次いだこともあり、残業時間の上限を通期100時間未満にしようということも話題になりましたが、例外が予定されているので骨抜きになる可能性もあります。

また、最近はAmazonなど、即時に宅配サービスを受けることができるようになっています。このこと自体は消費者である我々にとっては便利なことですが、配達予定時間に在宅していない人が増え、再配達の手間が宅配便業者に大きくのしかかっている問題もあります。どのような解決策があるだろうか、というような問題も十分考えられるでしょう。

世界各国で起こった出来事など国際関係

アメリカ関連

2017年1月に、ドナルド・トランプ大統領が新しいアメリカ大統領に就任しました。前任のオバマ大統領が民主党であったのに対し、トランプ大統領は共和党選出の大統領です。アメリカの政治は主にこの二大政党によって行われています。日本は現在自民党一強時代とも言える状態ですが、その違いや、大統領と首相の選出の仕方、選挙の方法の違いなどについて比較できるようにしておきましょう。

また、アメリカはTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、シリアへのミサイル攻撃など、矢継ぎ早にこれまでの民主党政権で決められたことをひっくり返したり、強権を発動したりしています。このような事件についても押さえておきましょう。

北朝鮮関係

このところ、北朝鮮では、弾道ミサイルや核兵器を開発、発射実験を行ったり、現在の最高指導者である金正恩氏の兄である金正男氏がマレーシアで殺害され、裁判が行われているなど、事件が相次いで起こっています。日本と北朝鮮は非常に近い位置にありますが、国交を樹立していません。これは韓国との違いですね。

そもそも朝鮮が北朝鮮と韓国に分断されたのは、アメリカとソ連の冷戦により、朝鮮戦争が起こったためです。そして、それに関連して日本もアメリカ側とみなされ、北朝鮮とは表立って国際的な交渉ができないという背景があります。まもなく韓国の平昌で冬季オリンピックが開幕します。北朝鮮は韓国と合同チームを作ろうとしたり、さまざまな批判を浴びています。オリンピックに政治的問題が絡んでくることによって、本来のオリンピックの精神が損なわれることにもなりかねませんそして、オリンピック終了後の北朝鮮の国際社会へのアクションにも注目が必要です。

また、北朝鮮と呼ばれていますが、正式名称を書けない受験生は意外に多いです、朝鮮民主主義人民共和国という国名を、漢字で正確に書けるようにしておきましょう。

韓国関係

韓国では、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が逮捕され、弾劾されました。大手企業からわいろを受けたり、私的な友人に政府の機密文書の内容を漏らしたりした疑いで、大統領の座を追われました。新大統領には、文在寅(ムン・ジェイン)氏が選ばれました。韓国の大統領の任期は5年です。アメリカの大統領の任期は4年です。冬季オリンピックが行われるということもあり、世界中から注目を浴びる国ですが、政権が安定しているとはいえないという事情もあります。

イギリス、ヨーロッパ関係

イギリスでは、EU離脱が正式に表明されました。この狙いは、移民の削減などの政策を実現することにあります。大陸でつながっているため、イギリスに限らずフランス、ドイツなども難民問題は重要な問題です。日本は難民をほとんど受け入れていません。

EUに関しては、通貨(ユーロ。イギリスはポンド)、加盟国(イギリスが抜けると27カ国)、本部(ベルギーのブリュッセル)などの基本事項についてはテキストで必ず学習しているはずの知識です。現在起こっている問題と結びつけながら確認しておきましょう。

貿易関係について

貿易総額(モノに限定します)では、2016年の貿易統計によれば、中国は2位に転落しました。現在、貿易総額は多い方からアメリカ、中国、ドイツ、日本です。輸出は中国、アメリカの順に多く、輸入はアメリカ、中国の順に多くなっています。

まとめ~時事問題に強くなるには?

最初に、中学入試では多くの学校が時事問題を出題することを書きました。なぜ時事問題が出題されるのか、時事問題という形をとっていても、必要なのは各分野の正確な知識であって、それを問題と結びつけることができる力が求められているということを改めて意識していただきたいと思います。

時事問題は一つの教科にとらわれるものではありません。ときにはいくつかの教科が合わさった問題が出題されることもよくあります。時事問題に苦手意識を持つ受験生は、今起こっている事件そのものを知らないということがあります。もし出来事そのものを知らないと、どの知識をつかったらよいのかわからなくなってしまいます。

ぜひ、テレビのニュースや新聞で、現在日本で、世界で起こっている出来事を知ってください。その日のテレビや新聞のニュースの中で一番興味をひかれた記事、写真、イラストやマンガについて、家族で選んで、その理由を簡単に話し合う習慣をつけることができると、自然と視野が広がります。ニュースを題材に家族で話し合う機会を持つことができると、会話が弾むので、親子の会話が増えます。そして相手に自分の考えていることをわかってもらいたいと思い、自分で調べたり覚えたりということを積極的にできるようになります。長い文章を読む努力にも結び付いていきます。

テレビを見ながら、新聞を読みながら、ちょっと引っかかるな、と思うことに疑問を持ち、自分で調べる習慣を身につけると、世の中の出来事に対する興味や関心が強くなり、中学に入ってからの自学自習、グループ学習やアクティブ・ラーニング、ひいては大学入試などにも必要となる学習姿勢が身につきます。文章を論理的に読む力が身に付けば、自分の考えを論理的に説明する力もついてきます。

受験生の方は、時事問題を怖がらずに、重要そうな出来事について、関連する基礎知識を見直してみましょう。これから受験学年をむかえるという方は、ぜひ家族で話し合うなど、日々起こっている出来事について興味を持つ工夫をしてみてください。

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