日本列島には豊かな四季があり、季節ごとに異なった姿を見ることができます。また、南北に細長い形をしている日本では、地域によってさまざまな気候が見られます。たとえば沖縄と北海道ではまったく異なる気候になっています。それでは、なぜ日本ではこのように四季があり、気候の多様性があるのでしょうか?
気候の多様性はたくさんの農産物を作れる理由となっている一方で、最近はゲリラ豪雨(ごうう)など災害の原因にもなっています。
気候に関する問題は、地理の分野の中でもむずかしい問題の一つですが、大切なのは「気温」と「降水量」の二つです。そしてまずは「雨温図」をマスターし、どこの地域のものか分かるようになりましょう。
Contents
日本の気候の特色
日本では多様な気候が見られ、地域によって気温や降水量が異なります。大きく6つの気候区分に分けることができ、入試ではそれぞれを区別する問題が出題されることが多くなっています。この章では日本の気候について説明したあと最後に実せん問題ものせているので、自信がある人は問題から解いてみてください。
日本の気温
日本列島のほとんどは「温帯」という気候区分に属しています。「温帯」はその名の通り1年を通して暖かいのが特ちょうですが、温度変化があり、これが日本に四季がある理由です。
北海道だけは「冷帯(亜寒帯(あかんたい))」に属しており、他の地域に比べて冬の寒さが厳しくなっています。(1・2・12月の平均気温は氷点下になります!)
日本の降水量
日本はとても降水量の多い国です。年間の平均降水量は1700~1800㎜で、世界平均のほぼ2倍となっています。このように降水量が多くなっているのは、梅雨や台風によってたくさんの雨が降ることが理由の一つです。また冬には日本海側で雪や雨の日が続くことも理由となっています。
※梅雨…夏の初め、5月から7月にかけて長く続く雨。
※台風…熱帯ででき、夏から秋にかけて日本に近づいたり上陸したりして大量の雨を降らす強い低気圧。強風による被害(ひがい)も出る。また、台風が通るときには海面が異常に高くなる「高潮」が発生する。
季節風との関係
地域によって異なる気候が見られるのには、季節風が大きく関係しています。
夏には、図1のように南東から温かい季節風がふいてきます。この季節風は太平洋を通っているため水分を多くふくんでおり、日本列島の太平洋側にたくさんの雨を降らせます。

図1 夏の季節風と降水
(髙橋作成、転載は記事名を明記の上で許可)
冬には北西方向から季節風がふきます。この季節風が日本海を通るとき、暖流である対馬海流から湯気のようにのぼるしめった空気をたくさん吸収し、水分をふくんだ風となっています。
この風が図2のように山脈とぶつかり、温度が低いため日本海側では雪がたくさん降るのです。その一方で、この風は雪が降ることで水分を失い、かわいた風となって日本海側にふき下ろします。これが群馬県などにふく「からっかぜ」です。

図2 冬の季節風と降雪
(髙橋作成、転載は記事名を明記の上で許可)
日本の気候区分
日本は多くの部分が温帯に属していると説明しましたが、その中でも大きく分けて6つの気候区分があります。それぞれちがった特ちょうを持っているので、おおまかな場所と特ちょうについておぼえるようにしましょう。
雨温図とは
気候について見ていく前に、「雨温図」について説明します。「雨温図」とは下のようなグラフのことで、ある地点における1年間の気温と降水量の変化を表しています。赤い折れ線グラフが月平均気温の変化を示しており、数値・単位は左側の目盛りです。また青い棒グラフが月平均降水量の変化で、右側の目盛りが単位と数値を示しています。まずはこのグラフを正確に読み取れるようにしてください。
図3 東京の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
6つの気候区分

図4 日本の気候区分
(髙橋作成、転載は記事名を明記の上で許可)
上の地図を見てください。この地図は、気候区分ごとに地域を色でぬり分けたものです。それでは、一つ一つの気候区分について確認していきます。
北海道の気候
下の雨温図は、北海道旭川(あさひかわ)市の気温と降水量を示しています。北海道気候の特ちょうは「年間を通して気温が低く、降水量も少ない」ということです。北海道には梅雨がなく、台風もあまり来ないため降水量が少ないのです。
また、12・1・2月を中心に冬の気温は氷点下となります。ただし夏は月平均気温が20度をこえる地点も多く、温度差が大きくなっています。
図5 旭川の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
日本海側の気候
本州の日本海側の多くの地域で見られる気候で、1.3で説明した季節風のえいきょうにより、冬に降水量(雪)が多いのが特ちょうです。また冬は気温も低いですが、北海道とちがい0度を下回ることはありません。
図6 新潟(にいがた)の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
太平洋側の気候
本州・四国の太平洋側と九州地方の大部分でみられる気候です。夏に梅雨や台風、また1.3で述べた南東の季節風のえいきょうにより降水量が多くなり、逆に冬は降水量が少ないのが特ちょうとなっています。
図7 静岡(しずおか)の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
内陸性(中央高地の)気候
東北地方から中部地方にかけての内陸部、山脈がつらなり標高の高い地域で見られる気候です。山に囲まれているためしめった風がふきこみづらく、1年を通して降水量が少なくなっています。また1月の月平均気温が0度を下回るのも特ちょうです。
図8 山形(やまがた)の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
瀬戸内海の気候
中国・四国・九州地方の瀬戸内海(せとないかい)に面した地域で見られる気候です。年間を通して暖かく、また中国山地と四国山地にはさまれた地域でしめった風が入りこまず、降水量が少ないのが特ちょうです。
図9 岡山(おかやま)の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
南西諸島の気候
沖縄県やその周辺の島で見られる気候です。年間を通して気温が高く、温度差が小さいのが特ちょうです。また、夏は梅雨や台風のえいきょうにより降水量が多くなっています。
図10 与那国島(よなぐにじま)の雨温図
(「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト)
例題
それでは、実際に雨温図を見てどの気候区分に当てはまるか考えてみましょう。①~⑥の雨温図は上の日本地図のA~F地点(A:札幌(さっぽろ)、B:松本(まつもと)、C:金沢(かなざわ)、D:高松(たかまつ)、E:高知(こうち)、F:那覇(なは))のどれかに対応しています。どれがどの地点の雨温図か考えてみてください。

図10 各地の雨温図
(②~⑥:「日本各地の雨温図」|北海道札幌市「個別指導の学習塾ノックス」公式サイト①:「雨温図作成ソフト」で作成)
【解説】
まず①は年間の降水量が約1000㎜と少なく、1月の平均気温が氷点下になっています。つまり内陸性(中央高地の)気候であり、Bの松本です。
同じく年間降水量が少ないのは⑤と⑥ですが、⑤は年間の平均気温が低いため北海道の気候でAの札幌と分かります。また⑥は①や⑤と比べて温暖なので瀬戸内海の気候でありDの高松です。
②は夏より冬の降水量が多く、これは雪が多く降っているからだと分かります。そのため日本海側の気候で、Cの金沢です。残る③と④ですが、年間を通して暖かく気温差の小さい④が南西諸島の気候でFの那覇、③は比較的気温差が大きく夏場の降水量が多い太平洋側の気候でEの高知です。
雨温図から都市を判断する問題では、瀬戸内海の気候や日本海側の気候など特ちょうがはっきりしていて分かりやすいものから解いていき、分かりにくいものは最後に消去法で解くという方法をオススメします。
【解答】
①:B(松本) ②:C(金沢) ③:E(高知) ④:F(那覇) ⑤:A(札幌) ⑥:D(高松)
気候・気象が関係する自然災害
日本には豊かな四季がある一方で、雨や風などによる災害で大きな被害が出ることもあります。このような災害では多くの人の命をうばうほか、農業に大きなダメージを与えます。
日本の自然災害
- 水害…梅雨の際の集中豪雨・ゲリラ豪雨や台風によって起きる災害。洪水や浸水や、水が原因となる土砂崩れ・崖崩れなどにより大きな被害が出ます。
- 冷害…春から夏にかけて北東の方向からふく「やませ」という冷たい風により、特に東北地方の太平洋側で最高気温が20度をこえない日が続き、稲作(いなさく)などの農業に大きな被害が出ます。また濃霧が発生して日照不足となり、こちらも不作の原因となります。
- 干害…内陸部や瀬戸内(せとうち)地域など降水量の少ない地域で発生し、農作物の栽培に大きな被害を出す災害です。このような地域では水不足にならないようため池や用水路などがつくられています。
- 霜害(そうがい)…春や秋に、特に朝方に0度以下の低温となることによって霜がおり、農作物に被害が出ます。
まとめ
この記事では日本の気候について説明しました。最初にも書いたように、気候の問題では「気温」と「降水量」がポイントとなります。
そして、まずは雨温図を正確に読み取れるようになること、それぞれの気候区分について大まかな特ちょうをしっかりと理解することが大切です。季節風や海流など、関係するほかの分野についても忘れていることがないか確認しましょう。
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