最近何かと話題の「アクティブ・ラーニング」。中学校の学校説明会に足を運んでいらっしゃる保護者の方も、よく耳にされている言葉だと思います。大学などでは以前から実践されている学習法でしたが、もっと早い時期から「主体的・能動的な学習」が必要だという教育改革の流れから、中学校、あるいは小学校にも期待されるようになってきています。
では、「主体的・能動的な学習」とは、具体的にはどのような学習なのでしょうか?今回は、「アクティブ・ラーニング」の具体的な取り組みについて、3つの学校を挙げてご紹介します。
東京純心女子中学校「図書館探求型学習」
東京純心女子中学校では、図書館を「学びの基地」と位置づけ、生徒の「読む」「知る」「学ぶ」をバックアップする体制を整えています。さらに、各教科と図書館が協働して行う、純心オリジナルの探求型学習の拠点となっています。問題設定をして調べるところから始め、資料の取り扱い方、情報の使い方、意見のまとめ方やレポートの書き方、さらには分析し、プレゼン方法などを総合的に学ぶ=能動的な学びを行っています。
図書館は中学・高校に分かれていますが、どちらも自由に使うことができ、蔵書は8万冊以上あります。生徒の「読みたい」「知りたい」「学びたい」という気持ちを重視した学習プログラムを展開しています。初めはあらかじめ設定したテーマに沿って調べるところから始め、段階的に情報の使い方やレポートの書き方の基本を学び、問題解決力を育てようという取り組みがされています。いずれは自分でテーマを決めて調査や分析を行い、自分の考えを発表するレベルまで指導することにより、膨大な資料から必要な情報を取り出し、解釈する力を育て、大学生や社会人になってからも役立つ21世紀型スキルを習得するような試みとなっています。
八王子中学校「探求ゼミ」
八王子中学校では、2016年4月から、「東大・医進クラス」を開設しました。少人数で行う「探求ゼミ」により、知的好奇心を育て、アクティブ・ラーニングにより理解を深め、表現力の向上を図っています。「探求ゼミ」では、課題解決能力・プレゼンテーション能力・論理的思考力の育成を目指し、中1では「調べる」、中2では「話す」、中3では「書く」をそれぞれの学年の目標に設定しています。各学年とも前期・後期それぞれの課題を研究し、プレゼンテーションを行うという学びを行っています。
アクティブ・ラーニングでは、教師が一方的に授業を行うのではなく、生徒同士が教え合ったり、ディスカッションしたりしながら理解を深め、課題研究や発表を行うことによって知識の定着と表現力の向上を目指しています。先ほど言及した「探求ゼミ」により3年間かけて、一方的な講義では得ることのできない課題解決能力、プレゼンテーション能力、論理的思考力などを身につけさせる狙いをもち、学習を進めています。電子黒板や1人1台のタブレット授業も行っています。
上野学園中学校「上野公園フィールドワーク」
芸術・文化の中心と言われる上野公園の近くに学校があるという地の利を活かした取り組みを行っています。東京国立博物館や国立科学博物館、国立西洋美術館などの施設を活用し、「理科」と「社会」のフィールドワークを行っています。テーマ設定、情報収集、研究、見学、レポート作成、発表などを通して、課題を発見する力やプレゼンテーション力を育成することを目的としています。
中学1年生では「サイエンスプログラム」として、国立科学博物館や上野動物園を舞台にして、課題解決型学習を展開しています。「なぜ」「どうして」という、科学への関心を育てる取り組みが行われています。また、中学2年生では「ソーシャルプログラム」として、上野公園の歴史や文化に目を向けた学習を行っています。江戸時代には「寛永寺」を中心に庶民に親しまれ、明治以降に多くの文化施設が作られ、多くの人が集う公園となっている上野公園を舞台とした歴史の転換点や地理的役割を探求する学習が行われています。
その他、浅草に行って外国人観光客に英語でインタビューをする「Trip to ASAKUSA」というアクティブ・ラーニングも行われています。学習した英語を、実際に外国人観光客にインタビューすることによっていかに活かせるか、どのようなコミュニケーションがとれるのか考えながら、英語に親しむ取り組みをし、その後の英語学習の意欲向上を目指しています。また、ひとり一つの楽器を選び、専門の先生から指導を受け、人が奏でる音色に耳を傾ける力、自分の音色を調和させていく力を養い、協調性、感受性を育む取り組みなどが行われています。
アクティブ・ラーニングへの取り組みは学校によって様々
アクティブ・ラーニングへの取り組みは各中学校によって様々です。しかし、問題点を発見し、調べ、考え、試行錯誤する力や表現力を養うという点では共通していることも多くあります。そのような力は中学生活だけでなく、大学生や社会人になっても必ず役に立つ力であるはずです。今後大学入試で問われる「思考力、判断力、表現力」を養い、さらに個別選抜で問われる「主体性・多様性・協働性」を身につけ、問題を解決していく力を身につけていく、その過程においてどのような取り組みを各学校がしているのか、そしてその目的が明確なのかどうか、それが中学校選びのポイントの一つになっていくと考えられます。
ぜひ各学校の「アクティブ・ラーニング」への取り組みとその姿勢、具体性を良く見極める視点をもって学校説明会などの行事に参加し、お子さんの力を伸ばしてくれる環境の整った学校選びの参考にされることをおススメします。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。