中学受験をするか、それともしないのか・・・なかなか決めきれない、というご家庭は少なくありません。中学受験をするために学ぶカリキュラムは4年生から本格的にはじまるので、早く決めなければ、でも決め手がなくて迷っている、というケースも多いです。
そういうご家庭の中には、今は決められないけれど、カリキュラムがはじまるのでとりあえずは塾に入れて、受験するかどうかは後から決められるように、可能性を残しておきたい、とお考えの方も多いのではないでしょうか。
中学受験は本来、お子さんの将来の選択肢を広げるべく、お子さんの力を伸ばしてくれる中学校を目指してするものです。いわば、お子さんの幸せのために行うものです。ただし、小学生という受験生の特性から、お子さんの心身の成長と受験勉強が並行していくのが中学受験で注意すべき点です。
近年は中学受験をするお子さんが多いので、お子さんも塾に通うこと自体は抵抗感がないかもしれません。しかし、受験勉強は山あり谷ありです。つまずいたときに、目標がなければ一気にやる気を失い、成績も急降下ということになりかねません。だからこそ、中学受験をするなら早いうちに目標を定めておくことがとても大切になってくるのです。
中学受験の目標と言うと、やはり志望校の存在は非常に大きいですね。ただし、まだあまり学校見学などもしておらず、どこがあっているのかわからないということも多いでしょう。そこで、受験勉強をはじめて、親子で学校を見に行ったりしながら徐々に目標を固めていく、というのもひとつの方法です。いわば、受験勉強をすることから、「あの学校に行きたい」という目標を設定し、意欲を引き出すという作戦ですね。
今回は、中学受験の目標と志望校を決めるタイミングについて考えてみたいと思います。これから中学受験をお考えのご家庭、中学受験をすることは決めているけれどどのタイミングで志望校を決めたらいいのかわからない、そんな方はぜひ参考にしてください。目標が定まると親子でそれに向かっていくことができます、そんなきっかけにしていただきたいと思います。
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とりあえず4年生から受験勉強を始めてみる選択もあり
一般的に、中学受験の本格的なカリキュラムは、小学校4年生からはじまります。厳密には2月が新学年の切り替わりなので、3年生の2月から本格的にはじまります。塾のカリキュラムもそうですし、毎週のようにある週例テストなども4年生から本格的にはじまります。塾によって異なることはありますが、現在は多くの塾が4年生と5年生で受験のカリキュラムを一通り終えて、6年生からは総合問題や融合問題、秋からは志望校の過去問を解くなど、総仕上げと志望校別の対策をしていく、というのがオーソドックスな受験勉強のコースです。
ただし、中学受験生は小学生です。精神的に大人びているお子さんもいらっしゃいますが、基本的にはまだまだ成長途中であり、その成長度合いは個人差が非常に大きいです。そして、その成長と受験勉強が並行して進んでいくため、うまくいかないことも出てくることはよくあることです。特に男のお子さんに多いのですが、精神的に幼い傾向があるお子さんにとっては、受験勉強はなかなかハードルが高いかもしれません。そのようなお子さんの様子をご覧になる保護者の方からすると、「3年生の2月から受験勉強なんてできるのか」と心配を抱きながら見切り発車する、という怖さがあるかもしれません。
ご家庭によってお考えに違いはあると思いますし、それに従って基本的には良いのですが、中学受験を視野に入れているけれどまだ迷っている、という状況であれば、3年生の2月、つまり4年生のカリキュラムがはじまる時期から中学受験の勉強に取り組んでみることをおすすめします。それには理由があります。
ひとつには、受験カリキュラムは3年間にわたって考えられているので、途中から入った場合、その前にすでにほかのお子さんが学習済みのところを自力で何とか埋めなければいけないことになるため、そこに労力を割かなければならず、毎週の学習が大変になってしまうことが挙げられます。なかには5年生から受験勉強をはじめて合格していかれるお子さんもいらっしゃいますが、その場合は塾に通わず、自力で市販のテキストなどで4年生の範囲はきちんと学習している方がほとんどです。まったくゼロの状態から受験勉強をして合格するのは、5年生からだと非常にハードルが高くなるでしょう。
また、そういったカリキュラムの都合以外にも「まずはやらせてみる」ことの効能があります。3年生の2月、つまり9歳から10歳にかけては、お子さんの知的好奇心が非常に旺盛な時期であり、思考力、何かについて自分なりに考えてみる力が大きく伸びはじめる時期なのです。
小学校での学習をみると、3年生からは理科や社会の学習がはじまり、科学的なものの考え方に触れる機会が増えてきます。これは日本だけではなく、海外でも同じです、イギリスのプレップスクールやドイツのギムナジウムといった高等教育学校を目指す中等教育がはじまるのも、10歳が適当とされています。つまり、4年生に上がる時期は、本格的な思考力を使いながら行う学習をはじめるのに適した時期だと言えるのです。
こうしたことからも、4年生になるタイミングというのは、本格的な学習をはじめるのに適している時期だと言えるのです。もちろん、受験勉強に限らず、何かについて深く学ぶ機会、手段はほかにもいろいろあるのが現実です。そのなかでも、さまざまな知識や思考法に触れていく中学受験の勉強は、お子さんの学習習慣の動機づけとして非常に有効だと言えるでしょう。
また、受験カリキュラムでも4年生は、受験勉強の基礎基本を身につける時期なので、いきなり入試直結の難しい内容を無理に勉強する時期ではありません。そのため、「知らないことを知ることができて楽しい」という、勉強を楽しみながら興味の範囲を広げていくというスタンスで学習できる学年なのです。ですから、受験勉強をはじめるならこのように気軽にはじめられる4年生が最適だと言えるでしょう。
学習内容もそれほど難しくなく、時間的な拘束もまだそれほど多くはありませんし、塾の費用もまだそれほど高くありません。すでに中学受験を決意されている場合はもちろん、まだ迷っている状態であっても、お子さんに刺激を与え、一歩踏み込んだ深い学びをさせたいとお考えなら、勉強のペースメーカー代わりに受験勉強をはじめてみるのもひとつの方法です。中学受験塾やカリキュラムに沿った家庭学習をはじめてみることをおすすめします。
もし、公立中高一貫校を志望校の一環に考えていらっしゃる場合は、小学校の教科書や学習内容から大きく離れる内容は出題されませんが、適性検査でデータの分析や自分なりの考えをまとめて「書かせる」問題が出題されます。独特の思考力・表現力が要求されるので、知識だけの勝負というわけにはいきません。そのため、準備期間のことも考えるとやはり4年生から対策をはじめてみることが良いでしょう。
4年生で好きや得意を見つけられると選択肢が広がる
このように、とりあえず4年生から受験勉強をはじめてみることは時期的にも適していると言えるでしょう。そこで意識していただきたいのは、4年生の学習においてとても大切なことは、お子さんの「好きなこと」や「得意なこと」をたくさん発見してあげる、ということです。保護者の方が発見してあげること、そしてお子さん自身が自覚することが大切です。
2020年の大学入試改革は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で初年度から打撃を受けることは間違いないでしょうが、その潮流は続いていきます。そのため、大学入試改革を意識して、中学入試の現場での選抜方法も非常に多様化しています。公立中高一貫校ではじめられた適性検査を取り入れた適性検査型入試や算数1教科入試、英語を受験科目に導入する中学校も増えてきています。また、プレゼンテーション型の入試も注目を集めています。
プレゼンテーション型入試は、大学入試のAO入試で多く利用されてきた方式ですが、自分の得意分野、注目することについて自己アピールして、試験官の前で発表し、自己アピールするという入試です。このような入試が注目を集めているのは、自分なりの興味や関心を持っていることを軸にして、それについて思考を深めていけるような、主体性のある生徒に集まってきてほしい、という中学校側の意図もひとつの要因です。このような生徒のすがたこそが、大学入試改革で求められているひとつの形とされています。
好きなこと、得意なことの自覚があれば、それを入試で活かせる可能性があるのもプレゼンテーション型入試が注目を集めている原因です。もし、スポーツや音楽など、お子さんが熱心に取り組んでいる習い事や趣味があるなら、4年生の間はぜひ続けることをおすすめします。
また、もし英語に興味を持っているのなら、中学受験までに英検2級をとっておくと入試でも役立ちますし、今後の英語学習に抵抗なく進んでいけるので、受験勉強と並行して取り組んでも良いですね。習い事についてはいつまで続けるのか、というのは今後の悩みのひとつになる可能性がありますが、4年生ならモチベーションを維持するためにも続けてみると良いでしょう。
負荷のかけ過ぎは意欲をそぐので注意
4年生から中学受験の勉強をはじめるなら、まずは好奇心を刺激し、勉強が楽しいと思える環境を作ってあげて適性を見極めることからはじめましょう。そのうえで、どういった中学校の、どのようなスタイルの入試を目指すのがいいのか、情報を集めながら方針を立てていくことをおすすめします。この段階では、まだ志望校はここでなくてはいけない、といったように決めつけるのではなく、むしろ選択肢の幅は広げておくことが大切です。
お子さんの可能性は無限大です。また、受験勉強が進み、小学校の学年が上がるにつれて興味の対象も変わってくることもあるでしょう。だからこそ、今後の成長に合わせて最終的に志望校を絞っていくほうが現実的な選択ができます。
4年生で学習する教科としては、算数、国語、理科、社会の4科がありますが、特に算数と国語は4年生の基礎基本学習が非常に重要です。特に中学受験の算数は受験算数とも言い、非常に特殊です。小学校では学習しないような特殊算がたくさん出てきますし、図形問題も複雑で難しいです。また、比や速さなどの概念の理解もなかなか大変なので、カリキュラムに遅れないことが大切です。そして、4年生の間は計算力を完璧にしておきたいところです。ゲーム感覚でも良いので、毎日計算問題に触れ、四則計算をマスターしておきましょう。速くて正確な計算力こそ、受験算数の基礎基本です。おろそかにせず、しっかり力をつけておきましょう。
また、国語については、読書量が読解問題対策において非常に重要です。男のお子さんはあまり読書が好きではないケースが多いので、興味のあるテーマの本をさりげなく机に置いておいて、手に取るような環境を作っておくと良いでしょう。また、親子で一緒に毎日少しずつ読書するのも良いですね。その際には、その日に読んだ内容を一緒に確認して、感想を言い合うと「身につく読書」ができますよ。女のお子さんは、読書は好きということが多いですが、最近よく出ているひらがなばかりのファンタジー小説ばかり、という読書は中学受験対策としてはあまりおすすめできません。できれば、世界や日本の文学全集の中から、同世代の主人公が出てくるような物語などを選んで読んでみると良いでしょう。
理科や社会は、5年生になると本格的な学習がはじまります。4年生の間は、理科や社会が「嫌いにならないように」することが大切です。理科や社会は、好奇心あってこそ伸びる教科です。たとえば博物館に出かけたり、ご家庭で図鑑や参考書などでいろいろな植物、動物についての知識を得たり、日常生活の中で見かける植物や飼っている動物について詳しくなったりするのが手軽にできておすすめです。楽しみながら少しずつ興味を広げていくのが4年生にはちょうど良いでしょう。
また、子ども新聞やテレビのニュースなどを利用するのもおすすめです。理科も社会も近年時事問題の出題割合が増えています。そういったことは6年生の最後に詰め込もうと思ってもそうそうできるものではありません。いま、世の中で何が起こっているのか、日本では、世界では、そういった興味こそがお子さんの思考力を伸ばします。ぜひご一緒にニュースに触れ、その内容について確認し、親子で意見を話し合ってみてください。その習慣が5年生、6年生になってからの学習に非常に生きてきます。
受験勉強をはじめると、保護者の方のほうが肩に力が入ってしまい、「あれも、これも」と手を広げてしまいがちなのですが、そこは注意しましょう。学習の難易度や量がお子さんに合っているか見極めることが必要ですが、それはお子さん自身にはなかなかできないことですので、保護者の方の出番です。
塾の授業やテキストの内容が難しすぎると、お子さんはだんだんできない問題が増えてきてしまい、勉強に対するモチベーションが下がってしまうことがあります。そこで勉強自体が嫌いになってしまっては中学受験どころではなく、知的好奇心も失ってしまうので本末転倒です。
大手の集団塾、特にサピックスは進度も速く内容も難しいですが、それをすべてやり切りなさい!とあれもこれも指示しすぎるのは4年生の間は避けたほうが良いでしょう。もし難易度の高い集団塾に通わせるのであれば、「今できないところはどこか」を保護者の方が把握しつつ、「ここをこうするとできるんじゃない?」「テストの順位は気にしなくていいよ。できなかったところはこれからできるようになればいいよ」とフォローしてあげることが勉強嫌いにしないポイントです。
受験勉強を実際にするのはお子さんです。保護者の方が代わりにやってあげられるものではありませんし、知識を覚えるのも問題を解くのもお子さんだということを忘れないようにしてください。保護者の方が成績に一喜一憂すると、お子さんは勉強の本来の面白さを忘れ、保護者の方の顔色ばかり窺うようになってしまいます。それでは、「知らないことを知ることができてうれしい」という、勉強に対する興味を失ってしまうので、そういったことは避ける方が賢明です。ぜひ意識してください。
近年の受験校選びの傾向
これまでさまざまなご家庭の進路相談、志望校選びのご相談を受けてきましたが、女子校が共学校になったり、附属校になったり、入試の形態が変わってきた理といった要因もあってか、従来に比べて教育内容やお子さんとの相性などを重視して志望校を選ぼうというご家庭が増えてきているように感じます。
もちろん、成績が非常によく、ご両親が出身だからという理由で御三家など難関校を最初から決め打ちで志望校にされるご家庭もありますが、お子さんがそれで納得しているのならそれはそれで決して悪いことではありませんし、ご両親と同じ学校に行きたいという気持ちはお子さんなら誰でも持つものなのでひとつの選択肢として考えて良いことです。
受験校の幅が広がっていることは、英語教育やグローバル教育、大学入試改革に合わせたアクティブ・ラーニングの重視など、さまざまな方向性を打ち出している新興校に魅力を感じるご家庭もあれば、やはり伝統的な教育方針に共感し、わが子を通わせたいというご家庭もあることからも実感できます。また、面倒見が良い学校がいいのか、それとも自由な校風で生徒がのびのびとしている学校がいいのか、というどのような学生生活をお子さんに送らせたいのか、という視点によっても選び方は変わってきます。ここはご家庭の教育方針によって判断が分かれるところですが、共通するのは「わが子の力を伸ばしてほしい」「わが子に合った学校に行かせたい」という気持ちでしょう。
4年生で受験勉強をはじめたら、ひとつ志望校を念頭に置くとモチベーションアップにつながることがあります。目標があると、それに向かって頑張ろうという気持ちに自然となることができるからです。ただし、まだお子さんが自分からどの学校に行きたい、という意見を言うのは難しい年頃ですから、どちらかと言うと保護者の方がわが子を通わせたい学校を「憧れの志望校」として、目標にして受験勉強を進めるケースが多いのではないでしょうか。
この時点では、やはり男女御三家やそれにつぐ難関校、いわゆるブランド校を目標にされる方も多いです。学校の実際の様子などを知っていくのはそれからで構わないので、まずは目標として高めの学校を掲げてみても良いでしょう。ただし、そこに執着しすぎないことが4年生の段階では重要です。
5年生になると、一気に受験勉強の内容が難しくなります。そこで壁にぶち当たってしまい、受験勉強に意欲を持てなくなってしまう受験生が増えてしまうことが良くあります。そうすると、保護者の方には2つのパターンが出てきます。ひとつは「それでもブランド校」という方、もうひとつはお子さんの学力を踏まえて現実的な志望校を考えはじめたり、第一志望校はそのままに、併願校として現実的な学校を選ぶというケースです。
5年生になるとさまざまな学校の情報が入ってくるようになりますから、偏差値やネームバリューといったいわば「学校の外側」だけでなく、「実際に入学したらどうなのか」という、学校の教育方針や内容など、「学校の中身」にも目を向けて受験校を検討するというご家庭が増えてきます。
さらに6年生になると、毎月のように模試を受けるようになり、合格可能性が出る模試も増えてきます、そういったデータも加味しながらお子さんの学力を見極め、より現実的なプランを考えながら軌道修正していく、というのがスタンダードです。
もちろん、この段階で厳しいかな・・・と思っても、受験生は入試前日まで実力が伸びます。ですから、チャレンジ校を第一志望に据えたままにして、とりあえず6年生の夏期講習が終わる時点をめどとして目標を変えない、ということも大切です。超難関校の場合、集中力が切れてしまうと現実的な目標ではなくなってしまうこともありますが、目標があってこそ頑張れるのがお子さんの強いところです。その気持ちを第一に考えて、保護者の方がサポートしていくことが大切です。
そして、9月以降の合不合判定テストや志望校別模試の結果を見ながら、塾の先生との面談を重ね、だいたい11月下旬から12月上旬ごろをひとつのめどとして最終的な志望校と併願校を決めていく、というのが現実的なプランでしょう。第一志望は譲らず、第二志望などの学校でも「わが子を通わせたい」「通わせても良い」と思える学校をいくつ見つけられるかが、保護者の腕の見せどころです。
早めに併願校の候補を見つけておくことも重要
志望校・併願校を選ぶ際に絶対に避けていただきたいのは、6年生の秋以降の塾の面談で、志望校や受験校の変更を提案され、その学校について何も情報がないことにあわててしまうことです。塾がそういった提案をする場合、基本的には模試の偏差値や合格可能性のデータを基にしていることが多いので、それだけに振り回されるべきではありません。
また、それまで第一志望校のことばかり考えていたため、志望校を変更した方がいいとアドバイスされたときにショックを受けてお子さんを責めてしまったり、そうした提案を受け入れられず「これからがんばればなんとかなる」とお子さんに無理を強いてしまったりするケースがあります。これは何としても避けたいことです。
お子さんは、6年生の秋ごろには4年生のころからだいぶ成長し、ほかのお子さんと自分の学力を比べたり、クラスを気にしたりしています。自分の力も良くわかってきています。それでももともとの第一志望校にチャレンジしたい、とお子さんが言うのなら、やはりそれは尊重し、併願校で調整することをおすすめします。
お子さんの学習のモチベーションは志望校という「目標」があるからこそ保たれています。それを取り上げてしまったり、そこに届かないからといって責めてしまっては、お子さんの気持ちは萎縮してしまいます。また、保護者の方の期待に応えたいというのもお子さんの素直な気持ちなので、あまり責められると精神的に追い詰められてしまい、成績が上がらない自分を責めてしまい、さらに成績が下がるという悪循環に陥りかねません。
そうなっては、本来お子さんの将来、幸せのためにはじめたはずの受験勉強がつらい思い出になってしまいます。それでは本末転倒ですよね。お子さんとよく話し合い、やはり第一志望校はそのままにして併願校をいろいろ考えてみる、あるいは併願校として考えていた学校に魅力を感じているのでそこを第一志望校にする、などの柔軟な対応がとても大切です。塾のアドバイスはデータからくるものと割り切り、実際にお子さんが行きたい、保護者の方が通わせたい学校の中から受験校を再検討することをおすすめします。
中学受験は3年間にわたる長期戦です。ネームバリューだけを重視して「この学校だけしか受けない」「行かせない」という姿勢では、親子ともに疲弊してしまい、大切な直前期の勉強に影響が出かねません。そういった状況は避けたいものです。
そのためにも、志望校以外に、「この学校なら確実に受かりそうだし、校風も良いので通わせても良い」という学校を早めにいくつか見つけておくことがとても重要です。そうすると親子で精神的にも余裕を持って直前期の勉強に取り組めるでしょう。そういった学校を見つけられるかどうかは保護者の方主導で行い、お子さんに「こういう学校があるよ」と早めから伝えておくと良いでしょう。
保護者主導で受験校をいくつか見つけるためには、できるだけ早めに、お子さんが4年生、5年生のころから、いくつもの学校の情報を集め、できれば学校説明会などに参加するなど実際に学校に足を運んでみることをおすすめします。そして、いろいろな情報を集めたうえで数校併願校を選んでおきましょう。学校説明会などに6年生のギリギリになってから足を運ばれるご家庭もあるのですが、できれば5年生までに足を運んで余裕を持って選ぶ材料としておくことをおすすめします。
今年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で説明会はオンライン開催のみ、という学校も多いですが、個別見学を申し込むと一定の場所までなら見学させてくれるケースもあります。てんびんにかけなければいけない要素がいろいろありますが、情報をしっかり集めて、冷静に押さえの学校、併願校を確保しておくという方向性を持つことが大切です。
まとめ
中学受験をするべきかしないべきか、どの学校を第一志望校にするか、といったことはお子さんの学力とご家庭の教育方針が決定的な要素になります。そして、お子さんの勉強のモチベーションは、第一志望校という「目標」に左右されます。
ですから、目標を一度決めたら毎月のようにふらつくことは保護者の方も避けたほうが賢明です。どうしても模試の結果などを見ると決心が鈍ることがあるかもしれませんが、志望校を一度決めたならやはりそれに向かってモチベーションを保ちながら受験勉強に取り組みつつ、保護者の方が「わが子を伸ばしてくれそうな学校」をいくつ見つけることができるかが重要です。
おおむね第一志望校は5年生の夏頃にいったん設定すると良いでしょう。その時点で少し実力からするとチャレンジ校であってもかまいません。お子さんの実力は努力に比例して伸びるからです。ただし、そこに執着しすぎるのではなく、併願作戦も5年生のうちに考えておくことをおすすめします。ただし、お子さんに「ほかにも学校があるからいい」と言ってしまうとモチベーションが下がるので、それは保護者の方で握っておいて、まずは親子で第一志望校をしっかり狙って受験勉強をしていく姿勢が大切です。
お子さんの可能性は無限大です。どのような学校に行ったらわが子はどうなるかな、と将来性を楽しみに、さまざまな個性ある学校の情報をしっかり集め、お子さんの勉強の状況をにらみながら志望校・受験校を決めていきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。