いよいよ12月に入りましたね。どこの学校を受験するか、複数回受験を行っているところをどう組み込むか、など、受験スケジュールを本格的に立てていらっしゃる時期だと思います。
近年では、4教科入試や2教科入試に加えて、さまざまな入試形式を取り入れている中学校が増えてきています。特に、公立中高一貫校が開校してからは、その傾向が顕著になってきています。
今回は、そのような、さまざまな入試形式を取り入れている学校の1つとして、聖学院中学校をご紹介していきたいと思います。
Contents
学校の沿革・環境について
- 1993年、聖学院神学校として設立されました。
- 学校の所在地は、東京都北区中里3-12-1。JR山手線駒込駅東口から徒歩5分、東京メトロ南北線駒込駅3出口から徒歩7分という好立地。
- 隣接して、聖学院幼稚園、聖学院小学校、女子聖学院中学校・高等学校があり、落ち着いた文教地区の中にある。
- 現在、中学生は各学年150名前後で、5クラスの編成
教育理念
キリスト教の精神に基づく3本の柱である、「人間教育」「学習指導」「体験学習」を根本とし、その中心に「Only one for others」(他者のために生きる人)という理念をもつ。「ナンバーワン教育」より「オンリーワン教育」を目指し、生徒一人ひとりのもつ個性を豊かに伸ばしていく教育を行っています。全人格的な成長をとげられるような教育を目指し、教員と生徒との交流を大切にしています。
そのような教育理念のもと、心身をおおらかに育み、知を磨き、今後ますますグローバル化が進む中、世界中でいきいきと活躍できる能力と自信を養うことをモットーとした教育を目指しています。
クラス編成の特色
「アドバンスト・クラス」と「レギュラー・クラス」の2コース編成をとっています。アドバンスト・クラスは、特待選抜入試に合格した生徒で構成されているクラスで、授業の内容、進度ともハイレベルなものとなっており、難関国公立大学、難関私立大学、医学部医学科進学を目指すコースと位置付けています。
レギュラー・クラスは、じっくりと無理のないペースで学ぶことを基本として、生徒一人ひとりの理解力に配慮しながら、個性や、その生徒の持つほかにない力を伸ばして志望大学に進学できる学力を養うコースとして位置付けられています。
2016年3月に卒業した生徒の4年制大学への進学率は約65%でした。
中学生は基本的には中学棟で学校生活を送ります。2階建ての体育館や、屋上運動場、966席もある講堂や、創立者の名前がついたH.H.ガイホールなど、都心にありながらも男子がのびのび学校生活を送ることができるような施設が充実しています。
特徴的な教育としては、さまざまな知識を自分から取り込み、試行錯誤しながら思考力を深めていく経験を積むために、小論文を活用する、「小論文指導システム」を導入しています。今後行われる予定の大学入試改革では、「表現力」が非常に重視されるようになってきます。それを意識しつつ、さらに起承転結を自ら考え、問題解決の方法をそれぞれが考えるという教育は特徴的です。
2018年度入試情報
2018年度は、2017年度から大きな変更が2点あります。
- 一般入試を、2017年度の1回から2回に増やす
- 思考力テストの種類を3種類に増やし、「難関思考力」入試を新設
【試験日程・科目】
1.2月1日
- 第1回一般入試(午前) 2科・4科選択 募集人員60名。
- 英語選抜(午前) 英語の筆記試験と面接。英検3級以上の取得が条件。英検準2級以上またはTOEFL Junior670点以上の取得者は、筆記試験は免除され、面接のみ。募集人員5名。
- 第1回特待・アドバンスト入試(午後)2科・4科選択 募集人員30名。
2.2月2日
- 第2回一般入試(午前)2科・4科選択 募集人員20名。
- 思考力入試ー思考力・ものづくり(午前) 募集人員10名。
- 第2回特待・アドバンスト入試(午後) 2科・4科選択 募集人員15名。
- 思考力入試ー思考力+計算力(午後) 募集人員15名。
3.2月3日
- 第3回特待・アドバンスト入試(午後) 2科・4科選択 募集人員10名。
4.2月4日
- 難関思考力入試ー思考力+面接(午前) 募集人員5名。
偏差値(2018年度予想偏差値)
首都圏模試の偏差値では、一般入試:43、特待・アドバンスト入試:46(第1回)
※偏差値は、母集団によって異なるので参考としてください。
2018年度聖学院中学校の入試の特徴
一般入試の回数が1回から2回に
さきほども書きましたが、2018年度の入試では、一般入試が1回から2回に増えます。これは、2017年度に一般入試を1回にしたところ、2回目を受ける生徒は、学校側が想定していた特待・アドバンスト入試ではなく、思考力入試の方に流れたため、2018年度は一般入試を2回に増やしたということです。また、学科試験と思考力試験では、対策がかなり異なることになるので、一般入試を増やしてほしいという要望が多く、それにこたえたという理由もあるそうです。
入学試験の種類は3つ
聖学院中学の入学試験は、以下の3種類があります。
- 一般入試
- 思考力入試
- 特待・アドバンスト入試
一般入試と特待・アドバンスト入試は、2科または4科選択の筆記試験で行われます。問題の難易度としては、一般入試で50点取れる生徒が特待・アドバンスト入試を受験すると20点から30点程度の得点になるように、作問の難易度を調整しているということです。
思考力テストは聖学院中学校の入試の中でも非常に特徴的なものですが、この思考力テストにも3種類あります。
- 思考力・ものづくりテスト・・・課題を与えて、それをレゴで作り、なぜそのように作ったのかを考えて文章で表現させるというテスト。「レゴ入試」として知られている。
- 思考力+計算力テスト・・・写真などを見て考え、意見を書くことに加え、基本的な計算力を見る問題を出題する。
- 難関思考力テスト・・・2018年度新設。ものづくりテストと計算力テストをプラスしたような入試を想定している。写真、図、グラフを見て課題を発見し、レゴでそれを作り、最終的には文章でそれを表現するテストになる予定。
難関思考力テストは2018年度に新設されますが、「考えること」に特化した入試になる予定なので、考えることの好きな、得意な生徒に受験してほしいと学校側は考えているそうです。ただし、求められる内容が特徴的なので、受験生が大量に集まるとは考えていないため、募集人員も押さえているということです。
思考力テスト、特に難関思考力テストは、公立中高一貫校との併願者を受験者層として見込んでいるということです。思考力・ものづくりテストや計算力テストについても、公立中高一貫校のプレテスト的に受験してもらえるような出題を考えているということです。
聖学院中学校の思考力入試が目指すものとは
聖学院中学校の思考力入試は、ずばり2020年の大学入試改革を意識しているということです。思考力・ものづくりテストは、レゴを使っているものの、レゴで作った作品の評価をするわけではなく、観察力や、理科、社会に対する興味、いまの世の中の状況や時事問題に対する関心と、その解決方法を自分なりに考えているかどうかを見たいというのが思考力入試を行っている意図だということです。
思考力入試では文章を書きますから、国語の能力、語彙力や表現力も必要ですし、計算力テストでは計算を速く、正確にする力も必要になります。基本的な知識がなく、ぶっつけ本番で受験しても合格できる入試ではないので、「思考力」や「ものづくり」ということばだけを意識するのではなく、基本的な受験レベルの知識をしっかり身につけて受験してもらいたいと考えているとのことです。
入学後はどんな学校生活が待っているのか
大学進学実績は伸びてきており、2017年度は医学部医学科に9名合格し、早稲田大学、慶応大学の合格者も過去最高を記録しました。
部活動は、体育系が12、文科系が7、同好会が3と、どちらかというと運動系の部が人気で、ラグビー、サッカーが特に人気を集めているということです。部活と学業の両立に積極的に取り組んでいる生徒ほど、生活態度や成績にも良い結果が出ているので、入学したらぜひ頑張ってほしいと先生もおっしゃっていました。
放課後や長期休暇の補習(夏季勉強合宿、サマーセミナーなど)や、アメリカへのホームステイ、オーストラリア語学研修も行われています。
生徒の学習姿勢の変化
これまでは、テストで不合格だと強制居残りをさせていたそうですが、それを2017年度からは、自分で計画を立てて勉強させるように切り替えたということです。目標を設定させてテストを受け、テストで目標達成ができなかった場合には、それがなぜなのか、何が自分には足りなかったのかを生徒自身に検証させ、「自分との対話」を大事にして学習するという姿勢を身につけさせたいという方向に転換したということです。
いわゆる「PDCAサイクルの実践」を、中学・高校のころから身につけ、自己肯定感を持たせたいと考えての方針転換です。大人になっても大切な視点なので、早いうちから体に叩き込んでいきたいと学校側は準備をさらに進めているということです。テストの1週間前になると中学1年生には自習室を開放し、教員とチューター2,3名が個別指導を行ったり、学習計画の立て方の相談にのる態勢を整えています。
アドバンストクラスと、レギュラークラスに分かれているが、近年レギュラークラスの生徒の頑張りが良くなってきていると教員が感じているとのことです。自分の現状をしっかり把握し、計画を立てて勉強するという姿勢ができてきており、いい意味での競争原理が働いているのではないか、と考えており、このペースを大切にしていきたいと学校側も力を入れています。
聖学院中学が目指す生徒像とは
入試広報の先生もおっしゃっていましたが、聖学院中学校としては、何に対しても積極的に取り組み、頭をつかうことのできる、自律的・能動的に「できる男」を育てたいというのが、学校での教育の目標だということです。アクティブ・ラーニングにはとても積極的に取り組んでいる聖学院中学ですが、単なるグローバル化やICTといったことばに踊らされるのではなく、本質的な自律・能動的な行動ができる生徒を1人でも多く輩出していきたい、そのように考えているということでした。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。