今回の記事は日本全国に存在する工業地域・工業について一つずつご紹介していくシリーズの第3本目,東海工業地域編になります。
日本全国にはたくさんの工業地帯・工業地域が存在しますが,それらについて細かいことまで覚えていくのは難しいです。しかし中学受験でこの範囲は必ず問われます。
そのためこのシリーズでは,それぞれの地域の特徴を簡単にわかりやすくまとめていきます。前々回は瀬戸内について,前回は関東内陸について解説しましたので,よろしければそちらもご確認ください。
Contents
場所は?
まずは東海とはどこか,ということについてお話ししていきましょう。これまでに扱った瀬戸内・関東内陸という地域はある程度イメージしやすいですが,東海という単語から特定の場所を思い浮かべることは難しいかもしれません。
また他の漢字二文字である中京・京浜などとも混ざりやすいため,正確に場所を把握しておく必要があります。
次の地図の青く塗られている部分は東海工業地域の大雑把な範囲になります。オレンジ色の点は代表的な都市を表しており,()の中身はそこで栄えている産業を意味します。都市の名前まで覚えておくといいでしょう。
この地図からわかるように,東海工業地域とは主に静岡県の海沿いの部分を指します。東海という名前は昔の日本に存在した東海道という道に由来します。由来までは覚えなくてもいいですが,なんとなくの地域を頭に入れておきましょう。
ここで気をつけて欲しいのはこの東海工業地域が,東海エリアという言葉が指す地域とは違うということです。東海地方と言われたとき,そこには静岡だけでなく愛知・岐阜・三重なども含まれますが,この3県は中京工業地帯という別の工業地帯に含まれます。特徴もやや似ているため,正確に区別しておいてください。
工業の特徴は?
それではここからは東海工業地域の工業の特徴について眺めていきましょう。前々回の瀬戸内工業地域編・前回の関東内陸工業地域編でもお伝えした通り,工業地域・工業地帯の特徴を掴む上で大切なことは,工業製品出荷額と種類ごとの出荷額割合を眺めることです。
これらのデータを見ることで,その工業地域・工業地帯でどれくらいモノが作られているのか・どんなモノが盛んに作られているのかを理解することができます。そのため以下では。出荷額→盛んな種類の順で,東海工業地域の特色を見ていきましょう。
出荷額について
まずは東海工業地域の出荷額について確認していきましょう。下の図は全国の工業製品出荷額に占める工業地帯・工業地域のグラフです。
日本全国ではおよそ32兆円もの工業製品を出荷していますが,そのうち各工業地帯・地帯がどれくらいを抑えているのか,が読み取れます。このグラフで左側にあればあるほど,たくさんモノを作って売っていることになります。青く塗られた部分が東海工業地域を示します(データは教育出版株式会社からの引用です)。
このグラフから分かるのは,東海工業地域の出荷額は全国の約5%を占めていて,全国で第6位となっているということです。中京・阪神などと比べると見劣りしますが,それでも5%というのはインパクトのある数値ですよね。
東海工業地域の割合は他の地域の割合と近い数字になっているわけではありませんので,調査年度による順位の違いなどはあまり気にしなくても問題ないと思います。グラフはシリーズを通して全ての回で載せていきますので,他の工業地域の順位や割合もセットで覚えてり,過去の回を思い出したりしていただけますと幸いです。
種類ごとの割合について
続いて東海工業地域の工業種類別の出荷額割合を見ていきます。工業の種類には,重工業と軽工業とがあり,細かく分けると金属・機械・化学・食料品・繊維などが挙げられます。これらの種類の違いについては第1回の瀬戸内工業地域編で詳しく解説しています。もし分からないこと・忘れてしまったことがあれば,そちらの記事を参照してください。
下のグラフは,全国と東海工業地域の工業種類別出荷額割合を比較したものになります。割合の数字が大きければ大きいほど,盛んにモノが生産されている産業を意味します(データは教育出版株式会社とHelloSchool社会科からの引用です)。
このグラフから分かる特徴として,機械の割合が高く,対照的に金属・化学の割合が低いということが挙げられます。この特徴のうちとりわけ割合の高いものを覚えておくことが大事です。今回の場合は機械産業が当てはまりますね。
東海工業地域は機械の割合が55.1%と,全国で最も割合が高いです。ちなみに第2位は前回取り上げた関東内陸工業地域になります(51.3%)。覚えておきましょう。
なお繊維産業については,東海工業地域の生産割合のデータが見つからなかったため割愛しました。おそらく全国・東海ともに1%ほどでそこまで変わらないかと思われます。
なぜ機械産業が盛ん?
ではここからはなぜ東海工業地域では機械類の生産が盛んなのか,について考えていきます。簡単にいうと,歴史のある世界的なメーカーが多いから,というのが機械の生産が盛んな理由となります。
日本で生産されている機械のうち最も主要なモノが輸送用機械です。輸送用機械とは,自動車やバイクなどの移動手段だと考えていただければ幸いです。この東海工業地域には,歴史のある有名なメーカーが多いです。
例えば浜松市のホンダ・磐田市のスズキなどが挙げられます。一度は聞いたことがあるでしょう。このように有名な輸送用機械のメーカーがあるので,東海工業地域は自動車・オートバイなどで有名になり,生産が盛んになりました。
メーカーが東海に集まっていた理由は特にないと考えられます。強いて言えば,生産が盛んで売れやすいから増えていった,という感じなのでしょう。そのため輸送用機械の生産が盛んだから機械の割合が高いと覚えておけば問題ありません。
その他の製造業について
ここからは上で挙げた機械産業以外に特徴的な産業をピックアップしていきましょう。機械類の生産が多い地域は他にもあるため,その他の製造業の部分で地域ごとの違いを捉えておくといいでしょう。
東海工業地域に関して覚えて欲しい産業は,楽器の生産と製紙・パルプ産業です。楽器に関しては,皆様ご存知のヤマハが浜松市創業なこともあり,「楽器のまち」「音楽のまち」づくりが進んでいるくらい東海工業地域では生産が盛んです。現に静岡県のピアノ出荷量・出荷額は日本一です。是非頭に入れておきましょう。
また製紙・パルプ産業も盛んです。パルプとは紙の原料になるものを意味しますので,まとめて紙を作る産業が栄えていると覚えてしまっても良いでしょう。この地域で神を生み出す産業が発達しているのは,富士山から水が豊富に採れるからですね。良い紙には良い水が必要不可欠,ということなのでしょう。日本では他に見ない産業ですので欠かさず覚えておきましょう。
工業以外の産業の特徴は?
以上が東海興業地域における工業・製造業の特色です。そしてここからは工業以外だとどんな産業が栄えているのかということについて確認していきます。工業地域の話なのになぜ工業以外のことを? と思われるかもしれません。
ここで様々な産業を一緒に取り上げる理由は,色々な要素を一気に覚えてしまった方が暗記の効率がいいからです。土地や機構の特徴が農業・漁業・工業に結びついたりしているので,物事を関連づけて覚えることができます。
もちろん優先して覚えるべきなのは工業についてですが,余裕のある人は下の文章を読んで勉強の参考にしていただければと思います。
農業の特徴
まず農業の特色についてみていきましょう。東海工業地域は静岡県の臨海部を指す,と先ほど説明しましたが,この地域は冬でも日が当たる時間が長く年間を通して温暖なことが特徴的です。そのためこの気候の特性を活かし,いろいろな農作物が育てられています。
中でもよく栽培されているのがお茶になります。読者の皆様にとっても静岡=お茶というイメージは多かれ少なかれあるのではないでしょうか。実際静岡における茶園の面積や茶の収穫量は全国の40%近くを占めています(データはマイナビ農業からの引用です)。
またみかんの栽培も盛んです。愛媛や和歌山の印象が強いみかんですが,静岡の特徴として覚えておいても良いでしょう。青島温州(あおしまうんしゅう)をはじめ全国に流通する品種がいくつもあるため,こちらも特領の一つとして頭に入れておいてください。
水産業の特徴
最後に水産業についてみていきましょう。東海工業地域,つまり静岡県は,黒潮が流れていたり海水と淡水(川の水)が混ざる漁場があったりと,豊かな魚介類の宝庫です。
中でも有名なのは,遠くの海まで船を出す遠洋漁業や沖合漁業で水あげされるカツオやマグロが有名です。その漁獲量は全国1位で,主要な特産物といえます。また養殖業も盛んに行われています。浜名湖のウナギの養殖をはじめ,カキやノリ,ニジマスなども養殖されています。
あまり聞いたことがないかもしれませんが,さくらえびやしらすも静岡の特産品の一つです。特にさくらえびは国内だと静岡の駿河湾でしか取れないので,メジャーなところではありませんが,余裕があれば覚えておきましょう。
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まとめ
今回の記事では東海工業地域における工業と農業と漁業の特徴についてまとめていきました。工業地域・工業地帯という分野は中学受験にほとんど必ず登場しますし,対策は欠かせません。
特に機械産業が盛んな東海をはじめとしたいくつかの地域はセットで出されることも少なくないので,記事を読み返してみたり参考書で勉強してみたり,比較しつつ知識を定着させていきましょう。本記事が今後の学習の手助けとなれば幸いです。