今回は詩の表現方法について、その中でも擬人法について詳しく説明していきたいと思います。
まず、擬人法とは比喩法の一種で人間ではないものを人間に喩えて表現する方法です。
例えば、「花が笑う」、「空が泣いている」という文を見てみましょう。実際は花が笑うことはありません。しかし「笑う」という表現を使うことで笑うように朗らかに咲いている花の様子が印象づけられます。
また空も実際には泣きませんが、空が「泣いている」ということで物悲しい空の様子が印象づけられます。
擬人法は、人間ではないものの動作や、性質、外観などを表現することができます。それぞれの場合について例を上げながら表現方法、効果を説明していきたいと思います。
動作
ペンを走らせる
…ペンが走っているかのようにスラスラと書けることを表現しています。この場合の動作の主体はペンではなく、ペンを持って書いている人物ですが、ペンが走るという人間のような動作をすることが表現されているので擬人法と言えます。
鳥が歌う
…鳥が歌うように鳴いていることで鳥のさえずりの軽やかさ、音の美しさを伝える効果があります。
性質
気のいい猫
…「気のいい」とは気持がすなおである。 気立がいい。 また、気前がいい。といった意味です。猫の性質を「気のいい」と人間の性質のように表現しています。
このテレビは気難しい
…「気難しい」とは独自の方法や考えにこだわり、扱いにくい性格などに使われる言葉です。テレビが「気難しい」ということはすなわち「扱いにくい」ということだと受け手に感じさせます。なかなか思うように作動しないテレビの性質が伝わりやすくなる効果があります。
外観
血の滴るやうな真赤な山の紅葉(太宰治『富嶽百景』)
…山の紅葉の赤さを「血の滴るやうな」と表現しています。血が滴るということは血が通っている人間に対して使われる表現ですが、山の紅葉に対してその表現を使うことで鮮やかな赤の色を強調し、印象づけます。
まるで王様のような犬
…犬の外観を王様のようと喩え、犬の堂々とした態度の大きい様子が伝わってきます。
【補足】
次の文章を見てみましょう。
のっそり突っ立っている富士山、そのときの富士はまるで、どてら姿に、ふところ手して傲然とかまえている大親分のようにさえ見えた(太宰治『富嶽百景』)
「富士はまるで」と「大親分のようにさえ」など比喩表現が使われており、擬人法を用いた表現ながら直喩表現も含まれた表現をすることもあります。
【プラスアルファ】擬人法で表現してみよう!
擬人法表現を使う対象は、人間ではないもの、すなわち動物や物などです。対象を決め、その対象のイメージに結びつく言葉を考えてみましょう。
例として「花」を使って考えてみましょう。花が咲いている様子を思い浮かべ、「笑っている」「すましている」「自信に満ちた」など様々なイメージが浮かぶでしょうか。
咲いている様子だけでなく、枯れている様子でも考えてみましょう。「泣いている」「今にも倒れそう」「沈んでいる」など。その様子や動作を対象である花と結びつけて表現することで擬人法表現にすることができます。