まずは用語と線分図の書き方をしっかり頭に入れよう!売買損益【基礎編】

売買損益とは中学受験に登場する文章題のうち,モノを売ったり買ったりするときに言うシチュエーションが想定された問題を指します。この問題は小学校や学習塾でも注目されることが多いのですが,使い慣れない単語が多く登場する分なかなか完璧にマスターしている人は少ないのではないでしょうか。そこで本記事では,売買損益について解説していくシリーズの第一弾として,基礎的な用語の意味や解き方をご紹介していきます。

売買損益とは?

それでは問題の分析や攻略法のご紹介といきたいところですが,まずは「そもそも売買損益とは何を指す単語なのか」ということについてお話ししていきましょう。この文章題の名前を解体すると,まずは「売」る・「買」うという漢字が見つかりますね。このことから先ほど述べたような,モノを買ったり売ったりするときの文章題だということがお分かりいただけるかと思われます。

そして残りの「損益」ですが,これは「損」をすることと利「益」を得ることを意味します。損失とは売れ残りやセールなどを原因としてお金が儲けられないことを,利益とは無事モノが売れて儲けが出るということを指すのですが,このように売買損益ではモノを売る側の事情が登場します。

そのため売買損益には,買う人と売る人は誰か・いくらで売っていくらの儲けが出たのか,などといった要素が必ず登場します。詳しい問題の構造は後述しますが,ひとまずはお金のやりとりに関する問題だとざっくり覚えてしまってもいいかもしれませんね。

売買損益の基本パターン!

ここからは実際に売買損益の問題をいくつか取り上げながら共通する特徴を抑えていくことにしましょう。問題の共通点や特徴を理解することで,実際の入試で出会う問題を「これは〇〇算!あれは□□算!」と分類できるようになり,答えをより簡単に導くことができるというメリットが生まれます。そのため,売買損益に限らず問題の構造や使われている用語などには日頃から注意していきましょう。

さて,話は戻って基本パターンですが,売買損益では以下の3題のような問題が登場する傾向が強いです。まずはご自分で読みながら,似ているところはどこだろうと考えていただけると幸いです。

ある商品に原価の2割増しの定価をつけ,それを定価の1割引きで売ったところ,640円の利益を得た。この商品の原価を求めなさい。

ある商品に原価の3割増しの定価をつけ,それを定価の2割引きで売ったところ,原価の4%の利益を得た。この商品の定価を求めなさい。

定価の2割引きで売っても1割の利益を出せるように,定価をつけた。定価は原価の何割増しか,求めなさい。

いかがでしょうか。なかなか見慣れない単語が多いかと思われますが,定価・原価・利益・損失・商品といった用語が登場する,その他だと〇〇割・〇〇%といった割合と□□円という金額の両方が書いてある問題は売買損益の計算と思ってしまっていいでしょう。

このように売買損益は問題文の構造が特徴的で,「これは売買損益だ!」と判定するだけならさして難しくありません。そして後述するように,解き方自体もそこまで複雑なことはしていません。そんな売買損益においてどの辺でつまずきやすいのかというと,やはり書かれていることの解読にあるでしょう。先ほども申し上げましたが,原価・定価といった言葉は日常的に目にするものではないです。少し覚えているくらいでも,これは原価だっけ?それとも定価だっけ?と悩んでしまい,最終的に答えまでたどり着けないケースが多々見受けられます。そのため,攻略法の前にそれぞれの用語の意味をきちんと抑えておく必要があるでしょう。

用語の確認① 定価

ということで,例題の中で登場したいくつかの難しい用語の解説を補っておきます。まずは定価です。これはモノが売られている通常の値段,つまり私たちがお店に支払うお金の額を指します。スーパーとかコンビニとかで,商品の近くに〇〇円と書かれた値札が置かれているのを見たことがあるでしょうか。そのときに書かれている数字がこの定価に相当するわけですね。そしてこのことから,定価が上がると言われたらモノが高くなる,反対に定価が下がると言われたらモノが安くなるということも分かります。パッと言われてもイメージできるようにしておきましょう。

用語の確認② 原価(仕入れ値)

続いては原価です。問題によっては仕入れ値と呼ばれることもあるこの原価ですが,これはモノを買ったときにお店が支払った金額・コストのことを指します。お店が払う金額ということで,この原価・仕入れ値というのは日常生活の中で少々見えづらいところにあります。その分覚えづらい用語でもあるでしょうが,問題の基本となる単語なのでしっかり頭に入れておきたいところです。

用語の確認③ 利益

3つ目にご紹介するのが利益です。利益とはお店が得た儲けのことを指し,どれだけモノを売ったかという収益からモノを作るのにどれだけお金を使ったかという費用を引くことで計算できます。本当は材料費の他にも人件費や土地代や税金なども関連させて計算するのですが,売買損益ではこれらを単純化して,定価から原価を引いて利益を算出します。中学受験では登場しないのですが,この利益は時に0より小さくなることもあり,利益が0より大きいときを黒字・利益が0より小さいときを赤字,と言ったりもします。

用語の確認④ 売価

お次に解説するのが売価です。この売価は実のところ,売買損益においてそこまで重要な単語ではないのですが,まれに問題文で使われることがあるので一緒に意味を確認しておきましょう。売価とは文字通り売るときの価格を指します。これだけだと定価と意味が同じように思えますが,定価はあるモノに対して最初につけられた値札に書かれている価格のことを指す一方,売価とは値引きなどによって定価を変更して売ったときの価格を指します。そのため通常は定価=売価という関係が成立しているのですが,値引きされると定価より売価が安くなり,反対に値上げされると定価より売価が高くなってしまいます。このような定価との意味の違いに注意して頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

用語の確認⑤ 〇〇%引き・〇〇割引き

続いては〇〇%引き・〇〇割引きという用語です。こちらは上の4つに比べて耳馴染みのある単語かと思われますが,計算のなかでどのように処理すればいいのか,が分かりづらいので取り上げていきます。まず大前提として,「引き」と書かれていること以上モノが安くなることを指します。ではどれくらい安くなるのかというと,〇〇%の場合は(100-〇〇)%の値段に,〇〇割の場合は(10-〇〇)割の値段になります。ぜひ覚えておきましょう。

用語の確認⑥ 〇〇%増し・〇〇割増し

最後にご紹介するのは「〇〇%引き・〇〇割引き」の反対である〇〇%増し・〇〇割増しです。こちらはモノが高くなることを指します。どのくらい高くなるのかというと,〇〇%増しの場合は元の値段の(100+〇〇)%の値段に,〇〇割増しの場合は(10+〇〇)割の値段になります。「引き」と「増し」は混合しやすいので,区別して身につけるように意識しておきましょう。

例題を線分図で解いてみよう!

さて,売買損益に特有の語句の解説が終わったところで,今度こそ攻略法のご紹介に移りましょう。前述した例題のうち一番上に挙げた問題を使いながら,どこに注目してどう計算すればいいかをお伝えしていきます。まずはもう一度例題を載せておきましょう。

ある商品に原価の2割増しの定価をつけ,それを定価の1割引きで売ったところ,640円の利益を得た。この商品の原価を求めなさい。

ステップ① まずは線分図に整理しよう!

まず問題を見て大切なことは,原価・定価・○○割引きといった語句をきちんと整理して分かりやすくすることです。慣れてきたらいきなり計算に進めるでしょうが,ほとんどの人は難しい単語ばっかりで頭が追いつかないかと思われます。そんなときのために使えるテクニックが,これまで様々な記事で登場してきた線分図です。

さて,売買損益における理想の線分図は,原価の線分を中心に定価・売価を書くというものになります。今回の問題では,モノを仕入れたり作ったりするときにかかった金額である原価・モノに最初につけられた金額である定価・割引が行われて定価よりいくらか安くなった金額である売価,の3種類の価格が登場しています。そのためこれら3つを並べて,割合や数値を比較していくというわけです。問題の内容を線分図にまとめると,下の図のようになります。

ここで重要なのが,原価を2割増しした定価の1割引きの値段で売っているという言葉を見て,原価と売価が同じだ,と考えないことです。2割足して1割を引いているので,2-1=1割増しの値段になると思い込みがちですが,この1割の中身は全く違います。それは10割となる基準の値段が異なるからです。定価における1割の基準は原価にありましたが,売価における1割の基準は,原価よりも高く設定された定価にあります。そのような違いから,引き・増しの関係は足し算や引き算では整理できないと言えるのです。

ステップ② 全体との関係に注目しよう!

ここまで線分図がかけたら,続いてはそれぞれの割合と全体との関係に注目していきます。今回の問題は原価を1として・10割として線分図を書いていきましたが,それでは定価と売価は,原価を基準としたとき何割の値段になっているのでしょうか。このことを考えていくステップが,全体との関係についての注目です。

まずは定価ですが,こちらは原価の2割増しなので,原価の12割の値段が設定されているということができるでしょう。同様に売価について考えていくと,売価は定価の1割引きに設定されていました。このことから以下の関係が成立することが分かります。

定価=原価×\(\frac{12}{10}\)

売価=\(定価×\frac{9}{10}\)

さてこの式が求められたところで,今度は売価を原価で表すという作業に移りましょう。このことにより,定価も売価も原価を基準として考えられるようになり,比較がしやすくなります。では下の売価の式における定価の部分に,上の定価の式をあてはめていきましょう。

売価=\(原価×\frac{12}{10}×\frac{9}{10}=原価×\frac{108}{100}\)

このことから売価は原価の8%増し,つまりお店の利益は原価の8%になっていることが分かります。この答えは忘れずに図に落とし込んでおきましょう。

ステップ③ 割合と金額の関係から答えを導こう!

最後に,上で求めた割合と問題文の中で登場した640円という金額の関係から,原価を計算していきましょう。ステップ②で求められたのはお店の利益がいくらか,ということです。利益の額は原価の8%になる,ということが計算により求められました。他方問題文に注目すると,利益は640円であることが言及されています。すなわちこのことから,原価の8%=640円という関係が導けるのです。そして今回求めなければならないのは原価の値でした。よって,比の関係から次のような式を作ることができ,答えは8000円だと分かります。

8%:640円=100%:原価

1%:80円=100%:原価

原価=80×100=8000円

A.8000円

このように線分図を作って一つずつ計算を進めていけば,売買損益の計算はなんなくクリアできます。最後に,今回の記事でご紹介したステップをまとめて本章を締めくくりましょう。

  • 売買損益の問題は原価・定価・利益といった用語で判断しよう!
  • 問題の攻略の前に,まずは3つの線分図に情報をまとめよう!
  • 定価や売価や売り上げを原価との関係で表そう!
  • 割合と金額の関係から答えを導こう!

終わりに

今回は売買損益についてお話ししてきました。前述した通り,売買損益とはマスターしてしまえばそこまで難しいものではありません。しかし登場する用語の覚えづらさ・親しみの無さから,苦手意識を持ってしまうことが多いです。そのため慣れないうちは,まずは語句を完璧にしていくことを意識してみるといいでしょう。本記事が学習のお役に立てば幸いです。

おすすめ記事

参考