【中学受験】夏期講習までに押さえておくべき算数の基礎 その2 速さ

今年度は新型コロナウィルスの影響もあり、夏休みが短縮する学校も増える見込みですが、受験生の皆さんはいよいよ夏期講習期間が近づいてきましたね。夏期講習では、中学受験のカリキュラムがすべて終わっていて、理解していることを前提に問題演習がおこなわれます。もう一度単元に戻って解説をするということはしてもらえないので注意しましょう。

大量のパターン演習がおこなわれる夏期講習では、「勉強した気」になってしまい、本当は現場で考えても分からなかった問題がけっこうあったにもかかわらず、解説を聞き、ノートをとってくるとまるで自分で解くことができたかのような錯覚に陥ってしまうことがあるので注意が必要です。このように毎日のカリキュラムに追われてしまって振り返らずに夏期講習を受け続けると、たくさん問題をといたにもかかわらず、夏休みが終わっても自力で解ける問題が増えてきません。そうすると、長時間にわたる夏期講習での学習の効果が得られなかったということになってしまいます。

夏期講習がおこなわれる夏休みは、受験生にとっては受験学年の折り返しとなる「天王山」です。この時期にどの単元のどこまで、どの程度身につけることができているか、ということがとても大切です。そのレベルによって、秋からはじまる過去問演習などの実戦演習にスムーズに入れるかどうかが変わってくるためです。

ですが、どの単元のどこまで、どの程度身につけることができたか、ということがわかっていれば、苦手・弱点となっている分野や単元を計画的に克服していくことができます。できないところができるようになるということは、穴が埋まるということなので、同じようにわけもわからず問題演習ばかりしているほかの受験生に大きく差をつけられるチャンスです。そのことを意識して夏休みの学習を進めることによって秋以降に大きな差が出てくるのでぜひ意識していただきたいポイントです。

夏休みの学習を効率的におこない、また実のあるものにするためには、これまで学習してきたカリキュラム全体を俯瞰してみて、自分はどこができていてどこができていないかをまず把握することがとても重要です。×のものを△、〇にしていく、というように段階的に弱点を克服していけば、得点力も飛躍的にアップしますし、何より解ける問題量が増えます。そうすると、達成感を得ることができるので、その先の学習を意欲的に進めることができるようになるでしょう。そのためにも、自分の弱点をしっかり把握し、計画を立てて弱点補強を進めていくことがこの時期非常に大切なのです。

今回は、夏休みにやるべき学習のうち、算数の「速さ」の問題について弱点になりやすいポイントを解説します。速さの問題に苦手意識がある方も多いと思いますが、発想を少し変えると解ける問題が増えますよ。

なぜ速さの問題に苦手意識が生まれるの?

比や図形問題と並んで苦手意識を持つ受験生が多いのが、速さの問題です。速さの問題は、5年生以降はほぼ必ずといって良いほど比の知識を活用していくことになることも苦手意識につながる一つの理由です。比の考え方の基本が身についていないと、時間ばかりかかって結局解けない、ということも少なくないのですが、比を苦手とする受験生は多いので、すなわち速さの問題に対しても苦手意識を持ってしまい、後回しになって傷口が広がってしまうのです。

速さの問題の特徴をつかもう

速さの問題は、カリキュラムが進むごとに難しく感じることが増えると思いますが、速さの問題にはいくつかの特徴があります、

  • 設定が複雑なことが多く、問題文を一読しても何を言っているのかを把握するのが難しい場合がある
  • 順序だてて問題文のストーリーを追うことが大変
  • 「速さ」と一口にいっても様々な問題があるので、その範囲の広さがさらに速さの問題を難しく感じさせる

このような特徴があるので、速さの問題を克服するためには、「速さの問題の『複雑さ』に負けないようにする」必要があると言えるでしょう、では、どうしたらよいでしょうか。

速さの問題では「図」を描けるかが勝負を分ける

速さの問題の場合、まず最初に問題のリード文を読ませる、いわゆる文章題の形で出題されることがほとんどです。文章題である以上、文章の中に含まれている条件、つまり与えられているヒントを落とすことなく読み取り、自分の知っている、あるいは見たことのある問題に近づけていくことが求められます。

ただし、文章を読んで条件を読み取ることはできるかもしれませんが、それだけでは具体的にどういう状況の問題なのかを把握することができないので、まずは「図」や「グラフ」を自分で描いて視覚的にその問題を把握できるようにする必要があります。そこが第一の難所だと言えるでしょう。

速さの問題の種類が多く、守備範囲が広いということとっも関係しているのですが、速さの問題で「どのような図やグラフを描くか」という第一関門で間違ってしまうと、そもそも問題が解けませんし、図やグラフを描けないと、問題を解くにあたってとっかかりがつかめず、時間ばかりかかって結局解けない、ということになりかねません。ここでつまずいていしまう受験生が非常に多いのです。

図を描くときに意識するべき速さの本質

では、なぜその問題に合わせた図を描くことが第一関門になってしまい、つまずいてしまうことが多いのでしょうか。それを考えると、速さの問題の本質が見えてきます。

速さの問題を解くときに、「速さ=距離÷時間」ということは受験生なら必ず押さえているはずの速さの三原則のひとつですね。速さの問題でポイントになるのは、「速さ」「距離」「時間」の3つですから、少なくとも以下の3つについて、線分図などの図を描くことができるはずです。

  • 位置関係
  • かかる時間
  • 速さ

それぞれ、どのような図を描けばよいのか考えてみましょう。

位置関係

速さの問題では、今どの地点にいるのか、ということを把握することが前提条件として必要です。そのような位置関係を表す線分図を描くことは最も一般的、基本的なことです。たとえば、旅人算を使って解くような問題では線分図を描くと解きやすくなります。また、シンプルな問題、たとえば1回だけ往復するような問題の場合、図を描くことができればそれだけで解決することも多いのでおすすめです。

かかる時間

速さの問題で条件が与えられていることはわかっていても、そのまま解くとうまくいかないという問題もあります、そのような場合は、「かかる時間」に着目すると解決できることがあります。例えば、速さが異なることによって到着予定の時間に対して差が生じるような問題の場合、かかる時間に着目して線分図を描くと単純化でき、解きやすくなります。

速さ

速さそのものについて図やグラフを描く場面としては、流水算を解く場合が典型的な例だと言えるでしょう。問題文の中に、何分間でどれだけの水が入るか、出るか、といったことを表したグラフが入っていることもありますが、中にはその一部が空白になっているものもありますし、自分で一から線分図やグラフを描く必要がある場合もあります。これも、図で可視化すると何を求めたらいいのかをつかむのに役立ちます。

速さの問題は差がつきやすい

ここまでは、主に線分図を描くことの有用性についてご説明しましたが、描く図は線分図だけとは限りません、ほかにはグラフや、面積図などを描くのが有効な場合もあります。たとえば「時計算」のように、「図形」を描く必要がある問題もあるので、ある程度多くの問題にあたり、図を描く訓練をすることが必要です。難しい問題でなくて構いません。テキストの例題レベルで良いので、どのように図を描けば解きやすくなるのかを意識して、手を動かして図を描いてみましょう。

図を描けるかどうかによって解ける問題は飛躍的に増えますが、速さの問題を克服するためにはある程度多くの問題にあたる必要がある、つまり学習量の差がそのまま得点力に直結するという特徴があるので、速さの問題は差が付きやすいところなのです。逆に、上位生にとっては、すでに十分な学習量を確保していると考えられるので、かえって「差がつかない」という結果にもなりがちですが、それだけに必ず解けなければいけない問題だと言えるでしょう。だからこそ、速さの問題をしっかり解けるようにしておくことが重要なのです。

面積図やグラフが有効な場合は?

面積図を描くのが有効なのは、進んだ道のりを「速さ×時間」で表すと分かりやすい場合です。ただし、速さの問題の場合、面積図だと把握しにくいこともあり、登場する場面は少ないかもしれません。どちらかというと線分図で問題文に忠実に図示していくのが良いでしょう。

グラフを自由自在に描けるかどうかは、差がつくポイントです。グラフは、一目で「速さ」「距離」「時間」の3つを同時に視覚的に把握することができるので、速さの問題を解くときには欠かせない存在と言えるかもしれません。問題文の中にグラフが描かれていて自分で書き込んでいくというなら良いのですが、自分で一から描くのはなかなか大変です。

グラフを描いて問題を解こうとしてうまくいかないのは、グラフを描くにあたっては注意しなければいけない以下のような点があるからです。

  • グラフを描くのに手間や時間がかかってしまう
  • 問題文の条件が多いと、情報が多すぎて焦点がボケたグラフになってしまい、問題が解けない

特に、グラフを描くのに手間や時間がかかってしまうという受験生は非常に多いです。入試の制限時間は決して余裕がないので、時間をかけすぎるのはほかの問題を解けなくなってしまうなど致命的なミスになってしまいかねません。たとえその問題に手間をかけて正解できても、ほかの問題が解けなくては全体をトータルで見て点数が取れないということになってしまいます。

特に、手間暇かけてグラフを描いた場合は、そこで時間をつかっているだけに「必ず解かなければ」「正解しなきゃ」という義務感のような気持が生まれてしまい、1問に大きく時間をかけてしまう受験生が多いので注意が必要です。ただし、グラフを描くことは、問題文の内容を把握するための手段としては非常に有効なので、実際の入試で速さの問題が出た場合、グラフを描くことになる場面は多いです。そのため、まずは例題レベル、基本問題レベルの速さの問題でグラフを描く問題になるべくたくさんあたって、グラフの書き方の基本をマスターするようにしておきましょう。

第二の関門は「数字の壁」

速さの問題を解くときの第一の関門は図が描けるかどうかですが、第二の関門は、速さの問題の場合答えの数値や計算途中の数値が「いやらしい数値」、すなわち素直な整数になるとは限らない、という点です。例えば、旅人残では、距離を速さで割るので、分数がたくさん出てくる可能性がありますし、そもそも与えられている数値が分数だということもあります。つまり、速さの問題は、計算が面倒になることが非常に多いのです。

数値が複雑になると、解くための筋道をある程度立てていても、なかなかすんなりと数値が頭に入ってこなくなってしまい、計算ミスを誘発してしまうおそれがあります。塾によっては複雑な数値の計算をたくさんすることによって訓練しているところもありますが、計算の基本や工夫がしっかりしている受験生に対しては有効かもしれませんが、まだ未完成、計算問題でミスを連発してしまう受験生にとっては時間ばかりかかって有効とは言えません。

もし計算に時間がかかってしまったり、速さの問題の基礎に苦手意識を持っている場合は、整数など「すっきりしたきれいな数値」の問題をしっかり押さえることをおすすめします。テキストの例題や基本問題は整数が答えになることが多いので、まずはそれをしっかりマスターしましょう。

数値が汚くなると、解くのに非常に時間がかかりますが、計算のほうに頭が行ってしまい、速さの問題の本質を見失ってしまいます。そうすると、計算に時間をかけていても速さの問題の本質的な実力を身につけることができなくなってしまうので、注意が必要です。

入試問題は受験生を選抜するための問題ですから、基本問題に比べて数値を複雑にし、受験生にとっては負担が重くなる可能性が高いです。速さの問題の基礎が身についている、あるいは応用問題も解けるという受験生の方はそこまで気にしなくて良いですが、まだ自信がない受験生は、あまり計算に惑わされると時間不足になってしまうので、まずは基礎的な問題を自由自在に解けるように心がけてください。

まとめ

速さの問題では、自分で図を描いて、問題文中で与えられている情報を整理できるかどうかがカギとなってきます。特に、2人の人物がどの地点ですれ違うか、といった問題に関しては、図の作成は必須と言っても過言ではありません。模試などの時間が限られている状況でも自分にとって分かりやすい図に整理できるように、日頃の簡単な基礎問題から作図の練習を重ねておくことがとても重要です。様々な形の図がありますが、線分図のような形で整理するのが一番分かりやすいでしょう。

また、仕事算に関しても、図で把握することは重要です。特に、立体容器に水を入れていくタイプの問題では、容器のどの部分に排水口がついているのかを図に整理して解くと、ぐっと解きやすくなります。このように、速さの問題や仕事算では、比や速度計算に加えて、自分で図を描き起こして情報を整理するという独特なステップが要求されます。日頃の学習から手を抜かず、試験本番と同じようにしっかりと解くようにしましょう。

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