第二次世界大戦で日本は連合国に敗れ、GHQの指令のもと、様々な改革が行われ、民主化の道を歩み始めます。戦争の時代は、出来事を理解するのがまず難しく、その内容まで説明できるようにするのはなかなか難しいところです。そのあとの敗戦処理、戦後改革についても知識が混乱しやすく、並べ替え問題などで狙われやすい、差のつきやすいところです。
今回は、戦後の改革で具体的に何が行われたのか、知識の混乱しやすいところを整理していきましょう。主なものを取り上げていきます。
非軍事化政策
当時の日本は軍部主導で、世界大戦に突入し、多くの戦死者を出しました。GHQが主導して、軍隊を解散させ、戦争犯罪人の裁判などが進められました。1946年には、極東国際軍事裁判が開廷します。「東京裁判」とも呼ばれるこの裁判は1948年まで行われ、多くの日本の軍人や政治家が裁かれました。
選挙法の改正
20歳以上の男女が選挙権を持つことになりました。1945年のことです。日本は1925年に普通選挙法(満25歳以上のすべての男子に、納税額に関係なく選挙を与える)が制定されていましたが、女性の選挙権は認められていませんでした。1925年の普通選挙法は加藤高明を首相とする政党内閣のもとで定められたことと、1945年の選挙法の改正については、正誤問題などでよく問われるので、しっかり覚えておきましょう。
労働分野の改革
労働者の権利を守るため、労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)が制定されました。この3つの法律については名前と内容も含めて覚えておきましょう。労働組合やメーデーが復活しました。
財閥解体
日本の産業や経済を独占してきた財閥を解体させました。自由競争による経済発展を目指すために、三井・三菱・住友・安田などの財閥を解体し、経済の民主化を目指しました。
解体されたはずなのに、なぜ今でも三井・三菱・住友・安田の名前の企業があるのでしょう?戦前の財閥は、複数のグループ企業をまとめる本社が持ち株会社となって、グループ会社の経営を統括していました。財閥解体は、この本社を解散させて、グループのそれぞれの企業を独立させたのです。現在も財閥の名前は残っていますが、同じ名前でも別々の企業です。混乱しないよう、確認しておきましょう。ちなみに、持ち株会社は戦後しばらく禁止されていましたが、1997年に解禁されています。最近、よく会社名に「○○ホールディングス(HD)」とついているのを見かけますね。これは、解禁されたからです。持ち株会社などの知識は難しいので知らなくてもかまいません。財閥解体が、自由競争による経済発展を目指すために行われたこと、経済の民主化を目指したことをしっかり理解しておきましょう。
農地改革
自作農を増やし、農村を民主化するために行われた改革です。それまでの農村は地主が権力を握っていて、小作人が地主の土地を耕作していました。小作人は小作料を地主に払っていましたが、それは収穫の半分近くにまで及ぶ高いものでした。当然、物を買うゆとりなどなく、国内の消費は増えません。そこで、日本は海外に市場を求めて進出することを考えて、ついには戦争をしてしまった、という経緯がありました。
農地改革では、大地主から土地を強制的に買い上げ、低い価格で小作人に安く売り渡しました。その結果、自分で土地を持ち、農業を営む自作農が増えました。生産したものはそのまま収入につながりますから、自作農の生産意欲が高まり、日本全体の生産性が向上しました。
日本国憲法の制定
1946年11月3日に公布、1947年5月3日施行、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理は非常に重要な知識です。「公布」「施行」の違いは理解していますか?年号も含め、重要な知識ばかりです。しっかり理解しておきましょう。
教育の民主化
1947年、教育基本法が制定され、その翌年、教育勅語が廃止されました(最近話題になりましたね)。教育勅語は、1890年に発布された、国家の思想、教育の基本理念を示した明治天皇の勅語です。いつ作られたものなのかなど、混乱しないように気をつけましょう。学校制度も改まり、9年間の義務教育、男女共学、個性の尊重を目的とするようになりました。
戦後の改革を理解するうえでの注意点
戦後の改革は、明治維新後の政策と混乱しやすいので注意が必要です。特に、学制発布・教育勅語と教育基本法、地租改正と農地改革などは混乱しやすいですから、それぞれがどの時代の政策だったのかしっかり整理しておきましょう。紛らわしい選択肢問題や、並べ替え問題でよく出題されます。いずれも大きな改革ですが、明治維新後の政策は天皇中心の政策、戦後の改革はGHQを中心とした民主化政策です。それぞれの用語と意味を理解すれば、どちらに入るか間違えないようになります。現代史は、勉強する時間があまりとれず、かつ難しい用語が出てきて、意味も紛らわしいところです。早めに整理して、なぜそのような政策が行われたのか理解を深めておきましょう。差がつくところですよ!
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。