中学受験・社会 現代社会に関心を持って時事問題に取り組む

皆さんは、時事問題に対してどのようなイメージを持っていますか?塾のカリキュラムでは、受験直前期に、その年の重大ニュースについて授業を行うことが多いですが、直前期にその年起こったすべてのニュースを詰め込むのは現実的ではありませんし、出来事の名前を知ったとしても、それがなぜ起こったのか、因果関係まで理解するには時間が足りなくなってしまうことが多いのが実情です。

ですが、最近の中学入試では、時事問題の出題が増えています。以前から社会では時事問題が意識されてきていましたが、近年では理科と社会の複合的な時事問題も出題されています。地震に関してハザードマップについて出題したり、環境問題を社会・理科両方の面から問うてみたり、単に単語を知っているだけでは太刀打ちできないような問題が増えてきています。ですが、「時事問題の勉強」の時間を独立して持つのは難しいですから、常に今の世の中で起こっていることについて意識しておくことが必要になってきます。今回は、出題が増えてきている時事問題について、どう対応していけばよいか考えていきます。

知識だけでは不十分

時事問題に対応するには、知識だけ覚えていても不十分です。なぜなら、大きな話題を生む出来事というのは、急に起こるものではなく、それまでに様々な要因があり、中には長い歴史の中にその要因があることも少なくないからです。時事問題は、単に今年の出来事を振り返る問題ではないのです。ですから、単なる出来事の名前を覚えるだけの勉強では不十分です。普段からテレビのニュースや新聞を見て、世の中で、あるいは世界で何が起こっているのか、そしてそれはなぜ起こっているのか、だれが起こしたのか、そういったことを正確に理解したうえで今後起こりうる問題まで考えるという、深い思考力が問われる問題なのです。

毎年秋になると塾から「重大ニュース」のテキストが販売されます。それを使って最後の追い込みとして時事問題を勉強するというのが通常でしょう。ですが、時間の関係もあり、深い理解が出来るまで勉強をすることはなかなか難しいです。また、時事問題のまとめのようなサイトなどで出来事を覚えるという手もあるでしょうが、それも直前期に必死に覚えるだけでは不十分です。時事問題に対応するためには、まず普段の生活の中で、お子さん自身が世の中で起こっている出来事について関心を持つ必要があるのです。

時事問題への関心を高めるために

世界で生じているテロ事件や極右勢力の台頭、難民問題などが話題になったなら、まずはそれらの問題があるという事実をしっかり理解しましょう。解説のわかりやすいテレビの特集番組や、小学生新聞などを活用してまず問題点を理解したうえで、知識を整理することが大事です。

問題は次の段階です。そういったテロ事件などの問題がなぜ生じたのか、そして解決のために何が必要だと思うのか、将来どうなっていくと予想できるか、などについて考察しないと、時事問題には対応できません。ただ、起こっている出来事の内容は、お子さん一人で理解するには荷が重いものが多いですから、ぜひ親子でその問題について考えてみてください塾での学習ではそこまで深く掘り下げることはできません。ですから、入試ではそこを突いて出題されるのです。また、時事問題はいきなり起こるものではありません。それまでに学んだ知識と関連しているものです。ですから、時事問題について考えることは、それまで学習してきた地理、歴史、公民、国際関係などを、今起こっている出来事と関連付ける勉強でもあるのです。これまでの知識と、現代社会で現実に起こっている出来事を関連付けて理解することが、時事問題対策として必要になってくるのです。

また、最初にも書きましたが、時事問題は社会だけで出題されるとは限りません。天文や火山活動、地震などの話題は理科でも出題されますし、そういった理科の分野だと思っていたところ社会の問題で出題されることもありますから、切り離して考えないほうがいいでしょう。この出来事には何が関連するのかな?という素朴な疑問から、これまで学習し、得てきた知識を総動員して考えるのが時事問題だということを忘れないようにしましょう。

文章力も必要

時事問題では、「この出来事について説明しなさい」など、記述式の設問も少なくありません。中には、「あなたの考えを述べなさい」というものもあります。ですから、記述問題、というと国語、という固定観念は持たないようにしてください。理科、社会でも、単語だけではなく、出来事の理由や因果関係をしっかり説明できるようにしておく必要があります。そして、それをわかりやすく説明するという文章力が必要とされるのです。

通常の社会や理科の記述問題は、ある程度出題パターンが決まっており、問われるポイントや答え方をある程度覚えて練習しておけば、ある程度書けるようになります。つまり、出来事や知識と、その理由をしっかり理解しておいて、出題されやすいポイントを押さえておけばしっかり得点源にすることも可能です。ですが、時事問題に関しては、パターンが決まっているわけではありません。その出来事に応じて、知識を総動員して多角的に考えて書いていかなければいけません。記述字数も長い傾向にあります。そういう意味では、時事問題の記述については、国語の記述問題のような意識を持って取り組む必要があります。中学入試の国語では、現代社会における問題点について書いた文章がよく出題されます。その文章を読み、設問を解くときには、あ、これは時事問題に関連するな、というアンテナを張れるといいですね。特に、記述問題にあたるときは、自分の文章の書き方を再確認し、時事問題の記述問題にも対応できるようにしておきましょう。ほかの科目の学習のときにも時事問題を意識することがとても大事だということです。

時事問題対策はいつから行えばいいの?

直前期だけの時事問題対策は意味がありません。入試問題で点数を取るところまで理解を深める時間がないからです。今のうちから、新聞を読んだりニュースを見ることを習慣化してください。お子さんにとっては最初は難しいと感じるでしょうが、ぜひ親御さんが協力してあげてください。「この問題ってなぜ起こったんだろうね」「誰が、どこの国がかかわっているんだろうね」など、お子さんに「どう思う?」と問いかけることも日常生活の中で習慣化してしまいましょう。

時事問題の多くは新鮮なニュースから出題されることが多いですが、だからと言って入試の年だけニュースを見ていればよい、というわけではありません。たとえば、2015年に公職選挙法が改正され、選挙権を持つ年齢が20歳から18歳に引き下げられました。その年のビッグニュースでしたから、2016年度の中学入試の時事関係の出題のうち、トップでした。でもその年で終わりではなく、2017年度の入試でもやはりかなりの中学が選挙権年齢の引き下げについて出題しています。

今話題になっているニュースは急に湧いて出てきたものではありません。どうしてその問題が生じたのか、という問題意識も一気に培われるものではありません。直前期ではなく、今のうちから親子でニュースにアンテナを張り、気軽に話し合ったり、難しいところは説明してあげたり、お互いどう思うか意見を言ってみたりということを習慣化しておくことによって、時事問題に対する抵抗感は薄れていきます。時事問題対策はいつから行えばいいの、と言われれば、「今でしょ」ということになります。意識した時こそ始め時です

中学が求めている生徒像とも関連する時事問題

中学入試で時事問題が出題されるということは、単に知識を詰め込む勉強だけしてきた生徒ではなく、社会全体に関心を持ち、思考する姿勢を持っている生徒を求めているということの現れです。近年話題になっているアクティブ・ラーニングを行うことが出来る素地を持った生徒がほしい、という学校側の意図が読み取れます。時事問題は中学入試が終わればなくなるものではありません。これから先もずっと世界の各地で、日本の中で起こり続けるものです。そのことを忘れず、「単なる暗記」で済ますことなく時事問題対策を行っていきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。