中学受験 社会 過去問題解説−社会問題読解〜環境問題・SDGs〜

今回は2021年度の女子学院中学校の社会の過去問を一部修正して社会の問題の解き方、さらに環境問題・SDGsについて説明していきます。 

問題

 日本では便利で豊かな生活を送ることができますが、これは第二次世界大戦後の急激な経済発展によりもたらされたものです。1956年5月1日、熊本県の病院から「原因不明の中枢神経疾患発生」という報告が地元の保健所にありました。水俣病は、この日、公式に発見されたのです。①水俣病の患者とその家族は、水俣病の原因となった( X )を含む排水を行った工場を訴え、その後、国や県の責任を問う裁判も起こしました。水俣病の原因となった( X )は現在でも、蛍光灯など身近なところで使われています。2013年、②「( X )に関する水俣条約が採択されました。水俣市は、公害で苦しんだ経験から「環境モデル都市づくり宣言」をして、ごみの減量や分別収集などに取り組み、環境や資源を大切にするまちづくりを進めていきます。 

 ③廃棄物が大量に発生する「使い捨て」の時代から、大切な資源を有効に用いる「④循環型社会」の形成を目指す動きが始まっています。環基本法(循環型社会形成推進基本法)をはじめ、多くの法律も整備されています。 

 世界でも、環境を守りながら、限りある資源を有効に活用して開発を進める( Y )な社会の実現が求められています。将来にわたって世界の人々がともに豊かに暮らすために、限りある資源から得られる利益を公平に分かち合えるしくみを考えることも大切です。2015年に開催された「国連( Y )な開発サミット」では、「( Y )な開発目標」として17の目標が掲げられ、2030年までの達成に向けて各国で取り組みが進められています。2018年に来日したアミーナ・モハメッド国連副事務総長は「持っているものを手放せと言われたら、誰でも惜しくなるものです。それでも私たちは繁栄を分かち合うすべを見つけなくてはいけない。自分の生活が誰かに害を与えていないかを常に考えるべきなのです。」と語っています。 

問1

文中の( X )には漢字2字、( Y )には漢字4字の語句が入ります。それぞれ答えなさい。 

【解答】
( X )水銀
( Y )持続可能

水俣病は日本の四大公害の一つです。それぞれの公害病の発生場所や症状、原因をおさえておきましょう。 

水俣病の原因は工場排水内のメチル水銀であり、答えは(水銀)になります。 

  水俣病  新潟水俣病  四日市ぜんそく  イタイイタイ病 
発生場所  水俣沿岸
(熊本県・鹿児島県)
阿賀野川流域
(新潟県)
四日市市
(三重県)
神通川流域
(富山県)
症状  神経障害(四肢の感覚障害・運動失調・発語・目、耳)  神経障害(四肢の感覚障害・運動失調・発語・目、耳)  ぜんそくの発作  腎臓障害・骨軟化症による骨折 
原因  工場排水内のメチル水銀  工場排水内のメチル水銀  亜硫酸ガス  カドミウム 

2015年のサミットで掲げられた目標は「Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)」です省略された「SDGs」という言葉は話題になっています 

朝日新聞より

問2

下線①について、日本国憲法に基づいて考えると、本来、国や県にはどのような権利を守る責任があったのですか。日本国憲法に用いられている表現で答えなさい。 

【解答】健康で文化的な最低限度の生活を営む権利 

水俣病にかかると普通の日常生活を送ることが難しくなります。そのことから、国民の生活を営む権利が侵害されたと考え、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が答えになります。 

問3

下線②に関して、条約を締結する権限を持つ国の機関を答えなさい。 

【解答】内閣 

内閣国会で定められた予算や法律に基づいて政治を行う行政を担っている機関です。内閣の役割についてきちんとおさえておきましょう。 

行政  国会で定められた法律や予算に基づいて政治を行う 
外交  国を代表して外国との交渉、条約を締結する権利を持つ(※) 
予算案の提出  各省庁の予算見積書をもとに、財務省が予算原案を作成、閣議決定後国会に提出 
政令の制定  憲法や法律の規定を実施するため、政令を制定する 
最高裁判所長官の指名  最高裁判所長官の指名は内閣が行い、天皇が任命する。最高裁判所の裁判官と下級裁判所の裁判官は、内閣が任命する 
天皇の助言機関  天皇が行う国事行為の助言と承認 

(※)条約の調印後には国会の承認が必要です 

問4

下線③に関連して、プラスチックごみについての説明として、正しいものを3つ選び、記号で答えなさい。 

ア、使い捨てのプラスチック製ストローを廃止する方針を打ち出した飲食店チェーンがあり、廃止の動きは世界的に加速している
イ、2018年のG7サミットでは、海のプラスチックごみ削減を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」にすべての参加国が署名した。
ウ、中国は、日本や米国、欧州などから海のプラスチックごみを資源ごみとして輸入していた。
エ、海に流れたプラスチックの多くは波や紫外線で砕け5ミリ以下に小さくなり、その後、短時間で溶けてなくなる。
オ、魚がプラスチックごみを飲みこむと、食物連鎖により人体に悪影響を与える可能性が指摘されている。
カ、一人当たりのプラスチックごみ排出量で、日本は世界の国々の中で下位である。

【解答】ア・ウ・オ 

それぞれの選択肢について詳しく説明していきます。 

正解 

ア、使い捨てのプラスチック製ストローを廃止する方針を打ち出した飲食店チェーンがあり、廃止の動きは世界的に加速している⇨プラスチック製ストローを廃止する方針を打ち出した飲食店チェーンは「すかいらーくグループ」です。 

ウ、中国は、日本や米国、欧州などから海のプラスチックごみを資源ごみとして輸入していた。⇨中国は1980年代以降ごみを輸入し、洗浄、破砕し、工業用の原材料に加工してきました。しかし、適切な処理ができないと汚染につながるなどの問題から少しずつ輸入に規制をかけ、2021年1月1日以降、すべての廃棄物の輸入を禁止しました。 

オ、魚がプラスチックごみを飲みこむと、食物連鎖により人体に悪影響を与える可能性が指摘されている。⇨選択肢エにも関連しますが、プラスチックは溶けてなくなることはなく残り続けます。魚が飲み込んだプラスチックを飲み込むと体内で消化されることなく残り、その魚を人間が食べたとしたら、体内にプラスチックが入り込み悪影響を与える可能性が出てきます。 

不正解 

イ、2018年のG7サミットでは、海のプラスチックごみ削減を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」にすべての参加国が署名した。⇨カナダで2018年に開催されたG7シャルルボワ・サミットでは「海洋プラスチック憲章」が採択されました。しかし、日本と米国は署名をしていません 

エ、海に流れたプラスチックの多くは波や紫外線で砕け5ミリ以下に小さくなり、その後、短時間で溶けてなくなる。プラスチックは溶けてなくなることはありません 

カ、一人当たりのプラスチックごみ排出量で、日本は世界の国々の中で下位である。⇨以下のグラフをみてみてください。むしろ上位に入っています 

問5

下線④の実現につながらないものを1つ選び、記号で答えなさい。 

ア、空きびんを特定の場所に返却すると、返金される。
イ、古い電球を持っていくと、寿命の長いLED電球と交換してくれる。
ウ、電化製品の新型モデルが発売されると、新しいものに買い替える。
エ。不要になったものをフリーマーケットで売る。

【解答】ウ 

循環型社会」はリユース再利用)やリサイクル再生利用)、更には長く使えるものを選ぶことで廃棄物を減らし、循環させる社会を目指すということです。

ウ、電化製品の新型モデルが発売されると、新しいものに買い替える。⇨まだ使うことのできる電化製品を新型モデルが発売され買い替えてしまうのは「循環型社会の実現には繋がらないでしょう。 

まとめ

環境問題を中心にした問題ではありましたが、日本国憲法の内容や、内閣の役割を問う問題もあり、基本的な日本の政治に対する知識が問われていました。 

SDGs」にまつわる問題はよく出題されています。2015年に開催されたサミットで採択され、その内容は持続可能な社会を目指すための目標であることなどきちんとおさえておきましょう。 

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