前回は、理科の物理分野で苦手になりやすい、力のつり合いの問題の中でも、輪軸とかっ車の問題を解くときに必ず戻るべき基本中の基本の知識の理解について解説しました。
輪軸やかっ車は、力のつり合いの中でも複雑で、計算問題も段階をおわなければならないので、苦手意識を持っている受験生も多いところです。しかし、あくまで「つり合うにはどうしたらよいのだろう」という意識を持って解けば、実はそれほど複雑なことはありません。
計算問題がよく出題されるので、問題文に出てきている数字やデータ、力の向きをやじるしにするなどして、解答のヒントを図に描きこみながら考えていくようにしましょう。ただ問題文をながめて、出てくる数字をみても問題を解くことはできません。力をつりあわせるにはどういう向きに、どれだけの力をかけることが必要なのか、ということを常に考えながら解くことが大切です。そのために、図に数字や力の向きを描きこむことはとても大事ですし、それを描き入れるだけで解ける問題もあるくらいです。
今回は、このようなことに気をつけながら、力のつり合いの基本知識を、実際の入試問題を解いて確認していきましょう。
例題1 てことかっ車のつり合いの問題
この問題は、相模女子大学中学部の2012年度の入試問題です。てこと滑車のつり合いの基本問題なので、すらすら解けるようにしておきましょう。
この問題の場合は、かっ車の重さやてこの重さは考えなくてもよいことになっています。このような、問題文に書かれている条件は必ず下線を引くなどして、見落とさないようにしましょう。てこのつり合いのときの、棒の太さが一定かどうか、などもよく見落とす点なので、問題文のヒントは全部使うようにしましょう。
動かっ車には8kgのおもりがつるされているので、左右のひもにかかる力は、
8kg÷2=4kg
ですから、定かっ車は4kgで引けばよいことになります。そうすると、おもりXは、
4kgー3kg=1kg です。
てこを左にかたむけるはたらきは、
3kg×10cm=30
つり合うためには、右にかたむけるはたらきも30でなければなりませんから、
1kg×Ycm=30、つまり、Y=30cm となります。
(答え)X=1 Y=30
例題2 動かっ車と定かっ車のつり合い
この問題は、城北中学の2015年度の入試問題です。
問1(答え)60g
一見複雑に見える問題ですが、分解して考えれば単純に考えることができる問題です。このようにいくつも図が並んでいて、おもりやひもがたくさんあると、どこにどのような重さがかかるのか、など非常に難しく考えがちですが、そのように考える必要はありません。
おもりは100g、動かっ車は80gなので、□の部分は合わせて180gです。それを3本のひもで支えているので、180g÷3=60gが答えです。
問2(1)(答え)60g
次に出てくるからもっと複雑か、と思ってしまうかもしれませんが、実は問1より単純な問題です。動かっ車はおもりを引く力を2分の1にするので、
(80g+40g)÷2=60g となり、答えは60gです。
(2)(答え)20cm
動かっ車は、おもりを引く力を2分の1にしますが、そのかわり、ひもを引く力は2倍になります。ですから、ひもは2倍引き上げればいいことになります。
10cm×2=20cm
問3(1)(答え)90g
図のように、3つの滑車を①、②、③とすると、①の左右のひもにかかる力は、おもりAが240g、かっ車の重さは40gなので、
(240g+40g)÷2=140g になります。
②は、140gとかっ車の重さ40gを加えて持ち上げることになるので、左右のひもにかかる力は、
(140g+40g)÷2=90g
(2)(答え)40cm
おもりAを10cm引き上げるには、①の右のひもは、2倍の20cm引く必要があります。ですから、②は20cm引き上げられなければなりません。そのためには、②の右のひもは2倍の40cm引き上げる必要があります。
(3)(答え)180g
おもりBが75cmとなると、②の左右には75gの力がかかるので、かっ車の重さ40gを差し引いて、
75g×2-40g=110g
110gの力が①の左右のひもにかかっていればよいことになります。ですから、おもりAは、かっ車の重さ40gを引いて、
110g×2-40g=180g
まとめ
何回かに分けて、物理分野の基本中の基本の考え方をまとめてきました。それを、どのように入試問題を解くために使うか、が問題なわけですが、そのために使うべき基本知識はそれほど多くないということがお分かりになったのではないかと思います。
ただ、その重要な基本的知識の理解があいまいであったり、組み合わさった問題が出たときに、絡み合って見えてしまい、1つのものとして解こうとするとかえって難しくなってしまいます。分解して考えることができないと、それほど難しくない問題も必要以上に難しく見えてしまうのです。
とくに、力のつり合いの問題の、てこ、輪軸、かっ車、ばねは密接な関係があります。すべてが含まれている問題もあり、そうすると図が複雑に見えてしまいます。ですが、ここはてこの原理、ここはばねの伸びの法則、ここは輪軸、かっ車というように分解し、一つひとつを単純なものとしてかんがえれば、組み合わさった問題であっても思ったほど複雑ではない、というケースがとても多いです。
組み合わさっている一つひとつをしっかり分解して考えることができ、そこに基本的な知識をつかえば、正答率は必ず上がります。そのためには、基本的な知識のおさらいが何よりも大切です。基礎さえしっかり押さえておけば、力の問題に出てくるものが組み合わさった問題でも恐れることはありません。焦らず、わかっていることを一つひとつ確認しながら解いていきましょう。
計算問題が入ってくるので、比例・反比例の関係は算数でも大切ですから現場で混乱しないように反射的にできるくらいにしておきましょう。これも中学受験の基礎中の基礎です。そして、四則計算は素早く、正確にできるようにすることもとても大切です。理科は、文章の読解力と資料の分析力、そして速く正確な計算が必要です。物理分野は特にそれらが必要になります。逆に言えば、それができれば、正解できる問題は必ず増えます。算数の基礎練習も直前までおろそかにせず、しっかり点数をとれるように頑張りましょう!
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。