中学受験・理科 物理分野・てこのつり合いのまとめ その2

前回の記事で、てこのつり合いの基礎中の基礎事項、力点、支点、作用点について解説し、その基礎知識が実際の入試問題でどのような形で出題されるのかについて解説しました。

てこのつり合いをはじめ、理科の物理分野に苦手意識を持っている受験生の方は多いと思います。その原因は、基本的な知識をおろそかにして、しっかり理解できていないことにあります。物理分野は計算問題が多いため、そちらに目が行き過ぎて、問題のパターンを覚えてひたすら大量に問題を解く、という勉強法を続けてしまい、基本に戻る時間をしっかりとることができなかったところにあります。

また、基本的な知識といっても、てこのつり合いの問題は難しいという先入観から、基本的な知識が何なのかということそのものがわかっていないケースもあります。難しい分野だから、基本も難しい・・・そのように思って、整理することなく来てしまったケースもよく見られます。

たしかに、てこのつり合いの問題は、難問も出題されることが多く、点数に差がつくところです。しかし、全問難問ばかり、とは限らず、落ち着いて考えれば基本的な知識で解くことができる問題も多いのです。まずは、先入観を捨てましょう。そして、てこのつり合い、力のつり合いの基本原理をもう一度おさらいしましょう。

そのうえで、正解できる問題を一つ一つ積み重ねていくことで、少しでも点数がとれるように最後まで努力してほしいと思います。

今回は、前回よりも少し複雑になりますが、入試レベルの基本的知識の整理と、実際の入試問題を例題として、いくつかの知識が組み合わさったような問題や、計算の段階をふむ必要のある問題について、まとめていきます。基本的な知識がわかれば、難しいと思った問題でも、実は基本知識で解けるということがわかります。最後まであきらめずに、具体的にどのように知識を使っていくのか理解し直し、1問でも多く解ける問題を増やしましょう。

例題1 力のつり合いと、ばねを組み合わせた問題

この問題は、鎌倉女学院中学の2010年度の入試問題です。

解く前に、この棒の長さが1mであること、重さは800gであることを必ずしておきましょう。重要なヒントです。問題文を読む際には、重要な部分、必要な情報の部分にアンダーラインを引くなどして、ヒントを目に見えるようにしておきましょう。

問3(答え)48cm

左(A点)に傾けるはたらきの大きさは、400g×30cm=12000 です。

水平にする、つまりつりあうためには、右に傾けるはたらきも12000にしなければなりません。反対側(右側)には、250gのおもりをつけて水平にする必要があるので、つり合うための距離を計算すればよいのです。

12000÷250g=48

答えは48cmになります。

傾きをつりあわせるためには、力のはたらきをつり合わせればよい、ということがわかれば、計算自体は難しくないことがわかりますね。

問4(答え)320g

問4では、左に傾ける力のはたらきの大きさを求めます。A点にかかるはたらきは、400g×30cm=12000です。

200gのおもりは、A点より10cm中央寄りなので、支点からの距離は20cmです。この点にかかる力のはたらきは、200g×20cm=4000です。

このことから、左に傾けるはたらきは、12000+4000=16000となります。

つり合うためには、右に傾けるはたらきも16000であるべきです。支点からB点までの距離は棒の長さは50cmとなるので、16000÷50cm=320

つまり、おもりの重さは320gということです。

問5(答え)ばねX 200g ばねY 80g

この800gの棒は、太さが一定なので、重心は棒の中心にあります。太さが一定の棒の場合、重心が棒の中心にあることは基本的知識です。棒の太さが一定でない場合には、重心がずれることを見落とすことがよくあるので、気をつけましょう。

重心が棒の中心にあるので、ばねX、ばねYにかかる重さは、400gずつとなるので、

  • ばねXについては、400g÷2cm=200g
  • ばねYについては、400g÷5cm=80g

となります。力をつりあわせるためには右側、左側の力のかかり方が同じになること、棒の太さが一定の場合には、重心は棒の中心にあることがわかっていれば、計算自体は難しくありません。

例題2 力のつり合いと、おもりの重さ、棒の長さの関係

問題文をよく読むと、この棒の重さは1kgであり、太さは一定だということがわかります。棒の太さが一定なので重心は棒の中心(両端から50cmのところ)にあります。そこに、1kg、つまり1000gのおもりがあると考えるのです。

支点から棒の重心までの距離は、60cm-50cm=10cmです。

よって、右に傾けるはたらきは、1000g×10cm=10000です。

棒が水平になるためには、左に傾けるはたらきも10000にならなければなりません。

支点から左端までの距離は40cmなので、10000÷40cm=250gになります。

まとめ

てこのつり合いの問題では、棒の重さを考えるか、考えないかで悩んでしまうことが多いと思いますが、基本的に、重心が支点になっていたら、棒の重さは考えなくてもよい、といえます。これはとても大切な基本的な知識です。

しかし、これを覚えるのもややこしいと感じる方は、支点がどこにあるかにかかわらず、とにかく重心をやじるしか何かで、図に描き入れるとよいでしょう、描き入れると、棒の重さもまた、おもりの1つと同じだということに気づきやすくなります。

てこのつり合いの問題は難しいと思いがちですが、条件をきちんと問題文から読み取り、左と右をつりあわせる、という基本から離れずに問題を解けば、正解することはそれほど難しいことではありません。問題文の条件をしっかり読みとり、できるだけ印をつけたり図に描きこんだりするなどして、自分で図示して考えるように心がけると、今まで解けなかった問題も解きやすくなりますよ。あきらめずに、基本的な知識をおさらいし、標準的な問題を解けるように準備をしていただきたいと思います。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。