プラスチック ~身の回りで使われているプラスチックの種類とその性質,環境問題について学ぼう~

 私たちの身の回りにはたくさんのプラスチックが使われています. プラスチックはその用途により様々な種類があります. 入試問題においてはそんなプラスチックの性質について問われることもあり,それぞれのプラスチックの用途や性質をしっかり押さえておくことが重要です.

 またプラスチックはその廃棄問題や環境問題といった身近な課題にも直結するためそれらと関連した問題も出題されることが多く,ある意味で一般常識とともに広い知識が要求される部分でもあります.

 ここではプラスチックに関する基本的な知識を学習し,その後自らの手で生活の中にあふれるプラスチックについて考えてみたり,自分で調べたりなどして知識を深めていきましょう.

プラスチックとは

 皆さんは「プラスチックとはどのような物質のことですか」という質問にどのように答えますか?

プラスチックがどのようなものなのかというイメージは浮かんできても,それが実際にどんな物質なのかということを言葉で説明するのはなかなか難しいのではないでしょうか.

まずは,そもそも「プラスチック」とは何なのかということから確認していきましょう.

 「プラスチック」とは,「熱や力を加えたときに変形し,熱や力を取り除いてもその変形が残る性質をもつ物質の総称」です.

つまり加熱すると軟らかくなり,そこに力を加えると変形します. その状態で方などに入れることで形が保持された状態で冷却すると,今度は硬くなってその変形が保たれて,形が維持されます.

英語では”plastic”は「柔軟性のある」という意味であり,実はそのままなのです.

もちろんこのような性質をもつ物質はたくさんの種類があります. それらをまとめて「プラスチック」と呼ぶのです.

 それではこの柔軟性をもつプラスチックは何から作られるのでしょうか.

プラスチックは「石油」などを原料として作られます. つまり石油枯渇などといった問題にも直接関わってくることになるでしょう.

 それではこのプラスチックが全体としてどのような性質を共通にもっているのかを次に確認していきましょう.

プラスチックの性質

 プラスチックはその種類が様々にありますが,共通している性質も多くあります. ここではプラスチックと呼ばれる物質が共通にもっている性質を確認していきましょう.

  1. 有機物なため,燃やすと二酸化炭素が発生する
  2. 電気や熱を伝えにくい
  3. 軽い
  4. 様々な形に成形できる
  5. 薬品に対して安定・変質しにくい
  6. 自然に分解しにくい

 近年では電気を通すことができるプラスチックや,自然で分解される環境にやさしいプラスチックが開発されています.

プラスチックの種類とその性質

 プラスチックには様々な種類がありますが,ここでは理科で扱われる5つのプラスチックとその性質について紹介します.

ポリエチレン(PE)

  • 油や薬品に強い
  • 安い
  • 加工しやすい
  • 燃えやすい
  • 水に浮く

(用途):容器,レジ袋,ラップ,ペットボトルのふた

ポリプロピレン(PP)

  • 軽い
  • 熱に強い
  • 水に浮く
  • 燃えやすい

(用途):食器,バケツ,洗面器,ペットボトルのふた

ポリ塩化ビニル(PVC)

  • 割れにくい
  • 薬品に強い
  • 燃えにくい
  • 水に沈む

(用途):パイプ,電線の被覆材,消しゴム,ホース

ポリスチレン(PS)

  • 透明
  • 固い
  • 加工しやすい
  • 衝撃に強い
  • 水に沈む

(用途):食品トレイ,発泡スチロール

ポリエチレンテレフタラート(PET)

  • 透明
  • 圧力に強い
  • 薬品に強い
  • 水に沈む

(用途):ペットボトル,卵パック

プラスチックと環境問題

プラスチックの問題の1つに環境問題,とりわけ廃棄の問題があります.

例えば海などに廃棄されたプラスチックは自然に無害な物質への分解はされません.しかしどんどん表面から削れて小さくはなっていくので海の中に散らばっていきます.これは海を泳ぐ魚の中に入ってしまいます.

他の魚がプラスチックを含んだ魚を食べることでさらに体内のプラスチックの量は増えていきます.魚の体内のプラスチックが増えすぎたりすると魚自体を死滅させてしまいます.

また体内にプラスチックを含んだ魚を人間が食べてしまうことで様々な異常が起こります.

これは海に限らず山などでも同様です.

ですから最近は自然に廃棄しても,無害な物質へと分解されるプラスチックが開発されており,環境保全へ大きな寄与をしています.

確認問題

問題

解答

  • (1) ポリプロピレン(PP)
  • (2) ポリエチレン(PE)
  • (3) ポリスチレン(PS)
  • (4) ポリエチレンテレフタラート(PET)
  • (5) ポリ塩化ビニル(PVC)

入試問題演習

 ここまで学習した内容を活かして,実際の入試問題に挑戦してみましょう.

問題

(桜美林中 2019)

解答

  • 問1 リサイクル
  • 問2 PET
  • 問3 エ
  • 問4 食物連鎖
  • 問5 スチールは磁石について,アルミはつかない
  • 問6 水に入れたときにペットボトルは沈み,キャップ・ストローは浮く
  • 問7 害の無い物質に分解されやすいプラスチック
  • 問8 プラスチックは,ガラスに比べて軽い(他には割れにくいなど)

解説

問1
ごみを減らして環境保全を行う考え方で有名なものとして「3R」があります.

これは下の3つの言葉の頭文字をとったものです.

  • Reduce(減らす)
  • Reuse(繰り返し使う)
  • Recycle(再利用,リサイクル)

 

問2
ペットボトルの原料となるプラスチックは「ポリエチレンテレフタラート(PET)」です.

 

問3
キロ(1000倍)>センチ(100分の1)>ミリ(1000分の1)>マイクロ(100万分の1)>ナノ(10億分の1)

 

問4
生物同士のえさと捕食者,つまり「食べる・食べられる」の関係を「食物連鎖」と言います.

 

問5

アルミとスチールは磁石に付くかつかないかで簡単に分別することができます.

  • アルミ:磁石につかない
  • スチール:磁石につく

 

問6
表から,ペットボトル本体は「水より重い」という特徴が,キャップ・ストローは「水より軽い」という特徴をもつことから,水に入れると沈むか浮くかで簡単に分別することができます.

 

問7
プラスチックの問題の1つとして,不法投棄されたプラスチックは自然に分解されず,海の生き物の体や,プラスチックを食べた動物の体に悪影響を及ぼすことがあります.

 

問8
プラスチックはガラスに比べて軽く,薬品にも強いなどの特徴があり,便利な物質です.

まとめ

 プラスチックは様々な形で身の回りに応用されているため,注目されやすいものでもあり,特に種類ごとの特徴を押さえておくことは重要です. 繰り返し復習して共通の性質とともにそれぞれの種類別の性質や用途をしっかり覚えていきましょう.

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