【中学数学】「数」というものを考えなおしてみましょう——「自然数」「数直線」ってなんだろう?

 本記事では、中学数学の最初に学ぶ「正負の数」という単元の、「自然数」「数直線」「整数」「絶対値」と言った用語について説明します。 この単元は、一見簡単なことしか言われていないようで、甘く見てしまいがちなのですが、数学で一番大切なことは、基本的な言葉についてしっかりと理解を積み上げていくことですから、丁寧に、楽しみながら、読んでいって欲しいです!

大昔の人は「数」をどう考えていたのだろう?――「自然数」について

「数」がないとしたら?

 まず、数なんて全くない世界を想像してみましょう! 数学がなくって、読者の皆さんは嬉しいかもしれませんが、でも、嬉しいだけではない。不便なこともあります。

 例えば、あなたが「にんじん」が欲しいとして、この世界ではあなたは「にんじん」を持っている人のところへ、あなたの持っているものと交換しにいくはずです(数がないから、お金は使えませんね、物々交換)。しかし、あなたはどれくらいの量「にんじん」が欲しいのか、相手にうまく伝えることは難しいのではないでしょうか(だって「何本」って言えないからね)。手で円をかいて「これくらいください」とかは伝えられるかもしれないけれど、それでは、なかなか美味しい料理は作れないというものでしょう。

「数」がないと料理は美味しく作れません——わからない人はご両親の料理のお手伝いをすること。

大昔の人はこう考えた

 大昔にエウクレイデスという人が歴史上初めて数学の教科書を作った時、この人も、真っ先に「数」を「ものの個数」として考えました。まず、さまざまなものが、それで「\(1\)」と呼ばれているようなまとまりを「単位」とする(にんじんならヘタから先っちょまでで「1本」ですね、水なら計量カップにピッタリ入れて「1カップ」とかも言います)。その後、ある単位のものが複数ある時(にんじん1本が2つ、とか)、それを「\(2\)」「\(3\)」「\(4\)」……と続けていくことで数ができる。エウクレイデスはそう考えました。

これは「4個」でしょうか? 「1本」でしょうか? 「単位」をどう考えるかによって、変わってきますね。

 こうした「ものの個数」として考えられる範囲の数のことを、今では「数」の中でも「自然数」と呼びます。「もの」は人が生み出さずとも、神が創造した(昔の人はそう考えたわけです)「自然」にある。その個数だから「自然数」なのです。もちろん「個数」だから、小数、分数は入りません(「0.5個」「1/2個」とか、本当は正しい言い方ではないのです)。また、このとき、「0」は(ふつう)含まれないことに注意しましょう! だって、「0個」なんて、普段ものを数えるとき言わないで「ない」っていうでしょう?

まとめ

 「自然数」とは、\(1, 2, 3, 4, ……\)といった、「ものの個数」として考えられる数のことである。小数や分数を含まないほか、0も、自然数には含まれない。

昔のインドでは数はどう考えられていたのだろう?――「数直線」について

「個数」だけで考えるムズカしさ

 ヨーロッパ(イギリスとかフランスとかがあるあたりです)では、数は「個数」として考えられていました。しかし、これでいくと、今の僕たちが考えている「数」のうち、手に入らないものがたくさんあります。この後見ていく「負の数」(マイナス(-)の数)も、その一つです。寒い地域に住んでいる人だったら、気温が「-5度」だったりするのを経験したことがあるでしょう。しかし\(-5\)」なんて数は「個数」だけで考えてたら意味がわかりません(「-5個にんじんを買ってきて」って言われてもおつかいできないでしょう?)

 実は、ヨーロッパでは、「自然数」ができてから2000年以上も(!)、「負の数」は考えられてこなかったのです。一方、先に「マイナスの数」を考えていたのは、中国やインドでした。

インド人は数をどう考えた?

 インドで負の数を考えたクリシュナという人は、数を「ものの個数」では考えませんでした。その代わりに、この人は「向き」と「大きさ」で考えたのです。

 例えば、東の方角を向いているとして「前向きに10m進む」というのを「+10」と考えるとしたら、西向きに進むことは、後ろに進むこととして「-10」と考えることができます。南を向いているとしたら、南に10m進むときは「+10」、北に進むなら「-10」となるわけです(ここでの「+10」のような、「負の数」と逆向きの数のことを「正の数」と呼びます、「正の数」には先程の「自然数」も含まれます)。

 クリシュナは、マイナスのことを「元々の向きに対して逆向き」と考えているのです。そして、元々の向きにも逆向きにも進まない時「0」となるのです。

右方向に進む時を「+◯」と表記するのなら、左に進むのは「-◯」と表記できます。

さらにスマートに考えてみると?

 クリシュナの「向き」「大きさ」の話を、ある方角に進むような場合だけではなく、どんな場合にも使えるようにしてみましょう。私のお財布に向かってお財布が入っていく場合をプラス、お財布からお金が出ていく場合をマイナスとするなど、そうした場合も一つの図で済むような図を作ってみる。

 このような考え方から、「数直線」というものが出てきます。

 真ん中の「0」から、右向きを「+」としてやれば、左向きは、それに対して逆向きだから「-」になって、「0」から左側に進んでいくほど、数としては小さくなる。

 同じ「+」「-」という記号を使う、足し算、引き算についても、この図と、「向き」「大きさ」から考えられます

 例えば\(2+3\)は、

  1. いま「\(+2\)」の位置にいる
  2. ここから、+の方向(右方向)に、「\(3\)」という大きさだけ進む
  3. 「\(+5\)」という位置につく

となります(引き算の場合も、例えば\(0-4\)ならどうなるか、自分で試してみましょう!)。

まとめ

 数は「向き」「大きさ」という見方からも考えられる。このようにして考えることで「負の数」というものが考えられるようになる。

 また、同じ見方から「数直線」という図も作れる。この図では、右側を「\(+\)」とするならば、「\(0\)」から左側は「\(-\)」と考えられるほか、足し算・引き算も、右側・左側への移動として考えられる。

数直線を使って、もう少しだけ、言葉を学ぼう――「整数」「絶対値」について

どこまでも小さくなり、どこまでも大きくなる、「まとまりの良い」数――「整数」

 前の節までで、最初は「ものの数」=「自然数」から始めた数が、「負の数」「0」を含むものになりました。自然数と比べると、この二つを含んだ「数」は「どこまでも小さくなれる」という特徴があります(自然数だったら、1よりは小さくなれませんよね)。

 こうした、無限に小さくなり、大きくなる数のうち、小数、分数などを除いた「まとまりの良い数」のことを「整数」と呼びます。「ものの個数」であった「自然数」のほか「\(0\)」、「負の数」のなかの、小数・分数でないもの(例えば、\(-1, -2, -3, -4, …\))といったものが「整数」です。

「+3」だって「-3」だって、ぶっちゃけ「3」だよね――「絶対値」

 前の節では、数の「向き」「大きさ」という観点から、数直線というものを考えました。この、数直線からはじめて、向きだけを考えないことにしたものを「絶対値」と言います。

 例えば、数直線で「\(+3\)」という数は、0から右向きに3だけ進んでいます。一方「\(-3\)」という数は、0から左向きに3だけ進んでいます。ここで、向きを考えないとすると、「\(+3\)」も「\(-3\)」も0から「3だけ離れている」と言えるでしょう。

 このように「ある数が0からどれだけ離れているか」を表現したものが、「ある数の絶対値」なのです。これは「距離」ですから必ず正の数になります(「-3だけ離れている」なんて言い方はありませんからね)

まとめ

 「整数」とは、\(…, -4, -3, -2, -1, 0, 1, 2, 3, 4, …\)といった、分数でも小数でもない数を呼ぶ呼び方であり、「自然数」もこの中に含まれる。

 「絶対値」とは、数直線上の0からの距離のことを指す。例えば、\(-8\)の絶対値は\(8\)であり、\(8\)の絶対値も\(8\)である。

練習問題

(1)次の中から、①自然数であるもの、②整数であるもの、を選びなさい。

 \(0, -8, 1/2, 0.8, 12, 3, -9\)

(2)「2000円おこづかいをもらった」が「\(+2000\)」と表現される時、「8000円支払った」はなんと表記されるか答えなさい。

(3)絶対値が\(3\)より小さい整数を全て答えなさい。

解答と解説

(1)①\(12, 3\)

 他は、ものの個数として考えられません。

②\(0, -8, 12, 3, -9\)

 分数、小数でない数を全て数えましょう。

(2)\(-8000\)

 「おこづかいをもらう」に対して、「支払う」は「逆向き」であると考えられます。この「逆向きであること」が数学では「−」で表せたのでした(数学的にはマイナスでも、8000円払って何かいいものを買えたのなら実際はプラスかもしれませんね)。

(3)\(-2, -1, 0, 1, 2\)

 絶対値とは、数直線での0からの距離のことでしたから、「絶対値が3より小さい」とは、0からの距離が、0から2.999…の間であるということになります。このうち「整数」と言われているので、ありうる距離としては、0, 1, 2のどれかであり、絶対値0の時は、整数0が、絶対値1の時は、整数-1, 1が、絶対値2の時は、整数-2, 2が、答えを満たします。

おすすめ記事

参考

ABOUTこの記事をかいた人

アバター

東京大学文科III類出身、現在は哲学系の学科にいます。 数学の記事のほか、専攻に近づけて「勉強論」みたいなこともこれから書いていきたいと思っています。 読書のほか、昔のアメリカ・フランス映画を観たり、料理したりするのが好きです。いつの間にかつまらなくなった勉強の中に、新しいことを知ったり、できるようになった時のうれしい気持ちが戻ってくるような記事を書きたいです!