受験をするにあたって、「過去問を解く」というのは必要不可欠な勉強になります。
- いつから始めればよいのか?
- 何年分くらい取り組めばよいのか?
- どのような方法で取り組めばよいのか?
など、いざ始めるとなったときに不安に思うこともあるかもしれません。
この記事の中で、4教科の過去問についての具体的な取り組み方や時期についてご説明していきたいと思います。
過去問に取り組む時期
結論から言ってしまうと、開始時期は人により異なります。
もう少し具体的にお伝えすると、「受験生本人が、過去問を取り組むのに必要な力がついてきたら始められる」ということです。ではそれが一般的にどれくらいの時期かというと、おおよそ小学校6年生の夏以降です。
いわゆる大手の受験指導塾のカリキュラムを見ても、小6の夏までは4教科の中でまだ何かしら新出単元が出てくることが多いです。小4から小5にかけて小学校の学習指導要領を先取りし、小5と小6で小学校では習わない単元も学習します。受験指導に必要な内容をすべて学習し終えるのが、小6の夏ごろということになります。個別指導などで本人の力量に合わせてカリキュラムが進んでいる場合は、それよりも前後することもあります。
また、新出単元をすべて消化したからと言って、すぐさま過去問に対応できるだけの力が備わるということでもありません。一度習っていても、時間が経つと忘れてしまっていることもありますので、小6の夏の間は今までのカリキュラムを復習しつつ、徐々に入試問題レベルの学習を取り入れてレベルアップを図ることをおすすめします。
となると、実際に過去問に取り組み始めるのは小6の秋以降となりますが、志望校が複数ある場合にはあまりに開始時期が遅すぎると、過去問を消化しきれずに受験期を迎えてしまう危険性もあります。遅くとも、受験の2~3か月前には取り組み始め、スケジュールを立てて計画的に進めていきましょう。
また、年が明けてから新たな過去問に取り組んで結果が思わしくなかった場合に、挽回する時間が残されていないと精神的な負担となります。必要な分については年内中に取り組み、年が明けてからはもうすでに一度解き終わっている過去問の解き直しなどを行うように心がけましょう。
ここまでの内容をまとめますと、過去問に取り組む時期については次のようになります。
- 新出単元が出てきている間(一般的に小6の夏まで)は取り組まない。
- 過去問の前に総復習とレベルアップの時間を作る。
- 小6の11月頃には始めていないと受験期に間に合わない可能性もある。
- 未着手の過去問で必要な分は年内中に取り組む。
過去問を解く分量
たまに、ものすごく古い過去問をネットオークションなどで落としてまで取り組むという方もいらっしゃるのですが、「過去問を解く意味」というところまで考えると、そこまで必要かどうかは疑問に感じます。
過去問を解く意味とは何か?それは、入試本番のための予行練習ともいえます。したがって、必要なことは次の3点です。
- 入試問題傾向を知る
- 出題形式に慣れる
- 時間配分を考える
ここで注意すべき点は、学校によってはここ数年の間に問題傾向が変わっていることもあるということです。そういった場合に、あまりに古い過去問では練習にならないこともあります。また、社会で出題される工業・農業の生産順位は毎年変わる可能性がありますし、法案や税率などが変わっていることもありますので、過去問で解いたものをそのまま知識として鵜呑みにしないという部分にも注意が必要です。
さて、ここで本題の分量について考えます。上で挙げた3点を目的として過去問を解いていくとして、基本的には志望校の過去問は1冊ずつあれば十分です。ここでいう過去問とは、声の教育社などから出版されている学校別過去問集(いわゆる赤本)のことを指します。入試が1回きりの学校であれば、1冊におよそ7年~10年分、複数回の入試を行う学校であれば、1冊におよそ3年~6年分が収録されています。
ここで、志望校となっている学校について、すべて取り組むことが可能かどうかを考えます。9月中旬くらいから開始したとして、年内に終わらせようと思うと15週間ほどの期間です。受験する学校が2校~3校程度に絞れているのであれば、すべてを取り組むことも可能かと思います。しかし人によっては5校以上、多ければ10校ほどの受験校を検討している方も中にはいらっしゃるでしょう。そうなってくると全ての学校を同じように見ていくことは不可能に近いです。そこで、扱う過去問の分量を例えば次のように、志望度の高い順に決めていきます。
- 第1志望校は1冊全部
- 第2志望校、第3志望校は3年分
- 第4志望校以下は1年~2年分
最低限これくらいを目安に取り組む必要はあると思います。第1志望校と第2志望校が同じくらいの志望度合いの場合には、どちらも第1志望校として扱うような形でよいです。もちろん、時間に余裕がある場合には分量を増やしても構いません。
取り組む年度の順番
一般的に推奨されている取り組みの順番は次の3つです。
- 新しい年度のものから順番に取り組む
- 古い年度のものから順番に取り組む
- 最新年度を最後に残しておき、それ以外の分を新しい年度のものから順番に取り組む
年度順に取り組むことのメリットは、出題傾向の変化があった場合にもその流れを掴むことができるという点です。順番に取り組んでいると、「この年から傾向がちょっと変わったな」というのを感じることができます。これは、古い順に取り組んでも新しい順に取り組んでもどちらでも感じ取ることができるので、どちらでも問題ありません。逆に、年度の順番を無視してランダムに取り組むことは避けた方がよいでしょう。
最新年度を最後に残しておくのは、自分の受ける入試に一番近い傾向にあると思われる内容に、最後に触れさせておきたいためです。古い年度から順番に取り組んだ場合にも、最後に最新年度に取り組むことになるので同じ効果があります。
最新年度から順番に取り組むのは、第2志望校や第3志望校以下の学校のように「1冊全部を扱うわけではない」という場合には有効的です。行けるところまで遡って取り組めばよい、ということになります。
どの順番が一番よいかというほど大差があるわけではないので、あとは好みの問題になります。
過去問の取り組み方
先述したように、過去問を解く意味は「入試本番のための予行練習」です。しかし、必ずしも4教科を1日でやらなければいけないということではありません。1日に1教科でも構わないのです。ただし、1教科であっても、過去問を解くという場合には、その学校で定められている制限時間通りに時間を測って行うということが大切です。途中でトイレに行きたくなったなど席を立つ場合にも、時間は止めてはいけません。また、家で行うからと言って飲食しながら取り組むのもNGです。あくまでも、入試本番のつもりで取り組ませましょう。
そして赤本で過去問に取り組む場合、「本来の入試問題よりもスペースが詰めてある」ということに気をつけましょう。算数であれば、本来ならあるはずの計算に必要なスペースがほとんどないということになってしまうので、ノートや計算用紙を用意しておきましょう。学校で配布または販売されている過去問であればそういった心配はないので、そのままの形で使うことができます。
受験期よりも3か月以上前に取り組んだ過去問については、結果が思わしくないことが多く、解き直しを必要とすることも十分に考えられます。直接書き込みをしてしまっていると、解き直しをする際に取り組みにくいと思いますので、なるべく直接の書き込みを避けた方がよいでしょう。また、赤本には解答用紙も掲載されています。式・計算を書くスペースや記述の文字数など、形式の部分で慣れるためにも解答用紙はきちんと活用しましょう。赤本に掲載されている解答用紙は縮小したサイズなので、原寸大の大きさにするには拡大コピーをするようにという記載があります。
準備と取り組み方についてまとめると、次のようになります。
- 筆記用具、問題、解答用紙、時計やタイマー、計算用紙など、必要なものを準備しましょう。
- 入試本番と同じような気持ちで取り組ませましょう。
- 試験時間はきちんと正確に計測しましょう。
- 解いた分は必ず採点し、分析と解き直しを行いましょう。
解き直しについて
試験時間が終了し、採点をしたあと、分析と解き直しを行います。
まず自分の点数と、赤本に記載されている受験者平均や合格平均を比較します。(学校によっては、公表していない場合があり、その場合は記載がありません。その場合はおおよそ7割程度を目安にしましょう。)そのうえで、解き直しを行います。解き直しについては、状況によりその方法や回数が変わってきます。
- 合格者平均を上回っている場合
まずまずの結果と言えます。ただ、実際の入試本番のときには、もっと緊張感に包まれた状態になります。緊張によってミスを起こしやすいタイプであれば安心はできないということです。解き直しについては、間違えた問題について解けそうな問題があれば念のため確認しておきましょう。
- 受験者平均は超えたが、合格者平均を下回っている場合
可能性は十分にありますが、まだまだ努力する余地があります。合格者平均に届かせるために、あと何点くらい必要なのか、その点数分はどの問題で稼げそうなのかを考えて解き直しを行いましょう。時間が足りずに、全部の問題を解くことが出来なかった場合には、残りの問題を解くのにあと何分必要だったか、時間を測って解いてみましょう。その解き終わらなかった分も含めて、時間内に合格者平均を取ることが目前の目標となります。一旦は足りない点数分だけの解き直しで構いませんが、受験期までに余裕があれば、もう1回くらいは同じように時間を測って取り組んでおきましょう。
- 受験者平均を下回っている場合
取り組んだ時期が早すぎるか、必要レベルまで演習が足りていないことが考えられます。落としている単元の基本問題から確認することが必要な場合もあります。もし不得意科目であったとしても、合格を狙うのであれば受験者平均は超えておかないと正直厳しいと思われます。まずは受験者平均に届かせるために、あと何点くらい必要なのか、その点数分をどの問題で稼げそうなのかを考えて解き直しを行いましょう。解き直しが難しいレベルであれば、ひと通り解説を読んでおくだけでも構いません。4教科のすべてで受験者平均に大きく届かない場合、受験校の選定から考え直さなければならない可能性もあります。それでも受験をするということであれば、必ずもう1回は同じように時間を測って取り組みましょう。2回目または3回目あたりで合格者平均に届くくらいが望ましいです。
ただし、同じ学校の入試問題でも、年度によって相性があることも事実です。志望度合いの高い学校であれば、1回分の過去問の相性だけで判断せず、何回分か挑戦してみましょう。本当に行きたい学校なのであれば、自分を合格できるレベルに鍛え上げていく努力が必要です。
同じ過去問を何回か解いていくと、答えや考え方を覚えてしまうので、回数を重ねれば得点が上がるのも当然のことです。それが本当の実力になるわけではないのですが、点数が取れるようになったことで自信がつき、モチベーションが上がるので、そういう意味では繰り返し解くことのメリットはあると言えるでしょう。繰り返し解くことが必要かどうかを考えつつ、受験期までの貴重な時間をどのように使うのか計画的に考えていきたいものです。
(ライター:桂川)
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