【中学受験】低学年のいま保護者が意識すべき下地作り

中学受験をめざす場合、受験に向けたカリキュラムが本格的に始まるのは4年生、正確には3年生の2月からです。そのタイミングに合わせて受験のために塾に通わせたり、受験勉強を始めようとお考えのご家庭も多いのではないでしょうか。

ただし、4年生からはじまる受験カリキュラムにしっかりのっていくためには、低学年の間にできるだけ土台を作っておく必要があります。カリキュラムの内容について先取りをする、というのではなく、日々の受験勉強をスムーズにできるようにするための下準備ともいえるもので、受験勉強をするために必要な環境を整えることが大切です。それには、学力面もありますが、家庭環境づくりも含まれます。

小学校低学年の場合、まだ自分で何をやろう、と具体的に考えることは難しいでしょう。そのため、保護者の方がうまくお子さんを誘導し、環境づくりも行ってあげる必要があります。

今回は、本格的に受験勉強が始まる前の低学年の時期に始めておきたいことや、環境づくりのためのポイントについて解説します。

「モノ」と「ことば」が結びつくような環境づくり~ことばの運用能力

中学入試の問題は学校によって異なりますし、私立中学校、国立附属校、公立中高一貫校によっても千差万別です。しかし、見た目は違っても、共通して出題者が意識しているのは「ことばの運用能力」です。

ことばの運用能力、というと、漢字やことばの問題などの語彙力養成が頭に浮かぶかもしれません。たしかに、その部分は非常に重要です。漢字やことばの知識を増やし、覚えるという作業は中学受験の勉強の中で欠かすことはできないものです。

ただし、ここでいう「ことばの運用能力」とは、単に「ことばをたくさん知っている」という知識量ではなく、「そのことばが具体的に何を指すのか」ということです。あることばが出てきたときに、その内容が「具体的に」頭に浮かぶように結び付ける力、それがことばの運用能力です。

たとえば、入試問題では、あることばが言い換えられて何度も出てくるということが良くあります。例を挙げてみると、「何とかなるさ、と思った」ということばが「楽観的な気持ちになった」、と言い換えられる、といったようなものです。楽観的、ということばは低学年にはまだ難しいかもしれませんが、このような「言い換え」のバリエーションをたくさん持っておくことが中学受験勉強を始める上では非常に大切です。

実際に受験カリキュラムに入っていくとそういったことばの運用能力が試されるようになるほか、新しい言いかえのバリエーションが増えてくるので、それをしっかり自分のものにする、という姿勢づくりをしておくことが低学年の間は非常に大切です。ひとつことばが出てきたら、そのことばの意味を調べておく習慣をつけておきましょう。そうすると、違うことばで出てきても「あ、このことばとこのことばは同じことを言いかえている」ということがわかるようにしておくのです。

低学年のころは、小学校でも調べ学習をしますよね。夏休みといえば、学校の理科で栽培している植物を家に持って帰ってきて観察日記を書き、夏休み後に提出する、ということがあるでしょう。その際には、図鑑で調べることもありますよね。わからないことが出てきたら図鑑で調べるのと同じように、ことばについても辞書などで調べたり、保護者の方と具体的な内容を話し合ったりして、下地作りをしておくことは、本格的な受験勉強の土台としてとても大切です。

理想的なのは、ある「モノ」が出てきたら、自分のことばで説明できることや、逆にことばが出てきたら「その内容はこれ」というようにモノが頭に浮かぶように、自由自在にことばとモノを変換できる状態です。すぐに完璧に身につけられるものではなく、6年生までかけて徐々につけていく力なので、急いで詰め込む必要はありません。ただ、日々の生活の中で出てきたモノをことばに、ことばをモノに変換するクセをつけておくといいですね。

お子さんが好きなモノについて親子で話題にして話しながら、「これってどういうこと?」と質問するなどするととても有効です。お子さんも、自分が好きなモノについては、知識を披露したいので、積極的に「これはね、こういうことだよ」と説明してくれるでしょう。そのときに、きちんと文章で説明ができるかどうかもチェックポイントです。わかっているけれどうまく説明できない場合は、保護者の方が助け舟を出してあげてもいいですね。もしわからないことばやモノが出てきたら、辞書や図鑑で調べられるような環境を整えることも非常に有効です。

これからの学校教育は「調べて、まとめる」ということがとても重要になってきます。中学入試でも、さまざまな条件を正確に読み取り、うまく組み合わせて正解にたどり着く力が非常に重視されています。その土台になるのが「モノ」と「ことば」のつながり、つまりことばの運用能力です。ぜひ、モノと言葉が結び付きやすいように親子で話す機会を作り、調べやすい環境を整えてあげましょう。

「おもしろい!」と思う体験が好奇心を養成する

2020年の大学入試改革は、高校、中学、小学校の教育現場にも影響を及ぼしています。新しい学習指導要領では知識の三原則のほかに、重視されている考え方があります。それは、知識を自分なりに組み立てて体系化する力、つまり「知識の構造化」です。

知識の構造化をおこなうためには、土台となる知識がなくてはいけません。その知識は単にテキストや本で読んだものだけではなく、実際に体験したことも非常に重要です。実際に体験したことは、生きた知識として蓄積されていくからです。何かの経験をしておもしろかったり、感動したり、意外に思ったり、ということは意識の中に残りやすく、忘れにくいものです。つまり、「おもしろい!」という気持ちにどのくらい慣れたか、ということが意味を持つわけです。

たとえば、家族でキャンプに行き、魚釣りをしたとしましょう。家族で釣り上げた魚は子どもにとっては非常に誇らしく、「楽しかった」「おもしろかった」という経験に繋がります。そういう「おもしろかった!」という気持ちから、家に帰って釣った魚の種類を調べてみて、特徴についてさらに知りたいと思ったり、魚の体のつくりやひれやエラの仕組みについて知りたいと思ったりと、好奇心が連鎖していきます。さらに発展すれば、人体のところで勉強する、魚と人間の心臓などの臓器や呼吸の違いなどについても興味を持つことでしょう。

このような実際の体験が、新学習指導要領で重要視されている「構造化」の軸になるのです。意識しすぎる必要はありませんが、低学年のうちになるべくそのような好奇心を刺激する経験ができるような機会をたくさん家族でつくってみると良いですね。何よりも「楽しかった」「おもしろかった」と思うことが第一です。やらされ勉強が身につかないように、「おもしろいと思いなさい」と言われてもおもしろいと感じることはできません。お子さんが自然と好奇心を持てるようにうまく誘導してあげてくださいね。

英語に親しむ習慣をつけておく

新しい学習指導要領では、大学入試において、英語の4技能(読む、書く、聴く、話す)の定着を非常に重視しています。そのため、民間の英語に関する資格や検定試験を活用することを推奨しています。私立中学校でもTOEICやGTECHといった検定試験を学校単位で受験したり、大学入試でもTEAP入試が導入されたり、高校入試でも外部検定試験の結果を得点に換算するなどのという動きがすでに活発化しています。

このような動きを受けて、中学入試においても英語入試を取り入れる中学校が増えてきています。英語というとこれまで帰国性入試の専売特許のように思われていましたが、英語を入試科目のひとつとしてとりいれたり、なかには英語だけで入試をおこなう学校も出てきています。学校によって求められる英語のレベルはかなり差があり、非常に初歩的なものから、英検2級程度といったレベルまでさまざまです。

小学校でも英語が必修科目になることも相まって、何らかの形で英語に触れておくことは中学入試にも役立つ可能性が高いです。小学校低学年の時期は、神経系の成長が著しい時期なので、語学を学ぶのに非常に適しています。難しいことをやる必要はありませんが、もし英語入試などに興味がある場合は、どの程度の英語力を目標にして英語に触れるか、お子さんの性格や適性などに合わせて計画を立てておくことがおすすめです。一番大切なのは、お子さんが興味をもって楽しく英語に触れることができるかどうかです。英語アレルギーにしてしまわないよう、親しみ方の方法はお子さんに合わせたものにするようにしましょう。

計算や漢字など基礎基本を大切に

大学入試改革の影響もあり、中学入試では「思考力」が重視されている傾向にありますが、「思考力」と一口に言っても、よりどころになる基礎知識がなくては発揮する場がありません。つまり、思考力型の入試問題に対応するためには、各教科の基礎基本が備わっていなければならないのです。

理科や社会については受験カリキュラムがはじまってから本格的に知識を理解していくことになりますが、低学年の間にしっかりした基礎基本を鍛えるなら、やはり計算力と漢字です。数字とことばを自由自在に使えるということは、4教科全ての土台になる力です。ですから、低学年の間に日々の計算練習や漢字練習を習慣化してしまいましょう。

基礎基本というと、どうしても馬鹿にしてしまい、軽視する受験生は非常に多いですが、そういう受験生が応用問題を解けるかというとけっしてそういうことはありません。速くて正確な計算力、問題文を正確に読むための語彙力の養成こそがその後の学習の効果を決定づける重要な基礎基本だということを忘れないでください。

難しいものを、と分厚いドリルを与えて「やりなさい」というのでは、お子さんのやる気は出てきません。薄いもので構わないので、3年生までの計算や漢字がきちんと身についているか、夏休みの間にぜひ確認しておきましょう。計算に関しては、桁数の大きい計算に取り組んでもいいですし、漢字については4年生レベル、5年生レベル、とお子さんの興味に合わせて先に進んでもいいですね。あくまでもお子さんの理解力に合わせて、計算と漢字の基礎基本を徹底しておきましょう。小学校のテストで間違っていないかどうかもしっかりチェックしてくださいね。

親子二人三脚の信頼関係を作っておこう

中学受験は親の受験、とも言われるくらい、保護者の方の関わり方が非常に重要になってくる受験です。受験生が小学生なので、自分で計画を立てて粛々とカリキュラムを進めていく、というのはなかなかできることではありません。ですから、本格的に受験勉強が始まる4年生までは、保護者の方が主導権を持ってお子さんをリードしてあげる必要があるでしょう。

5年生、6年生と学年が上がるにつれて、お子さんも自我が芽生えてきます。自分の弱点がどこにあるのかということに正面からぶつかるのもお子さんです。お子さんの学習態度を見ながら、少しずつ自分で主体的に取り組めるよう、主導権を少しずつお子さんにバトンタッチして保護者の方は迷ったときのサポート役に徹する、といったように二人三脚の状態を変えていくと良いでしょう。お子さんが頑張って走り、保護者の方は転んだときにどうサポートするか、という形の二人三脚が、中学受験を成功させるカギといっても良いでしょう。

保護者の方が見守っていてくれる、自分を支えていてくれる、という気持ちをお子さんはしっかりわかっています。また、お子さんと一緒にクイズ形式で学習したりしていると、一緒に勉強できて楽しい、とお子さんのモチベーションも上がります

もちろん、中学受験はお子さんの成長と並行してやっていくものなので、常にうまく二人三脚が働くとは限りません。ですが、信頼関係ができていれば、少しずれが生じても話し合うことで軌道修正することが可能です。

ぜひ、低学年の間にこれからの長丁場となる受験勉強に挑むために、二人三脚の信頼関係を作っておき、一緒にゴールを目指す、という態勢を整えておくことをおすすめします。

おわりに

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。