【中学受験】社会で混乱しがちな政治の仕組みを克服しよう

受験生の皆さんは、すでに中学受験の単元別カリキュラムを一通り勉強されたと思います。社会の場合、地理、歴史、公民とそれぞれ分野ごとに得意なところ、苦手なところがあるかもしれません。秋以降は、これまでに学んだ内容に加えて、時事的要素の加わった応用的な入試問題を数多く解いていくことになりますが、そのためには各分野、単元の基礎基本をしっかり理解している必要があります。

近年、社会の入試問題では、9割がたの中学校で時事問題が出題されるようになっています。もともと社会という教科は、世の中で何が起こっているのか、それが自分の生活にどう関係するのかといった世の中全体をとらえ、考えていく教科なので、話題になっているニュースや今起こっている社会問題が題材になるのはある意味当然かもしれません。これまで学習してきた知識を総動員して世の中の動きを考えさせる、そのような問題を出題する中学校が非常に増えています。

特に、時事問題と親和性が高いのは、公民分野です。公民分野は政治、経済、国際問題など範囲が非常に広いですが、社会の受験カリキュラムの最後に組み込まれていることもあり、十分な理解ができている受験生はあまりいないのが実情です。また、政治や経済、国際問題は小学生にとってはなかなか理解するのが難しい抽象的な内容であることが多いうえ、社会全体の仕組みそのものに関係してくるので、人生経験がまだ浅い6年生に完璧に理解しなさいというのは無理難題というものです。

それでもなぜ時事問題で公民分野が出題されるかというと、基礎基本の知識の確認とともに、世の中で起こっているできごとに興味を持っているか、どのような視点を持って社会問題を考えているか、ということを知りたいからです。それは、中学入学後に非常に重要なものの考え方につながるので、入学後の学習を適切に進めていけることができるように、時事問題という形で世の中への興味を測っているのです。

一見するとなかなか理解しにくい印象を持つ公民分野ですが、特に政治分野は非常に重要です。私たち国民の生活に直接かかわってくることですし、そこで決められたことに基づいて日常生活を送っていくことになるからです。現在小学生の受験生にとっても、数年後には大きく関わってくる問題だということを忘れてはいけません。

今回は、時事問題でも聞かれやすい政治の分野について、押さえておきたいポイントをご紹介します。学習したてでまだ十分に理解が進んでいないという方も多いかもしれませんが、基本中の基本なので、まずは今回ご紹介する内容をしっかり押さえ、分からないところはテキストに戻って学習するようにしましょう。

選挙権と国政選挙・地方選挙

選挙がおこなわれると、その翌年の入試問題では、選挙に関連した出題が良く見られます。2020年は東京都知事選挙がおこなわれましたね。また、前法務大臣夫妻の不透明な選挙資金の流れが連日報道され、逮捕されて今後当選が無効になる可能性もあるなど、新型コロナウィルスに目が行く中、このような選挙に関わるできごとがありました。記憶に新しいところですよね。

東京都知事選挙は地方選挙、前法務大臣夫妻の問題は参議院議員選挙に関わるものですが、受験生の皆さんは知事選挙と国会議員を選ぶ選挙の違いをしっかり整理されているでしょうか?知事選挙はアメリカの大統領選挙のような直接候補者の中から知事を選びますが、国会議員の場合、直接総理大臣を選び選挙というものはなく、まずは国会議員を選んで、そのなかから総理大臣を選ぶという違いがあります。

また、選挙権は以前は20歳以上の権利でしたが、現在では選挙権を持つ年齢が18歳以上に引き下げられています。数年前には、18歳選挙権に関する問題が首都圏の30校あまりの中学校の入試で取り上げられました。18歳というと、6年生からすれば6年後には選挙権が与えられる、という年齢ですね。選挙権者として実際の選挙に参加する、国の政治の主人公=主権者となる、という政治の仕組みの基礎基本となる内容です。

また、18歳選挙権以外にも、選挙に関する問題は毎年多くの中学校の入試で出題されています。それはなぜなのでしょうか。選挙権は国民が持つ権利です。その権利をきちんと使わないと、政治が間違った方向に行ってしまい、平和が保てなくなる、といった政治に対する関心を持っているかどうか、将来的に興味を持って学習し、実際に選挙権を行使するということについて主体的に考えることができるか、ということを中学校側は見ています。

毎年のように出題されるのが選挙に関する問題なので、選挙について、国政選挙なら両院の定数や、選挙方式、知事と総理大臣の権力の違いなどについてもしっかり整理しておきましょう。また、衆議院議員と参議院議員の違いについても頻出です。こういった基本は大人でもよくわかっていない人がいますが、国を動かす主権者は一人ひとりの国民だという意識を持って、学習に取り組むと良いでしょう。

日本国憲法の三大原則、覚えていますか?

中学受験の社会では、日本国憲法についても非常によく出題されます。近年は、憲法の三大原則について、内容を説明させる記述問題なども良く見られます。受験生の皆さんは、日本国憲法の三大原則について、理由づけも含めて理解できているでしょうか?

日本国憲法の三大原則は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」です。これは基礎中の基礎としてしっかり理解しておきましょう。たとえば、国民主権は、選挙権に関わる問題ですし、基本的人権の尊重では社会権の問題が良く出題されます。平和主義については、自衛隊やこれまで日本が参戦してきた戦争について、歴史と絡めて出題されることが多いです。

なぜ理由づけも含めて理解しなければならないかというと、お題目のように三大原則を覚えていても、その中身がわかっていなければ意味がないからです。たとえば、「国民主権」は皆さん覚えているでしょう。では、「国民主権」とはどういう意味なのでしょうか?受験生に答えさせてみると、多い回答が「国民に主権があること」というものです。社会を教えているときに非常に力が抜ける瞬間です。

「国民主権」が「国民に主権があること」はある意味当然のことはありますが、それでは答えになっていません。「主権」ということばについての説明になっていないからです。「国民主権」で大切なのは、「主権」とはどういうことなのか、ということです。ですから、「国民に主権があること」では説明不足なので不正解になってしまいます。「主権」とは、「国を治める最高の力」のことなので、「国民主権」の意味を答えるなら、「国を治める最高の力が国民にあること」ということになるのです。

これは国語力にも関わることですが、「聞かれている重要部分はなにか」ということを意識することが大切です。第二次世界大戦で日本が敗戦するまで、主権は国民ではなく天皇にありました。それが戦後、国民主権に変わったということまで押さえておきましょう。

また、「基本的人権」とはどういう意味でしょうか?これも「基本的な人権」と答えては答えになっていません。「基本的」とはどういうことか、「人権」とは何か、ということを説明できていなければ答えにはならないのです。「基本的」というのは「人が誰でも生まれながらにして持っている」ということで、「人権」は、「人が人らしく生きる権利」のことです。つまり、「基本的人権とは何ですか」と問われたら、「人が誰でも生まれながらにして持っている、人が人らしく生きる権利」と答える必要がありわけです。「人が人らしく生きる」ためにどのような人権があるのか、どういう社会制度があるのか、ということを関連付けて、福祉や高齢社会の問題に絡めて出題されることが多い概念です。

憲法は、私たち国民が人間らしく生きるための根本を定めたものです。自分自身の生活に深くかかわっているということを意識して、憲法のキーワードは意味も含めてワンセットで正確に理解しておきましょう。

よく出題される条文はチェックしておこう

憲法の条文は、全部覚える必要は全くありません。これは大人ですら専門家でないと理解できないのですから、受験生であれば、よく出題される重要な条文だけチェックしておけば十分です。

たとえば、さきほどご紹介した憲法の三大原則のうち、「平和主義」については、憲法の前文と9条に書かれています。この前文と9条については数字も含めて必ず覚えておきましょう。9条の解釈などといったことは出題されませんが、平和主義に関連して、日米安全保障条約、安保体制、集団的自衛権といった問題に関連して良く出題されます。米軍基地が沖縄を中心に日本に多くあることは皆さんもよく知っているでしょう。では、なぜ日本に米軍基地がおかれているのか、条約を結ぶときにどのようなできごとがあったのか、新しい安保法制はどのようなものか、最近話題になっている集団的自衛権の中身は、というように致死意を発展させて理解しておきましょう。

また、14条と25条も重要なので覚えておいてほしい条文です。14条は「法の下の平等」、25条は「生存権」に関する条文です。14条の「法の下の平等」は、選挙における「一票の格差」の問題と関連させて出題されることが多いです。一票の格差とは、国政選挙がおこなわれたあとに必ず問題になるのですが、本来、選挙権を持っている人ひとりが一票を持っているのであって、その一票の重みに差があってはいけないはずです。

しかし、選挙が終わってみると、全国各地で一票あたりの重みに地域差があるという状態が続いているのです。つまり、どこに住んでいるかによって、使った一票の権利が重かったり軽かったりする、ということです。これは本来法の下に平等であるはずの国民の選挙権を侵害しているのではないか、というのが問題のポイントです。詳しい格差についてまで知っている必要はありませんが、全国各地で一票の内容に差が出てしまうことが不平等になっている状態があり、選挙後に裁判などで争われているということは知っておきましょう。

また、25条の「生存権」は、人が最低限健康的で文化的な生活を送る権利のことです。ですが、実際に国民全員が同じように健康的で文化的な生活を送れているかというとそうではありません。そこで重要になってくるのが生存権を保証するための社会保障制度です。そのため、25条については、社会保障制度と関連させて出題されることが多いです。生存権を保障するために、どのような社会保障制度が作られているのか、知っておきましょう。社会保障費は高齢社会の日本においては国の歳出の多くを占めています。なぜ社会保障費が増えているのか、という点も意識して確認しておきましょう。

そのほか、安倍政権になってからよく話題にのぼる「憲法改正の手続き」を定めた96条についても条文の番号とともに内容を確認しておきましょう。これは条文とともに出題されることが多いですが、衆議院・参議院両方で総議員の3分の2以上の賛成を基に憲法改正の発議が出され、それに対して国民投票を行うという仕組みは重要です。国民投票では過半数の賛成で成立する、という数字についても覚えておきましょう。国会でよく議論されており、与党と野党の対立、与党内での考え方の違いなどでもめています。時事問題としても、公民の問題としても非常に重要なので整理しておきましょう。

そのほか、99条について出題する中学校も見られます。99条が定めているのは「公務員の憲法の尊重・擁護義務」についてです。これは少し理解が難しいかもしれませんが、つまり「公務員は憲法を尊重して、守らなければならない」ということです。その義務を負うのは「公務員」であり、「天皇または摂政(天皇がその役割を果たせないときに代わりに公務をおこなう人)、国務大臣、国会議員、裁判官およびその他の公務員」とされています。国会議員や国務大臣は特別国家公務員ですし、裁判官や公務員といった人も含まれています。

一方で、99条はこのような「公務員」が守らなければいけない義務であり、「国民」はその中に入っていません。もちろん、常識的に考えて国民も憲法をないがしろにしていいというわけではありませんが、99条の意味は、「憲法によって権力の行き過ぎを防いで、国民の人権を守る」ことにあります。

かつて第二次世界大戦によってたくさんの人が戦場に行って戦死したり、原爆投下や大空襲などによって多くの人命が失われました。当時の軍部が強引に戦争を進めたことが原因だったので、そういった権力の行き過ぎから国民を守るという形で反省として憲法に反映されているのです。これは「立憲主義」、つまり政治は憲法をしっかり守ったうえで行われなければいけない、ということの表れです。99条はそのような立憲主義を明らかにした条文として、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義すべてにおいて重要なので覚えておきましょう。

大日本帝国憲法と日本国憲法を比較しておこう

現在の憲法は「日本国憲法」です。第二次世界大戦までは、「大日本帝国憲法」(明治憲法)でした。日本国憲法は、第二次世界大戦後に、アメリカ主導で大日本帝国憲法が改正された、という位置づけとされています。

日本国憲法と大日本帝国憲法にはさまざまな違いがあります。それぞれの草案起草から公布までの流れについても違いますので、かかわった人名や年号などはしっかり押さえておきましょう。

特にしっかり覚えておきたいのは、「人権」についてです。日本国憲法では、人権は人が誰でも生まれながらにして持っている権利でしたね。ですが、大日本帝国憲法では、人権は「天皇が国民に恵み与えたもの」、つまり天皇が国民に与えたもの、とされていたのです。その当時の天皇は「現人神」として、神のような位置づけとされていました。ですが、日本国憲法では天皇は神ではなく、「日本国民統合のための象徴」という「象徴天皇制」がとられています。主権が誰にあるか、天皇の立場についての違いは基礎基本の知識なのでしっかり押さえておきましょう。

「三権分立」は自分で図を描いて覚える

公民の政治分野でとても大切な考え方のひとつに「三権分立」があります。三権分立とは、国会と内閣と裁判所がお互いをチェックし、行き過ぎがないかどうかけん制し合うということです。そのためにたとえば国会が内閣不信任決議を出したら内閣は総辞職するか、国会を解散して総選挙をおこなうことができる、というようにお互いにできることが定められています。

国会、内閣、裁判所がそれぞれおこなう仕事の内容はしっかり区別できるようにしておきましょう。日本は議院内閣制をとっているので、国民は国会議員を選挙で選びますが、内閣総理大臣をはじめとした内閣の大臣は直接選ぶことができません。国会が国民の依頼を受けて内閣総理大臣を選び、内閣総理大臣がそれぞれの省庁の大臣を決める、という仕組みとともに覚えておくことが大切です。また、条約は締結するのは内閣ですが、それを承認するのは国会です。このように、お互いをきちんと見張る意味で三権分立という立場がとられていることを知っておきましょう。

そして、三権分立は三権、つまり国会(立法)、内閣(政治)、裁判所(司法)によって成り立っており、それぞれが監視し合って国を運営していく非常に大切な仕組みなので、しっかり頭に入れておく必要があります。入試でも頻出です。三権分立ということばだけ覚えて終わりにするのではなく、それぞれの仕事の内容も含めて覚えておきましょう。

三権分立というと、テキストなどに三角形の図が良く書かれていますね。それぞれの間にやじるしが引かれていて、それぞれお互いにどのようなことができるか、されるか、ということが書かれているおなじみの図です。「三権分立」自体は非常に抽象的なので、具体的にどのような仕組みになっているか理解するためには、その図をしっかり理解しておくことが必要です。ただながめていても覚えられないので、実際に手を動かして完璧に覚えられるようになるまで三権分立の図を描いて覚えるようにしましょう。その際には、なぜそのようなけん制のしかたをするのか、についても確認するようにしてください。三権分立は入試では頻出です。

まとめ

社会の公民分野は、時事問題とも関連して非常に出題されやすいところです。特に政治については頻出で、何かしらの形で入試で出題されます。政治については、政治の仕組みと憲法、そして選挙について基礎基本を押さえておきましょう。

政治は大人にとっても仕組みを完全に理解するのは難しいことです。ですから、手を動かして図を描いたり、重要な条文を書き出したり、選挙の仕組みや両院の違いなどについてまとめて何度も繰り返し理解するようにすることが大切です。ぜひ手を動かして、目と手でしっかり重要事項を覚えるようにしてください。

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