【中学受験】今だからできる!理科勉強法・克服法 地学編

受験生の皆さんは、理科の地学分野というとどのようなイメージを持つでしょうか。単に「覚えることが多い」分野だと思っていませんか?また、あとで覚えればいいやと放置していないでしょうか。地学分野は、生物分野に比べてあまり身近な印象を持てないかもしれません。また、単に暗記するだけではなく、天体や太陽などの問題では計算も必要です。

地学分野はたしかに暗記することが多い分野です。しかし、手につかむことができないものも多くテーマになっていることもあり、具体的なイメージを掴めない受験生は少なくありません。受験生が何かを覚える際には、実際に実物を見たことがあるかどうかによって、覚えられるスピードも量も大きく変わります。

地学分野は地層、岩石、気象、天体、太陽などが主な分野です。岩石や星、太陽、月などを見たことは皆さんあるでしょうから、一見すると実物を見た気になり、身近な存在だからあとで何とかなると思いがちです。ですが、星を毎日見ているといっても、具体的な星座名や位置を意識することはあまりないのではないでしょうか。岩石や太陽も同じことが言えます。

理科には生物、地学、化学、物理という4分野があり、知識問題だけでなく文章読解を要求する問題や計算問題、さらにそれらを組み合わせた融合問題が出題されます。実は受験生にとって思った以上に学習範囲が広く、負担が少なくない教科なのです。特に地学分野を単なる暗記分野ととらえていると、全体学習が終わったあと、十分に覚えておらず、苦手や弱点単元となっているところがたくさんできてしまいます。そうすると、どこから手をつければいいのかわからなくなってしまうリスクがあるので、学習を進める際には注意が必要なのです。

地学分野は暗記すれば何とかなる、あるいは苦手なので知識だけで勝負、と考える受験生や保護者の方は少なくありません。たしかに、正確な知識がないと解けない問題が出題されるという点では暗記中心と言えないこともありませんが、近年の中学入試問題では単に1問1答のような知識だけの問題は出題されません。たとえば、地学分野の天体についても、地球から見た星や月なのか、あるいは宇宙ステーションから見たっ☆や月なのかによって解答は異なりますが、必要な知識は共通しています。しかし、学習が十分でない受験生にとっては、まったく違う問題に見えてしまい、何を答えたらよいのかわからないという状態に陥ってしまうのです。

このように地学分野では融合問題が多く出題されます。その一環として知識を答えることはもちろんありますが、出題のバリエーションが多く、出題者からすると非常に問題を作りやすい分野でもあるのです。聞き方を変えることによって、本当に正確に知識を理解し、覚えているのかを問いやすい分野だとも言えるでしょう。受験生からすれば、一見見たことのない問題に戸惑ってしまい、地学で失敗するケースが多いのです。模試などでもその傾向が強いため、解けなかったことから苦手意識を持ってしまうことはよくあります。

必要な知識と出題形式は表裏一体の関係にあります。知識だけを問うわけではない問題であっても、正確な知識を前提として問題が作られているので、理科の知識、特に地学の知識については範囲も意外と広いので、体系的に正確に理解しながら知識を整理していくことが大切です。そうした意識を持っていないと、実際に問題を解くときにどこから手を付けたらいいのかわからないということになってしまいます。それでは、暗記だからとたかをくくっていたのに問題を解くことは難しいでしょう。

地学分野は、理科の学習を始める4年生から5年生の間にかけて、ときには生物、ときには化学分野と交互にカリキュラムが組まれています。現受験生の皆さんにとっては、模試で問題を解くことはあるかもしれませんが、学習してから時間がたっているため、忘れてしまっている、あるいは知識が整理できていない可能性があります。また、他の3分野に比べて、総合模試で大問としての出題率が低い傾向があるので、思ったほど問題を解いていないということも影響し、地学からより遠ざかってしまっているかもしれません。

また、最近の入試問題の傾向として、地学分野では長いリード文を読んでから設問に答えていくという形式が目立ちます。そこでは、まずは読解力が問われます。理科の問題の場合、問題文に書かれている情報がすべてだと言っても過言ではないので、正確な読解力が試されるのです。そして、正確な知識がなければ、長いリード文を読み解く際に意味が分からず時間がかかったり途中で止まったりしてしまい、問題に手を付けられないというリスクもあるので注意が必要です。

受験に必要な知識というものは、繰り返し確認し続けていないと忘れてしまいます。大人であっても知識はブラッシュアップしないと忘れてしまいますよね。小学生であればなおさらです。また、もし知識を暗記できたとしても、どのような問題に使うべき知識なのかがわかっていなければ問題に正解することはできません。問題を正確に解いていくためには、どのような出題形式であっても使いこなせるまでに知識を身につける必要があるのです。理科の地学分野は「覚えれば何とかなる」分野ではありません。以下に覚えた知識を使いこなすことができるかというところが勝負の分かれ目になるのです。

今回は、受験生が苦手としがちな理科の地学分野について、勉強法と苦手・弱点の克服法についてご紹介します。身近なようでいてつかみどころがない分野と思われがちですが、ぜひ今のうちに弱点となっているところをピックアップして克服していきましょう。

地学の知識はわすれてしまいがち

地学分野は、地層、岩石、気象、天体、太陽が代表的な単元です。本来、地学は身近な存在なので、好きなお子さんが多いのですが、中学受験の勉強の段階になると、覚える知識の量が多いため苦手意識を持ってしまいがちです。

理科は学習範囲が広い

地学に限らず、理科は学習範囲が広いです。そのため、毎回のカリキュラムごとに学習する内容が違います。しかも、塾では繰り返して知識の確認をすることは不可能といっても過言ではありません。次の週には違う単元が設定されているので、同じ単元を繰り返し学習するのはカリキュラム上難しいのです。全カリキュラムを終えた夏期講習にもう一度全体を見る機会があるかもしれませんが、コロナウィルスの影響もあり、どこまでを重点的に講習で扱うかははっきりしていないのが実情です。算数と国語にかける時間が多いでしょうから、理科、しかも地学分野については時間をそれほどかけることは頻出単元を除いてはまずないと考えておいた方が良いでしょう。時間の関係で地学分野については宿題にされてテキストを自分でやっておくように指示されるだけという状態にもなりかねないことを念頭に置いておく必要もあるでしょう。

地学を勉強してから時間がたっている

地学分野は4年生から5年生にかけて学習する分野ですし、単元がバラバラに出てくることが多い分野です。そのため、学習した他の分野に記憶が上書きされてしまい、学習当時の内容が抜け落ちてしまっている可能性が高いと言えるでしょう。多くの受験生にとっては、場合によっては一から覚え直さないといけない状態になっている恐れがあるのが地学分野です。皆さんはいかがでしょうか。地学の知識は今もしっかり残っているでしょうか。

5年生の後半からは化学分野や物理分野の学習が中心となり、しかも内容がかなり高度で理解するのに時間がかかるだけでなく計算問題が多いため、理科の学習に比較的時間を割いている受験生であっても、地学分野の知識はおろそかになりがちです。お通いの塾によっては、以前学習した知識問題について繰り返し小テストをしてくれることもありますが、塾がお休みになっていた2か月間はそれもできなかったので、記憶を呼び起こす機会がなかったと言えるでしょう。

復習の機会はなかなかない

もしかすると「地学の第〇回の復習」が宿題として出ているケースもあるかもしれません。しかし、どのように学習するかという学習法までは指示してくれないことがほとんどです。その週のカリキュラム該当分がありますから、別に出された復讐のための宿題までは手が回らず、その週の4教科の学習を優先することになり、結局は以前学習した内容は放置したままということになってしまいかねません。以前の内容も含めて学習計画を立て、その通りに勉強するのは、小学生である中学受験生任せにするのは難しいです。そもそも学習しなければならない量が多すぎて不完全燃焼になってしまうことが多いでしょう。

今年はコロナウィルスの影響もあって、自宅学習の時間が例年より多く撮れます。段階的に登校が始まっても登校時間が少ないこの時期に、できるだけこれまで積み残してきた「覚えたはずの知識」をもう一度体系立てて学習するチャンスです。抜けてしまった地学の学習に手を付けることと、やったはずの知識を思い出し、あいまいなところは改めて覚え直しましょう。今のうちから、今後始まる問題演習中心のカリキュラムや模試で使いこなせるようにしっかり復習し始めることが大切です。

単体の知識は覚えにくい

地学の学習については、社会の学習をイメージすると取り組みやすくなります。先日、社会の勉強法・克服法についてご紹介しましたが、地理や歴史の正確な理解と暗記は物理分野にも共通する点が多いです。

受験生の方の中には、理科の知識問題は頭からざっと覚えていけば何とかなる、と思っている方もいるかもしれません。塾からも、サピックスであればコアプラス、四谷大塚や早稲田アカデミーではサブノートや演習問題集などで知識の整理をするように指示されているでしょう。

コアプラスも、四谷大塚の教材も知識がまとめられているよくできたテキストです。ただし、知識を身につけるためにある教材には実は落とし穴があります。これらは単元ごとの知識を順に並べている教材なので、短い問題に答えられたらそれで終わり、としてしまいがちな受験生が非常に多いです。そのような覚え方だと、ピンポイントでひとつの知識を問う1問1答形式の問題でない限り、総合問題では太刀打ちできません。

また、近年の中学入試問題では、1問1答の問題はまず出題されません。特に理科の地学分野は、最初に長いリード文を読み、その中に書かれている前提条件を正確につかんでから設問に答えていく形式が主流になりつつあります。設問の中で単体の知識を聞かれることはもちろんあり得ますが、模試の最初に出てくるような単純な知識問題が出題されるわけではないことは過去問を見ても明らかだと言えます。模試の大問でも、最近は長いリード文と条件検討、考察をもとにした出題が増えています。

地学は問題を作る際にシチュエーションを色々変えることができるので、知識を丸覚えしているだけでは、まず実戦的な問題は解けないでしょう。ここでポイントとなるのは、設問の「聞き方」で、少し変えられるととたんに答えられなくなるということが起こります。それが出題者の狙いでもあるのですが、問題を解いても解いても分からなくなってしまう、理解のしかたがわからないということが非常に多いのが地学の怖さです。

単なる知識の丸覚えは正確な理解をおろそかにしてしまい、設問と答えを1対1対応で順に暗記しているにすぎません。それではいくら繰り返しても、成績を上げることはできません。地学の知識は単体でたくさん覚えようとしてもなかなか覚えられませんし、実戦的な問題ではなかなか点数には結びつきません。では、そのような状態をどのように克服したらいいのでしょうか。

知識と知識の関係性をよく考えて理解する

地層、岩石、気象、天体、太陽、といった地学分野でも、知識だけでなく、その知識についての説明についても一緒に定着させることが重要です。つまり、「答えとメカニズム・理由付け」を意識することが大切と言えるでしょう。

知識どうしの意識のしかた

地学で主に出題されるのは、大きく分けると天体、地層の知識、地震のメカニズムと計算です。基本は生物と同じように知識を定着させる学習がメインとなってきますが、たとえば月の満ち欠けなどは、数字と知識を結びつけながら理解することが要求されます。ほかの分野に比べると少しマイナーな印象を持たれがちな地学ですが、ほかにも地質の知識などは他の科目でも役に立つことがあります。

また、物理と同じようにメカニズムやなぜそうなるのかという理由付けの理解も必要になってきますし、計算は比較的単純ですが、つまずく受験生も多い分野です。知識→理論→計算という順番を意識して、一つひとつを確実に理解していくことが大切です。そのことによって知識の混乱も防ぐことができます。

混乱しないための学習法

このように、天体の知識ひとつをとっても、ただ単体で覚えていては少し聞かれ方を変えられると答えられなくなることは少なくありません。理由付けまで理解していないため、知っているはずの知識を適切に思い出すことができないのです。そのような状態を克服するためには、ただ単にひとつの知識を覚えるのではなく、「なぜ」そのような現象が起こるのか、といったメカニズムや理由付けまで意識して学習することが、地学の知識を定着させるために最も重要です。

地学分野は、知識だけでなくメカニズムや理由付け、さらに計算問題もあるので、直前期まであと回しにしてしまう間に合わない状態に陥ってしまいます。こまめに知識を見直しながら、メカニズムや理由付け、計算問題の種類や解法も含めて一緒に身につけていくことが大切だということを意識してください。

また、ピンポイントで単体の知識を覚える学習法では、増え続けていく知識を同じように詰め込むことしかできないので、頭の中で知識が混乱してしまいます。整理せずにいくら知識を詰め込もうとしても必要な時に取り出せないのでは意味がありません。地学分野は覚えなければならない知識量も多いですが、計算問題も多く出題されるため、いつ、どんなときにその知識が必要になるのかが整理されている必要があります。正しい理解に基づいていないということは、結果的に何も覚えていないのと同じです。「答えとメカニズム・理由付け」をワンセットにして理解しながら覚えていくようにすることを忘れないでください。

地学分野の問題を解くには頭の切り替えがポイント

模試などを振り返ってみるとわかることですが、単なる1問1答の問題はあまり出題されなくなってきています。なかには最初に理科4分野の基礎知識を問う問題が少し出題されることもありますが、大問では、長いリード文があり、その中で条件を整理し、考察が加えられている問題が地学分野の主流となっています。問題部分に対して、さまざまな角度からいろいろな知識が問われるのです。

たとえば、地震についての出題は入試でも良く見られますが、長い説明文のあとに、結果を前提にいろいろな条件をつけて設問を設定することが多いです。設問では、リード文を正確に読めているか、条件をしっかり把握できているかといったことを多面的に聞いてきます。地震のP波S波といった知識だけでなく、ハザードマップなど社会に関する知識を聞く設問もあるなど、非常にバラエティー豊かな設問が出題されるのが近年の地学の入試問題の特徴です。理科と社会は関連していることが多いので、融合問題が出題されやすい蛍光にあることを知っておきましょう。

また、理科の大問は、設問の数が多いです。少ない場合は設問ごとの配点が高く、その分難度が上がって1問あたりに時間がかかる傾向にあります。設問の数が多いといっても、その設問は1対1対応の知識を聞くものではなく、1つの知識から次の知識、応用的な知識、と設問ひとつごとに問われる内容が大きく異なるのも地学の特徴です。しっかり得点するために必要なのは、問題文の内容を覚えている力と、設問を読み進み、1問ずつ頭を切り替えて答えていく力だと言えるでしょう。

また、地学に限らず理科の設問は、前の設問の答えが次の設問の前提になっていることが非常に多いです。そのため、ひとつ間違えると芋づる式に点数を失う危険性があります。だからこそ、1問ごとに正確に答えていく必要があるのです。そして、設問ごとに頭を切り替えながら、次の設問にしっかり答える、ということを続けることが重要と言えます。

地学分野は単なる知識問題だからと、1問1答をつぶすだけでは、このような融合的な大問に対応できません。しかし、実際の入試問題では、このような1問ごとの頭の切り替えを、地学分野の問題に見せかけて社会や理科のほかの分野にまで発展させて1つの大問の中に収めていることも少なくありません。また、問題文に入っている条件からわかることを記述させる形式によって、出題の意図を理解しているかどうかを確認するケースも近年増えています。

このような問題に対応できるようになるためには、地学分野を単なる暗記分野と考えるのではなく、知識と知識のつながりを考えながら、1問ごとに瞬時に頭を切り替えて次の問題に進むこと、ほかの分野や教科の知識も必要に応じて思い出し、使いこなすことが必要です。地学分野では知識どうしのつながりが非常に大切です。この観点を忘れずに対策を進めていきましょう。

学校の教科書や図鑑、星座早見盤などを活用しよう

地学分野の学習では、学校の理科の教科書の地学部分と、天体図鑑、星座早見盤と照らし合わせながら知識を理解し、覚えていくことが重要です。理科、とくに手に取ることの出来ない天体を扱う地学は、想像力がないとなかなかイメージがわかず、その結果正解できないことが多いです。ひとつの条件をとっても「こういう条件だったらこうなるだろうな」という想像力を持ちながら解くことがとても重要です。想像することしかできない単元であっても、出来るだけ実体験に近づけることが必要です。天体であれば、星を見ながら空に星座早見盤をかざしてみるだけで、天体に対するとらえ方が全く変わります。ぜひやってみてください。

学校の教科書には表やグラフはもちろん、カラー写真を用いた資料なども充実しています。また、天体図鑑は知識を写真とともにまとめています。文字だけの学習ではイメージしきれない点を、表やカラー写真を交えてわかりやすく説明してくれている教科書や図鑑、星座早見盤などは受験勉強にもしっかり活用したい大切なツールです。

地学分野の場合、仮定に基づく図を出題し、考えさせる問題がよく出題されます。ですが、じつは視点を変えているだけで、知識自体は細かいものではありません。しかし、どれも教科書や図鑑に普段から親しんでいたり、日常生活の中で目にしているものに関する問題ですが、決して正答率は高くないのです。

また、天体の動きは目に見えませんが、仮定の下に計算させる問題も出題されます。このように、最近の中学入試では、単に単体の知識だけを覚えていても正解できない問題が多くなってきています。天体の計算問題なら、なぜその角度なのか、なぜそういう動きをするのかというメカニズムや理由付けも含めて理解する必要があります。「答えとメカニズム・理由付け」をセットで理解するために大きな助けになるのが、教科書や図鑑、星座早見盤などのツールです。

今後しばらく地学の復習をする機会がないという状態であれば、自宅学習の時間が取れる今の時期こそ、教科書や図鑑などの内容をもう一度しっかり理解することを意識して学習を進めてください。教科書に書かれていることは、中学入試で求められる最低限の知識です。たとえば、男子最難関校の筑波大学附属駒場中学校では、教科書の図表の下に小さく書かれている説明についての理解を問うなど、教科書を隅々まで理解しているかどうかを確認する問題が毎年のように出題されます。教科書や図鑑を参照せず、塾のテキストだけを読んで学習する受験生は多いですが、そこには中学受験の基礎中の基礎が詰まっています。地学分野の学習をするときには必ずそばにおいて知識ごとに調べる習慣をつけると良いでしょう。

苦手単元や弱点となっているところは今のうちに克服しよう

理科の地学分野の知識は、確認テストなどで毎回しっかり定着させていくと良いのですが、4年生や5年生の時期に学習するというタイミングから、すべての知識が定着している受験生はなかなかいないものです。全体的には理解できていても弱点はあるといった受験生がほとんどです。

今だからこそ立ち止まって弱点分野の克服を

苦手な単元や弱点となっている部分は、カリキュラムごとに完璧に定着までするというのは非常に難しいことです。ですが、毎週のように新しい知識が増えるために消化不良になってしまっては、混乱してしまいます。今だからこそ一度立ち止まって、自分が苦手としているのは天体なのか、地震のメカニズムなのか、地層や岩石の分類なのか、など、弱点となっているところを発見することが非常に重要です。弱点を発見できれば、自分がどのような形式の問題や設問で点数が取れていないのか、同じような問題で間違えていないか、抜け落ちている知識はどんなものか、といったことがわかります。

塾からは夏期講習で総復習すると説明されることが多いですが、夏期講習の総復習というのはひたすら問題演習をすることとイコールなので、熱かった問題に出てきた知識の開設はあるかもしれませんが、必ずしもそれが自分の弱点となっているところだとは限りません。やはり自分で克服していく必要があります。そのため、少なくとも夏期講習までの間に自分の弱点についてを理解しておくことが大切です。もし弱点を見極めずに夏期講習を受けても、その期間が効果のないものになってしまいます。

毎週カリキュラムが進んでいくので、なかなか立ち止まって復習する余裕がない、と思われるかもしれませんが、自宅学習時間がいつもよりとれる今の時期だからこそ、まずは一度、これまで学習した内容で弱点となっているところをきちんと洗い出しておきましょう。

弱点ノートを作っておく

これまでの模試などで間違えた問題は、これから入試までに克服していくべき課題です。特に覚えるべき知識の多い地学分野の学習をするときには、知識を体系的に整理しておくことが重要です。そして、必要なときに必要な知識を頭の中から出してこれるようにしておかなければなりません。

そこで、オススメしたいのが弱点ノートを作ることです。自分の知識が足りなかったために間違えた問題や、苦手とする聞かれ方の設問だったために不正解になった問題をピックアップして集めた弱点ノートを作っておくと、自分が地学分野の中でもどこを弱点としているのか、苦手としている種類の問題はどのようなものか、ということが一目でわかります。次のテストでは間違えないように弱点を集めたノートを自分だけの問題集として繰り返し見直す、解き直すことによって正答率は上がっていきます。また、保護者の方にとっても、お子さんの学習状況や弱点、克服すべき点がわかるので、具体的に何をすべきかがわかって対策が立てられるというメリットがあります。

ノートの作り方は簡単です。間違えた問題をコピーやプリントアウトして、ノートの見開きの左側のページに貼るだけです。ノートの右側があくので、その部分をどう使うかが弱点ノートを使うポイントとなります。まずは間違えた問題をもう一度ノートの右側を使って解いてみましょう。そこで解けて、さらに理由付けも分かっていれば問題ありません。もしまた間違えた問題については、なぜ間違えたのか原因を考えてみましょう。地学分野の知識を正確に理解するために必要なのは「答えとメカニズム・理由付け」です。答えだけ見て間違えたからもう一度やる、というのではなく、「なぜそういう答えになるのか」をしっかり理解することが大切です。この繰り返しこそが、何よりの弱点克服法と言えるでしょう。

一度でも間違えた問題を集めているので、すぐに正解してメカニズムや理由付けまでこたえられるようにすることは難しいでしょう。ですが焦る必要はありません。間違えたら、またできるようになるまで繰り返せばいいのです。ただし、間違えたらまた解けばいいや、という甘い考えは持たないでください。大切なのは、弱点を洗い出して、それを克服していくことです。もう一度間違えたなら、その原因をしっかり考えて、問われている知識について、簡単で構わないので、ポイントをノートの右側にまとめておくことをオススメします。それが「答えとメカニズム・理由付け」、すなわち地学分野の知識と知識のつながりを意識することになるのです。

一度弱点ノートを作っておけば、今後間違えた問題が出てきたらまた加えていくことを繰り返して、自分だけの問題集を作ることができます。また、メカニズムや理由付けを自分でまとめることによって参考書の役割も果たしてくれます。作り込みすぎる必要はありません。あくまで弱点をチェックし、克服するためのツールとして使うものですから、凝りすぎるのはかえって逆効果です。今後の模試などに合わせて、弱点ノートを見直せば、弱点補強ができますし、同じ問題でまた間違えるということを防ぐことができるようになります。コンパクトに弱点をまとめることができるので、自分の弱点をピックアップして短期間に何度も分野全体を回して克服していくことができます。

弱点ノートを作るのは、少し時間がかかるので、ぜひ保護者の方が協力してあげてください。最初に問題をコピーやプリントアウトしてノートの左側に貼るところまでやってあげると良いでしょう。お子さんの学習時間の節約になります。また、保護者の方もお子さんの弱点を把握できます。

いますべてできなくても大丈夫!

問題を解く際に気をつけたいのは、今の時点では焦って応用問題ばかり解いたり、基本をおろそかにしないことです。受験勉強をする期間は中学入試に向けた準備期間ですから、すべてが完璧である必要はありません。特に記述問題を気にする方が多いですが、実は解答方式が違うだけで、選択肢問題で問われているのと同じレベルの知識を自分自身で整理し、文章にまとめていくというのが理科の記述問題です。問われている知識自体はそれほど難しくないことが多く、問題全体の中から出題者の結論を読み取らせることが目的なので、難しい文章を書くことまでは求められていません。

まずは、受験生ならみんなが正解してくるであろう基本的な知識を問う問題で間違えることのないようにしましょう。あいまいな知識を一つひとつしっかりと潰していくことを最優先してください。ここでつまずいていると、他の受験生に差を付けられてしまい、相対的に成績が下がってしまいます。

また、中学受験生は苦手なところを放置してしまう傾向があります。ですが、苦手なところは放置するほど苦手意識が強くなり、さらに敬遠してしまうというループにはまってしまうので注意が必要です。場合によっては、どこが苦手だったのかそのうちに忘れてしまうということもあります。そのため、早めに弱点の対策をしてつぶしておくことが大切なのです。特に、理科の地学分野の知識については、入試直前に詰め込んで対応できるほど甘いものではありません。詰め込もうとしても時間がないですし、問題演習を重ねるうちに知識が混乱してしまい、焦るばかりで結局理解できない、もし覚えられてもどういうときに使いこなせばいいのかわからないということになりかねません。

今まで学習してきた内容については今、理解しておきましょう。そして、正確に覚えられるように、弱点ノート等を使ってこまめに復習するようにしましょう。地学分野は教科書や図鑑、星座早見盤などの図も大切なので、弱点ノートと合わせて弱点克服のために活用してください。

こういった弱点補強をするためには、自宅学習の時間が取れる今の時期はチャンスです。応用的な問題は、今後数をこなしていく機会がたくさんあります。いまやるべきなのは、受験の定番である基礎知識を整理し、しっかり理解を深めて定着させることです。定着ができれば、その知識を使いこなすことができるようになるので解ける問題も増えます。

まとめ

これから大切なのは、「自分のための勉強」をすることです。苦手分野や弱点は、受験生一人ひとり違います。他の受験生と自分を比べることなく、自分の苦手分野や弱点分野がどこなのかをしっかり把握し、克服していくことこそ成績を伸ばすカギと言えるでしょう。

塾での集団授業では、生徒一人ひとりの状態に合わせた授業は望めません。特に理科については短い授業時間の中で、問題演習をし、出てきた新しい知識を詰め込むことが中心です。その状態は夏期講習でも続くと考えられます。4年生や5年生のはじめに学習した地学分野は「宿題」という形で出されることが多く、受験生が自分で対策しなければならなくなっていきます。だからこそ、自宅でいかに復習ができるか、知識を正確に理解し、定着させられるかということが、結果的に周囲と差をつけるポイントになるのです。

受験学年はこの先、なかなか知識問題に時間を割く余裕はありません。だからこそ、今のうちにこれまで学習したことを定着させ、忘れないように繰り返し学習することが重要です。問題演習が先、と焦るかもしれませんが、いくら問題をたくさん解きたくても、前提となる知識が不確かだと1問解くのにも時間がかかって結局不正解という結果になってしまうでしょう。理科の地学分野は暗記で何とかなると思われているだけに、正確な知識の理解がなくては問題は解けないという原点に戻りましょう。知らないと解けない問題がたくさんあるのが地学分野の特徴でもあります。

今のうちに基礎中の基礎に戻って、自分自身の現在の状態をしっかり把握して自分のための学習をしていきましょう。理科の地学分野でそれを実現するためには、学校の教科書や図鑑、星座早見盤などのツールを活用することをオススメします。目と手をフルに使って学習することが弱点を減らして成績を上げていくポイントです。自分の学習ができてこそ、問題演習や模試、過去問演習など、実戦的な問題を解くときに楽になります。今は焦らず、しっかりと自分のための学習をしてください。弱点をひとつ克服できれば、自信にもつながります。自分のための学習をすることを意識して学習し、早いうちに弱点を克服していきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。